No.457767

乱世を歩む武人~第十六話~

RINさん

日常編。十四話のあとがきに桂枝のキャラ設定(一部終了時)をのせました。気が向いた方のみご覧ください。

2012-07-22 22:45:25 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:6445   閲覧ユーザー数:5516

一刀

「ん~・・・コレどうしようかなぁ」

 

そういって出しているのは一つの台帳。これには警備隊で使う消耗品やその他経費を修めることになっている。

 

なっているのだが・・・

 

一刀

「自分でやらなかったのがまずかったかな・・・」

 

そう、忙しかったこともあり沙和と真桜に任せっきりにしていたら計算がかなり合わなくなっていたのだ。

 

凪がそれに気づき二人に制裁。その後俺にもってきた。まぁその時は俺も説教をされたわけだがそれだけでは台帳は埋まらない。

 

一刀

「さて、凪たちのところに行くとするか・・・」

 

しかたないからウチのメンバー全員がかりで台帳の帳尻を合わせることになった。

 

・・・といっても何から手を付けていいのかがわかっていない。

 

それを決めに行くのが今回の話なんだが・・・さて、どうしよう。

 

一刀

「って言っても一個一個潰していくしかないよなぁ・・・まずは武具・・・いや、食料関係か?」

 

俺がブツブツと歩いていたら前から2つの人影。そこには・・・

 

 

 

桂花

「ちょっと桂枝。それほんとなの?」

 

桂枝

「ああ、コレは絶対にそういう理由じゃないとならないと思うんだよなぁ・・・」

 

桂花

「そう・・・わかったわ。華琳さまに一度確認してみてちょうだい。」

 

桂枝

「ああ。そうする予定だ。」

 

 

 

魏の賢人姉弟が歩いていた。

 

 

 

 

 

桂花

「げっ」

 

桂枝

「ん?」

 

どうやら二人共こちらに気づいた様子。荀攸のほうは窺い知れないが桂花はすでに殺気すら視線に込めてこちらを見ている。

 

そうだ、モチはモチ屋。こういうときには軍師様の力を借りるのが一番だ。

 

一刀

「よっ、こんなところで会うなんて奇遇だな。」

 

まずは手頃な話題から近づいてみよう。

 

桂枝

「奇遇・・・ってほどか?北郷の部屋ここから近いだろう。」

 

一刀

「そ、それもそうだな・・・」

 

桂花

「・・・」

 

・・・会話が終わってしまった。桂花のほうはそっぽを向いてしまい。「話しかけんな」と言わんばかりのオーラが出ている。

 

気を取り直して・・・

 

一刀

「こ・・・この前の書庫整理は大変だったな。俺なんてその日の夜筋肉痛で大変だったよ。」

 

桂枝

「そうか?俺としては確認事項が多かったからソレを調べながらやっていたらいつの間にって感じだったが」

 

一刀

「いや、それでもすごい量だったろう?検知書から兵法書から農政書とか。中身はいまいちわからなかったけど・・・」

 

桂枝

「・・・?警備には必要ない情報だしいいんじゃないか?」

 

一刀

「そ・・・そうかな?」

 

桂枝

「ああ」

 

桂花

「・・・」

 

また止まる会話。前にもおもってはいたがなんて言うかその・・・会話が広げづらい。最小限以上を自分から話そうとしない。

 

ならばとおもい桂花の方へ向く。相変わらずそっぽを向いているし足も心なしか早くなっている。

 

一刀

「・・・そういえば、あそこの埃は相当なものだったな。今度掃除したほうがいいと思うんだけどどう思う?桂花」

 

桂花

「・・・」

 

完全に無視だ。

 

一刀

「おーい、聞こえてますかー?」

 

桂花

「・・・」

 

ここまで無視をされると逆に意地でも振り向かせたくなってくるというものだ。

 

ちなみに荀攸は無言のまま桂花の隣を歩いている。

 

一刀

「桂花、聞こえないのか~?うーむ、普通の呼び方じゃ嫌だっていうんなら他の呼び方を考え無いとな・・・そうだ。桂花タンとかどうだ?桂花タンハァハァ、とかよくね?」

 

桂枝

「・・・?」

 

桂花

「・・・・・・」

 

一刀

「これじゃあダメと・・・それじゃあ、スーパーチビ美少女策略家桂花タンとかどうだ?」

 

桂枝

「すー・・・なに??」

 

桂花

「・・・」

 

お、顔がひきつってきてる。もう少しか?

 

一刀

「これもだめか・・・となると、「普段は男嫌いを演じているが。その実男が大好きでたまらないスーパーチビ美少女策略家桂花タ「ああもううるさい!」

 

やった!食いついた!

 

桂花

「さっきからピーピーともう・・・耳元で分けの分からない言葉を並べ立てないで!」

 

一刀

「やっと反応したか。」

 

桂花

「はっ!?ちっ・・・」

 

桂枝

「・・・勝負だったのか?」

 

しまったと慌てて口をつぐむ者の、失態を見逃す俺でもない。荀攸も反応してるし。

 

一刀

「ふふんっ。俺の勝ちだな」

 

桂花

「こんな低能な手に引っかかるなんて・・・」

 

一刀

「智略の勝利といってもらいたいものだね、桂花タン。」

 

 

桂花

「語尾に「タン」をつけるのはやめなさい!気持ち悪い!ちょっと桂枝!なんで止めなかったのよ!」

 

桂枝

「いや、敵意とかがある感じじゃなかったし「スー・・なんとか」の辺り何言ってるのかわからなくてさ・・・止めたほうが良かったのか?」

 

桂花

「良かったに決まってるでしょ!次にあったら全力で止めなさいっ!」

 

桂枝

「そうか、じゃあ次からは「過程」、「方法」、「手段」を選ばずに止めることにする。」

 

・・・もう二度とできないなこれは。

 

一刀

「でさ・・・勝った所でご褒美として・・・二人共どこ行くんだ?」

 

桂花

「・・・あんたなんかにソレを答える必要性がこれっぽっちも感じないわ。」

 

敵意をまき散らしながらにらみつけてくる桂花。

 

一刀

「相変わらず敵意まんまんだなぁ・・・なぁ荀攸、どこ行くんだ?」

 

桂枝

「なんか用事でもあるのか?」

 

一刀

「いや、そういう訳じゃなんだけどさ・・・」

 

桂花と違って敵意はないがこっちは純粋に教える理由がないから教えてくれない感じだ。やっぱ変な所で似てるよこの姉弟。

 

桂花

「大体ね。私は男なんて言う、下賤で穢らわしい生き物となんて接点を持ちたくないの」

 

男は皆敵だと言わんばかりのひどいいいよう。いや、多分実際そう思ってるんだろう。

 

一刀

「男の中にだって、下賤で穢らしくないやつもいると思うんだけどなぁ・・・」

 

桂花

「そんなことないわ。低俗で、低脳で、煩悩の塊なのは種としての本能だもの」

 

一刀

「・・・隣にいる荀攸はどうなんだ?」

 

桂花

「これは私の弟だもの。穢れる前の純粋な頃から私が育てたんだから他の男と違って当然でしょ?」

 

桂枝

「・・・だ、そうだ。」

 

隣にいる荀攸は苦笑い。きっといつもこんな感じなのだろう。

 

一刀

「なるほどなぁ・・・だったら俺を手元においてる華琳はどうなるんだ?」

 

そう言い返すと桂花は華琳の名前にぴくりと反応する。

 

一刀

「少なくとも、そんなダメの塊みたいなやつを登用している華琳は、見る目がないってことになるんだよな?」

 

桂花

「ぐっ、あなた。華琳さまを愚弄するつもり!?そんなの私が許さないんだから!」

 

一刀

「別に愚弄しているつもりはないさ。俺だって華琳の才能は信じている。でも、俺が隊長なんてやっていいのかなって思う時があるけどね。

 

桂花

「華琳さまは例え低俗で煩悩の塊でも有能であれば登用するわ。アナタが華琳さまの期待を裏切らなければいいんだけど」

 

一刀

「まぁニートやってるのも柄じゃないしね。頑張ってみるさ」

 

桂花

「にぃと?」

 

桂枝

「・・・察するに似萎人ってところか?ダメ人間的な?」

 

一刀

「今変な当て字が見えて気がしたが・・・まぁ、仕事も勉強もしてない人のことさ。仕事はしなくちゃなって」

 

桂花

「ああ、なるほど。華琳さまは神輿として飼っているあなたが無職では格好がつかないから隊長の肩書きをあげたのよ。そうに違いないわ。」

 

桂花は我が意を得たりと言わんばかりにウンウンと頷いている。

 

桂花

「そうよ、絶対にソレだわ。そうでなければ、こんな能なしを隊長に任命するわけないもの。そうでしょ!?桂枝・」

 

桂枝

「あー・・・実際に仕事観てないからわからん。」

 

桂花

「見なくともわかりなさいよ!」

 

・・・本当に桂花は否定的だ。肩書きだけの人間なんて華琳が最も嫌いそうな人物だと思うんだけどな。

 

桂枝

「いや、まぁ・・・なんだ。とりあえずこんなところで油売ってる場合でもないだろうとだけは言えるかな。」

 

桂花

「はっ!そうだわ!早くしないと華琳さまが・・・」

 

華琳

「私がどうかしたの?」

 

桂花

「華琳さま!」

 

華琳の声をきくなり、荀攸は会釈をし、桂花は縮こまった。

 

・・どうしたんだろう?いつもなら顔を赤らめて恥ずかしがる桂花が、今日は随分とおとなしいじゃないか。・

 

華琳

「一刀はどうしたの?」

 

一刀

「ああ、俺はこれから凪たちのところへ行く所。色々と相談することがあってさ。」

 

華琳

「ソレはいい心がけね。・・・桂花。頼んだ本、早くとってきてちょうだい。」

 

桂花

「は、はいっ!ごめんなさい!」

 

華琳

「謝るほどのことではないんだけど・・・それで桂枝、あなたはどうしたの?」

 

桂枝

「はい、姉が本を取りに行くとのことでしたのでその手伝いにと・・・それに、主人に一度確認をしたいことがありまして・・」

 

華琳

「私に?何かしら。」

 

桂枝

「はい、軍全体における消耗品関係の書類を一度洗いなおしていたのですが・・・どうにも計算が会わないのです。」

 

なんだかすごくいやな話題になっている気がする。

 

華琳

「どういうこと?」

 

桂枝

「はい、まだ全体の合計をみただけなのですが・・・どうにも実数より少なく感じるんですよ。それこそ台帳一つ分くらい。」

 

華琳

「ソレは困るわね・・・。で、どうするつもりなの?」

 

桂枝

「とりあえず部隊一つ一つの台帳を計算し直すところから初めて行くしかないですかね・・・ですのでそのために部隊個々の台帳を見る許可を。と思いまして。」

 

華琳

「どのくらいかかりそうなの?」

 

桂枝

「正直わかりません。原因が見つかればおそらくすぐなのですが・・・」

 

華琳

「なかなか見つからなければ時間もかかると・・・わかったわ。好きに調べていいわよ」

 

桂枝

「ありがとうございます。」

 

華琳

「なんならついでに経費削減の案をだしてくれても「あ~・・・ちょっといいかな?」あら、何かしら?」

 

このままでは大事になってしまう。そう考え俺はここで打ち明けることにした。

 

一刀

「実はさ・・・警備隊の台帳。俺のところにあるんだ。」

 

 

桂枝

「・・・む?」

 

桂花

「なんですって!?」

 

首を傾げる荀攸と驚きの中に若干の笑みを浮かべる桂花。

 

一刀

「ちょっとウチのところで色々あって・・・記入漏れができちゃったんだよ。」

 

桂花

「何やってるのよアンタ!!余計な仕事を増やして!!これだから男は低能だっていうのよ!!」

 

ぐっ。今だけは言い返せない・・・!

 

華琳

「そこまでよ桂花。・・・それで、どのくらい修正に掛かりそうなの?」

 

一刀

「それが・・・結構色々と確認することがあってさ・・・実を言うとだから凪達のところに行こうとしていたんだ。多分1週間くらいかかると思う」

 

正直に言うと一週間でも相当な突貫作業になることを覚悟しての時間だ。まぁ俺のミスだし仕方ないが。

 

華琳

「一週間・・・桂枝。アナタに任せたらどのくらいかかるものなのかしら?」

 

桂枝

「ん、ちょっといいか?それ。」

 

そういって手に持っていた台帳をみてパラパラとめくっていく。そして

 

桂枝

「・・・まぁこのくらいなら今日中ですかね。」

 

とんでもないことを当たり前のようにさらっと言い出した。

 

 

 

 

 

華琳

「そう、ならば先の言葉は変えないわ。アナタに一任する。」

 

桂枝

「御意に。では早速「ちょ・・・ちょっと待てよ!」・・・?どうした北郷?」

 

一刀

「お前今今日中って・・・自分で言うのもなんだけどコレ相当な量あるぞ?」

 

正直確認作業だけでもそのくらい掛かりそうなのにそれを電卓のない此の時代。計算してまとめるとなるとどのくらいかかるのかと・・・

 

桂枝

「ああ・・確かに確認には手間取るな。ソレに関してはお前らにも手伝ってもらおう。」

 

一刀

「いや、ソレはもちろんだけどそれでも計算が」

 

桂花

「アンタにひとつ言わせてもらっていいかしら?」

 

先ほどまでの嫌悪の顔ではなくその顔は至って真面目だ。

 

一刀

「な・・・なんだよ桂花」

 

桂花

「桂枝はね・・・私の弟なのよ?。しかももてる才能のすべてを、私が「軍略と政治」の勉強に注いだ分を「計算」のみに使っているの。わかる?アンタ程度じゃこの子の処理能力の10分の1にも追いつかないわ。」

 

その目にあるのは絶対の自信。身内びいきを差し引いても荀攸の能力に信頼を置いているのはありありとみてとれた。

 

桂枝

「・・・まぁ俺はお前の能力を知らんからなんともいえんが、その辺のやつよりかは出来る自信があるよ。では主人。」

 

華琳

「ええ、よろしくね。」

 

そういってスタスタと警備室の方へ歩いて行ってしまったので慌てて追いかけていった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桂枝

「よし・・・と、これで終わり。ちょうど穴があったのもコレで正解みたいだ。時間帯的にちょうどいいだろし十全だな。」

 

一刀

「す、すげぇ。本当に一日で片づけやがった・・・」

 

その後の彼はすごかった。

 

警備隊の武器防具に始まる必要経費、人数からくる給与の総合、その他諸々全てをたった一人で台帳にまとめあげたのだ。

 

書類をみる速度も早かったが真にすごかったのはその計算速度。

 

ゆうに2月分はあり桁になおして6桁を超えそうなその計算をまるで電卓でも見ているかのように一発で弾きだして記入しいった。

 

一応3つほど検算をしてみたがその全てが完璧。まさに人間計算機そのものだ。

 

一刀

「流石・・・桂花にああ言わせるだけはある・・・いや。本当にすげぇよ」

 

桂枝

「そうか。まぁそう思うのなら何よりだ。じゃあな。」

 

そういってスタスタとでていこうとする荀攸。

 

一刀

「まってくれ。荀攸、お礼に飯でもおごるからさ。一緒に食わないか?」

 

流石に仕事を手伝わせてこのまま返すというのもよくない。

 

桂枝

「いや・・・主人から頂いた仕事をしただけだ。礼をするようなことではないさ」

 

一刀

「あ、ちょっと・・・」

 

 

本当に当たり前のことをしただけ、という態度を崩さずにさっさと行ってしまった。

 

俺はさっき彼が座っていた席を見てみる。先程までのごちゃごちゃした場所とはすでに違いちゃんと月ごとに分けられている書類がそこにはある。

 

 

 

 

一刀

「う~ん・・・大きな借りを作っちゃったかなぁ。」

 

 

 

 

いつか何かしらの形でお礼をしないといけないよなぁ・・・俺は一体彼が何をすれば喜ぶのかを考えながら残り短いその日をすごしたのであった・・・

 


 
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