第26管理世界にある研究所に居るなのはは、エメリアに通された応接間で一人になっていた。
エメリアから妹の事を全て聞くと、エメリアは用があると応接間から出て行った。
出て言った事を確認した後、なのはは先ほどエメリアに言われた内容を考えていたのだった。
「……今まで、私は何をしていたのだろう?」
応接間には何も音が無く、聞こえてくるのはなのはの独り言だけだった。
なのははエメリアに捕らわれているエメリアの妹の事を聞いてから、今まで自分がしてきた事が何もかも分からなくなってしまったのだ。
全ての事が無駄だと思えてしまった。それくらいの事をエメリアから聞かされたのだ。
「……これから、私はどうすれば良いのだろう?」
自問を繰り返しているだけだった。その答えを今答えてくれる人は誰も居ない。この部屋に居るのはなのは一人だから。だから、自分で答えを見つけなければならなかった。
そもそも、なのはがフェイトたちに何も言わずに姿を消したのは、フィルノがどうして犯罪を犯したのかを始めたのかを聞くためだった。管理局の一人としてではなくて、幼馴染だった一人として。たとえ返ってきた答えが酷かったとしても、なのははその場で逮捕などせずに帰るつもりだった。フィルノの事情を聞きたい唯その事の為に。
なのはは記憶を取り戻した後、なのははすぐにフィルノとの思い出を思い出していた。幼いころ、なのははさまざまな事でフィルノに助けて貰った事を。だからこそ、フィルノがどうしてこんな事をしたのかを聞き出したかったのだ。
しかし、なのははフィルノと会う前に様々な事を知ってしまった。管理局の正体を知り、唯利用されていた事を。
フィルノと会った後、どうすれば良いのか分からないでいた。
「おや、まだ悩んでいたのか? もう1時間も経っているぞ」
突如エメリアの声が聞こえ、なのはは声が聞こえてきた方に振り向いた。
エメリアの姿を確認すると、すぐにエメリアに言われた事が気になり、時計を見て今の時間を確認した。
「ぁ、本当だ。いつの間に……」
「言った通りだろ。さすがに考えすぎだ」
時計を見ると、確かにエメリアの言うとおり1時間進んでおり、今更ながら1時間も考えていた事に気づかされるのだった。
それからエメリアの方に顔を戻すと、エメリアの近くに一人の少女がいる事に気づいた。少女の顔を見ると、渋々とついて来ているような感じで、また両手は手錠で身動きが取れない状態のようだった。
「その子は?」
「おや、君はさっき見ていたと思ったが違ったのか?」
エメリアの言葉を聞き、なのはは一度考えてみる。数秒すると、なのはは少女が誰か思い出した。
「あ! さっき私が尾行していた時に袋の中に居た!!」
「そういう事だ。入り口に入る寸前で逃げられて先ほど捕えたのさ」
そう。少女はなのはがここに来るまでに追っていた研究員が、持っていた袋の中に入れられていた少女だった。
少女を見るとエメリアに怯えており、また睨んでいるようだった。
「もしかして、彼女を人体実験に使うの?」
「縁起でもない。そんな事だったらこんな所には連れてこないよ。彼女にはちょっと用があったのでね」
エメリアはそう言って、少女をなのはと同じようになのはの隣にあったソファーに座らせ、自分は反対側に座るのだった
「高町なのは二等空佐はこの部屋に居ても構わないが、少し席を外してくれるか。別に話を聞いても構わないが、少し二人で話したい事があるのでね」
「分かった。その子に変な事をしたらさすがに私も黙ってないから」
「別にそんな事をするつもりはないさ。それこそ、君が見張っていれば良いだけの話ではないか。とりあえず席を外してくれ」
エメリアの言葉になのはは渋々にも従い、ソファーから立ち上がり、応接間の壁に寄り掛かるのだった。
また、高町なのは二等空佐と言う言葉に、少女はどうしてこんなところに居るのかと驚いていた。あの有名な高町なのは二等空佐がこんな研究所に居た事におかしいと思ったのだ。自分を脅すために居るのかもしれないと思い、一度なのはも睨みつけるのだが、なのははその事に気づいてなかった。
なのはが離れた事を確認すると、エメリアは少女に話しかける。
「さて、君には少し聞きたいことがあるのだが」
「管理局の下で働いているあんたなんかに話す事なんてないっ!! しかもこんな手荒な事をして!!」
少女はエメリアを睨んでいるが、そんな事を気にしないような感じでエメリアは話していた。
なのはは少女が管理局の正体について知っている事に少し気になった。どうして彼女はその事を知っていたのかと。
「確かにそれはすまなかった。そうでもしなければ、君に逃げられるだろうと思ったからさ」
「当たり前でしょ!! しかも、管理局の下で人体実験をしているあなた達なんかに誰がついて行きますか。あんた達のせいで妹がどんな目にあったか」
「……その妹についてと言ったらどうする?」
エメリアの言葉に少女は言葉が止まった。予想もしてなかったような質問が返ってきたかのような感じの驚き方をしていたのだった。
なのはは二人の会話がよく分からないでいた。けど、少女の妹についての話なんだろうと分かるくらいだった。
少女は驚きを隠しきれないままだったが、何とかして言葉を放つ。
「どうして……妹の話が出てくるの……」
「今回、君を何としてでも連れてきたかったのはその事についての話をしたかったからだ。手荒な連れて方だったのは本当にすまないと思ってる」
「そんな事よりも、妹についてってどういう事なのよっ!?」
少女は先ほどよりも声を上げ、ソファーを立ち上がりながらエメリアに聞くのだった。
エメリアを睨み続けている事を忘れ、少女は妹について早く聞きたいという感じだった。
「とりあえず落ち着け。すぐに話すから」
「……分かったわ」
エメリアはとりあえず少女をソファーに再度座らせ、落ち着かせた。
落ち着いたのを確認すると、エメリアは話し始める。
「まず本題に入る前に確認するが、君はデュナ・シルフィアで良いのだな」
「ええ、そうよ」
「そして妹の名前はリィナ・シルフィアだな」
「その通りよ。そんな事よりも妹は今どうしているの!?」
「だから落ち着け。今から話す」
少女、デュナ・シルフィアーは妹のリィナ・シルフィアが今どうなっているのか知りたがっているようだった。
エメリアは再度ディナを落ち着かせ、話を続けた。
「リィナ・シルフィアは先ほどまで第24無人世界にある、管理局が隠した研究所に居た」
「なら、私をそこに連れて行って!! 今すぐ、妹を連れ戻す!!」
「そう焦るな。私が話したことは過去形の話だ。今はそこに行っても君の妹は居ないぞ」
「じゃあ、リィナは何処に居るのよっ!!」
「今は私の仲間であるフィルノ・オルデルタが研究所に侵入して連れて行った」
フィルノ・オルデルタという言葉になのはは一瞬眉をひそめた。
しかしその事に二人は気づいてなく、そのまま話を続けていた。
「え、あなたって管理局の人間でしょ?」
「表面上ではな。裏では別の事で動いているのさ」
そう言うと、エメリアがなのはの方に目だけ向き、なのはもその視線に気づいた。
なのははエメリアがこれから言う事は、なのはが今まで聞きたかった事でもあった。
またエメリアはなのはが先ほどまで何を悩んでいたのか大体察しており、フィルノの目的、それはフィルノやエメリアが居る組織と同じ目的であるという事である。さらに言えば、それはエメリアと同じ目的だという事だ。要するに、なのはが知りたがっていたフィルノが何の目的で行動しているのかが今ここで分かるという事だ。エメリアはその事に気づいていたのでなのはの方を一度見たのだ。
そして、エメリアはそれから一息間を開けると、言うのだった。
「私たちの目的は時空管理局の崩壊。もしくは今のようにした時空管理局の黒幕の殺害し、新たに時空管理局の統制を作り直すことだ――」
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J・S事件から八年後、高町なのははある青年に会った。
その青年はなのはに関わりがある人物だった。
だがなのはにはその記憶が消されていた。
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