No.458561

楽しく逝こうゼ?

piguzam]さん

第19話~これが俺の全力全壊ッ!!

今回で闇の書バトル終了。

結構たくさん書きましたのでコメント頂けると嬉しいですッ!!

2012-07-24 14:28:50 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:19618   閲覧ユーザー数:16929

「あ~、もうわけわかんないッ!!せっかくの楽しいクリスマスイヴにどーゆう事態なのッ!?

 夢なら覚めてッ!!一刻も早く覚めてよーーッ!!」

 

いきなりのトンデモ事態にさっきまでの不満が爆発したアリサが吼えだす。

 

「ア、アリサちゃん…落ち着いてッ!?」

 

そのアリサを後ろから羽交い絞めにして宥めるすずか。

あんた等仲いいねホント。

この状況でもそんだけ騒げるってある意味大物だよ。

 

闇の書の攻撃を防いだ際の負傷で前線から外された俺は一般人のアリサとすずかと一緒に海鳴の町から外れた海沿いの道路に転送された。

外傷はユーノの治癒魔法で大分回復したので問題はない。後は中身だけだ。

喚くアリサをすずかに任せて俺は道路に座り込んで体に波紋を流し回復を図ることにした。

 

「やっこらせっと…コォォォォォォ……」

 

目を瞑り、呼吸を整えると俺の体から青緑(ターコイズブルー)の波紋が湧き上がって腕を中心に光が漂う。

その光に包まれて腕の治療が促進されていく。

 

「ち、ちょっと、禅ッ!!アンタ体から、青い光みたいなのが出てるけど大丈夫なのッ!?」

 

しかし、横合いからアリサの戸惑う声が聞こえたので目を開けるとアリサもすずかもちょっと引いてた。

まぁ、ついさっき日常からブッ飛びまくった体験をしたばかりだもんな。

俺の波紋が怖くても仕方ねえとは思う。人間てのは未知のものに恐怖を抱くってどっかのお偉いさんが言ってた気がせんでもない。

メラどうでもいいけどな。

 

「あ~…大丈夫だぞ?…簡単にいや、この光は俺の力だ。害はな~んにもねえぜ?」

 

俺自身が放っていると教えてやると二人の表情から恐怖は消えていったが…アリサは目じりを吊り上げて俺を見てくる。

相も変わらず、勝気な表情が似合うこって。

 

「それで?アンタのその光?もそうだけどさっきのはなんなのよッ!?急に人がいなくなっちゃったと思ったら

 なのはとフェイトが変わった格好で現れるし…フェイトがドームみたいなので私たちを覆ったと思ったらなんか凄い力が襲って来るし

 赤い変なのが飛んできて、弾かれたと思ったら今度はアンタの腕が急にボロボロになっていくし…」

 

さっきのことを思い返しながら、アリサは次々と疑問を口にしてる。

よく一息でそこまで喋れるな。

まぁ、普通の人間には『クレイジーダイヤモンド』は視えないからな。

アリサとすずかには何の前触れもなしに俺の腕がボロ雑巾になっていく様にしか見えなかっただろうよ。

 

「まぁ、フェイト達の口ぶりじゃアンタがそんなになるまでなんか馬鹿なことしたんでしょうけど」

 

ひでえ、ひどすぎるっすよ。アリサさん。

俺がアリサの辛酸すぎる言葉に項垂れているとすずかがにっこりと笑いながら喋りだす。

 

「フフッ…私もそうだけど、アリサちゃんもあの時、禅君のこと凄く心配してたんだよ?」

 

え?マジすか?

 

「ちょ、ちょっとすずかッ!?」

 

すずかの発した言葉にアリサが顔を真っ赤にして慌てだす。

俺のまじで?みたいな視線を受けるとなんか「うっ」って顔になってるし

暫くそうしてアリサを見ているとなんかそっぽを向いて捲くし立ててくる。

 

「ま、まぁ、結果的には私たちを助けてくれたみたいだし、それで心配しないのも人として最悪でしょ?

 だからそ、その……ほんのちょっとだけ、心配したし、感謝もしてるわよ…か、勘違いしないでよッ!?

 ほ、ほほんのチョットだけなんだからねッ!?///」

 

1ツンデレ頂きました。ありがとうございます。

 

やっべえ。アリサが面白いんですけど。

でも、ここでからかったら間違いなく死亡フラグ立つよな。まぁ、からかうのは今度にしますか。

ここは素直にお礼をいっておきましょ。

 

「おう!!二人とも心配してくれてありがとうな!!」

 

「うん♪どういたしまして♪」

 

「…フンッ!!」

 

すずかはにっこりと笑って、アリサはそっぽを向いたまま返事をしてくれた。

 

このままいけばO☆HA☆NA☆SI☆はうやむやにできんじゃね?

 

「それで、さっきの質問なんだけどよ…」

 

真面目な表情になった俺の言葉に二人の顔が引き締まっていく。

 

「この面倒ごとが終わってからじゃ駄目か?俺のことはよくても…正直、なのは達のことは本人と話し合ったほうがいいと思うんだけどよ…」

 

俺が勝手に話してもいい事じゃねえし、下手すりゃこの二人をコッチの面倒ごとに巻き込みかねないからな。

第一、俺は魔導師じゃねえし(笑)

 

「だから、全部片付いたら俺のことも一緒に話すからよ…ちょっとだけまっといちゃくれね?」

 

アリサはちょっとだけ納得のいかない表情をしてる。

 

「……わかったよ、そのかわり後でちゃんと話してね?」

 

すずかは納得してくれたようで、ちゃんと話すことを約束された。

 

「……もう、しょうがないわね…」

 

アリサも渋々ではあるが納得してくれたので俺は引き続き、波紋で腕の治療に専念する。

そうして、治療を続けていると、向こうは戦場を海に移動したようで、海のほうから砲撃や誘導弾の光がたくさん見える。

あの場に加われないことに歯噛みしつつも俺は治療を続けるしかない。

 

正直、今のままじゃあいつ等の邪魔にしかならねえからな。

 

そのまま治療を続けること数十分、戦場に動きがあった。

 

桃色の馬鹿デカイ光の筋がナニカを打ち砕いて、金色の斬撃が天を割った。

どうみてもなのはさんとフェイトさんです。本当にありがとうございます。

 

つうか、あの二人、OVERKILLって言葉を知らんのかね?まさかのデフォなのか?

どう考えても人にぶち込むもんじゃねえって、アレ。

 

二人の攻撃の光が止むと、海に黒いドーム状の変なもんが出現してきた。

周りにはグネグネと動く触手もある。

うわ~、なんかすげえモン出てきちゃったんですけど?

 

さすがにここまで事態が進むと、じっとしているわけにもいかず俺は『クレイジーダイヤモンド』を喚びだす。

現れた『クレイジーダイヤモンド』は俺の上で目元に右手を水平にかざして視力を拡大する。

それで海を見るとなのは達の前に一本の光の柱が立っていた。

その光が収まると現れたのは白色に輝く魔法陣の四隅に立った守護騎士の姿だ。

四隅に立った彼らは口元が動いているので何か喋ってるようだった。

 

そして、魔法陣の中心にはやてが現れた。姿は元に戻っているが纏っている服と髪の色が違う。

多分、アレがはやてのバリアジャケットなんだろう。

なぜ、はやてが元に戻ったのか、守護騎士たちが戻ったのかはわかんねえけど、なのは達がなにかやったんだろうな。

となれば、だ。

あの海にできた黒いドームみてえなのがラスボスなんだろう。

禍々しいにも程があるっての。

さあて、俺も腕が完治したことだし、向かいますか。

俺は立ち上がって屈伸をしていると、すずかとアリサが心配そうな顔で見てくる。

 

「…行くのね?」

 

「あぁ、腕も治ったことだしな。まだあいつ等が頑張ってんだから俺も行かねえと」

 

何でもないように言う俺だが、二人とも心配な顔が戻らない。

 

「…ちゃんと、戻ってきてね?」

 

すずかもかなり心配してくれてるようで俺にかける言葉は少々、震えてる。

俺は二人を安心させるつもりで笑いかける。

 

「へへっ!!心配ありがとうよ…でも大丈夫だって、かるーく捻ってくっからよ」

 

「…うん、でも気をつけてね?」

 

心配性だねえすずかちゃんは?

 

「…戻ってきたら、ちゃんと全部話しなさいよッ!!」

 

アリサさんや?

こんなときぐらい俺の身を案じてくれてもよございません?

 

「へいへい…んじゃ、行ってくらぁ」

 

気を引き締めて、俺は道路のガードレールに脚をかけて準備をする。

こっからなら海を走ったほうが速いな…トランプも消費せずに済むし……

俺がこれからの行動プランを練っていると……

 

「……禅ッ!!」

 

後ろから大きな声で名前を呼ばれた。

振り返ると、腕を組んで仁王立ちしてるアリサが俺を睨んでる。

 

……なんぞ?

 

「……ち、ちゃんと帰ってこなかったら承知しないわよッ!!?///」

 

アリサは恥かしいのか、そっぽを向いて言ってくる。

すずかはその横でニコニコしてる。

……いや…なんつうか……

 

「……アリサ」

 

「……な、何よ?///」

 

未だに顔は明後日の方向を見てるが目だけはチラチラと俺を見てくる。

そんなアリサに俺は笑顔でサムズアップを送って……

 

「NICE☆TU☆N☆DE☆RE☆」

 

 

自爆ボタンをブン殴って押した。

 

「さっさと逝ってこーーーーーーいッ!!!///」

 

ブチ切れたアリサ様に俺はドロップキックで道路から蹴落とされた。

真っ赤に染まった顔がディーモルト(非常に)可愛いぜ。ゴチです。

つうか字が違くない?

 

「あぁぁりがとござぁぁいまあぁぁぁぁぁあすぅぅぅうッ!!?」

 

道路から落ちた俺は崖の壁面を『クレイジーダイヤモンド』で蹴飛ばして海面へスッ飛んで行く。

そして、海面に波紋を流して着地、また『クレイジーダイヤモンド』で飛ぶ。

これを繰り返してるとまるでトビウオみたいだな。

 

 

タチバナ・ゼン、逝っきまーーすッ!!

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

騎士達は紡ぐ、誓いの言葉を

「我ら、夜天の主の元に集いし騎士」

ピンクの髪をポニーテールにした烈火の騎士・シグナムが言う

「主ある限り、我らの魂尽きる事なし」

黄色のショートカットの髪をした湖の騎士・シャマルが言う

「この身に命ある限り、我らは御身の元にあり」

犬耳の生えた白い髪をした騎士であり守護獣でもある男・ザフィーラが言う

「我らが主、夜天の王、八神はやての名の元に」

オレンジの髪を2つの三編みに束ねた鉄槌の騎士・ヴィータが言う

その言葉が終わるとはやてが甲冑姿で現れその姿を見て三編み騎士―――ヴィータ―――は目を潤ませる。

そして騎士達が口々にはやてに何か言おうとするが言葉に出来なかった。

その姿を見てはやては全て分かってると告げるとヴィータは我慢出来ずにはやてに抱きついた。

はやてはヴィータを抱きつつなのはとフェイトに声を掛ける

「なのはちゃんもフェイトちゃんもごめんな、ウチの子達が色々迷惑掛けてもうて」

「ううん」

「平気」

3人が話をしていると上からクロノとプレシアが降りてきた。

 

「お母さんッ!!」

 

「フェイトッ!!遅れて御免なさいね?」

 

二人は抱き合って幸せそうにしてるがクロノの咳払いで我に返ると慌てて姿勢を正す。

「すまないな、水を差してしまうんだが時空管理局執務官クロノ・ハラオウンだ。時間がないんで簡潔に説明する。

 あそこの黒い淀み、闇の書の防衛プログラムは後、数分で暴走を開始する。僕らはそれを何らかの方法で止めないといけない」

 

クロノの暴走という言葉にその場にいる皆が表情を引き締めた。

空気が緊張して張り詰めるなか、クロノが話を再開しようとして………

 

「ヒャッハァーーーーーーーーッ!!三河屋でーーーーーーーすッ!!」

 

奇声を発しながら海面から飛び上がって現れた親友に言葉を遮られた。

 

(…あぁ、そうさ…世界はいつだってこんなはずじゃないことばかりだ…)

 

シリアスな雰囲気が一瞬でブチ壊される中、クロノはいつも思ってることを再認識して、溜息をつく。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

トビウオみたいに海を跳ねまくってなんとか着いたんだが、クロノとプレシアさんも到着してた。

皆で固まって難しい顔をしながら話をしてたのでちょいと雰囲気を和らげるつもりでやったんだが……

 

『『『………』』』

 

皆固まってますね。はい。

 

「「ゼンッ!!」」

 

と、思ったらフェイトとアルフは固まってなかったぜ。

二人は俺を見つめながら駆け寄ってくる。

 

「アンタ、怪我はもう大丈夫なのかいッ!?ど、どこも、痛くないッ!?」

 

アルフは俺の体のアチコチを触りながら聞いてくる。

顔が心配で心配で堪らないって感じになってんな。

 

「おう、もう大丈夫だぜ?」

 

俺はジャケットの腕を捲って腕を見せるが、どこにも傷は残ってない。

ユーノの回復魔法のおかげで外の傷は全部治ってたからな。

 

「…良かった…」

 

傷がないのを確認してフェイトも安堵したのか、笑顔を見せてくる。

いや、しかしアルフとフェイトの笑顔ってホント和みますなぁ。

マイナスイオンが出てんのかね?

 

「禅君…」

 

と、二人の笑顔で癒されていると、復活したはやてが声をかけてきた。

なんか凄い申し訳なさそうな顔をしてる。

 

「禅君もごめんな、ウチの子達が色々迷惑掛けてもうて」

 

そう言って頭を下げてくるが今となっちゃ、そこまで頭にはきてねえんだがな…

 

「いいって、いいって、俺もそこにいる…あ~」

 

俺は守護獣の男を指すが名前が出てこなくて言葉が止まった。

 

「……ザフィーラだ…」

 

すると、そんな俺を見かねてか守護獣が名前を教えてくれた。

 

「あ~OK、俺もそっちのザフィーラをこの間、ボッコボコにしちまったしよ…だからまぁ、おあいこってことで…」

 

俺がそう言うと、はやても納得して頭を上げてくれた。

 

とりあえず俺はクロノに向き直ったんだが……

溜息ついてんのは何故ェ?

 

「ハァ~…コイツの非常識さは置いといて話を進めるけど…」

 

クロノの言葉にまた全員の顔が引き締まっていく。

皆して今の発言はスルーですか?そうですか。

ふざけても誰も構ってくれねえし、ここは俺も真面目に聞いておきますか。

 

「停止のプランは現在二つある、一つ、極めて強力な氷結魔法で停止させる。

 二つ、軌道上に待機させてる艦船アースラの魔導砲、アルカンシェルで消滅させる。これ以外に他にいい手はないか?

 闇の書の主とその守護騎士の皆に聞きたい」

 

ようするにカチンコチンにしてポイかアースラからの極太砲撃で存在ごと消し飛ばすってことか。

クロノはそこまで説明すると全員を見回した。

その時シャマルが手を上げて声を発する

「えーと、最初のは多分難しいと思います…主のいない防御プログラムは魔力の塊みたいなものですから…」

 

「凍結させても、コアがある限り再生は止まらん…」

 

シャマルの言葉を引き継いで喋るシグナムも顔を俯かせる。

凍らせてもすぐに戻る。氷結は無理ってことか。

それならさっさと砲撃かませばよくねえか?ちょっとくれえ、海が荒れても必要な犠牲で済むかも……

だが、シグナムに続いてヴィータも顔の前でバッテンを作って喋りだす。

 

「アルカンシェルも絶対ダメッ!!こんなとこでアルカンシェル撃ったら、はやての家までブッ飛んじゃうじゃんかッ!!」

 

その一言に俺の頭がフリーズしかける。

ちょっと待て、ここは海の真上だぞ?はやての家は知らねえけど、街中にあるのは間違いねえ筈。

そしてその町、海鳴市は俺達の反対側にある。距離は少なくとも数十キロは離れてるんだぞ?

つうことはなんだ?……

 

 

「そ、そんなにすごいの?」

ヴィータの必死な様子でなのはがビックリしたらしくユーノに聞いた。

「発動地点を中心に百数十キロ範囲の空間を歪曲させながら反応消滅を起こさせる魔導砲…って言うと大体解る?」

「ふぇえ…」

 

完全に戦術兵器じゃねえか。百数十キロ範囲ってあんた…

つまりは辺り一帯が更地になっちまうわけですね。わかります。

 

「あの、私もそれ反対ッ!!」

 

「お、同じくッ!!ゼッタイ反対ッ!!」

 

「アウトーーッ!!そんなファッキンなモン使われてたまるかッ!!」

 

訂正ッ!!訂正ッ!!訂正ッ!!!

必要な犠牲なんてないね、うんッ!!ちゃんと全部守らなきゃいかんよッ!!

俺となのはとフェイトの必死さにクロノも苦い顔で答える。

 

「…僕も艦長も使いたくないよ…でも、あれの暴走が始まったらそれこそ…被害はアルカンシェルの比じゃない…」

 

いや、だからって町一つ消されても…ねえ?

 

「暴走が始まると、止まることなく無限に広がっていくから…」

 

ユーノからも暗に時間がないとせっつかれるけど、俺達だって大事な家族がいるんだからどうあっても納得できねえよ。

 

…一回、情報を整理してみようジャマイカ。

俺達は顔を突き合わせて情報を確認する。

 

 

「…まずコッチにはアレを消滅させるだけの切り札(ジョーカー)はあるけど場所的に撃てねえ…」

 

まず一つ目にアルカンシェルを遠慮なくブチかませる場所(ステージ)じゃない。

ジョーカーは大富豪とかのゲームじゃ最強だが、ババ抜きじゃ最弱、今のアルカンシェルは後者の立ち位置だ。

手札にあっても意味がない。それどころか、下手すりゃ町ごと消し飛ばすことになる最悪の持ち札だ。

 

「そして残された時間は二十分弱、この間に決定して退避しないと僕達も巻き込まれる…」

 

クロノの言うとおりだ。

二つ目に、速いとこアルカンシェルを使うか、別の手を考えないと俺達の命もOUT。

奴と一緒にアルカンシェルに巻き込まれて露と消えちまうか、奴の暴走に巻き込まれてピチュン、ってわけだ。

 

「理想的な結論は…」

 

ユーノも苦い顔で最後を引き継ぐ。

 

「暴走が始まるまでに防衛プログラムをアルカンシェルで遠慮なく消滅させることのできる場所へ移す…か…」

 

「…マジに魔法だな…そんな奇跡の一手があればよ…」

 

他にアルカンシェルをブッ放てる場所なんざ、地球にはどこ探しても無い。

どこで撃ってもお祭り騒ぎになるのは明白だ。

仮にそんなとこがあって、そこまで奴を移動させたとしても直ぐに結界を張り直したりするのは不可能。

本気で打つ手無しだ。

 

「…どぉしろってんだよ、畜生め…」

 

どぉしよぉもない現状に嘆いていても時間は止まらない

アースラから全体通信が入り、エイミィさんの切迫した声が響く。

「はい、みんな!暴走臨界点まであと15分切ったよ!会議の結論はお早めにッ!!」

 

クロノは藁にも縋る思いで、シグナム達に声をかける。

 

「…何か手はないか?なんでもいい…」

 

だが、シグナム達の表情は曇ってる。

 

「…すまない…あまり役に立てそうにない…」

 

「…暴走に立ち会った経験が我らには殆どないのだ…」

 

ザフィーラの話じゃ、闇の書が完成すると、自分達の意識が落ちるらしい。

まぁ、それじゃ今のことへの対処法なんざわかんねえのも無理はねえ。

 

迫る時間と八方塞な状況に俺達の心が焦りだす。

なんとかしてヤロウを海鳴から、閉めださねえと親父とお袋や街の皆が………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~、なんかごちゃごちゃ鬱陶しいな!『ズバッと』みんなで『ブッ飛ばしちゃう』わけにはいかないの!?」

 

『ズバッと』『ブッ飛ばす』

アルフの癇癪を起こした一言の中の二つのキーワードが俺に天啓をもたらした。

「ア、アルフ、これはそんな単純な話じゃ・・・」

「「「「それだッ!!(よ)(なの)」」」」

 

『ッ!?』

 

俺となのは、フェイト、はやての大声がいきなり響いて皆が驚くがそんなことどうでも良くなるぐらいのアイディアが浮かんだぜッ!!

 

「アルフッ!!」

 

俺がアルフに大声で喋りかけるとアルフは驚いたのか、ビクッと体を震わせる。

 

「な、何ッ!?ひ、ひょっとしてアタシ…マズイこと…言っちゃったか…い?」ウルウルウル

 

自分の言葉がまずいと思ったのか、若干震えた声で俺に聞いてくる。

さっきまで胡坐をかいてたのに、今は俺を上目遣いに覗き込んでる体勢だ。

 

マズイこと?まさかッ!!

 

「その逆だッ!!お前マジに良いこと言ったんだよッ!!お前のおかげでなんとかなるかもしれねんだぜッ!!?」ガバァッ!!

 

テンションが最高にハイになった俺は嬉しさの余り、目の前のアルフを抱きしめる。

 

「うえぇッ!?ちょ、ちょっとゼンッ!?///」

 

いきなりの俺の行動にアルフがテンパッてるがそんなことは些細なことだッ!!

そのままアルフの頭を感情が赴くままに撫でまくる。

アルフは視線が恥ずかしいのか俺の腕の中で真っ赤になって縮こまってしまった。

 

「み、みんな見てるのにイキナリ抱きしめるなんて…は、恥ずかしいよぉ///」

 

さっきまでとのギャップが凄い。活発なアルフがなりを潜めて、しおらしいアルフが出てきた。

皆も普段とのアルフのギャップに目が点になってる。特にザフィーラの目は信じられないって感じだ。

 

確かにこのギャップの激しさがもたらす落差にはビビるだろう。

 

だが、それがいい。

 

それが、その可愛い仕草が俺の心を擽ってくる。

 

「あ~、もうッ!!お前ってばホンットに『可愛い女』だなぁ、おいッ!!」ギュウゥッゥゥゥウッ!!

 

俺は力を入れて更にアルフを抱きしめる。

 

「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!!!?/////」ボオォッーーーー!!

 

俺の何気ない一言にアルフは顔から蒸気を噴出しながら声にならない叫びを上げる。

アルフってこっちから攻めると弱いのね。

この前とはまるで攻守が逆転ってな。

 

俺は普段と違うアルフを見てポカンとしてたフェイトが慌てて俺達を引き剥がすまでアルフをたっぷり愛でていた、まる

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

ズバッと皆でブッ飛ばす。

 

ここじゃ洒落にならねえ被害が出るからアルカンシェルは撃てない。

それはこの地球のどこでも同じだ。

 

ならよぉ………

 

「クロノ君ッ!!アルカンシェルってどこでも撃てるのッ!?」

 

「どこでもって……例えば?」

 

クロノはまだ俺達の意図に気づいてない。

地球で撃てねえなら……

 

「今、アースラがいる場所…」

 

「軌道上…宇宙空間でッ!!」

 

ヤロウをボコボコにして弱らせて、地球から追ん出してやればいいッ!!

そう、別に転移先は地球のどこかに限らなくていい。

 

なんでこんなシンプルなことに気がつかなかったんだ俺等はッ!!

 

そして、通信機からエイミィさんの自信満々な声が響く。

 

「ふっふっふ…管理局のテクノロジーを舐めてもらっちゃあ、困りますなぁ…撃てますよぉッ!!宇宙だろうが、どこだろうがッ!!」

 

「おいッ!?ちょっとまて君ら、ま、まさかッ!?」

 

やっと俺達の意図に気づいたクロノが慌てた様子で聞いてくる。

 

「へへッ!!ヤロウが地球にいなきゃあアルカンシェルで綺麗サッパリ消し飛ばせるだろぉッ!!?」

 

宇宙なら誰にも迷惑をかけることも地球に被害が出ることも無えッ!!

これで切り札(ジョーカー)を切る手筈は整った。

後は奴をブッ飛ばすだけだッ!!

 

……か、仮に宇宙で被害があったとしてもそれは宇宙を漂ってるかもしれないカーズ様ぐらいでしょッ!!?

大丈夫だッ!!問題ないッ!!

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

クロノが現地で驚いている頃、アースラではリンディとエイミィがため息をつきながら準備をしていた。

スタッフ達もコンソールを叩く手が忙しなく動いている。

「なんともまぁ…相変わらず物凄いブッ飛んでるというか…」

「計算上では実現可能っていうのがまた怖いですね…クロノ君!こっちのスタンバイOK!暴走臨界点まで後10分!」

 

事態は最終段階に入った。

これを成功させれば闇の書の被害者達の無念を晴らすことができる。

いや、これ以上被害を、悲しむ遺族を出すわけにはいかない。

なんとしても成功させなければならない。

 

エイミィだけじゃなく、アースラのスタッフ達の顔にも自然と力が篭る。

 

だが、艦長であるリンディはというと、なにやら首を傾げている。

 

 

「…今回もそうだけど…あの娘達、いずれゼン君みたいにブッ飛んだ考え方を常にするようになるのかしら?……」

 

 

『『『『『……………(汗)』』』』』

 

リンディの何気ない、しかし嫌過ぎる一言に有り得ないと即答、断言することができないアースラスタッフ一同だった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

エイミィからの通信を受け取りクロノは全員を見渡し確認する。

全員の顔には気迫が満ちている。

「他に策がないようならこの方法で行こうと思うがいいか?」

クロノの言葉に全員頷く。

はやて達が作戦を復唱して確認していく。

 

「防衛プログラムのバリアは魔力と物理の複合四層式。まずはそれを破る!」

「バリアを抜いたら本体に向けて私達の一斉砲撃でコアを露出!」

「そしたらユーノ君達の強制転移魔法でアースラの前に転送!」

『あとはアルカンシェルで蒸発と…』

 

『うまくいけば、これがベストですねッ!!』

 

俺達地球組()アースラ組()の一大連携作戦ッ!!

まさに誰かが失敗(ヘマ)したら大コケの大博打(ギャンブル)ッ!!

 

「…実に個人の能力頼りでギャンブル性の高いプランだが…まぁ、やってみる価値はある!」

僅かでも可能性があるなら、それに賭けるしかない。

 

「へへッ!!乗るか、反るか、の大勝負ッてな!!いっちょ派手にやってやろうじゃねえかッ!!」

 

まさに一発勝負ッ!!こぉゆう判りやすいのは大好きだぜぇッ!!

 

クロノは懐から一枚のカードを出してそれを目の前に放る。

すると、カードは回転しながら光りだして、杖に変わる。

S2Uと見た目はそう変わらないが、色が違うしフェイト達みたいに元からあるデバイスをカスタムしたってわけでもなさそうだ。

柄と杖の槍のような形状の部分はパールホワイトで塗装され、柄の両端と槍の裏側は鮮やかなメタリックブルーの色彩が施されている。

先っちょの部分に組まれたクリスタルも鮮やかなブルーだ。

ホワイトカラーの部分には模様が描かれている。

明らかにいままでの支給品だったS2Uと違ってワンオフされたものだ。

 

「お、クロノ?おニューのデバイスか?」

 

俺の言葉にクロノは複雑そうな目でデバイスを見てるがどうしたんだ?

 

「まぁ、ね…氷結の杖、デュランダルだ」

 

デュランダル、ね…中々カッコいいじゃん?

 

「へー、良く似合ってるじゃねーか」

 

「そうか?…そうならいいな…」

 

デュランダルを持つクロノの姿は中々、様になってる。

まぁ、元からイケメンだしな……ちくせう

 

「んじゃあ、俺も『新武器』のお披露目といこうかねッ!!」

 

俺がそう言ってジャケットの内ポケットに手を入れたんだが…クロノはなんとも言え無そうな顔をしてる。

いや、クロノだけじゃなくて、前回時の庭園に殴り込みかけたときの面子もだ。

 

「また…洗剤とかフライパン…なんてふざけたモノじゃないだろうな?」

 

その言葉に守護騎士とはやては首を傾げてる。

 

ふざけたとは失敬な。

確かにアレも立派な俺の武器だけど今回のはそんなチャチなモンじゃねえっつの。

俺はクロノ達に何も言わず上着のポケットからソレを取り出す。

 

俺が取り出したのはシルバーチェーンがついた『ネックレス』だ。

ペンダントにあたる部分は楕円形のルビーのような赤い宝石があしらわれ、その宝石を囲むように銀色のハート型の装飾が施されている。

それをみた女性人は「おぉ~~~」と感嘆の声を上げている。

特にプレシアさんとかシャマルは中々の食いつきだ。

はやて達子供組みも同じで宝石を見つめてる。

 

「へぇ~綺麗な宝石やな…これってルビーなん?」

 

まぁ、色的にはそれしかないよな。

俺ははやての質問に指を振って答える。

 

「ノン、ノン。こいつは『エイジャの赤石』ってもんだ」

 

俺がそう言うと皆首を傾げる。興味があるのか、続きを話せと目が語ってる。

まぁ、聞いたことのないもんだもんな。

 

「まぁ、どんな力があるかはお楽しみにってなッ!!」

 

俺のいたずらっ子な笑みを見て女性陣はちょっと不満顔だ。

ザフィーラとクロノは真面目な顔で沈黙してる。

 

「それより、ゼン。なのはとフェイトの治療をしてあげてよ」

 

ユーノは宝石にはあまり興味がないようで俺になのは達の治療を促してくる。

よく見りゃ二人はかなりの傷を負ってる。

 

「あいあい、お任せあれってな『クレイ…』」

 

俺が『クレイジーダイヤモンド』を喚ぼうとするとはやてから声がかかった。

 

「禅君って治療魔法得意なん?あれやったらシャマルがしてくれるけど…」

 

そう言ってはやては俺を見てくる。

はやての後ろにはシャマルさんが笑顔で待っていた。

 

「はい♪湖の騎士である私とクラールヴィントは癒しと補助が本領ですから…

 ゼン君も攻撃に参加するんですよね?でしたら魔力は温存したほうが…」

 

あ~、また俺を魔導師と勘違いする人がいるわ…俺のことを知ってる奴等は苦笑いしてるし。

 

「あ~、はやてとシャマルさん?大丈夫だぜ?『コイツ』がやるからよ」

 

俺の言葉に二人は首を傾げるので俺は『クレイジーダイヤモンド』を喚び出す。

スタンドが現れる特有の低音が鳴り響いて『クレイジーダイヤモンド』が俺の背後から腕を左右に広げて力こぶを作った状態で現れる。

いわゆる『マッスルポーズ』って奴だ。なんか自然とポージングして出したくなった。

 

「「「なッ!?」」」

 

「な、なんやのッ!?このひ、人?はッ!?どっから現れたんやッ!?」

 

「………」

 

あらら、八神一家全員驚いてら…ありゃ?ザフィーラはそうでも…コイツでボコボコにしたからか(汗)

 

「お、おいッ!!

 そいつってザフィーラをボコボコにした奴じゃねーかッ!?

 なんでそいつがオメーの後ろから出てくんだよッ!?」

 

ヴィータの言葉にシグナムとシャマルさんの顔に緊張が走る。

まぁ、やっぱりザフィーラから少しは聞いてるわな。

 

「…コイツは俺の能力で名前は『クレイジーダイヤモンド』っていってな?

 コイツは俺の精神力が形を持ったパワーある偶像(ヴィジョン)なんだわ…

 謂わば、もう一人の俺って奴だな。別に害はねーぞ?」

 

俺は親指で自分の後ろを、『クレイジーダイヤモンド』を指差して答える

その言葉にシグナムとシャマルさんの警戒も解けていく。

だが、シャマルさんはまた首を傾げてんだが、どうしたんだ?

 

「あの…ゼン君?その『クレイジーダイヤモンド』?のことはザフィーラから聞いてるけど

 今はなのはちゃんとフェイトちゃんの治療のことで……」

 

あぁなるほど、俺が自分の力の紹介をするとでも思ったのかね?

まぁ、『コイツ』にあんなCRAZYなチカラがあるなんて思わねーよな、普通。

治療とか治癒の力を持つのって大抵は見た目が優しいからな。

ザフィーラとバトッた時も『クレイジーダイヤモンド』のチカラは使わなかったし。

 

「ザフィーラにも見せてないから知らねーだろうけど、コイツにはこんなチカラもあんのよ」

 

そのまま『クレイジーダイヤモンド』はなのはとフェイトに左手で交互に触れていく。

二人が抵抗しないのを見て、シグナム達も警戒をさらに解く。

『クレイジーダイヤモンド』が触れるとアラ不思議、二人の傷とバリアジャケット、デバイスが『治って』いくジャマイカ。

 

「ええッ!?」

 

シャマルさんが驚きの声を上げる。

八神家の残りのメンツも声は上げてないが顔が驚いてる。

なのは達は何時も通りだけどな。

 

「ありがとう、禅君ッ!!」

 

「ありがとう♪ゼン」

 

『『Thank you. Mr.ZEN』』

 

今回は二人の魔力消費を抑えるのにバルディッシュとレイジングハートも治したので初めて礼を言われた。

 

「気にすんなや、バルディッシュとレイジングハートもな。そのかわりしっかりとなのはとフェイトを守ってくれよ?」

 

『Yes.sir!!』

 

『All.Right!!』

 

バルディッシュとレイジングハートはそれぞれ気合の入った声で返事をしてくれた。

 

俺はそのまま唖然とした顔のシャマルさん達に向き直る。

 

「ま、魔力も使ってないのに…どうやって?」

 

「コイツの能力は『両の拳で触れれば、破壊された物やエネルギーを治す』ことができるんだわ

 魔力も代価も要らないしまさに無制限に無条件に使える能力……それが『クレイジーダイヤモンド』の力…さいっこうにcrazyだろ?」

にやけた俺の口から出たまさかのトンデモ能力に八神家一同二度目の驚愕。

シャマルとはやてはなんか固まってるけど、他の面々の表情はいろいろだ。

 

「…そんなとんでもない能力を有して更には盾の守護獣であるザフィーラを瞬殺できる戦闘力を兼ね備えている、か…

 これが終わったら一度、手合わせを願いたいものだな…」

 

なんつうかシグナムの目はキラキラしてる…スッゴイ楽しそうだわ。

 

「……あの『クレイジーダイヤモンド』って奴さ…ザフィーラの見立てじゃアタシより滅茶苦茶パワーがあるんだろ?ホントかよ?」

 

ヴィータはまだ信じられねーみてえでザフィーラと確認がてら話してる。

ザフィーラは『クレイジーダイヤモンド』を観察してる目って言ったらいいんかな?

 

「あぁ…我の盾を一撃で容易く砕く程の剛力だ…拳撃の速度もシグナムの剣速を遥かに上回っていた…目では追えぬほどの速度だったぞ…」

 

「……どこの怪物(ゴ○ラ)だよそれ?」

 

ヴィータはなんか呆れてものも言えないって感じになった。

つうかゴ○ラってあんた…

 

「ア、アハハ…やっぱり、最初は信じられないよね…」

 

「アタシ等もゼンと『クレイジーダイヤモンド』にはずっと驚かされっぱなしだからねぇ…」

 

ユーノ君?アルフ君?その遠い目はなんですかな?チミ達?

 

やっぱり『クレイジーダイヤモンド』って誰もが認める公式チートだよな。

ぶっちゃけ、本体の俺がいるって弱点無きゃ、タイマンなら負け無しなんじゃね?

……いや、それを上回るチートがいたわ。あの闇の書のあいつはマジキチチートだったしな。

 

『暴走開始まで、後二分だよッ!!』

 

と、ついに奴さんのお出ましみてえだな。

エイミィさんからの通信にこの場にいる全員の顔が引き締まる。

 

「始まる…」

クロノがそう呟くと黒い球体の周りに黒い柱が上がった。そして

「夜天の魔道書を闇の書と呼ばせたプログラム、闇の書の闇…」

はやての言葉と共に球体が割れて中から一体の巨大な怪物が現れた。

その姿は様々な獣・魔獣が混ざったような姿をしており中心には女性の姿をしたコアがあった。

エゲつない姿だな、おい。

テメエがこの街にいたら俺等の家族が危ねえからな……全部ブッ潰すッ!!

 

まずコッチの先発はアルフとユーノだ。

「チェーンバインド!」

「ストラグルバインド!」

アルフとユーノによる拘束魔法での先制攻撃。

緑と金に輝く鎖で防衛プログラムの周りの触手を縛って切り裂く。

 

お次はザフィーラだ。

「縛れ!鋼の軛!でぇぇぇや!!」

ザフィーラの拘束魔法が横薙ぎに奔って残りの触手も一掃していく。

これで前方は綺麗サッパリした。

 

3番手はなのはとヴィータ。

「ちゃんと合わせろよ!高町なのは!」

「ヴィータちゃんもね!」

 

二人で声を掛け合ってヴィータから攻撃を始める。

 

「鉄槌の騎士ヴィータと黒鉄の伯爵グラーフアイゼン!」

『Gigantform』

 

グラーフアイゼンから声が響いて、柄に内臓されたリボルバーがカートリッジを装填(ロード)する。

「轟ォォ天爆砕ィィィィ!ギガントシュラーク!」

ヴィータのデバイスの先端のハンマーが一度分解され再構成されるとそこにはとんでもなく巨大なハンマーができていた。

それを持てる力の限りで防衛プログラムにブチ込むヴィータ、それに続くのは……

「高町なのはとレイジングハート・エクセリオン、行きます!」

 

我等が魔砲少女、高町なのはだ。

なのはは叫ぶとレイジングハートを天に掲げカートリッジを4発ロードする。

「エクセリオンバスター!」

 

そこからレイジングハートを回転させながら構え、照準を合わせる。

防衛プログラムも反撃と言わんばかりに3本ほど触手を飛ばそうとする。

 

『Barrel.Shot』

 

しかしレイジングハートが不可視のバインドを飛ばして触手を拘束していく。

ナイスアシストだ。

 

「ブレイク…シュート!」

不可視のバインドで拘束した触手ごと4発のバスターで撃ち抜き最後に収束された最大砲撃が放たれる。

防衛プログラムを守るバリアは順調に砕けていく。

 

ヤロウに休む暇を与えずに4番手の出番だ。

 

「次!シグナムとテスタロッサちゃん!!」

いつの間にか防衛プログラムの後ろに回り込んでいたシグナムは剣を天上に振りかざす。

 

「剣が騎士シグナムが魂、炎の魔剣レヴァンティン。刃との連結時に続くもう一つの姿」

そう言いながらレヴァンティンの柄と鞘を合わせカートリッジを1発ロードするとレヴァンテインは弓の形状になった。

『Bogenform』

魔力で形成された弦が張られ、矢を構えてプログラムを狙い定める。

シグナムの足元の魔法陣から炎が上がる。

また海から触手が上がるが、ソレよりもシグナムの矢のほうが速かった。

「駆けよ!隼!」

『Sturmfalken』

矢の先端に魔力が集まり一本の光線となって放たれバリアに当たると大爆発を起こした。

矢が疾走するその姿は、まさに空を翔る隼のように鋭かった。

 

次は反対、こっち側のフェイトが翔る。

「フェイト・テスタロッサ、バルディッシュ・ザンバー、行きます!」

カートリッジを3発ロードし身体に不釣合いな大剣をブン回す。

 

「…ハァッ!!」

 

その遠心力で衝撃波を撃ち出し邪魔な触手を切り裂く。

「撃ち抜け!雷神!」

 

『Zeus Zanber』

その勢いのまま刀身の伸びた大剣を天に掲げ、紫電を纏った大剣で奴の身体の半分近くを斬り裂く

だが斬り裂いた箇所から膨張するように再生していく防衛プログラム。

再生と同時に触手が伸びて魔力を先端に集めて砲撃をチャージし始めた。

「盾の守護獣ザフィーラ。砲撃なんぞ、撃たせん!ずぇあっ!!」

だが、それをザフィーラが止める。

鋼の軛で砲撃をしようとした触手の悉くを縫い止めていく。

そしてシャマルさんが次を言おうとすると…

「プレシア・テスタロッサよ、よろしくね」

名前がわかんねえのを察したプレシアさんが名前を教えてた。

まぁ、今回の事件には表立って出てないからシャマルさんも名前わかんねえよな。

 

「あ、ありがとうございます!!…じゃ、気を取り直して…はやてちゃんとプレシアさん!」

「まずは私が先に行くわね?」

そう言ってプレシアさんが前に出る。

さあて、病気の治った大魔導師の力ってどんなのよ?

「プレシア・テスタロッサ。行くわ」

杖のデバイスを天に掲げるとプレシアさんは口を歪める。

…いや、まぁ……時の庭園では苦しそうな顔しか見てねえから新鮮っちゃ新鮮だけども…メチャ怖えぞ。

 

…俺、よくあの人に正面切って喧嘩売れたな…もう二度と売らねえわ、うん。

「久しぶりの全力よ、精々耐えてみなさいな!」

ドSっ気たっぷりの笑顔でそう言うと詠唱を始めた。

 

「アルカス・クルタス・エイギアス…疾風なりし天神、今導きのもと撃ちかかれ…バルエル・ザルエル・ブラウゼル」

 

この詠唱は……確かフェイトのフォトンランサー・ファランクス・シフトだっけか?

なのはとフェイトの決戦で使ってたあの魔力で作った電撃の槍を無数に見舞うやつだったな…

 

詠唱が終わるとプレシアさんの後ろと防衛プログラムの周りに雷を伴った槍がいくつも現れ……現れ……

 

 

……………………………………は?

 

 

現在、プレシアさんの背後には数えるのも馬鹿らしい数の電撃の槍が浮いている。

フェイトが使った時よりも遥かに多いし、槍の大きさもかなりのモンだ。

なんつうか…王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)だっけ?…あれがすんごいチャちく見えちまうんだけど?

俺だけじゃなくてその場にいる人間の殆どが口をあんぐりと開けている。

フェイトだけは目をキラキラさせてプレシアさんを尊敬の眼差しで見ているが…その視線に気づいたプレシアさんは頬を緩めてるけど……

いや、ちょっとまてやお二人さんや?

まず、プレシアさん?いくら娘にいいところを見せたいからってやりすぎじゃ……

「おかしいわねぇ…昔はもっと数が多かったのだけど…久しぶり過ぎて鈍っちゃったかしら?」

 

やめてください。戦術兵器にでもなるつもりですか?

もう、今のままで充分ですって。

 

んで、フェイトさん?そんなに熱心に見るって事はあなたもこれをできるようになりたいと?

お願いですから今のままでいて下さい。

 

「まぁ、いいわ…行くわよ?…フォトンランサー・ジェノサイド(・・・・・・)・シフトッ!!」

 

そして、プレシアさんは無慈悲に号令をかける。

あぁ、殲滅(ジェノサイド)ですね?わかります。

プレシアさんの言葉と共に無限に近い電撃の槍がとんでもない速度で防衛プログラムに放たれていく。

防衛プログラムは無数にあった触手も馬鹿でかい身体もすべてを切り刻まれていく。

 

「私の最愛の娘を…フェイトに攻撃したことを…あの世で後悔なさい…」

 

決めた。俺もう絶対にプレシアさんには逆らわないわ。

もう、顔が滅茶苦茶恐いんだって。一番近くにいるはやてなんか涙目だぞ、マジで。

味方にも恐怖を与えるなんて……プレシアさんマジ、パネェっす。

 

そしてプレシアさんの怒りを物語るかのような槍の嵐が止んだときには防衛プログラムは殆ど原型を留めていなかった。

フォトンランサーの嵐で削られた場所から無理やり再生してるからいろんな生き物のいいとこだけ集めたグロイ姿になってる。

真ん中の女性の形をしたコアが残ってるのが一層不気味に見えて仕方ない。

プレシアさん一人でここまでって……大魔導師の力ってスゲェ。

 

「え、ええっと…はやてちゃんッ!!」

 

シャマルさんは戸惑いながらも、プレシアさんをみて涙目だったはやてに声を掛ける。

はやてもその声が届いたようで首を何回か振ってから、詠唱に入った。

「彼方より来たれ、やどりぎの枝。銀月の槍となりて、撃ち貫け。石化の槍、ミストルティン!」

詠唱が終わると空に魔法陣が浮かびそこから無数の槍みたいな物が降り注ぎ防衛プログラムに突き刺さる。

防衛プログラムは槍が刺さった箇所から石化していき崩壊する、がすぐに再生しちまう。

『やっぱり並の攻撃じゃ通じない!ダメージを入れたそばから再生されちゃう!』

「だが攻撃は通ってる、プランに変更は無しだ!」

エイミィさんの声にクロノはそう応えてデュランダルをしっかりと握る。

さあて、俺も行きますかッ!!

俺はクロノの横に並んでグローブを擦り合わせる。

 

「こうして君と肩を並べて戦うのは半年振りか…」

 

クロノは俺を見ずに奴を見ながら語る。

まさかまたこうして一緒に戦えるとはな…まぁ、戦いが無いに越したことは無えんだがな。

それでもやっぱり相棒は……

 

「そうだな…久し振りだからカッ飛ばすぜ?…しっかり着いて来いよ?相棒(バディ)!!」

「君こそ、久し振りだからって息切れしてへばるなよ?相棒(バディ)!!」

 

コイツしかいねえよな?

互いの顔をみて笑いあってから俺たちは攻撃に移る。

 

最初は俺からだッ!!

俺は擦り合わせたグローブに染込ませてある特殊石鹸水に波紋を流す。

波紋の色は何時も通りの青緑(ターコイズブルー)ッ!!

そして、両手を頭上に伸ばして腕を左右に目一杯広げる。

すると波紋を帯びた石鹸水は手と手の間で大きな膜になって長いシャボンの膜が完成する。

 

「『スタンド使い』橘禅と俺のスタンド『クレイジーダイヤモンド』の番だッ!!喰らっときなッ!!シャボン・カッター…」

 

俺は自分の後ろに『クレイジーダイヤモンド』を喚びだす。

現れた『クレイジーダイヤモンド』は俺の意思通りに右腕を肩と水平に上げ、肘を曲げた状態で拳を握りこむ。

『クレイジーダイヤモンド』の極太の腕がギチギチと音を立てながら威力を溜めていく。

腰を左方向に傾けて、身体を捻りこむ。

すると肩と水平に構えた右腕が頭上から打ち込まれるかのように振り上げられたように見えてくる。

これで、準備は万端だッ!!

 

「スラッシュゥゥゥゥッ!!」

 

『ドラアッ!!』

 

『クレイジーダイヤモンド』が拳を振るう先にあるのは青緑(ターコイズブルー)が奔るシャボンの膜。

そのまま拳はシャボンの膜にブチ当たる。

時速300キロを叩き出す拳に『シャボン』が纏わり、その勢いのままフック気味に振り抜かれた『シャボン』は三日月状の『刃』に変形する。

俺と『クレイジーダイヤモンド』、『幽波紋(スタンド)』と『波紋使い』の一体妙技だッ!!

波紋使い(オレ)』が弾丸を作って引き金(トリガー)を引き『幽波紋(スタンド)』が撃鉄を叩く。

 

ズッパアァァァァァァァアッァァァアンッ!!

 

『クレイジーダイヤモンド』の豪腕に押し出されたシャボンはさながら水圧カッターのように飛翔して防衛プログラムを切り裂く。

まぁ、一撃じゃ終わらねえけどな?

すでに『クレイジーダイヤモンド』は二発目、否、乱射の体勢に入ってるんだぜ?

 

「まだまだ行くぜBaby!!スラッシュカーニバルだッ!!」

 

バラバラに切り刻んでやんぜえぇぇぇぇぇぇッ!!!

 

『ドラララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララ

 ラララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララ

 ラララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララァッ!!!!!』

 

ズババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババ

 ババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババッ!!!

『クレイジーダイヤモンド』の連打(ラッシュ)で撃ち出されていく『刃』の嵐は防衛プログラムの至る所を切り裂く。

触手、尻尾、背中から生えたヒレのようなものに至るまで。

 

「……さながら暴風雨(ストーム)の様だな…」

 

ポツリと呟くザフィーラの声にこの場にいる全員が頷く。

 

俺のシャボン・カッター・スラッシュで切り刻まれた防衛プログラムは無くなった箇所から再生しようとする。

だが、そんな悠長に再生させる暇はねえぞ?

なんせ俺の後ろには……

 

「時空管理局執務官クロノ・ハラオウン。行くぞ、デュランダル」

『OK、BOSS』

 

コイツがいるからな。

クロノはすでに魔力を集中して奴を待ち構えていた。

俺のシャボン・カッター・スラッシュが終わるタイミングに合わせて術式の構成は終わらせてたからな。

「悠久なる凍土、凍てつく棺のうちにて、永遠の眠りを与えよ、凍てつけ!」

『Eternal Coffin』

クロノの極大の凍結魔法が撃たれた。海面から防衛プログラムを囲むように全身に氷が奔る。

それにより防衛プログラムは全身が凍結していく。

 

がすぐに氷を砕いて再生活動を再開しようとしていたがそれを見たなのは達が最後の攻撃に出る。

「いくよ、フェイトちゃん!はやてちゃん!!」

三人はお互いに頷きデバイスを構える。

俺もブチかましてやんぜッ!!

 

「3人とも、俺も一緒にやらせてくれッ!!」

 

俺はそう言って胸元に着けていた『エイジャの赤石』を外して左手にチェーンを巻きつける。

あの野郎は俺自身の手でカッ飛ばしてやんねえと気が済まねえッ!!

 

「禅君…わかったのッ!!皆で一緒にッ!!」

 

「「うんッ!!」」

 

「おうッ!!」

 

腕を肩と水平に伸ばして右手は後ろに構える。

アクセサリーの下の部分を親指と人差し指でコインのように挟み込んで奴に向ける。

右手には波紋を球状に溜めていく。

『Starlight Breaker』

「全力全開!スターライトーーーーッ!!」

なのはのレイジングハートに桃色の魔力が集まる。

周囲の魔力を掻き集め、巨大な魔法陣がなのはの前に現れる。

小さな身体を目一杯後ろにそらしてレイジングハートを振りかぶって発射体勢に入る。

『Plasma Zamber Breaker』

 

「雷光一閃!プラズマザンバーーーーッ!!」

フェイトのバルディッシュに魔力で発生させた雷が落ち、そのエネルギーをザンバーフォームの刀身に蓄積させる。

フェイト自身とバルディッシュのカートリッジ全弾の魔力の重ね合わせだ。

チャージが終わったフェイトは大剣を肩に担いで薙ぐ体勢で構える。

「コオォォォォォォ…………」

 

俺も呼吸を整えて体内で波紋を練り上げる。

練り上げ、蓄積された波紋が体を駆け巡って右手の手のひらに集まり、巨大な球体を作り出す。

球の色は最近になってやっとこさ使えるようになった山吹色(サンライトイエロー)に染まっている。

この山吹色(サンライトイエロー)の波紋は結構効くぜぇッ!?

まだ俺が未熟だから俺自身への使った反動(フィードバック)も馬鹿デケエが、その身体で味わいなッ!!

 

「刻むぜ、波紋のビートッ!!山吹色(サンライトイエロー)のォーーーーッ!!」

 

波紋は今にもはち切れんばかりに膨れ上がってる。

照準よしッ!!チャージよしッ!!

身体にビリビリと激痛がくるが後はブチかましてやるだけだッ!!

もう少しの間は気張れよッ!?俺の体ッ!!

 

「ごめんな、おやすみな…」

凍らされ、もがき苦しむ防衛プログラムを見てはやては悲しそうな声で呟くが

その瞳には決意の光が宿っている。

「響け終焉の笛、ラグナロク!」

はやての声に呼応して目の前に巨大な魔法陣が出現し各頂点、三箇所に膨大な魔力が収束される。

魔力の大きさは恐らくこの中で一番だろう。

そして全員の発射準備が整い……

「「「ブレイカーーーーーッ!!」」」

 

波紋疾走(オーバードライヴ)ゥゥーーーッ!!!」

三者三様の砲撃と俺の波紋が奴に向けて撃たれ交わり膨大な魔力と波紋の渦として防衛プログラムに襲いかかる。

 

 

三人の砲撃はまさに、目の前の敵を飲み込まんばかりに巨大だ。

だが、俺の波紋疾走(オーバードライヴ)は『エイジャの赤石』の中で何億万回と屈折を繰り返して赤石と同じ細さのレーザーになってる。

小さすぎて効果がないかもと思ったが、奴に当たった場所から凄い勢いで爆散していく。

 

……OVERKILLにも程があるよな?これ…人間に対して使えんのか?

…そぉいや俺、魔導師じゃないから今までの攻撃、全部殺傷性ありじゃなかったっけ?…せ、赤石は封印しましょッ!!

 

俺が一歩間違えば取り返しがつかなかったこと

これからの波紋と『クレイジーダイヤモンド』の扱いについて考えてるとシャマルさんの目の前に緑色の輪ができてた。

シャマルさんの指輪、クラールヴィントから伸びる紐のようなモノで整形されてる。

 

「本体コア露出……捕まえ…たッ!!」

「長距離転送!」

「目標、軌道上!」

シャマルさんが露出したコアを補足しユーノとアルフが強制転送の魔法陣で防衛プログラムを挟み込む。

 

「「「転送!」」」

 

そして、全員の掛け声と共に、巨大な魔法陣の輪が現れて、防衛プログラムを虹色の球体が包み込む。

その球体はそのまま空へ駆け上がっていく。

俺たちは全員で固唾をのんで空を見上げてる。

 

……後はお願いしますぜ?リンディさんッ!!エイミィさんッ!!

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

アースラではその情報が届きアルカンシェルを撃つ準備に入っていた。

スタッフ達もコンソールを叩く手が忙しなく動いている。

特にエイミィのコンソールを叩く速度は半端じゃない。

「コアの転送来ます!転送されながら生体部品を修復中!凄まじい速度です!」

 

転送されている最中でも生体パーツを再生させていく防衛プログラム。

モニターに移るその姿は歴代の主の欲望や悪意などが凝縮したグロテスクで非常におぞましいものであった。

「アルカンシェル、バレル展開!」

キーボードを操作しながらエイミィが号令を出す。

アースラの先端に円形上の魔法陣が三つ浮かび上がりその中心に魔力とは別のエネルギーが収束されていた。

 

 

魔導砲アルカンシェル。

 

時空管理局が有する、大型艦船用の強力無比な魔導砲。

その強大な威力から普段は艦船に搭載されておらず、必要とされることが予想される場合にのみ艦船に搭載される。

その発動は搭載された艦船の提督に一任される代物だ。

 

艦の最高責任者の提督という位のものにしか許可を出せない。

それだけの厳重さを誇る魔導砲の持つ威力は……

「ファイヤリングロックシステム、オープン」

リンディがそう言うと目の前に黒い球体を透明な箱に入れたような物が出てきた。

アルカンシェル発射の最後の安全装置だ。

「命中確認後、反応前に安全距離まで退避します!準備を!」

『『『『『了解!』』』』』

 

メインデッキのスタッフの掛け声が響き渡る。

リンディが鍵を球体に差し込むと透明だった箱が赤くなる。

そしてアースラ前方にグロテスクな防衛プログラムのコアが転送された。

「アルカンシェル、発射!」

 

リンディは防衛プログラムをグッと強い眼差しで見つめる。

鍵を回し最後のセーフティーを解除すると魔導砲アルカンシェルの砲門が開き…アースラから光が撃たれる。

光がコアに直撃すると轟音、そして閃光が鳴り響く。

光はコアを中心に空間歪曲と反応消滅を繰り返していく。

 

 

『『『『『…………』』』』』

 

誰も、何も喋らない。

 

全員が息を呑み、結果報告を待ち続ける。

 

「………効果空間内の物体、完全消滅、再生反応………ありません!」

 

「……準警戒態勢を維持、もう少し反応を待ちましょう」

 

「了解……フゥ…」

 

事態が収集して大きく息を吐いたエイミィは身体を座っていた椅子に思いっきり預ける。

他のスタッフも似たような感じだ。

今、闇の書と管理局の長い戦いの終止符がここに打たれたのだった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

『とゆうわけで…現場の皆、お疲れ様でしたッ!!状況、無事に終了しましたッ!!』

 

通信からエイミィさんの声が響いてくる。

 

「終わったの…か?」

 

「ああ、成功だ」

 

俺の呟きにクロノが笑顔で返してくる。

 

「うっしゃーーーー!勝ったぞーーーーー!」

 

俺が嬉しさの余り腕を上げて咆哮すると皆微笑ましい目で見てくる。

みんなも安心し、喜びで笑顔になる。

 

「「「イエェーイ!」」」

 

なのはとフェイトとはやては、三人でハイタッチしてら。

他の面々も表情がメチャ嬉しそうだ。

 

……やれやれ…これでまた、平和に暮らせんだな…よかったよかった。

はやて達も混ざって、また楽しい毎日が始まるってな。

 

そう思って気を緩めた時に………

 

「ッ!?あががががががががががががががががががががッ!!?」

 

俺の体にとんでもない激痛が走った。

体の中を赤くなった鉄の棒で押し付けられるような痛みが体中を駆け巡る。

 

他の皆はギョッとした顔で俺を見るがそれどころじゃねえッ!?

ま、まさか時間切れかよッ!?

山吹色(サンライトイエロー)の波紋を使った反動(フィードバック)がきやがったッ!!?

 

俺の足場の波紋を纏ったトランプも波紋の力を失って海へ落ちる。

足場を失った俺は必然的に海へ落ちていく……

 

こ、こんな高さで海に叩きつけられたら一巻の終わりだな…

 

激痛で気を失いそうな頭の中でそんなことがボンヤリ浮かんできた。

だが、落下の途中で俺の体は誰かに抱えられ、海へ落ちるのは免れた。

 

「ーゼーーッ!?ーーりーッ!!?」

 

「ーーおーーーゼンッ!?ーーーへーッ!?」

 

俺を助けた誰かが耳元で叫んでるがもはや俺には聞き取れなかった。

薄れていく意識の中で最後に見たのは……

 

俺を抱きしめて大粒の涙をボロボロと零しながら叫び続けてるフェイトとアルフだった。

その光景を最後に俺の意識はブツリと途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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