No.455420

【獣機特警K-9】その男、キャプテン・エドガー【交流】

古淵工機さん

それは、深い深い絆で結ばれた二人の想い。
例え遠く離れていても、その想いは確かに通じ合っているのです。

◆出演
アイヴィー総監(http://www.tinami.com/view/401918 )

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2012-07-18 23:17:28 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:839   閲覧ユーザー数:801

ファンガルド・プラネットポリス本部。

「失礼します」

という声とともに、本庁勤務のロボット警官、フュア・フランバージュ警視が入ってきた。

「あら、フュアじゃない。一体どうしたの?」

と、振り返るのはアイヴィー・ヒルトン総監。

「実はひとつ気になる事がありまして…」

「何か手に負えない事件でも?」

「いえ、取るに足らない事ですが…」

「まあ、せっかく来たんだからコーヒーでも飲みながら、ゆっくりお話しない?」

 

二人はコーヒーを飲みながら話をしていた。

まず切り出したのはフュアのほうだった。

「総監は時々遠くを見られているようですが、一体どうしたのですか?」

「フフ…私の夫よ。いつも遠い遠い空のどこかにいるの…」

「総監…」

心配そうに見つめるフュアに、アイヴィーは笑って返す。

「ほら、そんな顔しないの。遠い空のどこかにいるといっても、別に死んだわけじゃないんだから」

「へ?」

「夫は健在よ。ただ…冒険家でね、どこで何をしてるのかわからない。まぁ、何の前触れもなくフラフラ帰ってくる事はあるけどね」

「冒険家…ですか。とんでもない方と結婚なされてるんですね」

と、苦笑いを浮かべるフュア。

「愛する妻をほっぽり出して自分は冒険に明け暮れる日々。どんなに私が心配したってあの人はお構いなし。でも…もしかしたら私はあの人の…『そんなところに惹かれた』のかも…」

そう言うと、アイヴィーは立ち上がり、窓際に立って空を眺め、口元に笑みを浮かべながら呟いた。

「…ホント、エドガーってば。どこにいるのかしらね…」

…宇宙、ポレモス星系第2衛星『ラドナ』付近。

その日、この付近を航行していたファーデリア星発の貨物コンテナ船がローゼン海賊団に捕獲されていた。

「さぁ、金目のものをさっさとよこしな!」

と、相手の船長に対して脅しをかけるのはローゼン海賊団の首領、キャプテン・メルローズ。

『この…海賊めがっ…!マゼラニウム鉱石は渡さんぞ!』

「そうかい、なら仕方ないね。アラクル、クローアーム展開だ。ヤツらの船をぶっ壊して中のコンテナを奪っちまいなっ!」

「ふふ、任せておいてよ」

メルローズの指示でアラクルはシステムを操作し、艦底部にあるクローアームを展開する。

そして、コンテナ船にクローアームが振り下ろされようとした…ちょうどその時である。

「!!」

突如、アラクルの顔に驚愕の表情が浮かぶ。

幾多ものビームの雨によって、クローアームが破壊されたのである!!

「くそっ!一体どこのどいつだ!!」

メルローズがビームの飛んできた方向を睨みつけると、そこには…赤い色の高速宇宙船が一隻。

やがてその宇宙船から強制的に通信が入れられ、画面が開かれる。

 

『こちらは銀河連邦公認AD-FGD454314、冒険船エリック・ザ・レッド船長エドガー・ヒルトンだ』

「なんだと!?冒険屋が何の用だ!?」

『ちょっと冒険の道すがらこんなあこぎな事をしているヤツがいたんで懲らしめてやろうと思ってね。一応言っておくが、我々には武装火器の使用が特例で許可されている』

「くっ…!」

『ローゼン海賊団に告げる!略奪行為を今すぐ中止し、この宙域より離脱せよ。こちらの要求が呑めない場合…我々は実力を持って貴艦を無力化する!』

「無力化だと!?面白い、やってもらおうじゃないか」

メルローズの指示で、ロサ・ギガンティアに備え付けられたビーム砲が、エリック・ザ・レッドめがけ次々に発射される。

「キャプテン!来ます!!」

女性クルーの悲痛な声にもエドガーは動揺することなく、あくまで冷静に対応していた。

「大丈夫だ、ビームバリアを展開しつつ、そのままロサ・ギガンティアに突っ込め!」

「ラジャー!!」

雨のように降り注ぐビームをバリアで防御しながら、エリック・ザ・レッドは猛スピードで突っ込んでいく!

目標はロサ・ギガンティアのすぐ後ろ。この動きには普段冷静なアラクルも、焦りを感じずにいられなかっただろう。

 

「くっ…死角に入られた!?ならばこれで!!」

すぐさま、艦側面部からワイヤーアンカーが射出され、エリック・ザ・レッドに襲い掛かる。

「…アンカー、左舷尾翼部分に命中!!」

「全速前進!速度を落とすな!!…リノア、キャプチャーアーム展開!!」

「ラジャー、キャプテン!!」

リノアと呼ばれたテラナーの女性はとっさにタッチパネルを操作する。

するとどうだろう、エリック・ザ・レッドの艦首部分…その付け根からまるで人間の『手』のような形をした腕が展開した。

次々に襲い掛かる攻撃にも臆することなく船を進めるエドガー。

「あと20m…10…7…4…、今だ!!」

エドガーの号令とともに、エリック・ザ・レッドの腕はコンテナ船を掴みあげ、そのままロサ・ギガンティアから離れていく!

「あーっ!アタイ達の獲物を!!」

「悪いが、こいつは我々が無事に目的地周辺の宙域まで送り届けさせてもらう。だがその前に…足止めさせてもらうぞ!!」

するとエリック・ザ・レッドの主翼の付け根から、何やらミサイルのようなものがロサ・ギガンティアに向け放たれる。

その弾は、ロサ・ギガンティアの近くまで来ると…激しい光とともに爆発した。

「くそっ…目くらましの閃光弾とレーダーかく乱用のチャフ弾か…」

「ちっ、味なマネしてくれるじゃないか…!まあいい、今回はこれでカンベンしといてやる。だが次はそうは行かないよ!!」

メルローズはそう言うと、ロサ・ギガンティアをワープさせて逃走した。

 

「逃げたか…まあいい、もしまた略奪行為をするようなら懲らしめてやるさ」

戦闘から数分後。エドガーは救出したコンテナ船に乗り込み、その船長であるシベリアンハスキー形のファーデリアンと話をしていた。

「おお、助かりました。このマゼラニウム鉱石が海賊風情に渡ったら大変な事に…」

「いえ、仕事柄どうしても、困っている人間はほうって置けなくてね。奴らはワープして他の星域に逃げたようですがね」

そういうとエドガーは懐から缶コーヒーを二本取り出し、一本を船長に与えた。

「…ところで、貴船の行き先はどちらです?」

「ええ、我々はこのマゼラニウムをファンガルド星まで輸送中だったのですが…」

「おや、奇遇ですね。我々もこれからファンガルド星へ向かう途中だったんですよ」

「へえ、するとファンガルドの調査に?」

「いえ、私の生まれ故郷なんです。それに…いつもこうして旅をしていると、時々女房の顔が見たくなるんですよ。では私は大気圏突入シーケンスに入りますのでこれにて」

そう言うと、エドガーはコーヒーを飲み干したのち、コンテナ船を後にした。

 

やがてエリック・ザ・レッドはコンテナ船からゆっくりと離れ、目の前に迫る青い星…ファンガルドへ向けて進み始めた。

そのブリッジから見える故郷の星を見つめ、エドガーは微笑みながら呟く。

「アイヴィー…元気でやってるかな…」

 

幾度となく訪れてきた二人の再会。

そして今回もまた、その時が訪れようとしていた…。


 
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