2人が放った斬撃の一閃が交差した。ゲイザーはアックスの軌道を剣で反らし、そのままの勢いで攻撃する。カブトMはその斬撃を左腕の装甲で防ぎ、アックスを手元に戻そうとする。
ゲイザーは深追いをせず、ライドブッカー?をガンモードにして引き撃ちする。カブトMはたたらを踏んでじゃっかん後ずさるが、大してダメージを負った様子はない。
「珍しいわね、あなたが銃を使うなんて。明日は、雨が降るのかしら?」
「ああするのが最適だと判断しただけだ」
「あら、そう」
カブトMは無理に距離を詰めようとはせず、クナイガンを持ちかえて銃をゲイザーに向けて撃つ。ゲイザーは左に回避し、そのまま走りながら応戦する。
両者は20Mほど走りながら銃撃戦を続ける。
(これで、一気に戦況を切り開く!!)
ゲイザーは1枚カードを取り出し、ドライバーに装填する。
《ATTACK RIDE:……》
(くる!!)
カブトMは襲いくるであろう脅威に備え、左腕でガードしようとする。
(それを待っていた!!)
《BLAST》
だが、ゲイザーは銃口を下げ、カブトMの足先を狙う。ライドブッカーⅡの銃口から放たれた多数の弾丸がカブトMの足先を襲う。
「しまった……!!」
「遅い!!」
動きを止めたカブトMにすぐさまゲイザーはライドブッカーⅡを剣に変形させて斬りかかる。
「キャストオフ」
《CAST OFF》
カブトMは自身の装甲をパージし、散弾の様に放たれたそれは接近していたゲイザーを吹き飛ばす。
《CHANGE BEETLE》
カブトは分厚い装甲に覆われていた細身の体を出現させ、ライダーフォームへの変身を完了させる。
「目には目を……と行きたいが、こっちを使おう」
《FORM RIDE:GATHER MATERIAL》
ゲイザーはマテリアルフォームへと変身する。
「マテリアル!? いつの間に使えるようになったの!?」
「イカロスに発破をかけられた」
「……なるほどね」
カブトRはカブトクナイガンをクナイモードに換えて構える。
「いきなり現れた女に大切な義弟を奪われるのって、かなり複雑ね」
「いくら咲夜姉と言ってもイカロスを傷つけさせるわけにはいかない!!」
ゲイザーMは一瞬でカブトRの下まで踏み込み、刀を振るう。カブトRは間一髪の所でその斬撃を弾く。
(早いッ!! 今までとは段違いだわ)
(クロックアップをさせるわけにはいかない。このまま攻め落とす!!)
ゲイザーMは続けて反撃の暇を与えるつもりはないと言わんばかりに斬撃の嵐を放つ。初手を取られたカブトRは防戦一方になっていた。
「ハアッ!」
《CLOCK UP》
しかし、ゲイザーが刀を大上段に振り上げた僅かな隙にカブトRはクロックアップを発動させて、回避した。戦闘が行われている地点であるにも関わらず、ゲイザーMの周辺だけは静寂に包まれていた。ゲイザーMはそれでも慌てずにライドブッカーⅡを腰だめに構え、居合い抜きの姿勢でカブトRの攻撃に備える。
(いきなりは攻撃してこないか。あいかわらず人の話を聞かない割りには慎重だな。だが……)
ゲイザーMは突如として右側から襲ってきた気配に向かって右薙ぎに斬り払う。すると、カブトRが急に視界に現れ、地面に倒れた。
「ガードスキルのことは覚えてなかったみたいだな」
「そう言えば、そんな技も有ったわね。すっかり忘れていたわ」
「そう簡単には見せられない技だ。覚えていなくても仕方ない。まだ戦えるか?」
「この程度で根を上げたりしないわ」
カブトRはすぐに立ち上がり、自分は大丈夫だとアピールする。
「他の皆が心配するだろうし、そろそろ決着を着けるか」
「望む所よ」
《FINAL ATTACK RIDE:G・G・G・GATHER》
《1・2・3……RIDER KICK》
莫大なエネルギーが発生し、2人の右足に集約される。両者は同時に飛び上がり、相手を貫かんとその右足を突き出し、交差する。何事もなかったかの様に着地したが、カブトRの体から火花が散り、地面に倒れた。それと共にカブトRの変身は解除された。
「勝負あったな」
ゲイザーMは変身を解除し、咲夜に近寄って手を差し伸べた。咲夜はその手を借りて立ち上がった。
「けっこう強くなったじゃない、刹那」
「強くならざるをえなかったからな」
普段よりも落ち着いた、しかし強い意思が宿った喋りに咲夜は一瞬キョトンとする。
「何か昔と変わったわね。惚れちゃいそうだわ」
「悪いが、俺にはイカロスがいる」
「あら? 英雄、色を好むという言葉があるわよ。それに、妾になるという方法も有るわ」
「咲夜姉、年を経るごとに変な方向に行ってる気がするのは気のせいか? リインでさえ多少の恥じらいは有るというのに」
「貴方の物になれるのならなんだってするわ」
「……血は繋がってないのに何故こうも似通ってるんだろう、この2人は」
刹那は頭を抱えながらため息をつく。むしろ、アロガンスよりもこっちの対策が大変に違いない。
(あの子の事が本当に好きなのね、刹那は。なんだかパルパルしたくなっちゃうわね)
咲夜は愛しい弟分に対して優しい表情を向けていた。刹那はそれを見て携帯をいじり出した。
「どうしたの?」
「いや、ちょっと警察に電話を……」
「それ、本気で辞めてくれないかしら!?」
「大丈夫だ、咲夜姉。照井さんは特異な事態に慣れてるし、きっとなんとかしてくれる」
「私をなんだと思ってるの!?」
「ことあるごとに翔兄との触れ合いを邪魔してくる人」
「そのはっきり言う所は、奏先生譲りよねぇ。何気に傷つくわ」
「さて、帰るか」
刹那は咲夜を放置し、180度回転して家に向かって帰り始める。
「貴方の好きなケーキを焼いてあげるわ。だから、無視するのは辞めてほしいのだけれど」
「…………仕方ないな。久しぶりに会ったわけだし、少しは相手をしようか」
「食い意地張ってるのは、昔と変わらないわね」
咲夜は嬉しそうな顔で小走りして刹那の隣に並び、家に着くまでの短い時間を楽しんだ。
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[そらのおとしもの~天使と仮面騎士の物語~]
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