第40話~修行開始!~
温泉に入った翌日。俺達は皆ジャージに着替えて本邸の広い庭に集合していた。
「先に言っておく。いまから俺が言うものは将来を見据えてのトレーニングメニュー
だ。すぐに効果が現れる奴もいるが、長期的に見なければいけない者もいる。
さて、まずはリアスからだ」
最初に呼んだのは部長だった。
「おまえは最初から才能、身体能力、魔力において高スペックな悪魔だ。大人に
なる頃には最上級悪魔の候補になっているだろう。だが、将来よりいま強く
なりたい、それがお前の望みだな?」
「ええ。もう二度と負けたくないもの」
「なら、この紙に記されてあるトレーニング通り、決戦日直前までこなせ」
アザゼルからもらった部長は首をかしげた。
「問題は『王(キング)』としての素質だ。期限までおまえはレーティングゲームを
知れ。『王』に必要なのは、どんな状況にも打破できる機転、そして判断力だ。
眷属の下僕悪魔が最大限に力を発揮できるようにするのもお前の仕事だ」
説得力があるな。やっぱりに総督として堕天使をまとめているからか?
「次に朱乃」
「……はい」
「お前は自分に流れる血を受け入れろ」
「――――っ!」
…血? 朱乃さんも人間と何かのハーフなのか?
「フェニックス家との一戦の映像記録を見せてもらったぜ。――何故、堕天使の力
を使わなかった? 光を雷に乗せ、『雷光』にしなければお前の本当の力は発揮
できない」
朱乃さんは堕天使とのハーフだったのか。初めて知った
「……私は、あのような力を使わなくても」
朱乃さんは複雑極まりない表情をしていた。やっぱり朱乃さんにも祐斗見たいな
辛い過去があるのだろうな。
「否定するな。辛くとも苦しくとも自分をすべて受け入れろ。じゃなければ、
今後の戦闘で邪魔になる。『雷の巫女』から『雷光の巫女』になってみせろよ」
「………」
アザゼルの言葉に返事はなかった。
「次は木場だ」
「はい」
「まずは禁手の状態で一日保たせてみせろ。それに慣れたら、実戦形式で一日保たせる。
状態維持を一日でも長くできるようさせていくのがお前の目的だ。後は基本をやって
おけば充分に強くなるさ」
俺は禁手は軽く一週間は保つ。毎日禁手(バランス・ブレイカー)状態だったからな。
「剣術の方は……お前の師匠にもう一度習うんだよな?」
「ええ、一から指導してもらう予定です」
それは昨日話したことだ。祐斗の師匠という事は、やはり強いのかな?
「ゼノヴィアはデュランダルを今以上に使いこなす事と、もう一本の聖剣に慣れて
もらうことにある」
「もう一本の聖剣?」
ゼノヴィアはアザゼルの言葉に首を傾げる。
「ああ、ちょいと特別な剣だ」
にやけるアザゼルだが、すぐに笑みをとめてギャスパーに視線を向ける。
「お前には専用の『引きこもり脱出計画!!』なるプログラムを組んだから、そこで
真っ当な心構えをできるだけを身につけてこい。全部が無理でもせめて人前では
動きが鈍らないようにしろ」
『引きこもり脱出計画』という奴がとても気になるんだが…まぁなんとかなるだろ。
「は、はいぃぃぃぃ!! 当たって砕けろの精神でやってみますぅぅぅぅぅ!!」
…ギャスパー。本当に当たって砕けそうだよ
「同じく『僧侶』のアーシア」
「は、はい!」
「お前も基本的なメニューで体力と魔力の向上。メインは神器の強化だ」
「アザゼル。『聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)』は回復範囲を広げること
ができるのか?」
俺の言葉にアザゼルは頷いた。
「クリスの言う通りだ。といっても裏技だが、回復のオーラを発して周囲にいる味方
を回復できるんだ。だが問題は敵味方関係なく回復させるって事だ。だから、
もう一つの可能性を見出す――回復のオーラを飛ばす力だ」
「そ、それは、離れている人に私の回復の力を飛ばす事ですか?」
「そうだ。さっき説明したのは一定のフィールドで、これは飛び道具みたいなものだな」
「そ、そりゃすげぇ! やったな! これでアーシアも大活躍できるぞ!」
アーシアと一誠はとても喜んでいた。
「次は小猫」
「……はい」
ん? 今日の小猫は妙に張り切っているな。最近、元気がなかったからな。心配して
いたんだんだが…
「お前も朱乃と同じだ。自分を受け入れなければ大きな成長なんて出来やしない」
「………」
小猫の気合も一気に消失してしまった。小猫の力っていったい…
「次はクリスだ」
俺か…何の修行かな?
「HSSの強化の為、まずは身体能力を高める。これは一誠から聞いたことだが、
お前には見たものをすぐに覚える特技があるそうだな」
「あるけど…それと何の関係だ?」
「その特技でいろんな奴の力を盗め。お前が出せる神器は―――」
「俺が今出せる神器は『赤龍帝の籠手』『白龍皇の光翼』『魔剣創造』『黒い龍脈』
『聖母の微笑み』『停止世界の邪眼』。能力は部長の『消滅』堕天使の『光』
ぐらい…って、どうしたんだ? そんな顔して」
皆は目を大きく見開いて、驚いていた。
「…多分、アザゼルを抜いての皆で向かっていってもクリスには勝てないかもね」
祐斗の言葉に俺を除く皆が頷いていた。
「ク、クリスには後でグリゴリに来てもらう。あっちにはいろんな神器の資料が
あるからな。中には神滅具(ロンギヌス)もある。ほかの神器の扱い方も教える」
「………」
これ以上大丈夫なのか?
『この神器は無制限に創造できるもの。どんな強力な神器でも創れるわ』
エリスがそう言っているのなら大丈夫だな
「で、最後にイッセーだ。お前は…ちょっと待っていろ。そろそろ何だが…」
空を見上げると、デカイ生物がこっちに向かってくる。……ドラゴン?
ドオオオオオオオオオオオオオオオオンッッ!!
土煙を巻き上げながら着地したのは体長十五mはあるドラゴンだった。
「アザゼル。よくもまぁ堂々と悪魔の領土に入ってこれたもんだ」
「ちゃんと魔王の許可をもらって入国したぜ? 文句でもあるのか、タンニーン」
「ふん。まあいい。サーゼクスの頼みだというから来てやっただけだ。その辺を
わすれるなよ? 堕天使の総督殿」
「ヘイヘイ―――てなわけで、イッセー。こいつがお前の先生だ」
このドラゴン――タンニーンが一誠の先生か。一誠、死んだな。
「やはり、ドラゴンの修行と言えば―――」
「元来から実戦方式。なるほど、俺にこの小僧をいじめぬけと」
一誠の顔を見てみると、とても泣きそうな表情をしていた。
「ドライグを宿す者を鍛えるのは初めてだ」
タンニーンは目を細めながら楽しそうに言う。兵藤一誠 享年17歳、か。
「一誠。死んだら、骨を拾って線香をあげにくるからよ」
「そんな物騒な事言わないでくれ! 現実になりそうで怖いんだよ!」
「期間は人間界の時間で二十日間ほど。それまでに禁手(バランス・ブレイカー)に至らせたい。
イッセー、死なない程度に気張れや。いくぞ、クリス」
「わかった。じゃあな、一誠。お互い、死んでなかったらまた会おう」
俺は皆に別れを告げて、アザゼルについていった。
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神様の悪戯で、死んでしまった俺―――神矢クリスはハイスクールD×Dの世界に転生した。原作の主人公、兵藤一誠らに会っていろんな事に巻き込まれる。