「……え~、つまり他の皆もどこか温泉旅行に行く予定だったと?で、三人共誘われたから着いてきたと?」
「ええ、本来ならユウキ達も誘う予定だったらしいのですがユウキはもうディアーチェと旅行に行く予定だったでしょう?だから私達三人だけで招待を受けました。もっとも同じ旅館だとは思いませんでしたが」
「そっか。凄い偶然だな」
「全くですね」
俺がそんな偶然に感心していると
「《シュテル!これはどういう事だ!?》」
「《どういう事とは?》」
「《ここにお前達や子鴉達がいるのが偶然な訳なかろうが!!》」
「《偶然ですよ。強いて言うならこの旅館の名前を行き先の候補として出したぐらいですけど。ここを選んだのは多数決で決めた事ですから》」
何やらディアーチェとシュテルが睨み合ってるがどうしたんだ?家族で喧嘩とかは止めてほしいのだが…。
「というかお前等、ここに来る交通費はどうしたんだ?あとここに泊まる宿泊費はあるのか?」
「大丈夫だよ!スズカが出してくれるって言ってたから」
「正確にはすずかのお姉さんですけど」
俺の問いにレヴィとユーリが答えてくれる。すずかの方を向くとこっちの会話を聞いていたのか首を縦に振っている。
「なんか忍さんに迷惑かけたような気がする」
「そんな事無いわよ」
宿泊の手続きを終えたのか忍さんがこっちに来てそう言ってくれる。
「君にはお礼しないといけなかったからね」
「お礼?俺何かしましたか?」
忍さんは俺の傍まで寄ると小声で
「すずかを誘拐犯から助けてくれたお礼♪」
「え?でもあれってこの前の夕食で…」
「それはすずかが貴方にしたお礼。すずかの姉としてはまだ貴方に何もしてないから」
「ですけど…」
「遠慮なんてしない。君はまだ子供なんだし」
そう言って俺を黙らせる忍さん。これ以上何か言っても無駄だろうな。
「……ありがとうございます」
「ん。素直でよろしい」
俺の頭を撫でてくれる忍さん。あ、ちょっと気持ちいいかも…。
なんて思っていたら
ギラリッ!!×5
「ひいっ!」
思わず殺気を浴びせられ竦み上がってしまう俺。殺気の出所はシュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ、すずかだった。ちょっと待て、俺何もしてないぞ?
「あらら。モテモテねえ勇紀君は」
撫でるのを止めた忍さんが楽しそうに言う。
「モテモテって…。そんな事無いと思うんですけど…」
「そんな事あるわよ。君はもう少し女心について勉強したほうがいいわね」
「は…はあ。分かりました」
とりあえず頷いておく。女心ねえ…。
「(ユウキ。何ですかさっきの気持ち良さそうな表情は!?)」
「(ユウのあんな表情見てたらいつも以上にムカムカするよ!!)」
「(あ奴め!!)」
「(むうううう!!)」
「(勇紀君ってお姉ちゃんみたいな年上が好きなの!?)」
……とりあえず今はあの五人の機嫌を何とかしないと。
「君が長谷川勇紀君か?」
ふと声を掛けられる。さっき忍さんと一緒に受付で手続きしてた男の人だ。というかこの人
「俺は高町恭也という。あそこにいるなのはの兄でね。君の事はなのはや父さんから聞いている」
ご本人から自己紹介されてしまった。
「長谷川勇紀です。初めまして」
「ふむ。呼び方は勇紀君でいいかな?俺の事も名前で呼んでくれていいから。ところで君に一つお願いがあるのだが」
「分かりました恭也さん。それで何ですか?」
「俺と手合わせしてくれないか?」
……え?この人いきなり何言ってんの?
「えーと…とりあえず聞きたいのは何で俺と?」
「なのはから君が強いと聞いているし、剣も扱う事が出来るらしいじゃないか。だから君の実力に興味があってね」
俺がなのはちゃんの方を向くとなのはちゃんは苦笑いしていた。
「…俺が恭也さんと闘ってもメリットが無いんですが……」
「もし君が俺に勝てばなのはとの交際を認めてやっても良いが?」
「お兄ちゃん!?」
突然の一言になのはちゃんが驚いている。
「恭也さん。それって高町の気持ち思いっきり無視してません?」
「勿論なのは本人が嫌だと言うなら付き合えないだろうが、もし二人が付き合う事になったら俺は無条件で認めても良いという事だ」
付き合う…ねえ……。
俺は高町の方を向く。視線が合った高町は顔を赤らめてあたふたしてる。
「むっ!なのはのあの反応…まさか!?すでに二人共付き合っているのか!!?」
なんか盛大な勘違いをしてますよこのお兄さんは。
「勇紀君。君に少し聞きたい事が出来たんだがいいかな?」
そう言った恭也さんの両手にはいつの間にか刀が握られていた。いつの間に!?ていうかどっから出したの!?
この人もまさか
とりあえず、このままだと確実に俺はボコられる。
「恭也さんは勘違いしてると思うんですけど高町とはただの友達ですよ。な、高町?」
なのはちゃんもコクコクと頷いてくれる。
「む?そうなのか。いや、すまない。どうやら早とちりしてしまった様だ」
「気にしてませんから」
危ねー。危うくバトルフラグを立てる所だった。折角の温泉旅行なのにドンパチなんてやりたくないし。
「ま、まあなのはの件は抜きにしてもだ。どうだろうか?手合わせしてもらえないだろうか?」
「……せめてこの旅行の時だけは勘弁して下さい。今度都合がついたら連絡しますから」
「そうか。分かった。その時を楽しみにしておくよ」
問題を先送りにしただけだがとりあえずは一安心…
「「「「「…ユウキ(ユウ)(勇紀君)、なのは(ナノハ)(なのはちゃん)と付き合っていたの?(ですか?)(か?)」」」」」
できねえええええっっっっ!!!!五人の機嫌が更に悪くなってるよ!!!?恭也さんとのバトルフラグを回避できた事に満足してて、こっちの事を忘れてた!!皆も勘違いしてるし……特にシュテルさんの声が低くて一番怖い。
どうしよう…どうすれば……。
「みんなー。そろそろ部屋に行くから自分の荷物持ってねー」
そんな声が不意に聞こえた。
「ほ、ほら!皆荷物持って!!いつまでもここにいたら迷惑だよ!!」
天の助けだと思い、その声に便乗して俺は皆に部屋へ行く様に促す。渋々だが荷物を持ち移動するシュテル達を見てホッと一息吐くが
「ユウキ、我等も部屋に戻るぞ!ついでになのはとの事も聞かせてもらうからな!!」
そう言って手を引っ張られ、部屋に連行される俺。
ああ……、温泉旅行に来たのにゆっくりできなさそうだと思うのだった………。
「…つまりお前となのはは本当に何でもないんだな!?」
「はい…」
現在、俺は部屋で正座させられています。
「全く…。ビックリさせないで下さい」
「でも何も無くて良かったよ」
「そうですね」
「もし何かあったら勇紀君となのはちゃんにO☆HA☆NA☆SHIするところだったからね」
集まっているのは長谷川家+すずか。O☆HA☆NA☆SHIされる前に必死になって誤解を解いたので何とか助かった。でもすずかが凄く恐ろしい事を言ってる。君もO☆HA☆NA☆SHIが出来るんですね。
「…とりあえずもう足を崩していいですか?」
「ん?ああ、よかろう」
許可をもらえたので正座を止める。
「それにしてもいい部屋ですね」
窓の方に近付き、窓から外の景色を眺めているユーリ。
「この旅館ではこの部屋が一番いい部屋で値段が張るらしいからな」
「僕達はいくつかの部屋を取ったんだよねスズカ?」
「え?うん、そうだよ。お姉ちゃんと恭也さんで一部屋、美由希さんとノエル、ファリン、イレインで一部屋、シグナムさん、シャマルさん、ヴィータちゃん、プレシアさん、リニスさん、アルフさん、リンディさん、エイミィさんで一部屋、クロノ君、ユーノ君、ザフィーラさんで一部屋、後はなのはちゃん、フェイトちゃん、はやてちゃん、アリシアちゃん、アリサちゃん、シュテルちゃん、レヴィちゃん、ユーリちゃん、私で一部屋だよ」
「合計で二十六人って大所帯だな」
士郎さんと桃子さんは翠屋があるので今回は不参加らしい。
「ええ、この部屋と違って大人数が泊まれる部屋ですからここよりは広いですね」
「へー、後で見に行ってみようかな」
ついでに他の皆にも挨拶しときたいし。初対面の人達にも自己紹介はしといた方がいいだろうし。
「なら今から行きますか?」
シュテルが聞いてくる。
「そうだなー、行くか。まだ夕食まで時間はあるし。ディアーチェも行く?」
ディアーチェの方を向き聞いてみる。
「我はいい。部屋でゆっくり休んでおく」
「そっか。じゃあ行ってくる」
夕食までには戻ってこいと言われ、俺はシュテル達の泊まっている部屋に向かうのだった………。
「君がアリシアとフェイトの言っていた長谷川君ね。私は二人の母親でプレシア・テスタロッサというの」
子供達の宿泊部屋に来ると中にいた人達からの視線を浴びる。部屋には先程ロビーに集まっていたメンバーの内、なのはちゃん、フェイト、はやてちゃん、アリシア、アリサちゃんの五人と三人の女性がいた。
そしてこの部屋に入った俺に最初に声を掛けてきたのが三人の女性の一人、プレシアさんだった。
「二人の母親なんですか……。若いんですね」
そう、アニメで見た本人よりかなり若い。
「あらそう?ありがとう」
そう言って俺をジーっと見るプレシアさん。どうしたんだ?
「どうかしたんですか?」
「ああ、ごめんなさい。アリシア達から『初めて男の子の友達が出来た』って言ってたからどんな子か気になっていたのよ」
「はあ…そうですか」
「君は真面目で優しそうな子ね。いい友達が出来て良かったわ。これからも二人と仲良くしてあげてね」
「あ、はい。こちらこそ」
軽く会話をした後、プレシアさんは部屋を出て行く。その際にもう一人の女性、プレシアさんの使い魔であるリニスさんにも声をかけられたのでお互いに自己紹介をした後、リニスさんはプレシアさんを追いかけていった。
「勇紀ー。お母さんと何話してたのー?」
アリシアが近寄って俺に声を掛けてくる。
「お前とフェイト、二人に『いい友達が出来て良かった』と言われた」
「それだけ?」
「それだけ。あと俺が『初めての男友達』とも言われたな」
「そー言えば確かに男の子の友達って初めてだなー」
「そうなのか?」
「そだよー。ねえ?」
アリシアがなのはちゃん、フェイト、はやてちゃん、アリサちゃん、すずかに聞いているが五人共、頷いている。
コイツらとても男子に人気がありそうだから異性の友達ぐらい、いそうなんだが…。
「何か『何で男子の友達いないんだ?』みたいな顔してるわね?」
横からアリサちゃんが会話に加わってくる。
「ああ、お前等の性格とか考えたら別に嫌われてるって訳じゃなさそうなんだが…」
「理由は簡単。
ここで自称・オリ主君の存在が出てきたよ。
「
「その光景が簡単に想像出来るな」
俺も翠屋でそんな事言われたっけ。
「まあ
「学校で話すのいうたらアイツの事好きな女子ぐらいちゃうか?」
「何でアイツみたいなのが好きになれるのかしら?」
「ま、まあ彼も見た目だけはいいからね」
「「フェイトちゃん。それフォローになってないよ」」
はやてちゃんも会話に加わり、フェイトがフォローしている様に言ってるがそれをなのはちゃんとすずかが否定する。
「フェイトは優しいんですね。あんな男のフォローしようとするなんて」
「あんな奴庇う価値も無いのに」
「そもそもこちらの言い分がまともに通じませんよね」
シュテル、レヴィ、ユーリも辛口ですね。まあいきなり『コイツらみんな俺に惚れてる』みたいな事言われて好印象なんて持てないわなあ。
「で、でも姉さんや母さんを助けてはくれたし…」
「ん?助けたってどういう事だ?」
アイツが人助け?あの性格からそんな事進んでする様な奴だとは思えんのだが。
「う、うん。実はね…」
フェイトが話してくれたのはジュエルシード事件の事だった。その時にジュエルシードの力でアリシアが生き返り、リニスさんも助かり、プレシアさんが若返ったとか。
「あんな奴でも人助けって出来るんだね…」
しみじみとレヴィが言う。
「善意で助けたって訳じゃなさそうだけどねえ」
残っていた一人の女性が会話に入ってくる。
「えっと…」
「ああ、自己紹介がまだだったね。私はアルフ。フェイトの使い魔さ」
「あ、どうも。長谷川勇紀です。よろしくお願いしますアルフさん」
「うんうん。アンタはアイツと違ってフェイトのいい友達になってくれそうで安心したよ。私の事はアルフでいいよ」
「分かりました。俺の事も勇紀と呼んで下さい。ところでアイツそんなに嫌われてるんですか?」
「男子には敵意や殺意、女子にはいやらしい視線、おまけに自己中。こんな奴、好きになれるかい?」
「…無理ですね」
「だろ?で、アイツがアリシアやリニス、プレシアを助けた事は事実でもフェイトの環境に同情してとかそう言うんじゃ無いと思うんだ。それに助けた時に『原作ブレイクしてやったぜヒャッハー!』とか訳の分からない事言ってたしさ」
なるほど。アリシア達がいたのはIF展開ではなくアイツが原作ブレイクしてたのか。
「最初はプレシアに敵意を抱いてたくせに若返ったプレシアを見たらコロッと態度変えたし。リニスにもアプローチしてたよ」
……ストライクゾーン広いなアイツ。見た目が若ければいいのか?しかもリニスさんにもか。
「それを言うならアルフ、アンタもアプローチされたじゃない。それにリンディさんにも自分をアプローチしてたよ」
ふと思い出した様に言うアリシア。アルフさんとリンディさんにもか…。
「わたしの家族にもや。ザフィーラに対しては学校の男子と同じような態度やな」
守護騎士の皆さんも苦労してそうだな。
「私のお母さんとお姉ちゃんにもアプローチしてたの…」
……アイツ度胸あるなあ。戦闘民族高町家を束ねる人にもモーションかけるなんて。
「ていうか桃子さんは駄目だろ?士郎さんがいるんだし」
「にゃはは…。お父さんに道場へ連れて行かれてたの」
しかしそこまで色んな人にアプローチするなんてアイツ見境無しだな。
「アイツは一体何がしたいんだろうねユウ?」
レヴィが俺に聞いてくるがアイツのしたい事なんて…
「お前等全員囲ってハーレムとか作りたいんじゃないのか?」
そういうと全員が一瞬で苦い表情になったな。
「あんな男と付き合うぐらいなら死んだ方がマシですね」
「僕なら『せっぷく』する」
「管理局に捕まってもいいですから全力で殺りますね」
我が家のお三方はホントに辛口ですな。
「てかユーリ。殺人だけは止めてくれ」
「そんな!?ユウキは私があの男の生け贄になっても良いというのですか!?あんまりです!!」
涙目になり抗議してくるユーリ。生け贄って…。
「ああ、言葉が足りなかったな。お前がアイツに何かされそうになったら俺に言え。ちゃんと守ってやるから」
「「「なあっ!!?」」」
シュテル、レヴィ、すずかが驚いて声を上げたがどうしたんだ?
…まあいいか。俺としては家族から殺人犯なんて出てほしくないしな。
「ホントですかユウキ!?」
ユーリが俺に聞いてくる。さっきまで目に溜まっていた涙が嘘の様になくなり、頬を若干染めて超笑顔になっていた。
「当たり前だろ?家族なんだから困った時は助けるって」
「そ、そうですね。分かりました(ユ、ユウキに守ってもらえる)///」
納得してくれて良かった。これで家族から殺人犯を出さずにすむ。
そんな事を考えていると後ろから肩を叩かれた。振り返ると
シュテル、レヴィ、すずかが俺を見ていた。目の色は単色になって若干黒いオーラを放っている。……怖い。
部屋にいる他の皆も三人を見て身体が震え、怯えている。
「ユウキ。当然私も守ってくれますよね?」
「僕も家族なんだからユウが守るのは当然だよね?」
「私は勇紀君の家族じゃないけど友達だよ?守ってもらいたいな」
「えっ?いや、二人はデバイス持ってるし…。すずかはアイツに何かされたら忍さんが社会的に抹殺しそうだから安全なんじゃ………ひいぃっ!」
三人からオーラが増してしまった。何で!?君らは自分で何とかできるじゃん!
「…ユウキには黙っていましたが最近ルシフェリオンの調子が悪くて殺傷設定から非殺傷設定に切り替えが出来ないのです」
「怖いなオイ!?」
何で非殺傷から殺傷設定になってんの!?何してんのさシュテル!?
「僕は銀髪の男に攻撃すると非殺傷でも殺傷攻撃になってしまうレアスキルがあるんだ」
この子も怖い事言ってる!!?何でそんな特定の人物限定に発動するレアスキルなのさ!?てかレヴィにレアスキルあるなんて聞いた事ありませんよ!!?
「私の場合、皆と違って魔法使えないからもし力尽くでこられたら何も出来ないよ?」
あなたの周りには頼りになる人がいるじゃないですか。忍さんは当然としてノエルさんとかイレインとか。ファリンさんは……微妙だな。
「ユウキは家族が殺人犯になってほしくないんですよね?」
「でもこのままだと特定の誰かが死ぬ事になるし」
「私は本当に何も出来ないんだよ?だから…」
「「「私(僕)の事守ってくれますよね?(くれるよね?)(ほしいな)」」」
「わ、わかりました!三人共、ちゃんと守るから!!だからその黒いオーラしまって下さい!!お願いします!!」
……ここで『NO』と答えられる程俺は勇者じゃありません。
俺の答えに満足した三人は頷き、目に光を戻してくれた。
「…ユウキ、大変だね」
アリシアの同情は今の俺の心に深く染み込むのだった………。
皆と話していたら結構な時間が経っていた。もうすぐ6時。部屋に夕食が運ばれてくる時間だ。
「じゃあそろそろ俺は部屋に戻るな」
「えっ?もう戻るの?」
俺の言葉にレヴィが反応した。俺は時計の方を指差し
「そろそろ部屋に夕食が運ばれてくるからな」
そういって立ち上がり部屋を出ようとすると
「主はやて。夕食の用意が出来たとの事ですので広間の方に…」
俺と目が合った。目の前にいるのはピンクの髪をポニーテールにしている女性…
「お前は…」
「…ど、どうも」
俺は軽く頭を下げて挨拶する。
「その…済まなかったなあの時は」
「別に気にしてませんから。そっちの事情についてももう知ってますし」
相手があの時の事について謝ってきたので気にしてないと答えておく。
「なんやなんや?シグナムと長谷川君はどこかで知り合ってたんか?」
俺達二人の様子を見たはやてちゃんが声を掛けてくる。
「ええ。一年半程前に一度だけ」
「そうなん?」
「はい。彼には迷惑を掛けましたから」
「そやったんか…。何したんか知らんけど長谷川君ゴメンな」
「だから謝らなくていいって。もう済んだ事だし」
そういってから部屋を出る俺。いい感じに腹も減ってきたしとっとと戻りますか。
~~シュテル視点~~
ユウキが自分の部屋に戻ったので私達も夕食を食べに広間の方にやってきました。部屋にいた私達以外の方達は既に揃っていたので私達も空いている場所に座ります。レヴィは目をキラキラ輝かせていますね。目の前にある豪勢な料理を食べれるのが待ち遠しいのでしょう。
全員が揃い、座っているのを確認したすずかの姉、忍が
「じゃあ、皆揃ったところで…いただきます」
と言ったので
「「「「「「「「「「いただきまーす」」」」」」」」」」
皆声を揃えて目の前の料理を食べ始めます。
大人組は料理を食べつつ酒を飲み、私達子供組は皆とお喋りしながら料理を食べます。まあ、レヴィやアリシア、アルフはとにかく食べる事に集中していますが。
私も魚の刺身や山菜などを小皿に取り、少しずつ食べます。
「モグモグ…ほうひへばふぁ~」(そういえばさあ~)
「姉さん、喋るなら口の中の食べ物をちゃんと飲み込んでからでないと駄目だよ」
フェイトがアリシアに注意しています。本当にアリシアが姉とは思えませんね。
「モグモグ…ゴックン。さっきシグナムが勇紀に迷惑かけたって言ってたけど一体何したの?」
その台詞に子供組は皆黙ってしまいました。そう言えばさっきのユウキとの会話でその様な事を言っていましたね。何があったんでしょうか?
「そういや、ちゃんと聞いてへんかったなー。…シグナムー」
はやてがシグナムを呼び手招きします。はやてに呼ばれたシグナムは大人組との会話を打ち切ってこちらにやってきます。
「主はやて、何でしょうか?」
「さっきシグナムが長谷川君に迷惑かけたっちゅーてたけど一体何したんや?」
「それは…」
「長谷川君は気にせんでええ言うてたけど」
「…いえ、そうですね。お話します。彼と会ったのは一年半近く前に私達が魔力の蒐集をしていた時で、彼から魔力を奪おうとしたからです」
その言葉に魔導師組は『えっ!?』とした表情をします。
「じゃ、じゃあ長谷川君は魔力を蒐集された被害者なの!?」
「えっ?でも被害者で勇紀っていなかった様な…」
「いないのは当然だテスタロッサ。彼からは魔力を蒐集出来ず、その時は逃げられたからな」
「逃げられた?」
「ああ、私も最初に彼の魔力を感知してすぐに結界を張って閉じ込めたのだがな。彼と会話を交わした後、少し闘って距離を取られた時に消えてしまったのだ」
「消えたって…。結界を破って逃げたんとちゃうの?」
「いえ、文字通り私の目の前でフッと消えてしまいました。まるで最初からそこにいなかったかの様に。あれは転移魔法ではありませんでしたね」
…成る程、ユウキから魔力を蒐集しようとして逃げられたと。しかし目の前で消えたという事は
「ねえねえシュテるん」
隣に座っていたレヴィが話し掛けてきます。
「突然消えたって事は…」
「ええ、おそらくは
「実力の差があったから戦わなかったのでしょうか?」
「違いますよユーリ。おそらく彼女と闘って時間を取られると管理局に見つかってしまうから
ユウキは管理局に見つかって勧誘されない様に過ごしてた筈ですから。まあ、今となってはもう意味の無い事ですが。
「何や?シュテル達は心当たりあんの?」
私達が会話しているのが聞こえていたのかはやてが私に聞いてきます。
「おそらくはユウキのレアスキルかと」
「レアスキル!?認識阻害とか転移の魔法やなくて?」
「ええ、
それから私はユウキの代わりに
「…存在そのものを消し去るやなんて…。とんでもない能力やね」
「つまり勇紀は結界の外に逃げたんじゃなく、シグナムが結界を解くまでずっと結界内にいたんだ?」
「その通りですアリシア。ユウキが
「…なのは達に劣らない程の魔力を有し、多彩なレアスキルを所持する魔導師…か。是非管理局に来てもらいたい人材だな」
いつの間にか私達の側で会話を聞いていたクロノ・ハラオウンがそう言っていたのが聞こえました。管理局に勧誘ですか?まあユウキ本人は入らないと言っていたので勧誘するだけ無駄だと思いますが。
「しかし彼と少し手合わせただけだが魔力だけではなく武術に関してもそれなりに心得はあるみたいだった。出来れば模擬戦の相手になってもらいたいな」
ユウキと闘っていた時の事を思い出していたのでしょう。シグナムがそんな事を言っています。
「シグナムさんて本当に強い人と闘うの好きなんですね?」
「私は騎士だからな。それに彼とは中途半端な状態で闘いを中断しているから白黒つけたいとは思っている」
「あはは…。まあ強引に誘ったりして長谷川君にあまり迷惑かけたらアカンで」
はやてが苦笑いしながらもシグナムに軽く注意しています。
なのはやヴィータが言うにはシグナムは相当な
私は心の中でユウキに同情するのでした………。
そんなこんなで皆ワイワイ騒ぎながら夕食を食べ終えて、私はユウキとディアーチェの宿泊部屋に向かいました。とりあえずユウキの
そんな事を思い、ユウキ達の宿泊部屋に着きました。扉を軽くノックしてから声を掛けます。
「ユウキ、少しよろしいですか?」
……………………。
部屋の中から返事は聞こえず、もう一度ノックして声をかけます。
「ユウキ?ディアーチェ?聞こえていますか?」
……………………。
やはり反応がありません。二人共もう寝てしまったのでしょうか?
…いえ、まだ時間は夜8時過ぎ。いつもの二人ならまだ起きてる筈なのですが。
いくら旅行といっても夕食前に見た二人の様子からしてそれは有り得ませんね。
なら部屋にはいないという事になります。しかも二人揃って。何処へ行ったのでしょうか?
……まさか二人で良い雰囲気になっているとか?
ユウキの鈍感さからそれは無いと思うのですが一度考え始めると『まさかの可能性』が頭の中を支配していきます。
私は居ても立ってもいられなくなり、周りに誰も居ないのを確認してサーチャーを飛ばしました。
サーチャーを飛ばしてすぐにユウキを見つける事が出来ました。手にバスタオルや替えの下着やシャツ等を持っている所を見るとこれから温泉に入るのでしょう。『男湯』『女湯』『混浴』と3つ入り口がありますがユウキが入ったのは当然ながら男湯でした。しかしこのままユウキの監視をしていればユウキの裸を見る事になるのでは?
……………………
………………
…………
……
ハッ!?い、いけませんいけません!!ユウキの裸を覗き見るなんて。////
と、とりあえずディアーチェが何処にいるのか探しましょうか。このままユウキの監視をしていても意味が無いですし。……少し名残惜しいですが。//
しかしサーチャーを動かそうと思った所でディアーチェの姿も確認出来ました。ディアーチェも手に着替えとバスタオルを持っていたので温泉に入るみたいですね。
このまま二人はしばらく部屋に戻ってきなさそうだったので私も一旦自分の部屋に戻ろうかと思っていたのですがサーチャーからは信じられない映像が飛び込んできました。
それはディアーチェが
『女湯』ではなくユウキが入っていった『男湯』に入っていったからでした………。
~~シュテル視点終了~~
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神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。