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魔法少女リリカルなのはmemories 第二章 再開するまでの記憶(メモリー) 第十五話

J・S事件から八年後、高町なのははある青年に会った。

その青年はなのはに関わりがある人物だった。

だがなのはにはその記憶が消されていた。

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2012-07-25 20:14:27 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1788   閲覧ユーザー数:1738

 その頃、第74管理世界のある研究所にて、あることが行われていた。

 

「まったく、管理局もよく平気にこんなことを頼むよな。まぁ、私もそう言いながらもこんなことをしているのだがな」

 

 そこの研究長である、白衣を着て黒髪の男性フォルベルクは目の前の人間が入るくらいポットを見てそう呟くのだった。

 そのポットの中には黄緑色の液体が満杯に入っており、その液体の中に16歳くらいの桃色のショートヘアーをしている女の子が裸で入っていた。

 女の子の体には、たくさんのコードがくっついており、何かをしているようだった。

 

「リンカーコアの魔力総量を強制的に上げるか…… それほどまでして管理局は武力を手に入れたいのかね。下手をすると暴走しかねないし、もしくはリンカーコアが壊れてしまうぞ」

 

 彼は女の子が入っているポットを見ながらそう呟いた。

 ここで行われている実験は人間の中にあるリンカーコアを弄って、人為的に魔力総量を上げようという実験であった。

 今まで何人ものの実験をしてきたのだが、全てが失敗に終わり、大半の人間がリンカーコアが壊れて魔法が使えなくなり、一部は暴走して失敗作としてすぐに殺された。

 また、魔法が使えなくなったものはそのまま返してもこの研究所の実験の内容がばれてしまうので、一ヶ所に纏めており、他の何かに利用できるかもしれないという事で殺されてはいないのだ。

 言葉だけ聞けばまとものように思えるかもしれないが、先ほど言った通り何人も失敗した人間が現れており、魔法すら使えなくし時点で人体実験に等しい事をしているのだ。

 さらに言えば、リンカーコアの魔力総量を上げるという事はスポーツで言うドーピングみたいなことであり、努力している人間からすれば嫌な事でもあるだから、良いことと考えるのは良くない事であった。

 

「フォルベルク研究長、ちょっと見てください」

 

 近くで画面を見ていた一人の研究員がフォルベルク研究長を呼び、研究長にさっき見ていた画面を見せた。

 そこには二つの波があり、一つの波がもう一つの一定の速さを保っている緑色の波と、一緒の速さになって一定の速さを保っている波と重なったり、だんだんと遅くなっていたりしている赤色の波の映像が見えるのだった。

 その波はポットに入っている人間のリンカーコアから感じる小さな波を察ししたものと、もう一つは魔力総量が大きいSSランクある人間のリンカーコアから感じる小さな波をデータ化したものである。

 波が合わさるという事は、波の速さが変動している方のポットの中に居る人間のリンカーコアが、一定の速さを保っているSSランクの人間のリンカーコアと同じになろうという事なのだ。

 また波が合わさっても、SSランクの人間の魔力総量と同じになるだけであるため、別にSSランクある人間の同じ魔法を使うというわけではない。要は魔力総量だけを強制的に上げようとしているのだ。

 

「ま、まさかこれは」

「ええ、一瞬だけですが確かに重なっています。もしかすると今回は成功する可能性も」

「ついにこの時がやってきたか!! ここまで何回失敗したことか」

 

 フォルベルクは今までの実験の繰り返し、何度も失敗していたので、今回の成功は今まで何年も掛かっていたので、かなり嬉しい事だったのだ。

 本来ならそんな費用なんてあるはずがないのだが、管理局が後ろで援助しているので、何度失敗しようと費用で問題になる事はないのだ。

 

「それで後どのくらいなのか?」

「もう少しで全てが終わる予定です。その時点で今までの状態が続けば、成功するはず」

「ならば、その状態を維持して様子を見ておいてくれ。下手に何か量を増やしたりしたら大変な事になりそうだからな。それまで私はちょっと離れて管理局に報告をしてくる」

「分かりました。何かありましたら呼びます」

 

 フォルベルクはこの部屋から出て、通信室という管理局と連絡を取る部屋に向かうのだった。

 通信室に着くと、目の前に大きな画面があり、その下辺りにはパソコンなどに使うキーボードが置いてあった。

 彼はそこに座ると、電源を付けて、どこかに連絡を始め、画面に誰かが映る。

 

『そちらから連絡が来るとは、何かあったのか? フォルベルク研究長』

 

 画面に映し出された男性は管理局の制服を着ており、一佐以上の階級の感じだった。外見から見れば指揮官のような感じで、管理局の人間だという感じであった。

 フォルベルクは画面に映っている男性に敬意を払いながら話し始める。

 

「はい、リュベル一等陸佐。ようやく吉報をそちらに報告出来るようになりまして」

『っということは何か進展があったのか?』

 

 リュベル一等陸佐と呼ばれた男性は報告をしてくるという事ぐらいだから何かあったのだろうと推測し、そう思ってフォルベルク研究長に聞く。

 

「はい。まだ一人目ですが、今回は成功する可能性が高いかと」

『なるほど。だが、今度からそういう事は成功してから報告しろ』

「すみません。少しテンションが上がってまして。何度も失敗して初めて成功しそうな可能性が出来ましたから」

『まぁ、それは分からなくはない。とりあえず、成功したらまた報告を頼む』

「了解し――」

 

 フォルベルクが『了解しました』と言おうとしたのだが、最後まで言えなかった。

 理由はこの通信室にあった電話が鳴り始めたのだ。

 研究内に連絡するためにあるものであり、何か連絡があるときに電話が鳴るものだった

 

「すみません。もう一件話しがあったのですが、少し待ってください」

『分かった。それと、電話の内容は私にも聞こえるようにしてくれないか? 少し胸騒ぎがしているのでな』

「は、はあ。別にかまいませんが」

 

 フォルベルクは画面に映ってるリュベルに声が聞こえるようにし、受話器を手に取るのだった。

 

「一体どうしたんだ?」

『ふぉ、フォルベルク研究長!! 少し異変が起こりまして』

「異変?」

 

 電話してきたのは、先ほどフォルベルクが実験を任せた研究員であり、少し慌てている様な感じだった。

 フォルベルクとその電話の内容を聞いていたリュベルは研究員の言葉を聞いて眉を細めていた。

 

『はい、フォルベルク研究長が出て行った後、すぐに二つ波がずっと重なるようになりまして』

「別に異変ではないのでは? 逆に同調しているという事だろ? それの何が問題なのか?」

 

 どこにも問題ないし、研究員の言葉を聞いている限り、成功に近づいているようにしか思えなかった。それは電話を聞いていたリュベルもフォルベルクと同じ事を思うのだった。

 けど、研究員の言葉は何故か少し慌ただしく感じ、次の言葉を聞くまで何故慌ただしいのか分からなかった。

 

『それが……先ほどよりも波の速さがかなり早いんです。波は重なっているのですが』

「……早いだと?」

 

 フォルベルクは耳を疑うかのように聞き返していた。

 研究員から聞いた言葉が本当なら大変な事ではないかという言い草であった。

 

『ええ、私は一年前からこちらに来ましたが、これは一体どういう事――』

「今すぐ作業を中止しろ!! 早く止めないと大変な事になる!!」

『は、はい!』

 

 研究員はフォルベルクの怒鳴り声に驚き、少し怯えるような返事で返した。

 フォルベルクは研究員の話を聞いて、焦っていた。前にも二度も同じことがあったからだ。

 一度目はこの実験が始まって数日した時だった。その時は二つの波が重なったりという事はなかったのだが、その時ポットに入っていた人間のリンカーコアの波が突然早くなったのだ。

 そしてそれが起こって数分後、ポットに入っていたその人間は暴走を始め、暴れ始めたのだ。すぐに対応して毒ガスで殺して事なきを得たのだが、その後ももう一度発生したのだ。

 原因は未だに分からないのだが、今回も同じことが起こっていたのだ。

 けどフォルベルクは今回に限っては一つだけ違っていることに気づいた。何故かSSランクの人間のリンカーコアのデータである筈なのに、データまでもがポットに入っている人間のリンカーコアの波と同じ速さのスピードで波が動いていたのだ。

 今回に限っては何が起こるか分からない。だからこそ、一度停止させた方が良いと思ったのだ。

 しかし、

 

『だ、駄目です!! 何故か停止しません!!』

「な、なんだと!? 一体どういう事だ!!」

 

 予想外の事態だった。この現象が起こった二回目の時は停止できたので、今回も停止出来ると思っていたのだが、今回はそれすらもできなかったのだ。

 だからフォルベルクもその事態に慌てており、研究員にどういう事なのか聞いたのだ。

 

『それが、何故かハッキングされているようなのです!!』

「ハッキングだと!? ハッキングしたときは侵入者がすぐ分かるようにしてある筈だ!!」

『はい、その通りの筈です。けど、先ほど確認したのですが、外から侵入した形跡がないのです!!』

「……なんだと」

 

 この研究所はハッキングされた状態ですぐにハッキングした人間を探り当てるように機能されており、絶対にハッキングできないようにされているのだ。

 けど、そんな形跡はないというのだ。それはどういう事を指すのか。

 一番考えられるのは内部からのハッキングだ。しかしそれをする理由はこの場所に居る人間に利害はない。そんな事をした時点で犯人だとすぐにばれて殺されるだけだからだ。スパイが侵入してハッキングをしたと考えられるかもしれないが、この場所に侵入している時点でそんな事をする意味がないし、自殺行為に等しい。だから内部からのハッキングはありえないのだ。

 結局何故ハッキングしたか分からない状態であるが、フォルベルクは冷静に考えてるのだった。

 

 ――外からのハッキングされた感じではないし、内部からというのはありえない。それに、波が早くなってからハッキングされたというのは……偶然なのか? いや、もしかすると……

 

『フォルベルク研究長、一体どうすれば良いですか? まだ私はここにきて一年しか経っていないので、こういう事態には慣れてないのですが』

「とりあえず、暴走した時の為に毒ガスを出す準備をしておけ。私もすぐにそっちに戻る」

『了解』

 

 研究員がそう言うと、通話が切れてフォルベルクも受話器を電話に戻した。

 そして画面の方に顔を戻し、リュベルと話し始める。

 

「すみません、緊急事態が起こってしまって」

『まぁ、仕方ないだろ。とりあえず終止符が着いたら一度連絡を頼む』

「分かりました。それでは私は少し急ぎますので」

 

 フォルベルクは画面を切り、急いで通信室から出て先ほどいた部屋に戻るのだった。


 
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