主人との主従の誓いを交わし領地である陳留へと帰ってきた曹操軍。
戻ってきて一段落ついたあとに早速私達の配属を決めることになったんだが・・・
桂花
「桂枝は私の弟なのよ!私の補佐をするのが当然じゃない!」
霞
「そんなん関係あらへん!桂枝は今も昔もこれからもずーっと張遼隊の副将や!」
桂枝
「え~と・・・どうしようかなこれ」
早速一波乱巻き起こった。
霞
「ウチは張遼、真名は「霞」や。みんなよろしゅーな♪」
桂枝
「私は荀攸。真名は矜持がありますゆえ預けることができませんがみなさん。よろしくお願いします。」
夏侯惇
「うむ!」
夏侯淵
「ああ、よろしく頼むぞ」
ここは王宮の間、今は曹操軍の全ての将が集まっている。
新たに入ったということもあり私たちは自己紹介と配属についての告知を受けに来たのだ。
李典
「なぁなぁ隊長。アレが桂花の弟なん?」
于禁
「なんか全然予想と違うのー」
一刀
「ああ、俺も初めて話したとき驚いた。」
楽進
「でも戦場で見たがあの人・・・かなり出来るぞ」
ヒソヒソと話し声が聞こえる。あの霞さんと同じような話し方の人が李典、眼鏡をかけた子が于禁。
そしてあの戦場で出会った傷だらけの子が楽進という。なんでも北郷の部下で全員それぞれに優秀だとか。
華琳
「さて・・・あなた達の配属だけど霞、貴方は当然武官としてやってもらうわ。部隊を与えるから見事動かしてみなさい。」
霞
「りょーかいや!」
主人の命より霞さんが正式に部隊長になった。まぁ当然だろう。
華琳
「それで桂枝、貴方は・・・」
桂花
「華琳さま、一つよろしいでしょうか?」
姉が一歩前に進み出てきた。
華琳
「あら、何かしら桂花?」
桂花
「はい、先に言わせて頂きますが・・・こいつには人の上に立つ才能はありません。部隊を与えた所で無駄になるのがオチかと」
姉は淡々と事実であろうことを告げる。まぁ実際そうなんだけど。
一刀
「おいおい・・・自分の弟にたいしてボロクソに言うなぁ・・・」
北郷はじゃっかん顔がひきつっている。
華琳
「そうなの?桂枝」
桂枝
「はい、恥ずかしながらどうにも私には人の上にたつという才能が欠片もございません。」
華琳
「それはそれで問題ね・・・本当にできないの?」
桂枝
「ええ、性分ゆえが一番上に立つとどうにも調子が狂ってしまって・・・」
今まで姉の下にいたことがあるせいかどうにも人の上に立つと調子が狂う。なんというか・・・自分のために誰かの力を借りるというのに抵抗があるのだ。
桂花
「そのかわり誰かの補佐、またはどこかの副将あたりにしていただければ十全な働きをお約束しますよ。」
霞
「そのあたりは保証するで。そっちでもこいつの働きは聞いとったやろ?」
華琳
「確かにそうね・・・わかった。今はそれで許してあげる。」
今はかよ。怖い主人だわ。
華琳
「さて・・・誰の補佐にしようかしら?正直どこでも人では足りてないんだけど・・・」
桂花
「はい!それなら私の補佐にすればよろしいかと「ちょ・・・ちょいまちぃ!」・・・霞?」
姉が自分を補佐に推薦しようとしたら霞さんが止めにかかる。
霞
「アンタがたとえ桂枝の姉ちゃんでもこれだけは譲れへんで!桂枝は張遼隊の副将をしてもらう!」
桂花
「はぁ!?」
そこから私をどこに所属させるかという討論が始まり今に至る・・・
ギャーギャーと話し合い(?)が続くがどちらも譲る気はないようだ。さすがに主人も呆れ顔。
華琳
「やれやれ・・・愛されてるわね。アナタ。」
桂枝
「ええ。ありがたいことですよ。」
主人の皮肉にニコリとこう返す。実際頼られてるのは素直に嬉しい。
夏侯淵
「しかしコレでは埒が明かん。荀攸、お前のことだ。お前が決めるといい。」
夏侯淵さんも呆れ顔だ。たしかにそろそろ止めないとコレじゃあ何時まで経っても終わらないしな・・・
桂枝
「そうですね。じゃあ・・・姉貴!霞さん!」
桂花・霞
「「何よ(や)!!」
桂枝
「そんな話し合いしなくとも・・・どっちもやればいいんでしょう?」
桂花・霞
「「はぁ!?」」
桂枝
「姉貴の仕事が政務と軍関係の文官作業。霞さんの仕事が部隊の指揮の補佐と書類作業。どっちも同時に出来ない仕事じゃないからさ」
もともと洛陽にいた頃やってたことと大して変わりないし。
華琳
「アラ。大丈夫なの?」
桂枝
「はい。この2つの兼務、私としてはすでに確定事項だと思っていたことですゆえ。」
っていうかそれ以外何やるの?とまで思っていたところ。
華琳
「フフフ・・・ならばアナタには正式に命じるとしましょうか」
桂枝
「おまかせあれ。姉貴、霞さん。それでいいでしょう?」
霞
「まぁウチとしてはやってくれるんなら問題アラへん」
桂花
「フン。そのかわりどっちかが疎かになったら承知しないわよ。」
桂枝
「当然。その時は容赦なくおしおきでもなんでもしてくれて構わないよ。」
こうして私の仕事は筆頭軍師の補佐と張遼隊の副将に決まったのであった。
~数日後、一刀side~
一刀
「・・・で、ここら一体が飲食街。まぁ腹が減ったらこのへんに来れば大抵のものは食べられると思うよ」
桂枝
「なるほど・・・できれば調理している姿の見える店がいいんだが分かる範囲で教えてもらえるか?」
一刀
「カウンター席があるところか?そうだな・・・ココ曲がった少し先にあるラーメン屋なんて結構いけるぞ。チャーシューが美味しいんだ」
今俺はまだ街に慣れていない荀攸を連れて街の案内がてらの警邏を行なっている。
こうやって話をしながらだいぶ歩いていてわかったことがひとつ。荀攸はあまりしゃべる方ではないらしい。
俺の説明に対して的確な質問がとんでくるあたりちゃんと聞いているのはわかるしこちらから聞いたことにもきちんと答えてくれる。
桂枝
「ふむ・・・調理が見える席を天の国では「かうんたー」というのか。覚えておこう。」
一刀
「いや、そっちは別にいいから。」
たまにちょっとずれているところがあるけど十分話せる範囲だ。
だが気になることがあるとすれば一つ。
一刀
「なぁ、その服はもしかして桂花がくれたとか?」
そう、彼の服装だ。
黒のシンプルな外套の中に白いシャツが見えている。そして下には何故かジーンズ・・・のようなもの。
この世界の服装に関してはもはや気にするところではないからこれはいい。
そう、これが俺が桂花のだろうと思った理由。
桂枝
「ああ、これか?流石につけはしないけどな・・・外れないし、切り取ると怒るんだ。」
そう、背中についている猫耳フードだ。
外套の黒にまぎれるように黒いフードだがたまにネコミミ部分がみえて結構気になる。
一刀
「・・・背中の内側に隠しちゃえば?」
桂枝
「・・・いいなそれ」
そういってさっさと隠してしまった。やはり彼もいい気分ではなかったようだ。
一刀
「この前の時には普通の文官服をきてたよな?どうして今になってそんな服きてるんだ?」
桂枝
「いや、姉貴が着てけってさ。流石にもういいよっていったんだけどさ・・・わざわざ作らせたのに着ないつもりかってなって」
一刀
「・・・何年も会ってなかったって言ってたよな?」
桂枝
「手紙でちょくちょく体格については聞かれていたんだよ。まぁ昔っから着てる服だったし別にいいんだけどさ。」
一刀
「昔から?」
桂枝
「ああ、子供の頃から。前のはもう着れなくなったから揚州にいた時に欲しがってた奴に上げた。」
一刀
「揚州・・・?なんでそんなところに?」
桂枝
「揚州に親戚がいてね。そこに向かうときにちょっと色々あって」
一刀
「ふーん・・・」
まぁ深く聞くこともないか。
一刀
「そういやそろそろ昼だけど・・・どう?少し早いが食べて行かない?」
桂枝
「そうだな・・・ちょうどいい。天の御遣い様オススメの一品。堪能させていただこうじゃないか」
一刀
「なんだよそれ・・・」
そんなことを言いながら目当てのラーメン屋にいこうとした。その時ーーー
霞
「ほ~れ。遠慮せんとかかってきいや!」
一刀
「次の角を曲がったその先。目当てのラーメン屋の前には人だかりができていた。」
桂枝
「ああ・・・霞さんか。」
荀攸がボソっと何かを呟くが騒がしくて聞き取れなかった。
一刀
「事件かな・・・すまん荀攸。飯は後で!」
桂枝
「まぁ当然だな。頑張って来るといい。」
何やらただごとではない雰囲気なので俺は中心へと踊り込んでいく。荀攸は面倒そうな顔でその場に留まっていた・・・
霞
「来いゆうてんのに何しとん?ホンマに口だけやなぁお前ら」
賊1
「うぐぐぐぐ・・・」
一刀
「あれは・・・霞?」
騒ぎの中心に到着するとそこにいたのは霞だった。仁王立ちとなり黄巾党の残党らしき三人組と対峙している。
楽進
「隊長。止めたほうがよろしいでしょうか?」
一刀
「凪か。うーん・・・ちょっと待って」
いつの間にやら後ろにいた凪が止めようとするがそれに待ったをかける。
俺は怒鳴り合う声に耳を傾けた。
賊2
「俺たちゃそっちのオヤジに用があんだよ!関係ないやつは引っ込んでろ!」
霞
「だから、そんならウチを通して話をしろって言う取るだけやないか!アンタら理解できひんのか?」
賊2
「ウギギ・・・あにきぃ」
賊1
「なぁ嬢ちゃん。別にとってくおうってわけじゃねぇんだよ。ただちょっとそこの親父にお願いしたいことがあってだな・・・」
親父
「う・・・嘘だ!お前ら俺に金たかってきたんじゃねぇか!」
賊2
「てめぇは黙ってろ!」
親父
「ひぃ!」
その様子からは誰が見ても三人組が親父さんにたかっていたのだというのが一目瞭然だ。霞もより語気を強め
霞
「はっ!やっぱり負け犬やからか人の言葉を理解してへんのやな!言うとることとやっとることが咬み合ってへんで!」
賊2
「ま・・・負け犬だと!?」
霞
「せや。おっちゃんには強気なくせにウチがいるだけでしゅんとしっぽ垂らして何もできひんあんたらみたいやヤツをいうんや!」
賊2
「ウググ・・・」
どうやらたかっていたところに霞が割り込んだ・・・といったところだろうか。
一刀
「しかし・・・まずいな。」
楽進
「まずい?霞様なら一瞬で無力化できると思いますが」
一刀
「いや、ああいうたぐいの奴らって言うのは追い詰めると・・・」
霞
「はっ!負け犬は負け犬らしゅうしとけって話や!」
賊3
「ウ・・・グ・・・グ・・・!」
賊2
「アニキィ・・・!もう我慢できません!」
賊1
「おうてめぇら構わねぇ!やっちまうぞ!」
アニキと呼ばれた男が剣を構えると待ってましたといわんばかりに二人も剣を抜く
一刀
「ああやっぱり!あの手のはすぐ暴走するからなぁ。行くぞ!凪」
楽進
「いえ、今私達がでれば余計に混乱がひろがってしまいます。落ち着くのを待ちましょう」
一刀
「でも。それじゃあ霞が・・・大丈夫か。」
楽進
「はい・・・あ。ほら」
霞
「や~っとやる気になったか・・・ほな。覚悟はええか?」
賊1.2.3
「「「!!??」」」
身の丈以上にもありそうな偃月刀を構える霞の威圧感が尋常なものではなくなった。それにきづいた賊はたじろいでしまう。
賊2
「あ・・・アニキ・・・こいつやばいですぜ」
チビな奴も気づいたのだろう。もはや勝てる相手ではないということに。コレ以上はけがをするだけだってことに。
賊1
「ちぃ・・・仕方ねぇ。今日は此のくらいで勘弁してやるよ」
霞
「なんや・・かかってこんのか?それでも男かい!腑抜けが!」
賊3
「う・・・うぉぉぉぉぉぉ!!」
賊1
「あ。バカ!」
族のウチの一人が我慢できなくなったのか霞に襲いかかる。
霞
「はっ!どうやら一人はちったぁ根性あるようやな!せやけどな・・・」
霞が偃月刀をふりあげる。
霞
「遅い!」
賊3
「ぐえっ!」
賊2
「デクぅぅぅぅぅぅぅぅ」
振り下ろした1瞬で勝負は決まった。巨体の賊は一撃で昏倒した。
霞
「・・・まだやるか?」
賊1
「ちぃ!おいデク起きろ!チビ!ずらかるぞ!」
賊2.3
「「へ・・・ヘイ!」」
やつらもコレ以上は意味が無いと判断したようだ。倒れた仲間を容赦無くけりあげ無理やり引き起こす
賊1
「お・・・覚えてろよ!」
霞
「うわー・・・つまらん遠吠えやな。もうちぃっとオモロイ逃げ口上を用意してからきぃや!」
賊1
「ち・・・畜生ーっ!」
そういいながら賊は逃げていった。
その後に巻き起こる民たちからの拍手喝采。霞はそれに対して笑顔で応えている。
これで一段落か・・・と思ったが
桂枝
「ふむ・・・このあたりは海が少し遠いせいか干物が多いのか・・・まぁ魚介類が全く取れない西よりはいいけどな。お、この貝柱なかなかいいな。」
逃げる先には騒ぎを完全に放置して食材を眺めていた荀攸。いま丁度賊の進行ルート上にいる。
賊1
「おいてめぇどきやがれ!お前ら!!」
賊2.3
「「ヘイ!」」
桂枝
「む?」
霞
「あ・・・まず!」
賊が剣を抜き荀攸を威嚇しようとする。その様子を見て霞が慌てた。
一刀
「どうした霞?あいつも強いんだろ?」
霞
「そういう問題や無くて・・・あーダメや間に合わへん!」
霞は彼に近づいてく賊をみて更に慌てている。
どうしたのだろうと思って見ていた俺だが・・・
賊1
「オラオラ!道を開けやがれぇぇぇっ!」
桂枝
「イマイチ状況がよくわからんが・・・まぁいいか」
ーーーーーーー要するに敵だろう?
そんなつぶやきを聞いた気がしたその瞬間。
賊3人の首は胴体から離れていた
桂枝
「全く・・・いきなり何だという話だよ」
めんどくさそうな顔で呟く荀攸の元へ慌てて駆け寄っていく
一刀
「荀攸!お前・・・!」
桂枝
「ああ。北郷、あっちは終わったのか?」
一刀
「いや、終わったも何も「桂枝ーっ!」
霞がこちらに駆け寄ってきた。その顔は明らかに怒っている。
桂枝
「おや、霞さん。お疲れ様です。」
霞
「ああ、桂枝もお疲れ・・・ってちゃうわ!アンタ何さらしとんのや!」
桂枝
「何って・・・北郷に案内を頼んで街を回っていただけですが?」
霞
「ちゃうわ!これや!こいつら3人。なんで殺しとるんや!」
桂枝
「なんでと言われても・・・剣を向けられたからとしか言い様がないのですが・・・」
まさに一瞬。手加減をしていたとはいえ先ほどの霞よりも早いであろう剣の一振りで三人の首をはねてしまった。
遠巻きにだがあちらにいたギャラリーも集まり始める
「おいおい・・・やりすぎだろ」「俺見てたけど一撃で三人やったぜ・・・何だあいつ?」という民衆の声も聞こえてくる。
しかし荀攸は全く気に留めた様子もない。それどころか何故霞が怒っているかをわかっていない様子だ。
桂枝
「一体何を怒って・・・?ああ。そうか、すいません女将さん。営業妨害しちゃいましたね。この貝柱・・・迷惑料込みでこれで足ります?」
女将
「え?あ・・・ああ。十分だよ。」
そういって荀攸は持っていた貝柱の代金を払いはじめた。
桂枝
「さすがに食材屋の前でというのは考えものでしたね。以後気をつけます。」
ペコリと頭を下げる荀攸。・・・やっぱりちょっとずれてるぞこいつ
霞
「そういう意味やないわ!あんなぁ・・・剣を向けられたからちゅーてそいつら全員殺してたらきりがないやろ」
楽進
「どうしましたか霞さん・・・ってなんですこの死体は!?」
週に人だかりができたからかあちらの後片付けをしていた凪がこちらに向かってきた。
桂枝
「楽進さん。警邏お疲れ様です。すいませんがこの3つの死体処理を手伝いをお願いしてよろしいですか?」
楽進
「え・・・?あ!こいつらさっきの!!」
凪も先ほどの賊だと気づいたのだろう。かなり驚いている。
楽進
「あの・・・あなたがやったのですか?」
桂枝
「はい。いきなり剣を向けて襲ってきたので・・・ね。やはりここではまずかったのでしょうかね?」
楽進
「いや。ここではっていうか・・・」
霞
「あーっ!もう桂枝!とりあえず町中で人を殺したらあかん!気絶させるだけにせぇ!」
桂枝
「えー・・・でも」
別に悪い事してなくない?と言わんばかりの顔をしている。そこに人を殺したことに対する罪悪感とかそういうものは一切感じなかった。
霞
「でももなんもナシや!これを破ったらもう二度と口聞かへんからな!」
桂枝
「むぅ・・・了解です。もう二度と町中での人殺しはしないと誓います。」
どこか釈然としない様子ながらも荀攸は了解を口にした。
どうも彼は霞に頭が上がらないようだ。
霞
「よし!あ。でももしそいつがどうしようもない悪人でほっといたら他のやつが殺されるって場合にはええからな。」
桂枝
「・・・?基準がよくわかりませんが・・・それも了解です。」
よしっ。 と霞が仁王立ちで彼を諌める。
桂枝
「とりあえず・・・アレの片付けをしないといけませんね」
と彼は3つの死体を指さした。
楽進
「いえ、荀攸さまはとりあえずこのことを華琳さまか桂花さまに報告をしてきてください。」
桂枝
「姉貴か主人に?何故?」
一刀
「一応殺人ってことになるからな・・・もともと賊だったのもあるし問題にはならないだろうがこういう時は報告するってウチでは決まってるんだ。」
桂枝
「そうなのか・・・わかった。じゃあ私は行きますのでこのへんで。北郷、街の案内の続きはまた今度頼むよ」
そう言って城のほうにスタスタと歩いて行ってしまった。
霞
「もうせんはずやから堪忍な・・・アレも悪いやつやないねん。」
一刀
「ああ、大丈夫だよ。」
楽進
「あの・・・一ついいでしょうか?」
凪がおずおずと訪ねてきた。
一刀
「ん?どうした凪?」
楽進
「はい・・・荀攸様なんですが・・・本当にこの三人を殺したのですか?」
一刀
「そりゃあ本人も認めてるし俺もそれを見ちゃったからね・・・なんでそんなことを?」
楽進
「はい、あの方・・・殺気を全く感じませんでした。返り血も浴びていないし・・・もし私だけでココに来ていて「殺していない」と言われたら信じてしまいそうなくらい自然でして・・・」
霞
「あーそれな。ウチもようわかるでその感覚。ウチも気になったことがあるんや。そしたらあいつ何って言うたと思う」
一刀
「わからない・・・なんっていたんだ?」
霞
「それがな・・・「私にとって敵はすべて将棋の駒のようなもの。将棋の駒を取り除くのに殺意なんていりませんよ」やって」
一刀
「あ~・・・なんていうか・・・それは」
楽進
「ええ・・・ひどく偏った物の見方というか・・・」
一刀
「ああ・・・さすがは桂花の弟だなぁ・・・」
俺も凪もただただ苦笑するしかなかった。
その日の夜。報告書をまとめていたら「昼間に手間をかけさせた礼」だといって4人分の夜食を作って持ってきてくれた。
その夜食はおいしく沙和、凪、真桜にも好評。その評価をききわずかに微笑むのを見ることができた。
・・・やっぱり悪いやつではないみたいだ。
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