No.459449

【獣機特警K-9】カレーだよ!【交流】

古淵工機さん

とりあえず

http://www.youtube.com/watch?v=RZxSeeYzfUM
↑を聴きながら読むことをオススメしますw
K-9では珍しい?料理メインの回かも。

2012-07-25 23:20:25 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:748   閲覧ユーザー数:686

早朝、午前5時…ラミナ警察署K-9ルーム。

まだ誰もいないこの部屋に、一人の柴犬形ロボットが入ってきた。クオンだ。

「…うん、誰もいない…よね」

そういうと彼女はK-9ルームの奥にある調理場へと向かっていった。

…両手にポリ袋をぶら下げて。

「ほいっ…と」

クオンは調理場の電灯をつけると、その長い髪を後ろで束ね、懐に持っていたバンダナとエプロンを装備する。

そして炊飯器に目をやり、すぐさま自前で持ち込んだ米を研ぎ、そしてご飯を炊き始める。

「えーっと、ご飯はOK…あとは…」

と、クオンはやや鼻歌交じりで袋の中から野菜や鶏肉を取り出していく。

「タマネギとニンニク、ショウガはみじん切り…」

稼動年数わずか2年のクオンだが、それにしてはかなり慣れた手つきで材料を切っていく。

ニンジンは一口大、メインになる鶏肉は一口よりやや大きめのサイズだ。

しかし驚くべきはその材料の量である。

K-9隊全員で食べきっても有り余るくらいの材料が用意されていたのだ。

クオンはそれをいやな顔一つせず…いやむしろ楽しそうな表情で次々に捌いていく。

「…んしょっと」

次にクオンは大きな鍋を取り出す。これまた、かなり大きい鍋だ。

「まずはニンニクを強火で…と」

そう言うなり、鍋に油を敷き、ニンニクを炒めていくクオン。

熱が加えられたニンニクが、あたりに香ばしい香りを漂わせていく。

「そしてタマネギと鶏肉を炒めて…」

やがてそれぞれの材料を炒め合わせたクオンは、鍋に水を張り、材料の煮込みに入る。

煮込むこと10分、クオンは鍋の火を止めるとカレールーを入れて溶かしていく。

…カンのいい読者ならクオンが何を作っているのかおわかりだろう。

そう、実は彼女が作っているのはほかならぬ彼女自身の大好物。チキンカレーなのである。

 

やがてルーが全て溶けきると、クオンは再び鍋に火をつけて弱火でじっくりとカレーを煮込んでいく。

あたりに食欲をそそる香りが漂い始めた頃、K-9ルームのドアが開いた。

まず入ってきたのはエルザ、アレク、フィーアだった。

「…そうか、君たちもついに結婚か」

「ええ、式は隊長とアーサーさんの分とあわせてやろうと思ってますけど」

「せっかく新婚が2組ですものね、盛大に祝いましょう」

と、何の変哲もない話をしていた三人だったが、ふとK-9ルームの異変に気づく。

 

「隊長、この香りは…?」

「ああ、間違いないな。カレーの香りだ」

「そういえば私たち、今朝何も食べてないですけど…一体どうしたんですか?」

「実はその事なんだが…」

 

続いてイシス、グーテ、シスが入ってきた。

「隊長、それにアレクさんにフィーアちゃん、おはようね!」

「ああ、おはよう」

「……ところで、カレーの香りがしているようですけどどうしたんですか?」

「…我も同感」

「隊長、今朝はカレーだったんだね!」

「いや、私たちは今朝何も食べていないのだが」

 

「「え?」」

と、疑問に首をかしげるイシスとグーテの背後から、ウーとリクが入ってきた。

「お前もカワイイ彼女とゴールインするつもりなんだろ?ん?」

「や、やめてよウーお姉ちゃん…あ、隊長。おはようございます」

「ああ、おはよう」

二人もすぐにK-9ルームの異変に気づいた。

「…くっさ!なんだこれ!カレー臭ッ!!」

「確かにカレーのニオイがしますけど…アレクお兄ちゃん、今朝カレーだったんですか?」

「いや、同じような質問がさっきグーテから隊長にあったんだけど、俺たち三人は何にも…」

と、アレク。

「実は私もなんですよ」

と、イシス。

「ええ!?実はオレたちもなんだぜ!?」

と、ウー。

「いやしかし、空腹時にカレーの香りは強烈だなあ。嗅いだだけで涎が出てしまいそうだよ」

と、アレク。

そんな他愛もない話題で談笑していたK-9隊のメンバー。

しかし、一人足りない事にイシスが気づいた。

「ところでクオンはどうしたんですか?姿が見えませんが」

するとエルザが答える。

「ああ、先ほどからチラホラ出ているその質問に関してなんだが…実はな」

と言いかけたその時、調理場のドアが開いてエプロン姿のクオンが出てきた。

 

「あ、みんなおはよう!」

「え!?ど、どういうことなの!?」

と、驚いているフィーアに対し、クオンは自信に満ちた笑みを浮かべて答えた。

「実はね…ちょっとみんなをビックリさせようと思って朝ご飯用意してたんだよ」

そう言うとクオンは調理場から一台のワゴンを転がしてくる。

ワゴンの上には大きな鍋に入ったチキンカレーと、白いご飯。

それにピッチャーに入ったヨーグルトドリンクが用意されていた。

「なるほど、チキンカレーを作ってたのか」

「えへへ…」

「オレたちにナイショでこんなことしてたなんてズルいぞ!」

と、次々に騒ぎ立てるメンバーを前に、エルザはゆっくりと語りだす。

「まぁみんな、まずは私のほうから一言言わせてくれ」

「え、隊長…?」

一様に小首をかしげるメンバーの前で、エルザは深く頭を下げた。

「今朝は本当にすまなかった。みんなを少し驚かせようと思ってな」

「そ、それってどういうことなんだよ?」

と、動揺するウーに対しエルザはこう続ける。

「…昨日の夜、クオンから私に相談があってな。せっかくだからみんなで朝食を食べないかって」

「それで俺たちに、朝食を抜いて来いという通信を入れてきたわけですね?」

と、苦笑するアレク。

「でも、隊長があの通信をくれなかったら、クオンちゃんのカレー食べられなかったかもね!」

と、グーテ。

 

「こんなサプライズを用意してるなんて、流石隊長ですね。ユーモアも天下一品です」

と、微笑みながらイシスも頷く。

「おっしゃ!せっかくのカレーだ!みんなでがっつこうぜ!」

と、興奮して目を輝かせるウー。

「ウーお姉ちゃん、勢いつけて全部食べないでよ?」

と苦笑するリク。そして、K-9隊のメンバー全員がそろっての朝食が始まった。

大きな事件もなく、平和なある日の朝の事だった…。

 


 
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