……
……………
………ここは………どこ?
辺りは真っ白で、他には何もない私だけの世界………
私はあの世界で、光に飲まれて消えたはず………
そう、あの人………北郷一刀様が消えた事で、あの世界………『外史』が消滅したのです。
大好きだったあの人は………他の女と一緒に、また違う外史へと移ったのでしょう。
………私が唯一大好きだった一刀様を奪った女………
………許さない………
………絶対に許さない………
私から大好きだった一刀様の事を、平然と奪っていった女を………
………絶対に………許さない………
「………憎いですか?………諸葛亮孔明………」
「!!?」
私の後ろから、聞き覚えのある声がしました。
それはそうでしょう………
声の主は、私が他の女達と一緒に、一刀様の為に戦ってきた相手………
言うなれば、一刀様の敵であった………
………左慈と于吉と言う二人組の導師でした。
「……あ、貴方達は!?」
私は反射的に、後ろへ後ずさる。
「おやおや、心配せずとも大丈夫ですよ……もう私達の役目は終わりましたから、貴女とはもう、敵対をする気なんてありませんから………」
于吉と言う眼鏡をかけた導師は、軽々しく口に出しました。
「ふざけないでください!!そもそも貴方達が居たから、私の前からご主人様が………一刀様が消えてしまったんですよ!!それなのに貴方達は『役目を終えたから、もう敵対するつもりはない。』なんて、軽々しく言わないでください!!
それに例え、貴方達に敵対するつもりが無くても、私は貴方達の事を絶対に許しませんから!!」
そう、この二人が一刀様と奪った女が消える切っ掛けを作ったのです。
だから、私はこの二人を許すつもりはありません。
「心配をするな………今回俺達は、本当に敵対をするつもりは無い。逆にお前の手助けをする為に此処に来たのだ。」
今度は左慈と言う少年導師が口を開きました。
……えっ?この人達が、私の手助けを……って、どうして?
私が疑問に思っていると、于吉が口を開きました。
「貴女は、北郷一刀を奪った他の武将達に復讐をしたいと考えました………ですから、我々のように、復讐心を持った貴女に新たな外史に飛んでほしいのです。」
と、于吉が言いました。
「ちょっ、ちょっと待ってください!!………貴方達の目的は一刀様を殺す事だったはずですよね。でも私が復讐をしたいのは一刀様じゃなくて、それを奪った将達で、一刀様には全く復讐をする気なんて無いのに、どうして手助けをしてくれるんですか!?」
私はもはや、二人の真理がよく分からずに、混乱をしてしまいました。
すると、左慈が口を開きました。
「そんな事は、俺達は知らん。………俺達はただ、上からの命令でお前の手助けをしろとだけ言われているのだからな。」
「は、はぁ………そうなん………ですか。」
(この二人の立場って一体……)そう思った私でしたが、その事に関しては、大して重要な事でもないので聞かない事にしました。
「それじゃあ………貴方達がしてくれる手助けって何なんですか?」
私がそう聞くと、于吉さんが口を開きました。
「貴女にはこれから、貴女が居た外史と類似している外史へと向かって頂きたいのです。……その外史は、貴女の知っているのとは異なる北郷一刀が望んで作られた外史。……ですから当然、北郷一刀も現れますし、貴女が目当てとしている武将達もその外史に存在します。
我々が手助けをする事は、貴女をその外史に送ることと………貴女自身の『同調』です。」
「私の……『同調』……?」
于吉さんの言葉が聞き慣れなくて、思わず首を傾げました。すると、今度は左慈さんが口を開きました。
「『同調』と言うのは、俺達の言葉で『一つの外史に存在する人物に、他の異なる外史の同一人物の情報をそのまま相手に送り、能力を加える事』だ。」
「えっと………それって、例えば………もし『天下無双と言われる程、武芸に長けた私』が、他の外史で、存在したら、ここにいる『私』にその情報が送られて、その能力を加える事が出来る。………と、言うことですか?」
左慈さんの言葉から私は、自分なりの仮説を説いてみました。
「………さすがは天下の諸葛孔明ですね。左慈の話を少し聞いただけで、そこまで理解をするとは………」
于吉さんは、感心をしたかのように私を賞賛してくれました。
「はわわ………それほどでも、ないです。」
私は思わず、照れてしまいました。
「ですが………さすがに、簡単な事ではありません。」
そう言って于吉さんは真剣な顔つきになり、私に向かって話してきました。
「同調をするには、ちょっとした条件があるんです。それは………『貴女と同じく、北郷一刀の事を憎んでおらず、武将達のみを憎んでいる貴女』でなければいけないのです。」
「えっ!?どうしてですか?」
さすがに意味が分からなかったので、聞いてみる。
「貴女と同じ意思でなければ、『貴女の意思』と『送られてきた貴女の意思』が互いに拒絶反応を起こしてしまって、体に負担を掛けてしまい、最悪の場合には死に至る可能性があるのです。」
「そうなんですか………」
この言葉の意味は、『自分の思っている様にはなれないのかもしれない。』と言う事でした。私が望んでいるような『私』が、今の私の意思と違っていれば『同調』する事が出来ないのです。私はその事が分かると、落胆してしまいました。
そんな中、于吉さんが言ってきました。
「ですが、心配には及びませんよ。我々が調べた結果、貴女と同じ意思を持った貴女は確認をしただけで、800億存在していますから。」
「は、800億!!!???」
于吉さんが述べた数に私は驚きを隠せなかった。
すると、于吉さんは涼しい顔で………
「何を驚いているんですか、こんなのはまだ少ない方ですよ。」
………と言ってきました。
「それに、この方法であれば能力が付け足されていくのですから、その800億の貴女が基である貴女に『同調』すれば、軽く呂布を倒せるほどに強くなるでしょう。」
于吉さんの言葉を聞いて、私はその姿を想像してみました。
軍師であった自分が天下無双と謳われる恋さん………いや、呂布を圧倒する。
「//………えへへ」
思わずにやけてしまう私。
「……さて、長々と話してしまいましたが、本当に貴女は復讐をする気があるのでしょうか?貴女が私達の力を借りずにこのまま消えてしまうと言う選択肢もあります。復讐をしたくなければ、消えてしまうと言う事もありだと思いますが………」
「………いいえ、私はもう決めたんです。お願いします、私に力を与えてください。」
于吉さんはそう言いましたが、私は決意を変えることはしませんでした。だって、一刀様は私一人だけの人だから………
「………分かりました。貴女の決意を確かに聞かせてもらいました。……では左慈、準備に取り掛かりましょうか。」
そう言って于吉さんは、左慈さんの所へ向かいました。
~それからしばらくして~
「………では少しの間、目を閉じていてください。頭痛がすると思いますが、頑張って耐えてください。」
「………はい。」
いよいよ始まります。……まさか敵であった人達に、力を与えてもらうなんて思ってもいませんでした。
「ではいくぞ、于吉!!」
「ええ、……『同調』……開始!!」
「………!!?ッ!!アアァァ!!…アァァァァァ!!!」
左慈さんと于吉さんの声が聞こえてから、しばらくして……私は、今まで感じた事が無いような激しい頭痛に襲われました。
どのくらい痛いかと言えば、今まで『痛い』と感じていたものが、蚊に刺されたように感じる程でした。
「ウゥゥゥ………アァァァァァ!!!」
そして私は、頭痛と一緒に今まで体感した事の無かった出来事が、頭の中に流れてきました。
私以外の女を選んで、一緒に光に飲まれて消えていく一刀様………
そして、その光景を恨むように見る私………
その女は度々違う女に変わって、その光景が繰り返された。
何回も………
何十回も………
何百回も………
何千回も………
何万回も………
ずっと………ずっと………ずっと………
繰り返した。
「アァァァァァ!!!………ど……う……し………て………え…………らん……で………く…………れ………な…………い……………の……………」
私の心に、痛みと悲しみが一気に、込み上げてきました。
…………………………
「……ふぅ………『同調』完了しました。」
「………ハァ………ハァ………ハァ………」
「大したものだな………800億の記憶と全て同調をするとはな………どうだ、力を感じられるか?」
「………ハァ………ハァ………は、はい……物凄く……か、感じます………」
左慈さんに声を掛けられた私は、息を切らしながら、そう答えました。
実際、力を感じていると言うのは事実で、今の私なら呂布はおろか、百万以上の軍隊を相手にしても余裕で戦える自信があります。
「それでは、疲れているところを申し訳ないですが………今度は貴女の姿と、名前を変えましょう。」
于吉さんは、そう言って近付いて来ました。
「あ、あの………于吉さん……どうして姿と名前を変える必要があるのですか?」
私のその問いかけには、左慈さんが答えてくれました。
「これからお前が行く外史には、お前とは違う諸葛亮が存在している………同じ外史に二人も同じ人物がいては様々な悪影響を及ぼすからな。」
左慈さんの言う事がどうゆう事なのかは、私でも分かります。
確かに同じ世界に二人も同じ姿と名前の人間が居たら、ややこしいし、気味も悪い。
「で、でも……一体どうすれば姿を変えられるんですか?」
私がそう言うと、于吉さんが袖口から一つの小さな瓶を取り出しました。
「この薬を、自分がなりたい姿を想像をして飲むと、その想像の人物像と全く同じになれるのです。」
………何だか何処かで聞いた事があるような気がしましたが、私はその瓶を受けとると、早速飲むことにしました。
「(やっぱり、背は高くしたいし……む、胸も大きい方がいいよね。そして他には……)」
そう考えながら、私は瓶の中の薬を飲みました。すると、私の身体が光り始め、身体に変化があらわれました。
まず、今まで背が低い方だった左慈さんを見上げる形だった私は今では、ほぼ同じぐらいになりました。
そして、胸には……今まで感じた事が無かった、ずっしりとした重量感をちゃんと感じられるようになって、触ってみると、確かな柔らかさと触られた感触を感じられました。(涙)
そして髪の毛は、私のふくらはぎにまで伸びて、髪の色も…金色から黒色へと徐々に変わっていきました。
「おやおや、随分と変わられましたね~」
于吉さんがそんな事を言っていると………
「次は名前の件だぞ。お前には、今の『諸葛亮孔明』の名前は捨ててもらう事になるがいいな?」
左慈さんは早く話を進めようとします。それより……
「……はい。それで、あの……真名の方も捨てなければいけないんでしょうか?」
真名の方も捨てるべきか聞いてみます。すると左慈さんは………
「別に捨てたくないなら、捨てなくていい……捨てるか捨てないかは、お前の自由だからな。」
………そう言いました。
私はこれから、新たな人生を踏み出すのです。復讐の為に………
「分かりました。じゃあ、真名も捨てます。だって今の私はもう、『朱里』じゃないから……」
復讐をするためには……全てを断ち切らないといけないですから……
そう思っていると、于吉さんが口を開きました。
「分かりました。では、私が貴女に新たな名前を与えます。
………姓は司馬、名は懿、字は仲達、真名は………『零里』(れいり)と言うのはいかがでしょうか?」
于吉さんの提案してくれた『司馬懿』と言う名前には何だか不思議な気持ちになりましたが、新たな真名の『零里』(れいり)と言う名前は、今の私にはぴったりな感じがしました。
「………はい、良いと思います。今日から私は『零里』になります。」
私は新たな名前を受け入れると………
「では、いよいよ貴女には、新たな外史に行っていただきますよ。」
于吉さんが鏡を出しながら、そう言いました。
……いよいよです。
……いよいよ私の復讐が始まるのです。
「はい。……あの…その前に一つ、お願いしていいでしょうか?」
「構いませんよ。」
私が尋ねると、于吉さんが快諾してくれました。
「あの……一刀様は必ず私の前に現れるようにしてください。絶対に他の武将達の前に現れないようにしてください。」
一刀様は、私以外の女には誰一人として渡してはいけませんから……
「……分かりました。では、そちらはこちらにお任せください。」
于吉さんはまた、快諾してくれました。
「ありがとうございます。」
私は笑顔でお礼を言いました。
「では、この鏡に触れれば、外史への転移が行われますから……鏡に触れてください。」
私はそう言われて、于吉さんが持っていた鏡に触れました。すると鏡から光が出て、私の身体を包み込みました。
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スマホから投稿をしている為、これからもかなり時間が掛かるとおもいます。
後、にじファンでの小説とは、少々修正をしています。