「ここは何処だ?」
辺りは見回す限りの荒野で人の気配はない。
つい今しがたまで使い魔召喚の儀式をしていたトリスティン魔法学院近くの草原とは似ても似つかない。
「一体なにが起こったんだ?」
俺は呆然と呟いた。
事の起こりは春の進級試験。
使い魔召喚でルイズが少年を召喚した事。
人間が召喚されたこと自体は周りは兎も角、原作を知る俺にとっては予定通りだった。
ただ少年は日本人の高校生ではあったが平賀才人ではなかった。
手に持っているものもノートパソコンではなく銅鏡らしきもの。
それでも基本的に原作とは大差なく、契約までには一悶着あったがルイズはその少年を使い魔とした。
ただ少年がルーンを刻まれる痛みに動揺し、手に持っていた鏡を取り落としてしまった。
鏡は地面にあたり砕ける。
砕けるだけでは済まず突然眩い光を放った。
その光に眩んだ目を閉じて次に開いた時には俺は一人荒野に立っていた。
どのくらい立ち尽していたのだろう。
人の気配、それも何やら粗暴な雰囲気のそれに気付いてそちらを見ると黄色い頭巾を巻いた三人組が近寄ってくる。
粗末な武装と自分をモノを見るような目つきから盗賊の類だろう。
明らかにメイジとわかる俺に警戒なく向かってくる事に不審を抱きながらも呪文を詠唱する。
争いは好まないが明らかに相手には害意が見える。
「おい。身包み置いて立ち去れ。そうすれば命だけは助けてやる」
「お前を殺してもお前の持ち物が消えるわけじゃねぇ。本当なら死体から剥ぎ取ってもいいんだぜぇ?」
「そ、そうなんだな。アニキの寛大さに感謝するんだな」
予想通りの反応を示す三人組を囲むように俺は氷の壁(アイス・ウォール)を展開する。
突然現れた自分たちを取り囲む氷壁に愕然とする三人組。
どうやら本当に俺がメイジだと解っていなかった様だ。
「少し尋ねたいのですが宜しいでしょうか?」
何事もない様に落着いた口調で話しかける。
「「「は、はいぃ!何でもお尋ね下さい(なんだな)!!!」」」
対照的に氷の壁の冷気に当てられながら冷や汗を流す三人組。
「ありがとうございます。先ずここは何処でしょうか?」
尋問の結果ここは漢族が住み彼らが中原と称する広大な地で、近くの街までは歩いて数日かかると言う事が判った。
そして彼らは黄巾党の韓忠配下と言う事だった。
「黄巾のアニキ、チビ、デブ。 三国志。しかも恋姫だな」
俺は自分の置かれた状況が理解できた。
あの少年はよりにもよって銅鏡を持った北郷一刀だったらしい。
そして一刀の代わりに俺が外史へ送られたようだ。
「俺にどうしろと?」
思わず呟きをもらす。
「あらん。イイ男♡」
俺の呟きに答えるように背後から若本ボイス。
瞬間、脱兎の如く走り出す。
「あらあら。どこに行こうというのかしらん?」
しかし回り込まれてしまった。漢女からは逃げられない。
「い、嫌だ!恋姫なら袁術の所に行かせてくれええぇぇ!!
そしてバスガイドを嫁にして一緒に美羽を更生して、中原をミッウミウにしてやるんだあああぁぁぁ!!!」
「大丈夫よん。諦めて?」
「馬鹿な!こんな馬鹿な話があるか!?」
その後、彼の行方を知るものはいない。
ただ華佗伝に異国の方術を以って人々を治療した道士の記述があるのみである。
∩(;゚Д゚)つ ⌒゚(´∀` )゚⌒
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生まれ変わってハルケギニアへ。
なのにどうして私は中原にいるの?