No.458255

恋姫無双 槍兵の力を持ちし者が行く 九話

ACEDOさん

とここで三話一気の遅い注意を。キャラ崩壊が多数あると思うので注意してください。

2012-07-23 21:52:08 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:4805   閲覧ユーザー数:4280

 

  砦に向かう途中、見られ続けることがいやになった俺は関羽にふざけ半分で話しかけた。言いたいことがあるならとっとと言えばいいのにな。

 

「なあ、関羽。いつまでも俺に熱い視線を向けるなよ。照れるだろうが」

 

「な、な、ふざけるな!私はお前などに興味はない!」

 

「いやー、初心(ウブ)だねー。

っと、冗談はこのくらいにしてだな。

なんか俺に聞きたいことあんだろ?」

 

まあ、関羽のことだ。どうせ昨夜の嬢ちゃんと俺の会話の内容を知って、俺の人となりを調べようって腹なんだろう。

 

「その通りだ。ならば単刀直入に聞くが、なぜ桃香様の理想が間違ってると言った?」

 

「そりゃ当たり前だろ?」

 

「なんだと!貴様!」

 

関羽は怒りながら自分の得物を向けてくる。

ったく、しゃーねー少し説明してやるか。

 

「なあ、関羽。お前は少しはこの世の中を知ってるようだから名前でよんでやる。嬢ちゃん…劉備のことな。確か理想の内容は『皆が笑って暮らせる世の中で争いもなく話し合いでわかりあえる世の中』だったよな?」

 

 「ああ、そうだ」

 

 「まあ、笑って暮らせる世ってのはまだいい。幸せは人それぞれだけどな……

 だが、争いもなく話し合いでわかりあえる世ってのはいけねえ」

 

 「何故だ?」

 

 「お前は分かってるはずだぜ。関羽。話し合いで分かりあえるならこんな状況になってなかったことぐらいな。

 あのな関羽、人は他人と同じことを常に思い、考えれるわけがない。だからこそお互いにわかり合う為に話し合う。そこまではいい。けど関羽、もしお前が武を否定されたらどうする?」

 

 「それは勿論、我が武にかけてその考えを……」

 

 「ほらな、結局力任せに相手を従わせる。これが争いの縮図だよ。争いは国と国との喧嘩だ。

 人は意志を持つから人であり、意志を曲げないために争う。

 言い方は悪いかもしれんが、争いは一種の行事だ。勝者が敗者を従わせ、1つになる。そして時が経ちバラバラになり、またどこかが一つにまとめる。それが繰り返しているのが歴史だ。」

 

 今までの歴史も争いがない国などなかった。前世でもなにかしらの理由で争いはある。

 

 「なら、桃香様の掲げている理想は間違っていると?」

 

 「違う。歪なんだよ。

 言ってることは正しい。正しいが、ただなくしたいと言うべきじゃない。それにその理想を掲げつつ武力を使うのは間違ってる。俺はそう考えている」

 

 そう、やるならば前世のガンジーのように無抵抗で戦うべきだ。それで理想が叶うかという話になると叶わないだろうが。

 

 「……だが、私達は正義を掲げて戦っている」

 

 正義を掲げて、ね。

 

 「ま、理想は人それぞれだ。とにかく、参考として少し俺の考えを頭に入れて進んだ方が良い。ただし、正義を信じるのはいい。だが、戦いに正義を持ち出すのはやめろ」

 

 「何故だ?私達は弱い者を守る為に戦うのに」

 

 「戦いという大量殺人の真相を正義というもので覆い隠さない為に」

 

 戦いはどれだけ言い繕っても、所詮人殺し、間違った行動だ。だから俺は戦という避けられず愚かな行動に正義を語りたくない。

 関羽は俺の言葉を聞いて押し黙った。いきなり自分の信じる正義を否定されてなのか、それともなにか他の理由なのか、とにかく反論出来ないようだ。

 少し言い過ぎたかな。

 

 「まあ、俺の考えは極論だ。気にすんな」

 

 そう言いつつ近づく戦の気配に気を張りつつ、関羽との話を切った。

 

―side 愛紗

 

 『戦いという大量殺人の真相を正義というもので覆い隠さない為に』

 

 今、私の頭にこの言葉が巡っている。

 それを語っていた時の李高の顔には見覚えがあった。初めて人を殺した時の顔だ。

 恐らく、私のように李高は賊だから仕方がないなどと割り切らず、自分が人殺しをしたという事実をただ受け止めている。

 彼は戦いを肯定しているが殺したくはないのだろう。傭兵なのに。

 なぜなら戦いは敵も味方も死ぬのだから。

 なら、殺すことをありのままに受け入れ、常に戦に身を置く傭兵の彼はどのような死に様を望むのだろうか。私達は桃香様の理想のために死ぬのだから死すらも誇りに感じるかもしれないが。

 

 「李高。最後に聞きたい。貴様は戦場で死ぬのならどのように死ぬ。」

 

 「そうだな、これは俺達『紅蓮団』の総意だが。」

 

 こういいつつ、彼は笑顔で此方を向く。

 

 「こんなことしてるからな楽な死に方はできないかもな、おそらくだが俺達は戦場で『畜生!畜生!』て言いながら腹に風穴空けられるなり、斜めに切られたりしてのた打ち回りながら死んでいくんだろうよ。ま、簡単に死ぬつもりはないがな」

 

 その言葉を聞きつつ、息を飲んだ。何故なら彼の笑みは狂気の類いではなく、一人の武人が死を覚悟した時にする笑みだった。

 よく周りを見て見ると、彼の部下もその笑みを浮かべていた。

 これは素直に羨ましい。薄々気付いていたが、この傭兵達は官軍よりも誇り高く、また上を信頼している。私もこのような軍を率いてみたいと素直に感じてしまう。

 そんな風に考えている内に賊の砦に着いた。

 

 「よし、俺が突っ込んだ後は手筈通りに零れた奴らを頼む」

 

 作戦の内容は聞いている。李高、貴様の思いは分かった。桃香様の為にも後は、貴様の武を見せてもらう。

 

―side out

 

 

 ようやく砦に着いた。隠密に確認した通り、出入口は1つに絞っているようだ。

 俺は気付かれない所で一度止まり、後ろを見る。

 俺の部下は勿論、さっきまで思案顔の関羽でさえもちゃんと武人になっている。

 

 「おし、お前ら。今からあそこの賊を『狩る』。

 いいな。今から俺達がやるのは『殺し合い』じゃない一方的な『狩り』だ。『殺戮』だ。

 命令は変わらん。『見敵必殺』。分かってるだろうが情けをかけるなよ。以上だ。零れたのは頼むぜ」

 

 そう言いつつ一人片手で槍を構え突撃して行く。

 

 なにか言っている門番を問答無用で殺し、馬を降りる。

 中を伺うと、賊達は俺に気が付いた。

 どうやら明日の襲撃に備えて準備をしていたようだ。中に全員いるようだから外に出さなきゃどうにかなるだろう。

 

 「なんだてめえ」

 

 「何、俺達の仲間殺してんだ?自殺希望か?キャハハハハ!」

 

 こう言いながら俺を囲む賊どもを見ながら。笑顔を浮かべ、宣言する。

 

 「聞け!糞共!俺の名は李高!とある村からの依頼で掃除に来た!

 だからよ。てめえら死にたくなけりゃ俺を殺してみな」

 

 言い終えると同時に賊は怒ったのか俺に対する囲みを狭めて突っ込んで来た。そうだ、それでいい俺に殺されたくなきゃ俺を殺せ。この殺し殺される場の空気で少しの間でもいい『俺』という存在を確かめさせろ。

 もう此方の間合いに入っている。今までの思考を放棄し、目の前にいる賊に意識を向ける。此処で受けに回るのは悪手、だからすべて攻めの一手で乗り切る。

 

 「邪魔だ!」

 

 こう叫びつつ槍を振るう。行動としては突くよりも切ることに専念して戦う。此方が振るうごとに賊が吹き飛ばされている。運良く生きていても起き上がれない状況だろう。そいつらの相手は関羽達に任せるとして、とっとと全滅させますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「くそっ。来るな化け物」

 

 そう言いつつ腰が抜けたのかへたりこみながら剣を滅茶苦茶に振るう最後の一人に近づく。

 いやー、緊張した。賊ごときに死ぬわけないと思っても初めての一対多の戦いだから焦るよな。

 そんなことを思いつつ目の前のこいつをどうすっかなー。なんて考えていると関羽と部下がこっちに向かって来た。

 

 「隊長、やっぱりすごいですねー、あれだけ相手に息一つ乱れてないし、傷もない。どれだけ化け物なんですかあんた?」

 

 「うるせーよ。俺はお前達の隊長だぞ。これぐらい出来ないとお前達に舐められるわ。

 それより、ちゃんと皆生きてんな?」

 

 「勿論ですよ。軽傷者はいますがまだ全員継戦可能です。伊達に隊長に鍛えられてないですからね」

 

 その返事を聞き、少し安心したのは悪くないと思う。いくら鍛えたからといって、戦は何が起こるか分からない。どんなに強い奴でも偶然死んでしまうこともある。

 

 「て、てめえ!俺を無視すんじゃねぇ!」

 

 は〜。ったく全く、死にたくないんだったら今の内に逃げるとかなんかあるだろう?

 俺も忘れかけてたからもしかしたら逃げられたかもしれないのに。(まあ、すぐに追い詰めて捕まえるが)

 

 「あー、すまん忘れてた。今すぐ殺してもいいが、もう少し生きてて貰えるか?」

 

 そう言いつつ、石突きで気絶させる。

 

 「よし、後始末だ。お前達は武具及び、食糧の確保。その後、火をかけろ。

 俺と関羽はこいつを縛って門の所にいる。」

 

 「「「了解」」」

 

 

 部下達が、後始末をしている間に俺と関羽は一人の捕虜を連れて、門の前に来ている。

 

 「李高、こいつをどうするのだ?まさか生かして逃がすわけではあるまいな?」

 

 「おいおい、おれは『見敵必殺』と言ったはずだぜ。こいつは賊を全員殺したことの証明に皆の目の前で殺すだけだ。」

 

 「…貴様は何時もこんなことをしているのか。」

 

 「何時もってわけじゃないがな。

 ま、理由は村人を安心させるためと、ちゃんと始末したと伝えるためだな。

 俺達は傭兵ってだけで信用しない奴らがいるもんでね。」

 

 少し嫌味が入ったがまあいいだろう。今はどうか知らんが、コイツは全くと言っていいほど傭兵という存在を信用してなかったしな。

 それよりあいつら遅いな。残党が残っていてもてこずるやつらじゃないし、今回は数が多いから時間がかかってんだろうな。と思っていると、関羽が口を開いた。

 

 「李高、お前の目指している物がなんなのかは分からない。だが、今の桃香様の考えとは合わないだろう。しかし、それを承知で頼む!桃香様に力を貸してくれないか?」

 

 「断る。理由は色々あるが一番の理由は嬢ちゃんは上に立つ覚悟がない」

 

 「………」

 

 おっ、怒りを抑えているのかは分からないが、自分の武器を向けなくなった。

 これは成長しているのだろうか?分からないが話を続ける。

 

 「関羽、戦で一番血に汚れているのは誰だと思う。

 人は兵士とか、一番多く殺した武将とか言うだろうが、俺は一番上の存在、つまり主君だと考えてる。

 だってそうだろ?主君の言葉で戦いが始まり、敵も味方も死んでいくんだから。だからこそ主君になるべき者は死んでいった者の責を負い進む覚悟が必要だ。

 だが、嬢ちゃんにはその覚悟もなくただ理想を振りかざすだけ。そんな奴の下に付きたくない」

 

 「そうか、分かった。今の忠告は心に留めておこう」

 

 薄々感じていたがこいつは劉備の理性(ブレーキ)だ。今はまだ未熟だが必ずそうなる。

 だから少しサービスしてやる。

 

 「おう、そうしろ。だがこれは嬢ちゃん自身が自覚しなきゃいけないことだ。

 そしてこいつは助言だ。関羽、そしてそれを嬢ちゃんが自覚した時はお前達が下から理解し、支える。それが義務だ」

 

 「分かった。すまない。傭兵だと侮っていたが、色々教えられた」

 

 そう素直に礼を言われ、照れ臭くなった時に、いいタイミングで部下達が帰ってきた。その後、火が砦に回っているのを確認し、村に戻り、最後の一人を殺した。

 夜、祝勝の宴の後に砦から持ち出した物資をどう分けるかで話し合い。翌朝に出ることになった。

 

 

 

 

 

 

 「蒼様、準備が整いました」

 

 「よし、そんじゃあ涼州にしゅっ「李高さん!」って嬢ちゃん。どうした?着いてくんのか?」

 

 意気揚々と出発しようとしたら嬢ちゃんに止められた。

 

 「違います。お礼と決意を伝えに来ました」

 

 森羅が訝しげに見ているが俺は少し興味が湧いた。

 

 「悪いが、率直に言ってくれ、こっちにも事情があるからな」

 

 「分かりました。とりあえず物資をありがとうございます。

 それからまだ私は李高さんが言う。理想の歪みの答えはわかりません。けど次に会う時までには答えを出します。」

 

 いい顔だ。関羽もいるし、これなら答えを見つけるのも容易いだろう。

 

 「分かった。じやあ次を楽しみにしておくよ。じゃあな劉備」

 

 

 

 

 

 

 「よろしいのですか?蒼様」

 

 「なにがだ」

 

 「劉備のことです。彼女は曹操と相入れぬ存在かと。それの成長を促すとは

 …はっ、まさか劉備達も手ごめにするつもりですか?

 くっ、私という者がありながら」

 

 「馬鹿かお前は!誰が誰をてごめにしたって?」

 

 「それは勿論蒼様が私をてごめに…言わせないでください!」

 

 「薄々感じていたが、お前。俺が絡むと人格が変わらないか?

 はぁ、まあいいや。理由は簡単。劉備には悪いが、華琳の踏み台の一つになってもらう」

 

 「曹操を王として更なる高みに昇らせる為ですか」

 

 「そう、あいつはその高みにたどり着く資格がある。劉備はアイツにはもってない才能(モノ)がある。だからこそアイツの贄にふさわしい。王として昇ったアイツなら俺達の望む世界が作れる。

 動き出したらかなり忙しくなるし、死ぬかもしれないが着いてくるか?」

 

 「いまさらです。私は曹操ではなく、蒼様、貴方に命を預けました。好きなように使ってください。

 特に肉体的欲求の為に使っていただけるなら大歓迎です」

 

 「まあ、最後は冗談として。涼州にとっとと行くぞ」

 

 と劉備の答えに期待しながら涼州に馬を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 その時、俺は次に会った時の劉備の驚くべき回答など想像していなかった。

 


 
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