No.459163

とある科学の自由選択《Freedom Selects》 第 五 話 虚々実々の大計画

第五話

2012-07-25 17:22:11 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1564   閲覧ユーザー数:1485

 

 

第 五 話 虚々実々の大計画

 

神命 選が時計を見たとき既に針は8時を回っていた。

 

ここは長点上機学園の学生寮。昨日、彼は学園都市中を歩き回り、二度も不良に絡まれてそれを返り討ちにした挙句、何故か襲ってきた空間移動能力者と学園都市第三位の少女二人を相手取って、またもこれを返り討ちにしてかなり疲労した後ようやくこの学生寮にたどり着いたのだ。

 

何故かその時誰かいたような気がするが帰ってからすぐに寝てしまったためよく覚えていない。いたとしても今は8時20分、普通ならば学校はそろそろホームルームを始める頃であるから既に彼女はこの部屋にはいないだろう。

 

しかし今、彼はこんな事を気にかけている暇はない。これから彼は彼自身の名声を上げる為ある計画を実行に移さなければならないからだ。

 

現在、彼はある目的の為に学園都市暗部に関する様々な情報を必要としており、まずはその情報の収集から始めようと彼は考えている。

 

そしてその方法なのだが、学園都市には「書庫(バンク)」と呼ばれる総合データベースが存在し、その内容にはこの都市の学生ほぼ全ての個人情報や暗部組織などに関する様々な情報が記録されてある。しかし、神命にはその情報を見る権限や、ハッキングすることが出来る能力はない。ならば何処から情報を入手するか。学園都市には、表向きは全うに運営されている様に見えて、裏では公にすることの出来ないような非人道的な実験を行うと言う実験施設が数多く存在する。そしてそこには書庫にすら存在しない裏の情報が存在する。

 

つまりどうやって情報を入手するかと言うと、そういった研究所に片っ端から侵入しそこにある情報を頂くのである。また彼の能力は隠密行動に特化しており、その計画を実行に移すには十分すぎると言っても過言ではない。

 

後はそこらで不良に襲われている一般人を助けたりや、能力者による無能力者狩りを妨害するなどして地道にポイントを稼ぐとしよう。

 

そんな訳で神命は、外出する準備を始める。服は昨日着たまま寝てしまって今もそれを着たままだ。やろうと思えば能力で身体や服についた汚れを拒絶できそれでお仕舞いだが、気分的にそれはよくない為着替えを始める。着替え終わると彼は自身の能力の弱点を補うための道具を二つ用意する。

 

彼の能力名は自由選択(フリーダムセレクト)であり指定したものをすり抜けたり、引き寄せる、一定範囲内でその物体を操るなどがあるが、やはり欠点と言うものがある。

 

まず一つ目に遠距離の攻撃が出来ないことだ。彼は遠くにある物体を引き寄せることが出来るが、その範囲は彼を中心として半径が約32m程の球の内部である。だが、引き寄せた物体を操ることが出来る範囲は彼を中心としてわずか7m程にまでに限定されてしまう。その為いくら大量の水を操ろうが、周りの光を圧縮してそれを放とうがその範囲を抜けると能力の効力を失われ攻撃力は激減してしまう。そのため彼は、いつもハンドガンを持ち歩いている。しかし、ほとんど使わずに済んでしまうし、弾丸も消耗品である為使用する場面は滅多にない。

 

二つ目に挙げられるのが、呼吸である。彼は指定したあらゆるものをすり抜けることが出来るが、当然のことながらその中に空気はない。その為、分厚い壁を抜けるときや地中、水中での呼吸は不可能となる。よって彼はいつも酸素ボンベを所持している。酸素ボンベと言ってもよくダイバーが背中に背負っているような巨大なものではなく、ペットボトル大のものに液体酸素が入っており呼吸する都度に気体へ戻して使うものだ。これ一本で、約30分の呼吸が可能であり普段彼はこれを二本持ち歩く。

 

そんな物の準備も済ませた神命は、早速寮を出て町へ繰り出す。途中でコンビニに立ち寄り今日の昼食を手に入れると、それを食べる為の場所を探す。

 

数分後、なかなかいい場所が見つからずに歩き回っていると幸か不幸か路地裏から悲鳴が聞こえてきた。恐らく不良が一般人相手にカツアゲでもしているのだろう。

 

(おいおい、いくら何でも不良多すぎじゃね?こんなに不良ばかり出てたら読者に飽きられるぞ……)

 

そんな神命の心の声も知らず5,6人の不良のものと思われる声が聞こえてくる。

 

(仕方ない、助けに行くか……)

 

そう思って彼は面倒くさそうに路地へ足を向ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、財布も手に入れたし何かお財布ケータイなんかも手に入っちゃったよ。最近の携帯って便利だよなぁ。番号さえ聞き出しちゃえば限度額なんか知ったこっちゃねぇしな」

 

そう言われながら路地に座り込んでいる学生はそこらの建物の外に設置されているパイプに手を縛り付けられている。そこへまぁタイミングよく神命が現われる訳だ。

 

「おいおい6人で一人を襲うとか近頃の不良はめっきり臆病になったもんだなあ」

 

「あ?なんだてめぇ、文句あんのか。お前一人で俺らに敵うってのグルボァ!?」

 

「あ〜はいはい、そんなのはもう聞き飽きたから簡単に済ませちゃいますので適当に掛かって来てくださ〜い」

 

やる気の全くない声で適当にあしらう神命。

 

数分後6人全員を倒しきり、まぁこんなもんかと思って不良がもっていた財布や携帯などを縛られていた学生に返す。そして学生がお礼を言って帰って行き自分も帰ろうとしたその時だった。

 

「ふっ。やはり雑魚どもではこの程度が限界か」

 

暗闇の中から新たな気配。ザリッザリッという足音。そして近づいてくるこの町が生み出したモンスター。もう見るからにお前外国人用兵部隊として3ヶ国以上渡り歩いてきただろと突っ込みたくなるような巨漢むきむき人間兵器が、その姿を露にする。

 

「俺は内臓潰しの横須賀。あいつらを可愛がってくれたようだな」

 

とこれまたそんなに偉そうならこんなところでカツアゲなんかやってないで、俺の知らないどこかで世界を根底から覆すような計画でも練っていなさいよと突っ込みたくなる神命。

 

だがしかし、まずい所へ首を突っ込んでしまったようだな。ここは後悔の通じない場所。対能力者のエキスパート、この内臓潰しの横須賀サマの前に立っちまった以上、貴様はここで」

 

「あの〜すいません。モツ鍋の何さんですって?」

 

「おーい、ちょっと待て。人の話は最後まで聞けって。って言うか全然違うし!俺サマの名前は内臓潰しの横須賀だって言ってるじゃん。だから、あの、何だ。どこまで話したっけ?そうそう、こほん。内臓潰しの横須賀サマの前に立っちまった以上、貴様はここでブギュルワ!?」

 

突然神命の周辺か発生した空気の塊がモツ鍋ナントカ横須賀さんの身体に直撃し壁に叩きつけられる。

 

「……ちょ、げぶっ。何でいきなり?人の話は最後まで聞けって言ってるじゃん。なのに何でそう途中で邪魔をしてビブルチ!?」

 

モツ鍋さんが何か言ってるけどそんなことは気にしないで神命は馬乗りにって追撃を入れていく。それはもう、がすがすと……。

 

「ちょ、待って、グボォ……ちょっとだけでも良いから話を聞いて、ひでぶっ……あ、謝るから、ぶべらっ……」

 

「ああ、すいません。ちょっといらいらしててついやりすぎちゃいました」

 

そう彼が言ったときにはモツ鍋さんはぴくぴくと小刻みに震えているだけだった。

 

よしっと一言だけ言って満足した彼が立ち去ろうとした瞬間唐突に後ろから大きな声が響いた。

 

 

 

「根性ってモンが足りてねえな、兄ちゃん。そんなんじゃ誰も満足しねえぞ」

 

 

 

 

 

 


 
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