普通でないレイヴンのメンバー達を倒しつつ、最上階に向かったエステル達は最上階へ続く階段の上から、人の話し声が聞こえたので階段で耳を澄ました。
~バレンヌ灯台・最上階~
「ふふふ……。君たち、良くやってくれた。これで連中に罪をかぶせれば全ては万事解決というわけだね。」
声の主はなんとダルモアの秘書のギルバートであり、黒装束の男達を黒い笑みでほめた。
「我らの仕事ぶり、満足していただけたかな?」
「ああ、素晴らしい手際だ。念のため確認しておくが……証拠が残る事はないだろうね?」
「ふふ、安心するがいい。たとえ正気を取り戻しても我々の事は一切覚えていない。」
「そこに寝ている灯台守も朝まで目を醒まさないはずだ。」
ギルバートの疑問に黒装束の男達は自信を持って答えた。
「それを聞いて安心したよ。これで、あの院長も孤児院再建を諦めるはず……。放火を含めた一連の事件もあのクズどもの仕業にできる。まさに一石二鳥……いや、院長共をイーリュンのお人好し共が引き取ってくれるからこっちの財産は一切減らない……一石三鳥だな。」
「喜んでもらって何よりだ。」
「しかし、あんな孤児院を潰して何の得があるのやら……。理解に苦しむところではあるな。」
男の一人はギルバートの狙いに首を傾げた。それを見て、気分が良かったギルバートはさらに黒い笑みで答えた。
「ふふ、まあいい。君たちには特別に教えてやろう。市長は、あの土地一帯を高級別荘地にするつもりなのさ。」
「ほう……?」
「風光明媚(ふうこうめいび)な海道沿いでルーアン市からも遠くない。別荘地としてはこれ以上はない立地条件だ。そこに豪勢な屋敷を建てて国内外の富豪に売りつける……。それが市長の計画というわけさ。」
「ほう、なかなか豪勢な話だ。しかしどうして孤児院を潰す必要があるのだ?」
ダルモアの考えに黒装束の男は頷いた後、ダルモアの考えを聞いても解けなかった事を尋ねた。男の疑問にギルバートは冷笑して答えた。
「はは、考えてもみたまえ。豪勢さが売りの別荘地の中にあんな薄汚れた建物があってみろ?おまけに、ガキどもの騒ぐ声が近くから聞こえてきた日には……」
「なるほどな……。別荘地としての価値半減か。しかし、危ない橋を渡るくらいなら買い上げた方がいいのではないか?」
ギルバートの答えに納得した男だったが、まだ疑問が残ったので尋ねた。その疑問にギルバートは鼻をならして答えた。
「はっ、あのガンコな女が夫の残した土地を売るものか。だが、連中が不在のスキに焼け落ちた建物を撤去して別荘を建ててしまえばこちらのものさ。フフ、再建費用もないとすれば泣き寝入りするしかないだろうよ……」
「それが理由ですか……」
その時静かな怒りの少女の声がした。
「「「!!」」」
その声に驚いたギルバート達が声のした方向に向くと、そこには武器を構え、怒りの表情のエステル達がいた。
「き、君たちは……!?」
エステル達を見てギルバートは慌てた。
「そんな……つまらない事のために……先生たちを傷つけて……思い出の場所を灰にして……。あの子たちの笑顔を奪って……」
クロ―ゼは顔を伏せ身体中を震わせながら言った。
「ど、どうしてここが判った!?それより……あのクズどもは何をしてたんだ!」
「残念でした~。みんなオネンネしてる最中よ。しっかし、まさか市長が一連の事件の黒幕だったとはね。しかも、どこかで見たような連中も絡んでいるみたいだし……」
焦って尋ねたギルバートの疑問にエステルはしたり顔で答え、黒装束の男達を見て言った。
「ほう……。娘、我々を知っているのか?」
「そこの赤毛の遊撃士とは少しばかり面識はあるが……」
「ハッ、何が面識だ。ちょろちょろ逃げ回った挙句、魔獣までけしかけて来やがって。だが、これでようやくてめえらの尻尾を掴めるぜ。」
黒装束達の言葉にアガットは鼻をならし、いつでも攻撃できる態勢になった。
「き、君たち!そいつらは全員皆殺しにしろ!か、顔を見られたからには生かしておくわけにはいかない!」
「先輩……本当に残念です……」
黒装束の男達に見苦しい態度で命令するギルバートの姿にクロ―ゼは呟いた。
「まあ、クライアントの要望とあらば仕方あるまい。」
「相手をしてもらおうか。」
ギルバートの命令に黒装束の男達は溜息をついた後、両手についている短剣らしき刃物が爪のようについている手甲を構えた。
「ふん、望むところだっての!」
「たとえ雇われてやったのでもあなた方の罪は消えません……」
「『重剣』の威力……たっぷりと味わいやがれ!」
「来ます……!」
「行っくよ~!」
(行くわよ!)
「参ります……!」
そしてエステル達と黒装束の男達の戦いが始まった!
黒装束達は強化されたレイヴン達と比べると身体能力は高くなかったが、そこそこの腕前のためエステル達は手間取った。
「はっ!」
「フッ……」
エステルの攻撃を黒装束の男は無駄のない動きで回避した。
「こちらの番だ……!」
「!」
黒装束の男が武器を構え襲ってくるのを見てエステルが防御の態勢に入った時
(光よ、かの者を守護する楯となれ!防護の光盾!)
すかさずパズモが魔術を使ってエステルに光の膜を覆わせた。光の膜は黒装束の男の攻撃を跳ね返した!
「何!?」
跳ね返った衝撃で両手をあげられた黒装束の男は驚いた。
「そこだ……朧!」
「ぐっ!?」
隙を逃さず狙ったヨシュアのクラフトに男は呻いた。そこをさらに次の魔術の詠唱を終えたパズモが魔術を放った!
(……光よ、集え!光霞!)
「ぐわぁっ!?」
パズモの魔術を喰らってしまった男は悲鳴をあげた。
「超・ねこ、パ~ンチ!」
「ぐはっ!?」
そこにペルルの攻撃が当たり、男はペルルの攻撃を受けて後退した。そこに詠唱を終えたエステルの魔術が男に襲いかかった!
「……大地の力よ、我が仇名す者の力を我の元に……!地脈の吸収!!」
エステルが放った地の魔術は男の足元から木の根が生えて、男の体中に巻き付いた。
「な、なんだこれは……!くそ、放せ……!」
巻きついた木の根に男は驚き木の根を振り払おうともがいたが、木の根はピクリとも動かずそして木の根全てが光った!
「ぐわああああ……!ち、力が……!」
木の根に男の力が吸い取られ、吸い取られた男はその場で膝をついて立ち上がらなくなり、役目を終えた木の根は光の玉となってエステルの身体に入り、今までの戦いで傷ついたエステルの傷を癒した。
「へ~……攻撃と同時に回復もできるなんて、これは使えるわね……!さて、あっちは終わったかな……?」
新しく使った魔術の効果にエステルは両方の拳を見た後、握りしめて勝利の喜びを噛みしめた後残りの一人と戦っているアガット、クロ―ゼ、マーリオンを見た。
「おらっ!」
「くっ……」
アガットの豪快でありながら狙いが正確な攻撃に黒装束の男は必死に避けていた。
「せいっ!」
「……っつ!?」
そこにクロ―ゼのレイピアによる突きの攻撃が男の脇腹を掠った。
「くっ……調子に乗るなっ!」
一端後ろに跳んで後退した男は武器を構え、突進して来た。
「させません……!水よ……行け……!」
「ぐわぁっ!?」
しかし、マーリオンが放った水の魔術――連続水弾をまともに受けてしまったため、のけ反ってしまい動きが止まった。
「……水流よ、吹きあがれ!……ブルーインパクト!」
「なぁっ!?」
そこにクロ―ゼのアーツが放たれ、アーツによって起こされた水流が男の足元から吹きあがって、男を宙に舞わせた。
「出でよ……荒ぶる水……!溺水……!」
「なっ……!ガハッ!?」
さらにマーリオンが放った魔術は宙に舞っている男の真上から滝のような大量の水が発生し、男を地面に叩きつけた!
「そこだぁ!ドラグナーエッジ!!」
「ぐはっ!?」
そして止めに放ったアガットのクラフトが男を吹き飛ばし、吹き飛ばされた男は立ち上がらなくなった……
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第79話