注意:今作の主人公は北郷一刀という名前ですが、性格がまったく異なります。
それをしっかり踏まえご覧ください。
「んぁ?ここは一体……」
ふと、目の前の景色に意識を向けると、見渡す限り荒野が広がっていた。
俺は何をしてた?
今までの記憶が吹っ飛んでいる。
「俺は北郷一刀。聖フランチェスカ二年で、所属クラブ無し」
一年途中まで剣道部に入っていたが、規則だの何だので好き勝手できないので止めた。
自分の素性は覚えている。抜けているのはこの状況に至る経緯。
「どうしたもんだが……」
このありえない状況に、何故だか冷静で居られる自分に関心する。
この感じ、初めてじゃない……?
とりあえずポケットから携帯を取りだす。
「チッ。圏外か」
携帯は使い物にならないらしい。
どうしたもんか。
「おう兄ちゃん。珍しいモン持ってるじゃねぇか」
と、携帯をポケットに放り込もうとしたその時、壮齢の男の声が聞こえた。
声に振り返ると、そこに居たのは三人組の男。
「……何だあんたら。コスプレか?」
思わず口からでたが、三人とも不思議そうな顔を浮かべるだけ。
「何言ってんだ、こいつ」
「さぁ?あっしに聞かれても……」
まぁいい、とりあえず現状確認だ。
「なぁ、ここどこなんだ?」
「……はぁ?」
「気がついたらここに居たから場所が把握できなくてな。携帯も圏外だから使い物にならん。おっさん等の携帯も圏外か?」
まさかその歳で携帯を持ち歩いて無いなんてありえんだろう。
「……アニキ。こいつ、頭おかしいんじゃないすか?」
「あぁ。俺もそう思ってたところだ」
「あん?」
俺の頭がおかしいだと?
どっちかっていうと話の通じないおっさん等が頭おかしくねぇか?
「まぁ、とりあえず俺等が言いたい事は一つだ」
その言葉と共に俺の頬に触れたのは、冷たい鉄の感触。
「……あ?」
「そのキラキラ光る服置いてとっとと消えな」
ぴたぴたと頬を叩かれる。
視線を落とすと、それは薄く研がれた刃を備えた……包丁よりも大降りな、ナイフの刃。
「銃刀法違反?……まぁどうでもいいが、うぜぇ」
ナイフの面を左手で打ち払い、正面のおっさんの腹を殴る。
「ぐッ!」
おっさんは苦痛に顔を歪めナイフを落とす。
落ちたナイフを素早く拾い、蹲るおっさんの頬をナイフでペチペチと叩く。
ちょっとした意趣返しだ。
「急に刃物ちらつかせて脅すとかおっさんら外道だねぇ。おっと横の二人、このおっさんの顔が悲惨な事になってもいいのか?」
おっさんの横にいるチビとデブが俺に向かって殴りかかろうとするところに声をかける。
低い声で唸り二人はすぐさま停止した。
俺はここが何処だか聞いただけなんだがなぁ。まぁいい、気を取り直そう。
「で、おっさん達。ここは何処なんだ?」
「ち、陳留だ」
陳留?んなとこ日本にあったか?
「なぁ、ここは日本じゃないのか?」
「にほん?兄ちゃん何言ってんだ?」
通じない。ここが日本ならば通じない訳が無い。
びくびくした面持で俺をみるおっさん達。これ以上聞いても無駄か。
俺は持ってたナイフをおっさんから離し、持ち物を確認する。
とりあえずポケットには携帯しか無かった。財布が無いのは困ったな。
「しょうがねぇ。おっさん等、有り金置いて消えな」
「えぇ!?」
「いや、違うな。ここで痛い目みるか、有り金置いて消えるか選びな」
驚く三人組に睨みを利かせそう言い放つと、三人とも小さな巾着袋を差し出して、走り去っていった。
巾着袋を開けると、何やら見た事ない硬貨等が入っている。
「ったく……ここは本当に何処なんだ?」
「はっはっは!!」
今度は女の笑い声。少しは一人で考えさせてくれないもんかねぇ。
内心溜め息を吐きながら声の方へと目を向ける。
「……ほぅほぅ」
そこには女が三人。槍を持った青髪の白い女と、眼鏡をかけた利発そうな女。そして小さな金髪の女の子。
いい女達じゃねぇか。
「盗賊に脅され追い返すどころか逆に金を奪うとは、中々に面白い」
盗賊……もう驚かねぇ。ここは日本じゃないらしいしな。
そんな事より、値踏みする様に俺を見ながら喋るこの青髪の女……いいねぇ。
まぁ、今は辛抱しよう。現状把握が第一だ。
「なぁあんたら、ここは陳留ってとこらしいが近くに街はねぇか?」
「ここから南に少し歩けばある。私達もそこを目指しているから着いて来るといい。……だが、街に着いたら質問をいくつかよろしいか?」
青髪の女が含み笑いを俺に向ける。
「別に構わねぇ。世話になる」
背を向ける三人に着いて行く。
まだここが何処だかも把握できてないが、何だかいろいろと楽しめそうだな。
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何回もの外史を繰り返し経験した北郷一刀。時には魏にて覇王曹操を大陸の王へと導き、時には呉にて、大陸を呉蜀の天下二分へと導き、時には蜀にて王となり大陸の行く末を争った。その三国いずれにも拾われぬ外史をも渡り歩き、今五度目の外史が始まりを迎える。