~紅蓮の塔・屋上~
その後ティータはずっと泣き続けていた。
「うっ、うううう……お祖父ちゃん………」
「ティータ……」
「「ティータちゃん………」」
それを見てエステルとミント、ツーヤは悲しそうな顔をした。
「とりあえず……いったんツァイスに戻ろう。あの飛行艇のことをギルドに報告しなくちゃ……」
ヨシュアはつらそうな顔をしながらもこれからの方針を決めるための提案をした。
「ティータ……つらいとは思うけど……」
見かねたエステルがティータに話しかけた。
「………どうして、おじいちゃんが……ひどい……ひどいよぉ……」
エステルに話しかけられても泣き続けているティータにアガットは静かな声で話しかけた。
「おい、チビ。」
「……?」
パン!
意外な人物に話しかけられ呆けるティータにアガットは近づいてティータの顔に平手打ちをした。
「……あ……」
「ちょ、ちょっと!」
アガットの行動にエステルは驚愕の顔で見た。だがアガットは周りを気にせず話しだした。
「言ったはずだぜ……足手まといは付いてくんなって。お前が邪魔したおかげで爺さんを助けるタイミングを逃しちまった……この責任……どう取るつもりだ?」
「あ……わたし……そ、そんなつもりじゃ……」
アガットの静かな怒りを持った言葉にティータは青褪めた。アガットは追い打ちをかけるように言葉をさらに重ねた。
「おまけに下手な脅しかまして命を危険にさらしやがって……俺はな、お前みたいに力も無いくせに出しゃばるガキがこの世で一番ムカつくんだよ。」
「ご……ごめ……ごめ……ん……なさ……ふえ……うえええん……」
さらに泣きだしたティータを見てエステルやミントはアガットに詰め寄った。
「ちょ、ちょっと!どうしてそんな酷いこと言うの!」
「そうだよ!ティータちゃん、家族が攫われて凄く悲しんでいるのに今の言葉は酷いよ!」
2人に詰め寄られたアガットは冷静に答えた。
「だから言ってるんだ。おい……チビ。泣いたままでいいから聞け。」
「うぐ……ひっく……?」
「お前、このままでいいのか?爺さんのことを助けないで諦めちまうのか?」
「うううううっ……」
アガットの言葉を否定するようにティータは泣きながら首を横に振った。
「だったら腑抜けてないでシャキッとしろ。泣いてもいい。喚いてもいい。まずは自分の足で立ち上がれ。てめえの面倒も見られねえヤツが人助けなんざできるわけねえだろ?」
「……あ……」
アガットの言葉にティータは泣き止んだ。
「それが出来ねえなら二度と俺達の邪魔をせず、ガキらしく家に帰ってメソメソするんだな。……フン、俺はその方が楽なんだがな……」
「ティータ……」
「「ティータちゃん……」」
「…………大丈夫だよ……お姉ちゃん、ミントちゃん、ツーヤちゃん……わたし、ひとりで立てるから……」
ティータは完全に泣き止み自分で立った。それを見てアガットは笑みを浮かべた。
「へっ……やれば出来るじゃねえか。」
「本当に……ごめんなさい。わ、わたしのせいであの人達に逃げられちゃって……ミントちゃんツーヤちゃんも私の我儘につきあわせて、ごめんなさい……」
ティータはその場にいる全員に謝った。
「バカ……謝ることなんてないわよ。」
「うん。ティータが無事でよかった。」
「ミントとツーヤちゃんはお友達のお願いを聞いただけだよ。だから謝らないで。」
「うん。それよりアガットさんに叩かれた頬は痛くない?痛いのなら治癒魔術をかけるけど。」
「大丈夫だよ、ツーヤちゃん……それよりありがとう……お姉ちゃん、お兄ちゃん、ミントちゃん、ツーヤちゃん。」
4人の言葉にティータは笑顔になった。そしてアガットにおどおどしながらも話した。
「あ、あの……アガットさん……」
「なんだ?文句なら受つけねえぞ?」
「えと……あ、ありがとーございます。危ない所を助けてくれて……」
ティータはアガットにお辞儀をした。
「それから……励ましてくれてありがとう……」
「は、励ましたわけじゃねえ!メソメソしてるガキに活を入れてやっただけだ!」
アガットはティータの言葉に焦った。それを見てティータは笑顔を見せた。
「ふふ……そーですね。」
「だ~から、泣いてたくせになんでそこで笑うんだよ!?ちょ、調子の狂うガキだな……」
それを見てエステルは溜息をついた。
「あんたねぇ、お礼くらい素直に受け取りなさいよ。」
「いや、アガットさん、単に照れてるだけじゃないかな。」
「なるほど……確かにそれは可愛いわね♪」
「そういえばアガットさんの顔、なんとなく緩んでいるね♪」
「クスクス……ミントちゃん、そういう事は本人の目の前で言ったら駄目だよ♪」
「そこ、うるせえぞ!」
4人からからかわれたアガットは照れ隠しに怒った。
そして6人はギルドへ報告し、これからの方針を決めるためにツァイスへの帰り道を戻っていった……
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第105話