約束をしたの。
私は、あなたと約束をしたの。
あの不思議な世界で。
マカロンって名前のお菓子が美味しい喫茶店に行こうって。
私を護ってくれた、青い薔薇を持った男の人。
あなたがいてくれたから、私は普通の世界に戻ってこれた。
閉じ込められた黒い美術館。
友達になった、金色の髪の女の子。
夢のような、本当の話。
私は、あなたと出会ったの。
お父さんとお母さんと離れ離れになった、あの世界で。
怖かったけど、あなたと話しているとホッとした。
お母さんみたいな喋り方が、少し面白いななんて思ったりして。
私の手を引っ張ってくれて。重たいものを動かしてくれて。
ずっと護ってくれていた。
私のために傷付こうとまでしてくれた。
私を元の世界に戻すために。
でも、駄目。
それだけでは、駄目。
私だけじゃ、意味がないの。
一人だけじゃ、戻る意味がないの。
二人一緒に、あの優しい世界に戻らなくちゃ。
だから約束をしたの。
二人でお茶を。
美味しいお菓子も食べようって。
そのためなら、絵を燃やす事も怖くはなかったの。
お母さんの言う事も、初めて聞かなかった。
名前を呼んでくれている、声。
『一緒に帰ろう』
そう強く思って、私は伸ばされた大きな手を掴んだの。
何をしていたのか、少しわからなくて怖かった。
ぽっかり穴が開いたような寂しい感じがして、
私は美術館を歩き回ったの。
大きな赤い薔薇の前に、立っている人。
赤と青が混ざったような、綺麗な髪の色をした男の人。
私はきっと、あなたを知ってる。
私がお母さんにもらったハンカチを持っていた人。
約束を、したはずでしょう?
あの不思議な世界から戻ったら、一緒に…。
ずっと私を護ってくれていた、青い薔薇の優しい人。
だから今度は私が守るの。
約束を、守るの。
一緒に、お茶をしましょう。
すっごく美味しいって言っていた、お菓子を食べに行くの。
あなたと二人で―
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イヴの一人称というか、心情っぽく。
ネタバレにご注意ください。
ハッピーエンドが好きです。