じゅ…術式を破っただと!? 馬鹿な! この術式はコカビエルを斃さん限り
絶対に破壊できないはず…!」
バルパーは動揺していた。そんなに術式が大事だったのかよ。
「バルパー。俺のエクスカリバーは、万物を切り裂く聖剣だ。もしかしたら
七つに分かれる前のエクスカリバーと同等かもな」
「そ…そんな馬鹿な…」
バルパーは地面に手をついた。そのとき、懐から聖剣の因子と思われる
球体が祐斗の方へ転がっていった。
―――――まるで…因子が意志を持っているかのように―――――
祐斗は静かに屈み込んで、球体を手に取った。
「……皆……」
祐斗の頬に涙が伝っていた。
そのとき、球体が淡い光を放った。光はどんどん広がっていき
校庭を包んだ。そして、校庭のいろんな場所から光が浮いてきた。
それが徐々に人のカタチに成った。
祐斗を囲むように青白い淡い光を放つ、少年少女になった。
これは…きっと聖剣計画で犠牲になった子供達だろう。
祐斗は彼らを見つめ、懐かしそうで哀しそうな表情になった。
「皆! 僕は……僕は!」
俺はいつの間に聖騎甲(アーク)を解いて、この現象を見ていた。
「…ずっと…ずっと、思っていたんだ。僕が、僕だけが生きていていいのかって…
僕よりも夢を持っていた子がいた。僕よりも生きたかった子がいた。僕だけ
が平和な暮らしを過ごしていていいのかって…」
霊魂の少年の一人が微笑みながら、祐斗に何かを訴える。
「…〔自分たちの事はもういい。キミだけでも生きてくれ〕。彼らはそう言った
のです」
朱乃さんが代わりに話してくれた。それが伝わったのか祐斗の双眸から涙が溢れた。
魂の少年少女たちは、口をリズミカルに同調させていた。
「―――聖歌」
アーシアがそう呟いた。
彼らは聖歌を歌っている。祐斗も聖歌を口ずさみだした。
聖歌を歌う彼らと祐斗は、幼い子供のような無垢な笑顔に包まれていた。
彼らの魂が青白い輝きを放ちだした。その光が祐斗を中心に眩しくなっていく。
『僕らは、一人ではダメだった――――』
『私たちは聖剣を扱える因子が足りなかった。けど―――』
『皆が集まれば、きっと大丈夫――――』
彼らの声が聞こえる…。
本来、聖歌を聴けば俺たちは苦しむらしい。
だが、様々な力が入り乱れている特殊な力場のせいか俺たちは聖歌の苦しみ
は感じない。むしろ、温かみを感じる。
――――――友を、同志を想う、温かなものを―――――――
俺たちの目からも自然に涙が流れていた。
そして…俺は今まで感じた事がない、ヒステリア性の血流を感じていた。
聖歌を聴いて感じた、同じ温かみを…
『聖剣を受け入れるんだ―――』
『怖くなんてない―――』
『たとえ、神がいなくても―――』
『神が見ていなくても―――』
『僕達の心はいつだって―――』
『―――ひとつだ』
彼らの魂が天にのぼり、ひとつの大きな光となって祐斗のもとへ降りてくる。
やさしく神々しい光が祐斗を包み込んだ。
◆
祐斗Side
「―――悪魔として生きる。それが我が主の願いであり、僕の願いでもあった。
それでいいと思った。けれど――。エクスカリバーへの憎悪と同志の無念だけは
忘れられなかった。……いや、忘れても良かった。僕には――」
今、最高の仲間がいるんだ。
イッセーくん。小猫ちゃん。クリス。復讐にかられた僕を助けてくれた。
ともに聖剣使いを探し回っていたとき、思ってしまったんだ。僕を助けてくれる
仲間がいる。「それだけで十分じゃないのか?」と。
だけど、同志たちの魂が復讐を望んでいるといたら、僕は憎悪の魔剣をおろすわけ
にもいかない。
だが、その想いも先ほど、解き放たれた。
同士は復讐を望んでいなかったんだ!
「でも、まだ終わりじゃない」
「そう。まだ、終わりじゃない。バルパーを斃すんだ。奴を滅ぼさん限り、
祐斗達の二の舞が生まれる」
さっきとは雰囲気が変わったクリスが言った。
「バルパー・ガリレイ。あなたを滅ぼさない限り、第二、第三の僕達が生を
無視される」
「研究に犠牲がつきものだ。ただそれだけの事だぞ?」
やはり…あなたは邪悪すぎる。
「ハハハ。何泣いてんだよ? 幽霊ちゃん達と戦場のど真ん中で楽しく歌っちゃってさ。
ウザいったらありゃしない。もう最悪。俺的にあの歌が大嫌いなんスよ。聞くだけで
お肌がガサついちゃう! もう嫌。もう限界! てめぇを切り刻んで気分を落ち着か
させてもらいますよ! この四本統合させた無敵の聖剣ちゃんで!」
その身に宿る僕の同志の魂。これ以上悪用させるわけにはいかない!
「――僕は剣になる」
同志たちよ。僕の魂と融合した同志たちよ。
一緒に超えよう―――。あのとき、達せなかった想いを、願いを、いまこそッ!
「部長、仲間達の剣となる! 今こそ僕の想いに応えてくれッ! 魔剣創造(ソード・バース)ッッ!」
僕の神器と同志の魂が混ざり合う。同調し、カタチをなしていく。
神々しい輝きと禍々しいオーラを放ちながら、僕の手元に現れたのは一本の剣。
「――禁手(バランス・ブレイカー)、『双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)』。聖と魔を有する剣の力その身で受け止めるといい」
◆
クリスSide
「――禁手、『双覇の聖魔剣』。聖と魔を有する剣の力、その身で受け止めるといい」
祐斗の神器が変わった。魔剣から聖魔剣に…
そして…俺の身にも変わった事があった。
今の俺は、HSSだ。だが、これはベルセより強力で、ノルマーレと同じぐらい
冷静だった。そして、ほかのHSSと決定的に違うのは体の奥底に聖なる力が
溢れている。
「(まぁ…ヒステリア・パラディンといったところか…)」
今なら、さっき以上に聖剣を扱える気がする。
と考えていたら、祐斗はフリードを圧倒していた。
フリードは『擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)』、『天閃の聖剣(エクスカリバー・ラビットリィ)』、
『透明の聖剣(エクスカリバー・トランスペアレンシー)』、の能力を使っても祐斗に攻撃を当てる事はできなかった。
「ペトロ、バシレイオス、ディオニュシウス、そして聖母マリアよ。我が声に
耳を傾けてくれ」
ゼノヴィアは何かの言霊を発した。すると、俺の視界で空間が歪んだ。
彼女はそこに手を入れ、何かを掴むと、無造作に引っ張った。
「この刃に宿りしセイントの御名において、我は解放する。――デュランダル!」
デュランダル、か。確か…本物のエクスカリバーと並ぶ伝説の聖剣。
まさか、見れるとは思わなかった。
「デュランダルだと!?」
「貴様! エクスカリバーの使い手ではなかったのか!?」
バルパーとコカビエルは驚きを隠せていない様子だった。
「残念。私は元々聖剣デュランダルの使い手だ。エクスカリバーの使い手を
兼任していたに過ぎない」
「バカな! 私の研究はデュランダルを扱える領域まで達していないぞ!?」
「それはそうだ。現存する人工聖剣使いと違って、私は数少ない天然ものだ」
バルパーは絶句していた。
「そんなのアリですかぁぁぁ!? ここにきてのチョー展開! クソッタレのクソビッチ
が! そんな設定なんていらないんだよぉぉぉ!!」
フリードがゼノヴィアに殺気を向けた。透明の剣が彼女にむかっていったのだろう。
俺はキンジの武装になって、ゼノヴィアの前に行き
ガギィィィィンッッッ!!!
スクラマ・サクスで粉々にした。
枝分れをした聖剣が砕かれて姿を現した。
「フリード、女性を傷つけてはいけないな。さぁ、俺が相手だ」
「マジかよマジかよマジですかよ! 伝説のエクスカリバーちゃんが木っ端微塵の
四散霧散かよ! しかも、ただの剣に負けた。酷い! これは酷すぎる! かぁーっ!
折れたものを再利用しようなんて思うのがいけなかったのでしょうか!
人間の浅はかさ、教会の愚かさ、いろんなものを垣間見て俺様は成長していきたい!」
フリードの殺気が弱まった時に祐斗は一気に詰め寄った。
祐斗の聖魔剣をエクスカリバーで受け止めようするが
バキィィィィン!!
フリードが持っていた聖剣エクスカリバーが砕け散った。そのまま祐斗は
フリードを斬りつけた。
「―――見ててくれたかい? 僕らの力は、エクスカリバーを超えたよ」
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神様の悪戯で、死んでしまった俺―――神矢クリスはハイスクールD×Dの世界に転生した。原作の主人公、兵藤一誠らに会っていろんな事に巻き込まれる。