No.455601 外史テイルズオブエクシリア 闇の魂を持つ者の旅路の記録 第5話BLACKさん 2012-07-19 09:36:52 投稿 / 全4ページ 総閲覧数:1229 閲覧ユーザー数:1213 |
第5話 進む道
四人はニ・アケリアに着いた。
「到着だ」
「ここが……」
「へえ、意外と普通の村だな」
ミラは歩きだし、商人に声をかける。
「すまない。イバルはどこにいる?」
「ん?」
商人は立ち上がる。
「イバルならマクスウェル様を追って……」
後ろを向いていた商人は振り向き、ミラを見ると驚いた。
「マ、マクスウェル様?!」
商人はミラを見て、片足を地面につけて、拝むような姿勢をとる。
「うむ。今戻った」
ミラが戻ってきたのを知った村人たちはミラの元に集まって、商人と同じことをしだす。
「やっぱ、本物なんだよな」
「ミラ、すごいんだね」
「ちょっと疑ってたんだがな」
「ま、いんじゃね」
全然気にしない秋山。
「緊張するな。普段のとおりにしていればいい。イバルは、今いないと言ったか?」
「は、はい!いつもより戻りが遅いと心配して……」
「そうか。相変わらず短気だな。手を止めさせてすまなかった」
そしてミラは歩きだし、ジュード達もついていく。
「私は、これからすぐに社で再召喚の儀式を行う。
だが、巫子が不在のようだ。悪いが、少し手伝ってくれ」
「え? 僕たちで何か手伝えるの?」
「祭事には縁がないんだがなぁ」
「そんなに難しいことはない。
村には四つの祠があり、そこには世精石があるのだ」
「それをすべてミラの言ってた社まで運べばいいの?」
「うむ」
「それなら、村の人に頼んでもいいんじゃないの?」
「さっきのを見たろ? 巫子以外は日頃、私とあまり接してないからな。
あれではまったく話にはならない」
「ふーん。ま、力仕事は男の役目かね」
「そうだよ、アルヴィン」
「ミラを入れてちょうど四人だな」
「私まで働かせる気か? お前は……」
「儀式する奴が何もしないのは割が合わんだろ」
「……確かに」
そして四人は手分けして四つの世精石を集めた。
「これでいい。では行こう」
ミラに連れられて世精石を持ったまま、ニ・アケリア参道を通って、ミラの社へと向かった。
その参道でも魔物は現れる。
「本当にどこにでも現れる奴らだな」
「だがこの奥に社がある」
「それじゃあ、頑張ってやるか」
参道にいる魔物達を倒して社へとたどり着く。
「この奥だ」
「ミラは、ここに住んでるの?」
「住んでいる、か。そう考えたことはないがそういうことになるか」
「何もないところだなぁ。退屈じゃなかったのか?」
「私の使命においては、なんの問題ない。
人の記した書物などを読んだりもしたがな」
「ふーん」
「さぁ、儀式をすませよう」
そうして社の中に入っていき、四精石を決められた場所に置く。
「これでいいの?」
「うむ、助かった」
ジュード達は少し離れる。
そしてミラは再召喚の儀式を行う。
しかし何も起きず、四精石は割れてしまう。
「ミラ!」
ミラの体もぐらつく。
「ミラ様!」
そこに一人の男が社の中に入って来て、ミラの前に跪く。
「イバルか」
入って来た男は巫子とされるイバルだった。
「ミラ様。心配いたしました」
イバルは社の中を見て、粉々になっている世精石を見た。
「これは四元精来還(しげんせいらいかん)の儀? 何故今このような儀式を。しかし、これは……イフリート様! ウンディーネ様!」
四大精霊の名前を呼んでも何も出てこない。
「ミラ様。一体何が……」
ミラは何が起こったのかを話した。
「そんなことが……」
「んで、精霊が召喚できないのってそいつらが死んだってこと?」
アルヴィンが尋ねる。
「バカが。大精霊が死ぬものか」
「あれ。常識?」
「大精霊も微精霊と同様、死ねば化石となる。だが、力は次の大精霊へと受け継がれる!」
「……って、言われてるね。見た人はいないけど」
「あー、それね」
「ふん。存在は決して死なない幽世(かくりよ)の住人。それが精霊だ」
「本当に死なないのかね~」
「貴様! 俺の話を信じていないのか?」
秋山の反論にイバルが怒る。
何故秋山が反論したのかというと、秋山は異世界において本来殺せない存在も殺せる力を持つことが出来る。
つまり秋山が本気を出せば、イバルの言った死なない精霊を完全に殺すことが可能なのだ。
とは言っても秋山がその力を行使するのは外道とされるものと戦った時くらいである。
「…………だったら四大精霊は、あの装置に捕まったのかも」
ミラも心当たりのある顔をする。
だが……。
「バカが! 人間が四大様を捕えられるはずがない!」
イバルが反論した。
「けど、その四大精霊が主の召喚に応じないんでしょ?
ありえないことでも、他に可能性がないなら、真実になり得るんだよ」
「何もない空間で、卵がひとりでに潰れた場合、その原因は卵の中にある……。
『ハオの卵理論』ってやつだな。さっすが優等生」
「それに俺はこんな言葉を聞いたことがある。
『ありえないことなんてありえない』。その言葉を理解してないと、これからやっていけんぞ」
「…………!」
イバルは憤る。
「四大を捕えるほどの黒匣(ジン)だったというのか。あの時……私はマクスウェルとしての力を失ったんだな」
ミラは立ち上がる。
「さぁ! 貴様たちは去れ! ここは神聖な場所だぞ! ミラ様のお世話をするのは、巫子である俺だ!」
イバルは威張って歯も光らせる。
(うざいなぁ……北斗神拳でぶちのめしてやろうかな……)
珍しくすごく感情的になりかける秋山。
秋山がそう思っていた時、ミラがこう言った。
「イバル、お前もだ。もう帰るがいい」
「は?」
イバルは信じられないと言う顔をする。
「そうだな、有り体に言うぞ」
後ろを向いていたミラは振り返る。
「うるさい」
「………!」
イバルは大ショックを受ける。
「とりあえず外に出るか」
ジュード達はミラを残して、社の外に出た。
「貴様らがしっかりしていないおかげでミラ様があんなことに!」
イバルはいちいち腕を振り回しながら怒る。
「くそ! 俺がついて行ってれば!」
「マジで短気な奴だな」
「多分、もっと悪い結果になってるだろうぜ」
「何!?」
秋山の言葉に怒るイバル。
「貴様、もう一度言ってみろ!」
「お前と一緒だったら、ミラは無事じゃ済まなかった。
下手すりゃ死んでたろうな」
「貴様!!」
イバルは秋山に殴りかかろうとする。
「ふん!」
秋山は簡単にイバルの額に指を置く。
「う、動けん……」
「これくらいできる俺でさえ、ダメだったんだ。
これを抜け出せん以上、お前じゃ無理だってことだ」
秋山はイバルの額から指を離す。
「ぐぬぬぬぬ!」
ジュードは突然歩き出す。
「貴様! 聞いているのか!」
イバルがジュードを止める。
「あ、ごめん。何?」
「チッ!
いいか。これからもミラ様のお世話は俺がする。余計なことはするなよ!」
「はぁ……」
思わずため息をつくアルヴィン。
するとアルヴィンは横に何かを感じたのか、横を見る。
「…………」
そうしてるうちにイバルは帰っていく。
「もう少しここにいるか?」
横を見終えたアルヴィンはジュードに声をかける。
「うん」
「俺も残るわ」
「んじゃ、俺は先に戻ってるわ」
アルヴィンは先に一人で村へと戻っていった。
「なすべきこと……自分の力……」
「そこんとこはもう少しじっくり考えればいいさ」
そこにミラが社から出てくる。
「あ、ミラ。どうしたの? 休むんじゃないの?」
「こっちの台詞だ、ジュード。まだ村に戻ってなかったのか。秋山も……」
「うん」
「ああ」
「ふむ。では、これから村の者に君のことを頼みに行くとしよう」
しかしジュードは不満そうな顔をする。
「どうした? 村になじめるか心配なのか?」
「ううん。そうじゃなくて…ミラは……これからどうするの?」
「クルスニクの槍を壊しに、イル・ファンに戻るの?」
「ああ。四大のことと、あの場にいたマナを吸い出された人間たちを考えると…。
クルスニクの槍とは、マナを集めて使用される兵器なのだろう。
あれが今すぐは使われることはないだろうが、やつらのマナ確保は続くと考えているからな」
「でね……それ、ひとりでやるの?」
「回りくどいぞ。ジュード。何が言いたい?」
「……ミラって、どうしてそんなに強いのかなって」
「君は、私に興味があるんだな」
「!」
ジュードは言われて驚いた。
「かっかっか、顔が赤いぞ少年」
老人のように笑って、からかう秋山。
「強い、か。考えたこともないな。私にはなすべきことがある。
私は、それを完遂するために行動しているだけなのだから」
「それじゃあ強くないかもな」
「で、でも今の力で……一人じゃ無理なんじゃない? 死んじゃうんじゃない」
「だが、やらねばなるない。もう決めたことだ」
「……やっぱり強いよ。ミラは……」
「ふむ。納得したのか? では村に……」
ミラが歩き出すと……。
「ミラ!」
「ん?」
「僕も行っていいかな。一緒に」
「俺もいいか?」
「…君たちは、私に関わって普通の生活を失ったろう?」
「俺は元から普通の生活はしてないから問題ない。ぶっちゃけた話、暇なもんでな……逆にこういったことはありがたい」
「…だがジュード、お前は後悔していたのではないのか?」
「うん……、ホント言うと少し。
でも、いくら後悔したって戻れないものは戻れない……。
だったら、今の僕の力でもできること……、ミラの手伝いをしようかなって」
ミラは唖然とした。
そして次にこう口を開く。
「君は本当にお節介だな」
「そ、そうかな」
「そうそう」
「巻き込まぬよう、ひとり遅れて社を出たというのに」
「そうだったの?」
「うむ。君たちとの短い旅路で学んだ気を遣う、というヤツだ。なかなか難しいな」
「そんなの人でも同じだ」
「とにかく村に行こう。君たちに見つかってしまった以上、急いで発つ意味も弱くなってしまったしな」
そしてジュード、ミラ、秋山はニ・アケリアへと戻った。
「よう。遅かったな。ミラも一緒か」
三人をアルヴィンが迎えた。
「身の振り方、決まったんだな」
「うん。ミラと一緒に行くことにしたよ。秋山もついて行くって…」
「どういう心境の変化だよ……後悔するんじゃないのか?」
「うーん……でも、もう決めたんだ。ミラの手伝いをするって」
「あっそ」
「アルヴィン、今まで世話になったな。そうだ、忘れるところだった」
「ん? 謝礼か?」
ミラは頷く。
「それなら村のじいさんに払うって言われたけど?」
「村の人が?」
「ああ。マクスウェル様を守ってくれてありがと~てな」
「ふむ。長老だろう。いらぬことを」
ミラは顎に手を当て、答える。
「アルヴィン。それは私の謝礼ではない」
「ミラから、あのじいさんにサンキュって言えば、それでいいだろ。じいさんもじいさんなりの誇りがあんだよ。断るのも失礼ってもんだ」
「……そういうものか?」
「そういうもんさ。
さてと、じいさんに待てと言われて待ってはいるものの、一向に来なくてな」
「村にいるんだよね?」
「だったら、おそらく集会所だろ。そこへ行ってみよう」
四人は集会所へ行った。
「マ、マクスウェル様! それにお三方も。お待たせして申し訳ありませんっ!」
「構わぬ。それよりアルヴィンへの謝礼を用意していると聞いたぞ」
「はい。私たち、戦うことは無理でもマクスウェル様のお力になれるようにと……以前、村のみなで出し合ったお金がありましてな」
「…そうか」
「言ったろ」
ミラは先ほどアルヴィンの言った、断ると失礼だと言う意味を理解した。
「お前たちの誇り、ありがたく受け取るとしよう」
長老は謝礼金をアルヴィンに渡す。
「ではな。アルヴィン。色々世話になった」
「うん。ありがとう」
「もしかしたらまた会えるかもな」
「ああ。それじゃあな」
アルヴィンと別れた。
「……なんだかあっけないね」
「傭兵というものはああいうものなのかもしれんな」
「そうなのかもね」
「ミラ様!」
そこに入れ替わる形でイバルがやって来た。
「またいずこかへ赴かれるのですか?」
「ああ。留守を頼む」
「自分も、ご一緒いたします! こんなどこの誰ともわからんヤツと二人にミラ様のお世話を任せられません!」
「イバル! お前の使命を言ってみろ」
「え、あ、自分の使命はミラ様のお世話をすること、です」
「それだけか?」
ミラは表情は変えてないが、声はどこか怒っていた。
「……戦えないニ・アケリアの者を守ることです……」
「理解したか? 私の旅の供はジュードと秋山が果たしてくれる」
ミラがジュードと秋山を見る。
「お前は、もうひとつの使命を果たすんだ」
「しかし、こいつらのせいでミラ様は精霊たちを!」
「それは私の落ち度だ。それどころがジュード達がいなければ私はニ・アケリアに戻れなかったかもしれない」
「ミラ……!」
ジュードは嬉しそうな顔をする。
「しかし!」
「なすべきことをもちながら、それを放棄しようというのか? イバル」
「……いえ」
イバルは黙らされた。
「さぁ、出発しよう。海停が封鎖されていなければよいのだが」
「その時は適当に船を調達して、俺が漕いでやるさ」
「……海停に行くのなら、途中、またハ・ミルを通るかな」
「ふむ。では、まずハ・ミルを目指そうか」
「え? それでいいの?」
「ア・ジュール内でラ・シュガル軍の動向を探れる貴重な場所だ。
もしかしたらイル・ファンに潜り込む妙案が眠っているかもしれん」
「それに村の様子も分かって一石二鳥ってか?」
「じゃあ、ハ・ミル経由で海停だね」
そして三人は集会所を出る。
三人がニ・アケリアを出ようとする様子を遠くから見る集団があった。
「あの女がマクスウェルか。プレザ。確かに力を失っていたのだな?」
男はキジル海瀑でミラを襲った女性……プレザに確認した。
「はい」
「既に『カギ』もどこかに隠された可能性があるとなると、少し面倒だな」
他には黒装束の男と、ハ・ミルで会った大男もいた。
「ごめんなさい。侮ったわ」
「あの娘がマクスウェルと知っておれば、ワシも『カギ』のありかを吐かせたのじゃがのう」
「まぁいい。今となっては泳がせた方が都合がよかろう」
「ええ。ラ・シュガルの目は奴らに向けさせ、我らは静かにことを進めるのが得策かと」
「アグリアから何か連絡は?」
「失われた『カギ』を新たに作成するという動きがあるとか」
「……捨て置けんな」
「ジャオ、例の娘の管理はもういい。お前は『カギ』の件を探れ」
ジャオと呼ばれた大男は困惑した。
「いや、しかし……」
「ラ・シュガル兵どもが去ったというのなら、もうお前が直々につく必要はない」
「データが無事なんだから、優先事項が変化するのは当然ね」
「う、うむ……」
「プレザ、アグリアと連携をとってイル・ファンに潜れ」
「あら、マクスウェルはいいのかしら?」
「ああ。まだ駒はある。『カギ』のありかも探らせる」
男達がその場を去ろうとした時であった。
ニ・アケリアを出ようとした秋山がその集団の方を睨むように見たのだ。
「! こちらに気付いた!?」
四人は戦闘態勢を取る。
「………ふっ」
秋山は鼻で笑った様子で見逃した。
「あれは……」
「我らに気づいていた。だが見逃した」
「あの男も捨て置けんな。だが、今は……」
「分かっております」
男達はひとまず去ることにした。
「秋山? どうしたの?」
「いや、何でもない」
三人はニ・アケリアを後にする。
三人はキジル海瀑へと戻っていた。
「……ふむ」
「どうしたの、ミラ?」
「イル・ファンへ船で行けぬ場合はどうするか考えていたんだ」
「んーと」
「山脈越えは難しいから、ア・ジュールからの陸路の線はないだろうなぁ」
そこに三人が聞き覚えのある声がして、三人が振り向く。
「「アルヴィン!」」
ジュードとミラが一緒に声を合わせてアルヴィンの名を呼んだ。
アルヴィンはそれに合わせる形で、手を上げて挨拶をする。
「サマンガン海停からカラハ・シャール方面になるんじゃないか?」
「どうしたの? 一体」
「あのイバルとかいう巫子殿に頼まれてね。三人じゃ心配なんだと」
「俺より何もできない奴が言うことじゃないだろうに……。もっと力の差を見せつけるべきだったか」
秋山は少し後悔した。
「その上、仕事に見合った以上の報酬をもらっちまうのは矜持に反するしな」
「ふふ、そうか。心強いよ。アルヴィン」
「うん、ありがとう」
「こんなに早く会えるとは思いもよらなかったぜ」
「礼なら巫子殿と村のみんなに。んで?どんなご予定で?」
「まずハ・ミルに向かいラ・シュガル軍の動向を探ってみる」
「まだいたらだけどね」
「いたら、俺が、自白させてやるさ」
「…んじゃ、行きますか」
こうしてアルヴィンを入れた一同はハ・ミルへと向かうのだった。
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