No.457304

英雄伝説~光と闇の軌跡~  91

soranoさん

第91話

2012-07-22 10:56:33 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:953   閲覧ユーザー数:898

女の子を追って急いで道を引き返したエステル達はしばらく戻ると女の子を発見した。

 

~カルデア隧道~

 

「はうぅ~っ……」

そこには女の子に気付かず消えかかっている照明に魔獣が群がっていた。女の子はその様子を見て、思わず声をあげた。

「も、もうこんなに集まって来ちゃうなんて~……。このままじゃ壊されちゃう……。こ、こうなったら……」

女の子はどこからともなく、ややサイズが小さい導力砲を取り出して魔獣に向けた。

「方向ヨシ、仰角20度……。導力充填率30%……。……いっけええっ!」

魔獣の群れは野生の危機感で女の子が撃った導力砲の砲弾を避けた。

「そ、それ以上近づいたら今度は当てちゃうんだから!ほ、本当に、本気なんだからっ!」

女の子は導力砲を魔獣に向けて精一杯強がったが、魔獣達は獲物を女の子に変えてじりじりと詰め寄って来た。

「あう……。ぎゃ、逆効果だったかも……」

詰め寄って来る魔獣の群れを見て女の子は後ずさった。そして群れの中の一匹の魔獣が女の子に襲いかかろうとした時

「てりゃあああっ!」

エステルが飛び込んで棒で女の子に襲いかかった魔獣を吹っ飛ばした。そして続くようにヨシュアやプリネ達が女の子を守るような位置で武器を構えた。

「え……。あ、さっきの……!」

女の子はエステル達を見て驚いた。

「話はあとあと!いいから下がってて!」

「とりあえずこいつらを追っ払うからね!」

「余に任せるがよい!」

そしてエステル達は魔獣の群れと戦闘を開始した!

 

「ハァァァ……!旋風輪!!」

「そこだ……!絶影!!」

エステルが棒で魔獣の群れを一気にダメージを与えるとヨシュアがすかさず止めを刺し

「とうっ!」

「出でよ、ソロモンの魔槍!……死愛の魔槍!!」

「暗黒の槍よ!……狂気の槍!!」

「落っちろ~!……サンダーボルト!!」

「貫け!……アイスニードル!!」

エヴリーヌは弓矢で、リフィアやプリネは暗黒魔術の槍で、ミントやツーヤは自分達しかできない独特の魔法でエステルやヨシュアの攻撃を受けてない魔獣達を仕留めたり、重傷を負わせた所を

「風よ、切り裂け……旋刃!!」

エステルの風の魔術によって残った敵を殲滅した。

 

「こ、こわかった~っ……。あのあの……ありがとうございますっ。おかげで助かりました。」

魔獣達が倒されて安心した女の子はエステル達にお礼を言った。

「あはは。無事で何よりだったわね。でも……ちょっと感心しないわよ?魔獣を挑発するなんて危ないことしちゃダメじゃない。」

「あ、でもでも……。放っておいたら照明が壊されちゃうと思って……」

エステルのちょっとした注意に女の子は申し訳なさそうな表情で答えた。

「そういえば……。どうして、あの魔獣たち、消えた照明に群がっていたのかな?」

「前に街道灯を交換した時にも同じことがあっただろう?オーブメントの中にある七耀石の回路は魔獣の好物だからね。だから街道灯には、魔獣よけの機能が付いているんだけど……。その機能が切れたら逆に狙われやすいってわけさ。」

女の子の言葉からある事が気になったエステルにヨシュアが説明した。

「あ、なーるほど。でも、それにしたって無茶するにも程があるわよ。大ケガしたら危ないでしょ?」

「エステルの言う通りだ。無茶はほどほどにするのが一番だが、やりすぎてしまうと自らの身を滅ぼしてしまうぞ?」

「あぅ……ご、ごめんなさぁい。」

ヨシュアの説明に納得したエステルだったが、女の子を再度リフィアと共に注意した。注意された女の子はしゅんとした。

「リフィアが無茶するなって言っても説得できないと思う。いっつも、お兄ちゃん達やエヴリーヌを巻き込んで無茶をしているのに。」

「……聞こえておるぞ、エヴリーヌ。余を鉄砲玉扱いするでない!」

「あ、あはは…………」

エヴリーヌの呟きが聞こえたリフィアは怒り、プリネは何も言わず苦笑した。

「まあまあ、そのくらいで。第一、無茶するなとか君が言っても説得力ないしね。」

「そこっ、水をささないのっ!まあいいや……。あたし、エステルっていうの。」

「僕はヨシュア。2人とも、ギルドに所属している遊撃士なんだ。」

「わあ、それであんなに強かったんだ……。それでそこの方達はどなたなんでしょうか?」

エステルとヨシュアが遊撃士と知った女の子はミントに負けない可愛らしい笑顔で納得した後、リフィア達を見た。

「余の名はリフィア!しかと覚えておくといい!」

「……わたし、エヴリーヌ。よろしくね。」

「プリネと申します。私達は事情があってエステルさん達の仕事のお手伝いをさせて頂いているんです。」

「そうなんですか……遊撃士や軍人でもないのに強いんですね。」

「そりゃあそうよ。プリネ達はなんたって”闇夜の眷属”なんだから!」

「なんで、そこで君が得意げになるんだか………」

「わあ……凄い!話には聞いていたけど”闇夜の眷属”に会ったのは初めてです!えっと……そちらの2人もそうなんですか?」

プリネ達が異世界の人種と知ると女の子はキラキラした顔でプリネ達を見た後、ミントやツーヤを見た。

「えっと、まあそんなもんよ!ミント。」

ミント達の正体をはぐらかしたエステルはミントに自己紹介するよう促した。

「はーい!ミントだよ!よろしくね!」

「……あたしの名前はツーヤ。プリネ様にお仕えしています。」

ミントは元気よく名乗り、ツーヤは静かに名乗り出た。

「あのあの、申し遅れました。わたし、ティータっていいます。ツァイスの中央工房で見習いをさせてもらってます。」

(ん?聞き覚えのある名前だな……)

(お姉様もですか?実は私もそうなんです。)

そして最後に女の子――ティータは自己紹介をした。ティータの名前を聞き、リフィアとプリネは聞き覚えのある名前に首を傾げた。

 

「へー、それでそんな格好をしてるんだ。それじゃあ、ティータちゃん。ツァイスに戻るんだったらあたしたちと一緒に行かない?」

「そうだね。また魔獣が出たら大変だし。」

「ほ、ほんとですか?ありがとーございますっ。えっと、ちょっとだけ待ってもらってもいいですか?あの照明を修理しちゃいますから。」

エステルとヨシュアの申し出にお礼を言ったティータは消えかかっている照明を見て頼んだ。

「あ、たしかにこのまま放っておくのは危なそうだもんね。でも、どうしてここの照明が切れそうなんて分かったの?」

「あ、端末のデータベースを調べていたら偶然見つけて……。手違いで、整備不良だったものがそのまま設置されたみたいなんです。」

「なるほど……。早く見つかって良かったね。」

「(端末?でーたべーす?)」

「「??」」

ティータの説明を聞き、興味がなく聞き流しているエヴリーヌ以外、ヨシュア達は理解をしている様子だったがエステルやミント、ツーヤは何の事かわからず首を傾げていた。そしてティータは照明に近付いて作業をした。

「……んしょっと。」

作業が終わり消えかかっていた照明がハッキリと点灯した。

「はい、これでいーです。お待たせしちゃいました。」

「わあ……ティータちゃんって凄いんだ!」

「へえ~、凄い。ずいぶん手際良いのねぇ。」

「うむ。見事な手際だな。」

「さすが、あの中央工房で見習いをしてるだけはあるね。」

「えへへ……。大したことはしてないです。クオーツの接続不良を直して導力圧を調整しただけですから。」

エステル達に褒められたティータは照れながら説明した。

「???なんか充分、大した事のように聞こえちゃうんですけど……」

ティータの説明にエステルは不思議そうな顔で尋ねた。

 

「そんなことないですよー。えとですね。わかりやすく説明すると……オーブメントの内部にはクオーツって言う結晶回路がはまっているんですけど、それがきちんとユニット部に接続されていないと、生成された導力が行き場を失ってしまって、結果的に想定された当初の機能が発揮できなくなってしまうんです。それが街道灯の場合は光と魔獣除けの………………」

「ス、ストップ!」

詳細な説明をどんどん語るティータの説明に耐えきれず、エステルはティータを制した。

「せ、説明はまたにしてそろそろ出発したいかな~。うんうん。こんな所で立ち話もなんだし。」

「あ、それもそーですね。ちょっと残念ですけど……」

「(ホッ………)」

説明を一端止めたティータを見てエステルは安堵の息を吐いた。

「はは、それじゃあ改めてツァイスに向かうとしようか。」

エステルの様子を見て、ヨシュアは苦笑しながら全員に先に進むよう促した。

「オッケー!」

「はいっ!」

「ええ。」

「うむ。」

「ん。」

「はーい!」

「はい。」

そしてエステル達はティータを護衛しながらツァイスに向かった………

 

 

 


 
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