「夜って心地よいと思ったことはない?」
「部屋の明かりを消して外を覗くの。
そうすると夜は案外明るいということがわかるのよ。
灯りが眩しすぎるだけで夜は適度な明るさを持ってるわ。」
「目が慣れてくるころに上に手を伸ばしてみるとね、
腕は見えるのに指先は闇に溶けてしまったように思えてくるのよ。」
「目をつむって耳を澄ませば、外の騒音も優しい音楽に聞こえる。」
へえ。
「何も、見なくていいの。
昼に見えるものが夜は優しくぼかしてくれる。」
今日はよく喋るな。
「せっかく貴方がここまで連れてきてくれたから、
私も夜の楽しみ方を教えてあげようと思ってね。」
ここを気に入ってもらえたようだな。
「こんなにはっきりと星が見えるのね。
初めてだわ。
とても素敵。」
いつもより素直じゃないか?
「正直誘われた時は驚いたの。
あの場所以外で貴方と過ごすことなんて無いと思ってたから、
何か裏があるのか疑ったわ。」
俺もまさかここでお前と過ごすとは思ってなかった。
「じゃあなんで誘ったのよ。」
ずっと落ち込まれても困るんでな。
さっさと戻ってもらわないと、
もしお前があの場所に来れなくなったらやりきれない。
「だからそれを引き留めてるのは貴方でしょう。
私は早く楽になりたいのに。」
お菓子につられてるくせに何を言ってるんだか。
というか夜についていろいろ考えてるんだな。
「…うるさい。
人のこと笑うのはいいけど、
励ますために夜空を見せる貴方も似たようなものよ。」
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