No.458065

おや?五周目の一刀君の様子が……3

ふぉんさん

今作初の戦闘描写です。
個人的に一騎打ちとかって、実力がすっごーく伯仲してないとすぐ終わると思うんですよね。
なので結構あっさりしちゃってます。

2012-07-23 13:51:55 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:14579   閲覧ユーザー数:11939

「北郷殿、準備はよろしいかな?」

 

「おう。いつでも来い」

 

街の外を出た荒野に、俺と趙雲は武器を構え向き合っていた。

事の経緯は趙雲の一言。

 

『私を自分の女にしたければ、私よりも強くなくてはな』

 

との事。

まぁこんな美人を自分のものにできんなら多少の困難は乗り越えてみせよう。

さて相手は女だが、三国時代の英雄趙子龍。腕は相当のもんだろう。

静かに槍を構えるその姿勢から、幾分の隙も伺えない。

俺は外へでる途中、鍛冶屋で安く譲ってもらった直刀を構える。

「では……参る!」

 

息を吐きながら踏み込み。

繰り出された突きを躱し、追撃の横薙ぎを直刀で受け止める。

 

「チッ!」

 

受けた直刀が金切り音と共に弾かれる。

なんつー威力。女の膂力じゃねぇな

勢いそのままに後ろへ飛び距離をとる。が、趙雲はさらに踏み込み槍を振るう。

まともに受けてたら武器がもたねぇな。

絶え間ない斬撃を可能な限り避ける。無理なものは受け、直刀を傾け力を逃がす。

 

「逃げてばかりでは勝てませんぞ?北郷ど、のッ!」

 

声に合わせ振るわれる豪撃。今までとは速さが段違いだ。

いいねぇ腕が鳴る。俺は迫る槍の穂先を紙一重で避け、柄へ直刀を振り下ろす。

 

「ッ!」

 

流石に真っ二つには出来なかったが、その衝撃に槍を落とさんと踏ん張る趙雲。

隙、できたな。

趙雲の硬直に合わせ懐に潜り、空いた鳩尾に肘を叩き込む。

 

「かはッ」

 

片膝を着きしゃがみ込む趙雲。それでも武器を手放さなかったのは流石ってとこか。

 

「終わりだな」

 

直刀を首にそえ、告げる。

悔しそうに唇を噛み締め睨まれる。

おいおいそんな表情するなよ。煽ってんのか?

 

「約束、守ってもらうぜ」

 

「なッ!」

 

俺を見上げる趙雲の顎を取り、唇を奪う。

瞬間、眩い光が視界を覆った。

屋根の上。夕日に照らされ、纏めた髪を風にふためかす趙雲。

その後ろ姿は幻想的な美しさに満ち溢れている。

 

『この身も愛も魂も、全て貴方に賭けている。それは、愛紗や朱里も同じでしょう』

 

『…………』

 

『それに全て応えろとは言いませぬ。ですが、忘れずにいて下され。さすれば、例え戦場に屍を晒すとも、心だけは貴方と共に居ることが出来る』

 

『……忘れるわけないだろう。だから、星も死なないでくれよ?』

 

『ふっ。主のご命令とあらば、冥府の番人すら打ち倒してご覧に入れましょうぞ』

 

ふと、景色はフェードアウトする。

目の前に居るのは顔を赤く染めた趙雲。

何だ今のは。あの趙雲と会話していたのは間違いなく俺だった。

だが俺にそんな覚えは無い。まして趙雲に会ったのはついさっきだ。

 

(あるじ)……なのですか?」

 

「あ……?」

 

と、目の前の趙雲の顔が妙に熱っぽい。

瞳は濡れて、いつもの俺なら我慢できず襲い掛かる程だ。

だが今は先の現象に頭が着いてこず、うろたえる事しかできない。

 

「主……主ぃ!」

 

感極まった様子で趙雲が俺に抱きついてくる。

何なんだ一体。願っても無いが、流石に意味がわからん。

 

「お、おい趙雲!」

 

「ぐす……」

 

今度は急に俺の胸で泣き始めた。

門の方へ向き、程立と戯志才へ助けの視線を送るが

 

「ふがふが」

 

「はい稟ちゃん。とんとーん」

 

鼻血を出した戯志才を程立が介抱していた。何で鼻血……?

 

「はぁ」

 

溜め息を吐く。とりあえず趙雲が落ち着くまで何もできんな。

それから俺は十分程趙雲を抱き立ち尽くしていた。

「急に取り乱して申し訳ない。だが、主が急に接吻などするからですぞ?」

 

「……俺は勝負の報酬を貰っただけだ」

 

今俺らは街に戻り通りを歩いている。街灯の無いこの時代。月明かりにのみ照らされる街並は先程初めて見た時に息を飲んだ。

それはともかく、勝負が終わってからの趙雲の豹変ぶりに、程立も戯志才も驚いていた。

妖術などと言われ俺に鋭い視線をぶつけてきたが、趙雲が割って入り今は治まっている。

 

「……とりあえず今日はもう宿を取って休みましょう。北郷殿にも、星にも、いろいろ聞きたい事があるので明日きっちり吐いて貰います」

 

憮然とした面持ちで戯志才が言い放つ。

吐いて貰うと言われても、何故趙雲がここまで様変わりしたのか、俺にもわからないのだが。

「ふー」

 

寝台に座り、手で握りこぶしを作る。

やはり俺はこの時代に着てから想像以上に戦える様になっていた。

理由等はもう考えない事にする、考えたって分かるわけないしな。

あの趙子龍と戦い、勝つ事ができるのだ。これは大きな儲け物だろう。

 

と、急に部屋の扉が開かれる。

 

「……来たか」

 

「おや、主は私の考えなどお見通しという事ですかな?」

 

部屋に入ってきたのは趙雲。話をしに来ると思っていた。

相も変わらず挑戦的な笑みを浮かべている。

さて、色々と聞かせてもらおうか。

※前に掲載していたサイトの方でご指摘を頂いたのですが、この三話の内容が、ニコニコ動画に上げられている某作品と酷似しているらしいです。

ですが、ここの描写はこの作品を書き始める前から考えていましたので、出来れば変更は避けたいです。先の展開などは異なっているようなので、何卒ご了承ください。


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
36
2

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択