家族以外の同世代の仲間とともに起き、学び舎に行く朝……
午前中は、他の生徒と一緒に授業に参加させてもらい……
昼はランチを共にしながら他愛のないおしゃべりを楽しみ……
そして、放課後は厳しい稽古が夜まで続く……
忙しくも楽しい学園生活は瞬く間に過ぎていった。そんなある日。
~ジェニス王立学園・音楽教室~
「あら?」
学園祭に使う楽器を運んでいたエステル達だったが、ある楽器を見つけたプリネが声をあげた。
「どうしたの、プリネ。」
「ええ……ヴァイオリン……この学園にも置いてあるんですね。」
ヨシュアの質問に答えたプリネはヴァイオリンを手に持って感慨深く言った。
「吹奏楽部が演奏をする時に使いますから数は少ないんですが、置いてあるんです。もしかして、プリネさん。ヴァイオリンが弾けるんですか?」
「ええ。期間はそんなに長くありませんでしたが侍女見習いの方といっしょに、淑女の嗜みの一つとして楽器は一通り学びました。その中でも一番気にいって、今でもたまに弾いている楽器がヴァイオリンなんです。」
説明し尋ねたクロ―ゼの言葉に答えたプリネは微笑んで答えた。
「へ~……ねえねえ、ちょっと弾いてもらってもいいかな?」
「フフ、じゃあ1曲だけですよ?」
期待するような目をしているエステルに微笑んだプリネはヴァイオリンを弾き始めた。
~~~~~~~♪
「なんて綺麗な旋律……」
プリネの演奏に耳を澄ませたクロ―ゼは感動した。
「え……この曲って……」
「………………」
一方ヴァイオリンを聞いていて曲がわかったエステルは驚いた。また、ヨシュアは自分にとって馴染み深い曲をヴァイオリンで弾いているプリネの姿を驚いて凝視した。
~~~~~~~♪
(………なん………だ………ろう……?どこかで見た事ある光景なのに……思い出せない……)
ヴァイオリンを弾いているプリネの姿にヨシュアは既視感を感じ何かを思い出そうとしたが、頭の中に霧がかかり思いだせなかった。
~~~~~~~♪
(!?……今……のは……一体………)
ヴァイオリンを弾いているプリネの姿と一瞬自分と同じ琥珀の瞳を持ち、腰まで届いた美しい黒髪をなびかせ、ハーモニカを吹く優しげな女性の姿と重なったようにみえたヨシュアは困惑した。そしてプリネの演奏が終わった。
~~~~~~~♪
「……ふう。ご静聴、ありがとうございました。」
ヴァイオリンを弾き終わったプリネは一礼した。
パチパチパチ………!
一礼したプリネにエステルとクロ―ゼは拍手をして称えた。
「すばらしい演奏でした……!」
「うんうん!ヴァイオリンは初めて聞いたけどプリネ、凄っごく上手いわ!」
「フフ、ありがとうございます。」
感動したクロ―ゼの言葉と最大限に自分を称えるエステルの言葉にプリネは照れた。
「それにしても今の曲はなんという曲なんでしょうか?」
「『星の在り処』だよ。そうだよね、プリネ?」
「え?そんな曲名だったんですか?」
「へ………?もしかしてプリネ、曲名もわからず弾いていたの!?」
曲名を聞くクロ―ゼにプリネに代わって答えたエステルだったが、曲を弾いた本人のプリネが知らないのを知り、エステルは驚いた。
「はい。今の曲が私の一番得意な曲なんですが、恥ずかしながら曲名もわからなかったのです。さまざまな曲の楽譜が載っている本をレスぺレント地方全ての領から入手して調べたのですが、どの楽譜の曲も今の曲ではなかったのです。」
「じゃあ、どうやって弾けたの?」
「なんと言えばいいのでしょう……?まるで昔から知っているみたいに今の曲が頭に浮かび、自然と弾けたのです。お父様が言うには『もしかしたら、お前にその曲の弾き手の魂が宿っているのかもしれないな』らしいです。」
「へ~………それにしても、『星の在り処』をプリネが弾けたのは驚いたよね、ヨシュア?」
「………………」
「ヨシュア?」
プリネの言葉に呆けた声を出した後ヨシュアに言ったエステルだったが、ヨシュアは何の返事もせずプリネを見続けていたのでエステルは首を傾げた。
「ヨシュア?ねえ、ヨシュアってば。」
「……!どうしたの、エステル。」
エステルに肩をゆすられ我に帰ったヨシュアはエステルに聞き返した。
「どーしたも、こーしたも……ヨシュア、さっきからプリネの姿をかなり凝視してたみたいに見えたよ?」
「ああ、その事か。……プリネが一瞬昔の知り合いに見えたから思いだしただけだよ。」
「またそれ~?あっやしい~……」
ヨシュアの言葉にエステルは疑った。
「あの……さっきから気になったのですが、エステルさんとヨシュアさんは今の曲を知っているんですか?」
「うん。だっていっつもヨシュアがハーモニカで弾いていた曲だもん。」
「曲名は『星の在り処』だよ。」
2人の会話に割って入って尋ねたプリネの言葉に、エステルとヨシュアは頷いた。
「『星の在り処』…………そういえば以前、ヴァレリア湖で休憩してい時夕方に聞こえたハーモニカは……」
「僕だよ。エステルに頼まれてね。」
「そうなんですか。………同じ曲を知っているなんて、偶然って身近にあるものなのですね。」
「そうだね、僕も驚いたよ。」
プリネの言葉にヨシュアは同意するように頷き、お互いの目を見つめ合った。
(………あれ?なんだろう……?今、胸が締め付けられるような痛みがしたのはなんで……?)
見つめ合っているヨシュアとプリネを見てエステルは不思議そうに無造作に胸を抑えた。
「あの………そろそろ作業を再開しませんか?速く持って行かないとジル達に妖しがられますし。」
「あ、そうですね。」
クロ―ゼの言葉にハッとしたプリネは頷き、エステル達と共に作業を再開した。
そしてエステル達の学園生活はさらに過ぎて行き、ついに学園祭前日となった……
後書き 軌跡シリーズを知っている方にとっては今回の話は驚いたかもしれませんね。言っておきますがこの話は基本原作通りにするので、主役のカップリングを変えたりしませんから、ご安心を……まあ、もしかしたらあるキャラの運命を変える事になるかもしれません。その人物は誰か、軌跡シリーズファンならわかるでしょう?……感想お待ちしております。
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第72話