No.455811

魔装機神インフィニット・ストラトス~

女性しかISを稼働できなかったのが、突然男でISを稼働できるのが同時に二人も現れた!?その二人の名は織斑一夏と龍見雅樹。
この物語の主人公である龍見雅樹が女尊男卑の世の中に疾る『風』・・・その名はサイバスター!!

2012-07-19 20:23:15 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3547   閲覧ユーザー数:3430

第七話「暗躍する者、備える者、そして、新たなる来訪者」

 

 

 

 

「調査の具合はどうだ、山田先生?」

 

「あ、織斑先生」

 

学園の地下五十メートル。レベル4権限をもつ関係者しかはいられない限られた空間に千冬と真耶がいた。

 

「それが・・・・」

 

「どうした?」

 

言いにくそうに言葉を濁す真耶に千冬は眉をひそめる。

 

「調査の結果コア自体ほとんどブラックボックス化していて、大したことがわかりませんでしたけど、サイバスターに使われている装甲はこの世に存在しない金属でできています」

 

「何・・・?」

 

「それと・・・」

 

「それと?」

 

言い辛そうな真耶に千冬は視線を険しくする。

 

「このISを開発を担当した企業の人に連絡を入れた所、”そのようなISは開発していない”と・・・」

 

「何だと?どういうことだ?」

 

「は、はい。どうやら龍見くんに渡すはずだったISを何者かがすり替えて、今のISにしたようです」

 

「その龍見のISになる予定だったISは?」

 

「コアだけ抜き取られて発見されたそうです」

 

「・・・・・運送を担当した作業員は?」

 

「それが・・・何も覚えていないと・・・」

 

「・・・・」

 

千冬は険しい視線でモニターに映る雅樹と唯依の試合を見つめていた。

 

「この事を知っているのは?」

 

「私と織斑先生、それと――――」

 

「私だ」

 

唐突に千冬達の背後から第三者の声が響いた。

二人が振り返るとそこには金髪をポニーテイルにした妙齢なロシア系美女がファイルを脇に挟んで立っていた。

 

「ラトロワ先生・・・・」

 

「こんばんわ。織斑先生、山田先生」

 

ラトロワと呼ばれた美女『フィカーツィア・ラトロワ』はコツコツとハイヒールを鳴らしながら二人に近づいてきた。

 

「待て、どうしてお前がこの事を知っている?」

 

「なに、私もあの試合を見いたからな。試合が終わると同時に調べに入ったのだ」

 

千冬は鋭い視線でラトロワを問い詰めるがラトロワは真っ向かその視線を受け止め堂々としていた。二人の間で火花が走り、真耶はそんな二人の間でオロオロとしていた。

何を隠そう織斑千冬とフィカーツィア・ラトロワ、この二人は第1回IS世界大会(モンド・グロッソ)の元日本代表と元ロシア代表でライバルだったのだ。片や総合部門優勝と格闘部門優勝者、片や総合部門準優勝と射撃部門優勝者。その実力と美貌から千冬の事を『ブリュンヒルデ』とラトロワの事を『ジークルーネ』と敬意を持って称された(本人たちはその呼び名を嫌っているが)。

決して仲が悪いわけではないのだが、お互いライバル意識が高いので何かと反発している。

 

「・・・まあいい。とにかく今は、龍見雅樹に送られてきた専用機『サイバスター』の処置について委員会からの決定を伝えに来た」

 

「なんだと?」

 

「もう決定が出たんですかっ!?」

 

(馬鹿な、いくらなんでも早すぎる・・・)

 

「で、でも、委員会に報告したのはついさっきですしそれに概要部分しか報告してませんけど・・・・」

 

ラトロワの言葉に千冬は不審に思った。何故なら真耶の言うとおり委員会に報告したのはサイバスターの戦闘記録と雅樹が使うはずだった専用機のコアが何者かに抜き取られて発見されていたという事だけだ。

しかも、報告してまだ半日もたっていない。

 

「それについては私もわからない。私も先ほど委員会から指令書を渡され中身すら見ていないのだからな」

 

そういってラトロワは脇に挟んでいたファイルを開けて中身を取り出した。

 

「っ!?馬鹿な・・・なんだこれは・・・」

 

「どうした?なんて書いてある?」

 

指令書の中身を確認したラトロワは目を見開き、驚愕した。そんなラトロワに千冬は問いかけた。ラトロワは若干戸惑いながらも口を開いた。

 

「・・・・今回の件は不問とし龍見雅樹のISはただちに本人に即時返却。件のISを正式に龍見雅樹の専用機に登録後、全ての調査は委員会が引き継ぐ事とする・・・」

 

「なんだと?一体どういうことだっ!?」

 

「い、いくらなんでもそれはあんまりなんじゃ・・・」

 

それはつまり今回の件は目を瞑り、見て見ぬふりをしろということ。いくらなんでもそんな馬鹿な措置ははないと千冬は筋違いかもしれないがラトロワに激昂し横にいる真耶も弱弱しいが疑問を口にした。

 

「私に言われてもわからん。私はただ委員会からの指令書を読み上げただけだ。この内容には些か疑問に感じるが・・・」

 

対するラトロワも形のいい眉を顰めながら顎に指をあてて考えはじめた。

 

「チッ・・・ここでこうしても埒が明かないな。とりあえず山田先生は龍見に専用機を返却してくれ。私はその間に委員会に直接掛け合ってくる」

 

「は、はいっ!」

 

千冬に言われ真耶は慌てて資料をまとめ銀の翅を模したペンダント―――待機状態のサイバスターをもって部屋から出ていった。

 

「ラトロワ、お前も一緒に来てもらうぞ」

 

「フッ・・・わかっているさ、千冬」

 

真耶を見送った千冬はラトロワにあっさり了解した。

何だかんだでこの二人、お互いをライバル視している割に仲が良いのだ。

 

 

 

 

加速し始める物語、それは何も表だけの事ではない。

そう、光り強ければ闇もまた強くなるかのように・・・。

 

 

 

某国某所

 

「ふ~ん。これが私のISとすり替えたものか~」

 

そこは奇妙な部屋であった。部屋の至る所に機械の部品がちりばめられケーブルがさながら樹海の様に広がっている。

その金属の上を歩いているのは、機械仕掛けのリスだ。時折床に転がっているボルトをドングリよろしくガリガリと食べている。

そんな摩訶不思議の空間の部屋の主は椅子に座ってモニターを眺めていた。

空のような真っ青なワンピースに頭には機械でできたウサ耳。顔は目の下にクマができているがかなり整っており、その肢体はすらっと伸びて金星が整っている。特に注目するのはその豊満な胸だろう。服のサイズが合ってないのかバストを止めるボタンがギリギリまで引っ張られて、白いブラウスの隙間からは妖艶な大人の肌色が見え隠れする。

そう、この女性(ひと)こそ箒の姉でありISの生みの親の篠ノ之束である。そして、いま彼女がいる空間が束の秘密ラボ。

 

「ほ~ほ~。普通のISの性能をはるかに凌駕しているね~~」

 

モニターを見ながら感心しながら束が感心しながらコンソールを叩いている。

そこに映っているのは雅樹と唯依の――――サイバスターと武御雷の試合だった。

 

「おー・・・」

 

試合が進むにつれて雅樹がアカシックバスターを唯依に向けて放つシーンを束は目を見開いて驚いた。

 

「これはこれは・・・さしずめ召喚かな?この世界に存在しないものを呼び出し使役したものかな・・・」

 

束は技術者の魂に火がついたのかコンソールを叩くスピードを速め、サイバスターの分析を開始した。

が・・・・

 

「ダ~メだ~。やっぱりデータが少ないな~。ユイユイも、もうちょっとねばってくれないとな~」

 

と、束は降参したかのように背も足りに寄りかかった。

基礎データと戦闘データが圧倒的に少なすぎる。IS学園にハッキングをかけようかと束は一瞬考えたが、今はまだ時期ではない。

 

「それよりも、このISを創った奴を探した方が速いかな~?」

 

モニターと睨めっこしながら束は早速ハッキングに取りかかった。

 

 

 

 

 

某国某所

 

「上手くサイバスターに受け入れられたようだな」

 

「ええ、姉さん」

 

モニターを見ながら二人の女性が佇んでいた。

二人のいる部屋は束の部屋とは正反対の部屋だった。

アンティーク風の部屋の中に機材がきちんと整理整頓がされており、床にはボルトどころかゴミ一つなく、その部屋の主の性格が窺えた。

 

「あの男がテレビに映った瞬間サイバスターが反応した時は、正直驚いたな」

 

そんな部屋にいる二人の女性の内、深紅のウェーブがかかった髪の女性『テューディ・イクナート』は腕を組んだままモニターを見つめた。

 

「でも、どの世界の雅樹もサイバスターに選ばれる運命にあったのかもしれないわ・・・」

 

蒼いウェーブのかかった髪の女性『ウェンディ・イクナート』は若干嬉しそうに手を胸にあてながらモニターを見た。

テューディとウェンディ、この二人顔は髪と瞳の色以外まったく同じ顔で同じ体系―――双子の姉妹なのだが、服装はかなり違った。ウェンディは肩にショールの様なものをかけて彼女の髪の色と同じ蒼いスーツを着て、仕事の出来る女と言う印象が強く、テューディはこれまた彼女の髪と同じ色だが、ウェンディの服より露出が多くスカートの部分に大胆にスリットが入っておりスーツというよりチャイナ服に似ている。

 

「サイバスターと雅樹の適合率も安定しているし、ファーストシフトでいきなりアカシックバスターを撃って、なお且つ倒れないとは・・・流石だな・・・」

 

「そうね。ガエンもありがとう。あなたがすり替えてくれたおかげでスムーズに雅樹にサイバスターを受け取れたわ」

 

テューディが雅樹と唯依の試合のデータを見ながら感想を述べると、ウェンディは後ろを向いてこの部屋にいるもう一人の住人にたいして、礼を言った。

 

「礼を言われるほどではない。俺は俺の仕事をしたまでだ」

 

「だけどガエン。もちろん殺しは・・・」

 

「していない。作業員たちもお前が作った薬で何も覚えてはいないだろう。それに委員会の方は既に根回しの方がすんでいる」

 

とぶっきら棒に言うのは肩まである黒髪に全身黒尽くめの男『ガエン』は腕を組んだまま壁に寄りかかっている。

 

「・・・・ふむ。ゾルガディの方はどうだ、ガエン?何か問題は無いか?」

 

そういいながらテューディはガエンの腕に巻かれている青色の爪を連想させるブレスレットを見た。

 

「無いな。こいつは俺によく馴染む。それと、これがその報告書だ」

 

「ほう?やはり相性はいいか」

 

ガエンに渡された報告書を見てにテューディは感心したように目を見開いた。

ここまで言えば大体察しが付くだろうがこの三人こそ雅樹のISをすり替えた犯人である。理由は不明だがテューディとウェンディが計画しガエンが実行した。その際に輸送を担当していた作業員はウェンディの開発した薬によって何も覚えていない。さらにサイバスターと雅樹が余計な詮索がされないようにIS委員会への根回しをして調査を打ち切らせたのだ。

 

「フフッ、無事に風の魔装機神は稼働した。後は火、水、土の魔装機神だけだな」

 

「土に付いてはもう九十%以上仕上がっているわ。水に付いても後は武装を完成させれば終了よ。ただ・・・火に付いてはコアが馴染むまで時間がかかりそうね・・・」

 

そういいながらウェンディはコンソールを叩くとモニターに新たな映像が現れた。

そこには三機のISが佇んでいた。

三機とも色もデザインも事なり、カーキ色の機体は重装甲で左腕に装着されているシールドと肩に装着されているキャノン砲の様な武装がある。二機目は青色の機体でカーキ色の機体に比べてスッキリとしており、曲線的な装甲で優雅さを醸し出しているのが特徴で右手に槍が装備されている。最後の三機目は青色の機体と対をなす赤色で直線的な装甲に両腕や胴、両肩の砲など、機体各部に龍をあしらったようなレリーフで実に攻撃的なデザインだ。

 

「それに問題は扱う操者の方か・・・・」

 

「そうね・・・機体が完成しても扱うものがいなくては意味が無いわ」

 

「ああ。未だ奴らが動き出さないからといって、いずれ来るべき戦いに備えて、全ての魔装機神を集めなくてはな。その為には一刻も早く残る魔装機神操者を探さなくてわ・・・」

 

「そうね。姉さん」

 

モニターに映った三機を見ながらテューディとウェンディはそう決心した。

 

 

 

 

所変わってIS学園一年生寮

 

我らが主人公、龍見雅樹は現在・・・

 

「ここは何処だ?」

 

迷子であった。

 

「っかしいな~?確かこっちだったんだけどな~」

 

雅樹は首を傾げながらあたりを見回している。

何故雅樹が迷子になっているのかというと、理由は単純で寮の食堂から自室へ戻る途中に道に迷ったのである。

龍見雅樹、特技『迷子』。

 

「やかましぃっ!」

 

「ま、雅樹?」

 

「あ・・・って唯依か、もういいのか?」

 

雅樹が振り向くと制服姿の唯依が若干驚いた顔で雅樹の方を見ていた。

 

「ああ。元々大した怪我じゃなかったからな。軽い検査だけで済んだ」

 

「あ~そっか。ならいいんだけどよ・・・」

 

「所で雅樹。お前はこんな所で何をやってるんだ?」

 

「うっ・・・」

 

唯依の質問に雅樹は言葉を詰まらされた。

流石に寮で迷子になったというのは恥ずかしすぎる。

そう考えた雅樹は、

 

「あーっとほら、ちょっとした散策だよ」

 

誤魔化す事にした。

 

「嘘だな」

 

しかし、一瞬でバレた。

 

「なっ!何でそう思うだよ!?」

 

「お前は昔から迷子になった時の言い訳は必ず散策やら散歩で誤魔化すからな。大方、食堂に行って帰り道がわからなかったのだろう」

 

「うぐっ」

 

これもまた図星であるため雅樹は言葉を詰まらせた。

 

「ハァッ、シェスチナとビャーチェノワは一緒じゃないのか?それか、一夏か箒は?」

 

「一夏と箒はさっさと飯を食っちまったんだよ。イーニァとクリスカは誘ってくれたんだけどよ・・・。今日は一人で食いたかったからな・・・」

 

「先の戦闘の事ならお前が気に病む事は無い。あれは私が未熟だったために起ったことだ」

 

バツの悪そうな雅樹の答えに唯依は諭す様に言った。

 

「で、でもよ!それは俺が未熟だったから・・・」

 

「なら、一緒に強くなれば良い」

 

「っ!?お、おいコイツは・・・」

 

そういって唯依が差し出してきたものは銀の翅を模したペンダント――――待機状態のサイバスターだった。

 

「先ほど山田先生からお前に渡す様に言われてな・・・」

 

「そうかよ・・・」

 

雅樹はサイバスターを恐る恐るといった手つきで受け取った。

 

「雅樹、お前もサイバスターもまだスタートラインに立ったばかりだ。時間もたっぷりある焦らず強くなれば良い。ゼオルートの小父様も言っていただろう?『武とは急に付くものではなくゆっくりと身に付けた方がその使い方を見誤らない』と・・・」

 

「ああ、そうだったな・・・。こんなんじゃあ、親父にどやされちまうな」

 

父ゼオルートの教えに雅樹は迷いの吹っ切れた様で迷い無くサイバスターを首に掛けた。

 

「よっしゃ。んじゃ、明日からISの方の特訓を始めようか!」

 

「フフッそのいきだ。だが、剣の修行も忘れるなよ?」

 

意気込む雅樹に唯依は微笑しながら釘を刺した。

 

「へいへい、わかってるって」

 

「ならばよし」

 

そんなやり取りをしながら二人は自室へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雅樹達が自室に戻り就寝した頃・・・・

 

 

 

 

 

 

 

とある海域、そこに突如謎のISが出現した。

 

「やれやれ、やっと出れたか・・・・」

 

謎のISは雲の中に隠れ、ステルスモードまで使っているため正体までは分からないが声からして男性の様だ。しかし、雲越しに見えるシルエットはどことなくサイバスターに見える・・・・。

 

「ハハッ!ここが地上か・・・あっちと大して変わらない様が気がするけど・・・・まあいい。今はむこうの連中と合流するのが先か・・・」

 

謎のISとその操者はあたりを見回しながらハイパーセンサーで周囲を索敵し始めた。

 

「見つけたか。さあ行こうか■■■■■■。・・・・この世界のキミはどのくらいの強さなんだい?"雅樹・ゼノサキス"いや・・・龍見雅樹!!」

 

そして、謎のISはその場から姿を消した・・・・。

 

 

 

 

 

 

この者との会合が雅樹のさらなる試練になるのか、それはまだ誰も知らない・・・・。

 

 

 

 

 

 


 
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