REIZI YOSINO
「ほんとうに、数を増やしてもいいの?」
「はい。あいつなら大丈夫です」
なのはの質問に零二は答える。
「正直、あの戦い方は武器の形状からして、間違ってるよ。それなのに止めずに、なおかつ続けるなんて……」
「あぁ。あんな動いていちゃ、狙えるもんも狙えねぇ」
「いえ、あれでいいんです」
零二達には紗雪があのガジェットに対抗すための実験を行っていることは一目瞭然であったが、なのは達は自分たちの知っているタブーの戦いをしているようにしか見えなかった。だからこそ、それを証明し、かつ紗雪の向上にもなる作戦とし、零二はこの手を考えた。
「包囲完了。ガジェット全機、攻撃開始」
シャーリーが指示したと同時にぜん14機から、擬似レーザーが放たれる。土煙でその1点が覆われている
煙が晴れた場所には……何もなく、いつの間にか紗雪が敵の1機の真後ろに回り込んでいた。そしてゼロ距離から攻撃を連射して撃つ。さすがにゼロ距離攻撃にはいきなりは対処できず、破壊された。
「あれは……シャーリー!映像をこっちにまわして。スローで」
「は、はい!」
シャーリーは素早く手を動かし、モニターをなのは達の前に出す。だがそこにはいきなり紗雪が消える映像しかない。
「スローで捉えきれてない!?…コマ送りで!それで見えないようなら、少しずつ遅くして」
「りょ、了解しました!」
シャーリーは慌てて作業をする。なのははもちろん、フォワードメンバー、そして何より一番驚いていたのはおそらく現段階で6課最速のフェイトだった。
(コマ送りでも見えないなんて!……あのスピードはあり得ない。人の身体である限り、あの動きは普通はできない)
その疑問に答えるように零二は言う
「あれが紗雪の特殊技能 《
「フリューゲル、ブリッツ?」
「はい。自らの魔力を消費して、全ての身体能力を上昇させる。そのスピードは光速を超えた、神速のスピードに達します。どれだけスローで見ても、とらえられない速さです」
『し、神速ぅ!?』
さすがにその予想もできないスピードに全員が驚く。
「けど、武器の形状からして、スピードをいかした形じゃ……」
「それは大丈夫です。さっき紗雪が射撃型って言ってましたけど、紗雪は狙う必要はありません。その証拠に、紗雪はあんなに動いてるのに1発も外していないですよって、もう終わりかけですね」
そう言われてみると既に紗雪は先ほど同じように敵を倒していた
SIDE・END
SAYUKI KUROBANE
敵が増えて動じることもなく、紗雪は
「これなら!!」
そして移動の前にチャージした魔力をゼロ距離で発射した。弾丸は貫通し爆発が起こるが、それに巻き込まれる前にまたも神速の速さで距離をとる。
(これだ!)
紗雪は偶然ともいえるが、対ガジェット専用の戦い形を取得した。
Dive&Zoom。またの名を一撃離脱戦法。
ゆえに、紗雪は1秒にもみたない時間で換装と解除を連続して行い、攻撃しては回避という神業的な芸当を行った。
(けど、おかしい。いくらなんでも、ここまでうまくいくなんて)
だがそれを行っている本人もこの現象には不可解な点を覚えた。換装と解除を交互にやっているとはいえ、それはほぼ長時間換装をしているのに限りなく近い。実際に自分の世界でこのようなことは似たようなことはできても、ここまで完璧にはいかないだろう。そのくらい完璧すぎたのだ。
(とりあえず考えるのはあと……残り、3機!)
そして次々と破壊されていく。AMFの濃度が高めようとする前に…いや、敵も何が何だかわからないうちにやられるので打つ手がない。そしてついに最後の1機に
「―――
充分魔力をチャージしたとどめの一撃がクロスを描いて命中した。
「ふぅ……まだまだ、改善の余地がある」
自分に自惚れず、紗雪はさらに高見を目指す決意を改めて誓った。
SIDE・END
REIZI YOSINO
「す、すごい」
そう呟いたのはティアナだけであったが、他のメンバーもだいたい同じ考えだというのが顔を見ればわかる。
この戦術は紗雪の長年の戦闘経験と修練の結晶とも言える戦闘スタイルをアレンジした新たな戦い方。これこそが黒羽紗雪の真骨頂である。
「さっきも言いましたけど、紗雪は狙い撃ちするために止まる必要はありません。なぜなら、あれこそが紗雪の能力《
「お、音を完全に消すって………」
フェイトが全員の気持ちを代弁するかのように呟く。音を完全に停止する。それは相手が生物であろうと機械であろうとも動かずともわずかな振動音から、体内のごくわずかな音と様々ある。それらすべてを停止させるとは、すなわち死を表す。死ぬまで追い続ける弾丸とはまさにこのこと。故に紗雪の攻撃は絶対に当たるのだ。
「芳乃君の説明と、この戦いぶりを見る限り、紗雪ちゃんは確かに私やティアナのポジションじゃ合わないね。どちらかというと、フェイト隊長やエリオのポジションがあってるかも」
「うん。あのスピードは正直私の最速よりも速いと思うし、なにより格闘戦も強いみたいだし、十分に生かせるポジションがあるとすればそれだと思う」
「って、紗雪が格闘戦が強いなんて言ってもいなのにどうしてわかるんですか?」
「これでもフォワードの隊長だからね。それに、弾丸よりもあれだけ速いのなら、体術を究めようとするのは誰でも思うことだし、理にかなってるからね。そして、弾丸は狙う必要がないなら、鍛えるべきは遠距離攻撃でなく、その弱点ともいえる近接戦闘。こう考えていけば、すぐに答えなんて出るよ」
「…………」
零二は心の奥底ではもしかすると、彼女たちを甘く見ていたところがあったのかもしれない。こちらは神に近い能力を持った《召喚せし者》。彼女たちは《魔法使い》とはいえ普通の人間そういう考えが。
だが、ここまでの洞察力と観察力をもっており、相手のことを冷静に分析できるのはそうはいない。それに、零二は彼女たちの実力はかなりあると、今日までで気付いていた。おそらく召喚せし者である零二でも苦戦を強いられるであろうことも。
「正直、ちょっとだけなめてました。あなた達は並大抵の人じゃないのはよくわかりました」
「あぁ、その点いたってはワイもや」
「あ、別にそこまで謝らなくてもいいよ……」
少し恥ずかしそうにフェイトは言った。
「さて、それじゃあ紗雪ちゃんの能力と実力はわかったし、次は霧埼くんだね」
「お、ワイの出番か?ええで。ワイの相手も、さっつんとおんなじやつなんか?」
霧埼はどこかつまらなさそうに言う。その理由はただ1つ。彼は、ガジェットと戦うのに飽きていた。
「まぁ、そうなるか「いや、私が直に相手になろう」なって、し、シグナム副隊長!?」
いつの間にそこにいたのか、騎士の姿をしたシグナムがそこにいる。腰には彼女のデバイス、レヴァンティンがある。
「召喚せし者とやらの力、今見たが凄まじい。一度戦いたくなった」
(なんやろ、どっかで見たことあるようなタイプやな)
「でも、そうなると怪我しますよ。いや、怪我だけじゃすまないかもしれないです」
「安心しろ。われわれの使うデバイスには非殺傷設定というものがついていてな。ダメージはあるだろうが怪我する程度でもない。それに、お前たちの武器をうっかり完全に破壊もしないようにしながら戦うことくらいはできる。」
「いや、それも凄いですけどそうじゃなくて、俺達にはそんな便利機能は付いてません。そう言う意味で危ないっていってるんです」
召喚せし者との戦いでただで済むはずなど100%ありえない。今まで戦い抜いてきた零二にはそれがよくわかる。自分はすべてに打ち勝ってきた。だからこそ言えるのだ。
「あぁ、安心しろ。私はそう簡単にやられはせん。いや、むしろ勝てるだろうな」
「(カチン)ほーいうな~姉ちゃん。いっとくけど、ワイはこう見えても人智を超えた力を持った召喚せし者やで?」
「能力を持った者が勝てる道理などどこにもない。なにより、それはお前の世界の話であって、ここでは関係ない」
「(誰かに似とるかと思ったけど、鋼んと似たところがあるな。おもにバトルマニアなとこが)ええで。そこまで言うんやったらワイもやったるで」
霧埼は一見すれば細身のようでへらへらしているが島では喧嘩負けなしと言われている。とういより、ここまで挑発されて動けるのに動かないのは霧埼のプライドが許さなかった。
「お、おい霧埼?」
「芳やん。悪いんやけど今回ばかしはワイは止められへんで」
「き、霧埼くん落ち着いて。し、シグナムもその辺で……」
「どうしたんや?ビビッて声も出んか?」
「火に油を注いだ!!」
必死に止めようとするフェイトだったが霧埼のこの一言で、もはや回避はできなくなった
「ふっ、その気合い、無駄にならないようにな」
「はっ、上等や!そっちもその余裕がいつまで続くか見ものや」
「あーあ。これはもう止めれそうにねーな」
「「言ってないで止めてよ芳乃君~!」」
そんな隊長2人の言葉を半分無視して零二は下にいる紗雪呼び、シグナムと霧埼は下に向かった。
SIDE・END
KENNGO KIRISAKI
「さて、始めるか」
バリアジャケットを装備したシグナムが剣を構えて宙に浮く。
「んーそうやって空飛ぶんは反則やとおもんやけど?」
「お前だって、私達にはない
「はっ!ワイにそんなハンデなんてないにも等しいんやけどな!!」
霧埼は武器を攻撃態勢にしていつでも動ける。対するシグナムもいつでも360°どの方向からの攻撃にも対処して反撃する準備はできていた。
〈はぁ、えーと……どうしてこうなったかはわかりませんがともかく、危険だと判断したらすぐに全員で止めます。それでは…試合、開始!!〉
もうどこかやけくそ気味になのはが試合開始の合図を出した。
それと同時に先制攻撃を仕掛けたのは霧埼だった。
「
上下左右にまばらにナイフが散らばっていき、一斉に挟撃を仕掛ける。
「こんぐらいでは驚きもせんし、対処できるんやろ?」
ふと口にした言葉はすぐに現実となる。
「あぁ……レヴァンティン」
シグナムが自分の武器に命令をすると薬莢がつかの部分から飛び出す。
「[シュランゲフォルム!!]」
すると剣は分散し鞭のように操り、飛んでくるナイフをすべて弾き返す。連結剣と呼ばれるこの武器は霧埼のような攻撃を仕掛けてきたものに対しては効果的に防衛ができる。
「ひゅー。まさかそないな武器とは思わんかったで」
「そうか。なら今度は………こっちの番だな!」
「なっ!やばい!!」
いつの間にか真横まで接近され炎をおびた剣が振り下ろされる。
「紫電、一閃!!」
火炎と斬撃の攻撃によって爆発が起こる。爆煙が消えた先にあったのは
「ふっーいつつつ!!危なかったわ~」
吹っ飛ばされてはいたがそこまでダメージを受けていない霧埼の姿だった。シグナムはほんの一瞬驚いたがすぐに冷静になりその理由を見つけた。見ると、ナイフの数が減っていた
「……ふっ、なるほど数本のナイフを壁の代わりにしたということか。ずいぶんと諸刃の剣いや、盾だな。
「まぁな。けど安心してやワイもそこまで馬鹿とちゃう。それにこのストリームフィールドは666本で1つの武器。全部同時に破壊されんかったら回復するんや」
だからこそ、霧埼は666本の内のおおよそ3分の1を防御にまわした。計算違いはその3分の1のほぼすべてが破壊されたことだった。しかし
(とはいえ、なんやいつもより回復が早いなぁ)
そう、数10本程度ならすぐに再生できるが今回はおおよそ3分の1が破壊されたはず。それなのにいつもより早く回復するのが使い手の霧埼にはわかった。
(まぁ、ええかそんなん。……今は、目の前の強敵が最優先や!)
「ふむ、どうやら侮っていては勝てんようだ…とはいえ、あまりこのような戦いをしていてはその内止められる。
明らかな挑戦と挑発だが
「ええで、見せたるわ!」
霧埼はこれを受けた既にナイフは回復完了はしている。だがこの相手は武器の能力を見た限り相性は悪い。その理由は先の連結剣だ。先ほどのように全方位の攻撃でも、あのように弾かれ反撃されればやられる。だが、とっておきならあるいは……………
(どのみち、長期戦にでもなったらこっちがやられる。ワイは喧嘩の歴は長いが、あっちは戦闘になれたマジもんの
「けどほんまにええんか?正直喰らったら死ぬで?」
「その時の対策はすでに高町達に話している。安心しろ」
「なら、お言葉に甘えて…………」
霧埼はすぅと一度深呼吸を短く行う。そして
「見せたるでぇ!!これがワイの全力や!!!!」
すさまじい
「―――
《
666本のストリームフィールドを
「なるほど、たしかにとっておきと言うだけはある………では、こい!!」
「あぁ、いかせてもらうでぇぇぇぇ!!!」
666の集約された最凶の牙がシグナムに襲いかかる。対するシグナムは
「………」
「なっ!?」
なんと戦闘にはあり得ない眼を閉じるという行為を行った。それだけではない剣も鞘に戻していた。だが
「いくぞ」
「!?」
ぼそっと聞こえたその声に霧埼が震える。そして
「飛竜、一閃!!」
訓練場のフィールドに爆音と煙、そしてまぶしい光が照らされた。
Tweet |
|
|
0
|
0
|
追加するフォルダを選択
訓練で圧倒的なスピードを見せ、自身の力をだした紗雪
続いて霧埼が訓練を始めようとするがそこにシグナムがあらわれ…