「禅、アンタ携帯は持ってないの?」
「はあ?」
放課後なう。
あのちょいと恥ずかしい昼休みを終えて普通に授業は終了し、今は帰るためにカバンを担いだところだった。
そこに突然アリサからよく判らん質問が俺に発射された。
「だから、アンタ携帯は持ってないのって聞いてるのよ!」
「そっちが聞こえなかったんじゃねぇ。なぁんで小学生のうちから携帯なんざ持つんだよ?必要ないだろぉに」
前の学校でも持ってる奴はいなかったんだが?
ブルジョワの感覚と一緒にしないで頂きてぇッス。
「ふぇ?わたしは持ってるよ?」
「私も…」
「わ、わたしも…」
なのは、すずか、フェイトが色とりどりの携帯を出してきた。
え?まじですか?小学3年生で携帯標準装備?俺ん中だけ時間が止まってんの?
俺がそれに目が点になってる横でアリサはなんか、溜息はいてやがる。
「ハァ…今の時代、小学生でも携帯は持つわよ…」
なぜ溜息をつかれねばナランチャ?
「まぁ、俺は持ってねぇし、少なくとも今すぐ持つ予定はねえ」
「なんで?あったら便利だよ?」
「契約すんのは親でしょうが?生憎、お袋も今は持たせる気はないって言ってたからな…」
少なくともそんな豪華なモンは中学生までは持たせる気はないって言ってたし、俺もそれに納得している。
俺の言葉にフェイトは若干沈んでいく。済まない、これは変えられない運命なんだ(キリッ)
そんな感じでこの話題は終了して教室を教室から五人で離脱、下駄箱で靴を履き替えて昇降口を出る。
4人娘は最近の携帯の機能や機種について話し合っているが僕にはわかりましぇ~ん。
そんな4人の会話を聞き手にまわりながら校門を目指して歩いていたが、なぜか校門にいるはずのない人物がいた。
「あれ?プレシアさん?」
「え!?お母さん?」
そう、校門にはプレシアさんがいた。
優しげな微笑を浮かべて校門の前に立っている。
時の庭園で初めて会ったときのような派手な化粧や口紅はしておらず、ナチュラルに薄い化粧を施しているだけ。
治した時も思ったが、素がもんのすごい美人だから道行くサラリーな方やオッサン連中が熱い視線を送ってる。
そしてプレシアさんの髪をかきあげる仕草やあの破壊的にデッケエ胸が揺れる度におっさん達の顔もだらしなくなって鼻の下が伸びたアホ面に進化してた。
ウゥ~~ム……一度でいいから挟まれたいぜぇ!!
ギリィッ!!
「イギッ!?」
……と、そんなアフォなことを考えてたらいきなりケツに電流が奔った。
い、痛てえ!?誰だ俺のケツ肉を抓ってんのはよ!!?
突然奔った痛みに困惑しながらも後ろを見てみると………
「………」
ソコには眉毛が上向きに吊り上ったフェイトがいたぜぇ……つうか痛いんですけど?
現在進行形で俺のケツの肉がギリギリと音を立てながら思いっきり抓られてますです。はい。
「………ふんだ、ゼンのえっち(ぼそっ)」
な、なんか小さく呟きながら抓る指に力が篭っていくんですけど。
俺、何かしたッ!?
「フ、フェイト?いきなり何を…」
俺の問いにフェイトはニッコリと笑う。
そりゃもう、菩薩もかくやって微笑みを浮かべて……額のバッテンマークが全てを台無しにしてたけど。
「何かな?ゼン?」
いや、なにかなってフェイトさん……
「と、とりあえず俺のケツを抓るのをやめ……」
「何かな?ゼン?」
「いや、だから……」
「な・に・か・な?」
ギリギリギリギリッ!!
は、話すら聞いてくれねえだとおッ!!?マ、マジで痛いんですけどぉッ!?
俺が一言発するたびにケツの締め上げがきつくなっていく。
フェイトは相変わらず笑顔のまんまだ。
「……何でも無いです…」
「そっか、それじゃあ逝こう?」
フェイトは笑顔で俺のケツを抓ったままプレシアさんのいる校門まで歩いていく。
俺もケツを抓られてっから自動的にフェイトと並んで歩くことになる。
残りの3人は俺達の前を歩いてるから俺の状況には気づいていない。
…あぁ、なんて無情…
その折檻はプレシアさんに近づくまで続いたんだけど………
「……ん?」
ケツの痛みを耐えながら歩いていくと近づく事でわかったのだが、プレシアさんの傍にもう一人いた。
プレシアさんが微笑みながら話しているのでプレシアさんの連れで間違いないみたいだ…
そしてもう一人の人の姿が見えると………
俺のアゴが外れそうになった。そりゃもう、映画のMASKばりに。
「あれ?…お母さんと一緒にいる人、誰かな?」
「背、高いね~」
プレシアさんが話しているのは身長195CMはあるダンディな髭を生やした男だ。
体格はなかなかマッチョで道行く奥様の熱い視線を浴びている…そう…俺の良く知っている…
「お母さん!!」
「フェイト、お帰りなさい♪」
プレシアさんは走ってきたフェイトを抱きしめる。
フェイトもプレシアさんもとてもいい笑顔を浮かべて抱き合ってら。
「うん、ただいま」
「「「こんにちは、プレシアさん」」」
「はい、皆もお帰りなさい」
俺以外の3人はプレシアさんに挨拶してたけど、アゴが外れそうな俺にはソレができなかった。
プレシアさんは俺が驚いてるのに気づいて笑ってる。
まるで「してやったり」と言わんばかりに。
そして件の男も3人に向かって挨拶をしてくる。
「こんにちは」
「「「あっ……はい…こんにちは…」」」
皆は始めてみる人だから警戒してんなぁ……じゃなくて!?
「…あの、お母さん…この人は?」
フェイトがプレシアさんに代表して聞く。皆も気になってるようだが…
「ええ♪この人は…」
「何してんの!?親父!!」
プレシアさんの声を俺が遮る。そう、校門にプレシアさんと一緒にいたのは俺の親父だ。
いやいやいや!?なんで!?
「おう、禅、お帰り」
「おう!!ただい……じゃっねえーーよ!!な、なんで親父がプレシアさんと一緒にいんの!?」
いつもどおりに返されたので思わず返事し掛けちまったい。
「「「え!?禅 (君)(アンタ)のお父さん!?」」」
あんた等、そんなに驚かなくてもいいじゃありますぇん?
そんなに意外か?
「ゼンの…お義父さん!?こ、こんにちは!!私、フ、フェイトテスタロッサでしゅ!!…あぅ…///」
フェイトは頭を下げて自己紹介したが…最後噛んじまって恥ずかしいのか、俯いてる。
……その様はとっても可愛らしいんですが…あっるえ?
フェイトさん?
なんか意味合いが違うように感じるんですが?
「おお!君がフェイト君か!?プレシアさんから話は聞いてるよ?これから、いつでも遊びに来てくれ!私達は君を歓迎するからね!!…禅にはもったいないくらいイイ子じゃないか……これからも禅をよろしく頼むよ?」
「は、はい!ありがとうございます!お義父さん!!」
「いやいやいや!?待って!!え?何コレ!?なんで親父が居んの!?なんの挨拶してんの!?」
今の内容もスッゴク、スッッッッゴク気になるけど!!なんでここに居んの!?
親父はパニクッてる俺をみて用件を語りだす。
「いや、な?プレシアさんが家にきて母さんとお話しされてたんだが…禅、お前携帯電話を持ってないだろう?」
「さっきの話はスルー!?…け、携帯?…も、持ってないけど?…」
それがプレシアさんといる理由に繋がんの?
「友達が皆持ってるなら、禅にも携帯を持たせてやろう、と母さんが言ってな?お前を携帯ショップに連れて行くついでにプレシアさんも送るように母さんから頼まれたんだ。私も今日は仕事が休みだったからな」
「な、なるほど…俺はてっきり浮気でもしてんのかと…プレシアさん、美人だしな…ハァァ!焦った!」
「あら♪ありがとう、ゼン君♪」
「むぅ!」
「………お前は私を何だと思ってるんだ…」
俺の放った言葉にプレシアさんは嬉しげに、親父は頭を抱えてら…フェイトはなんか…怒ってる…?
いや、しかたねぇじゃん?二人して楽しく笑ってんだしよ?
まぁ、冷静に考えりゃそれはねぇか…なにしろ…
「そんなことをしてみろ?私は明日の朝、新聞かニュースに載るだろうさ…」
「………だよな…」
俺と親父は遠い目をする。
一度、親父の会社のお客さんが親父に色目使って擦り寄ったことがあったが………
その現場を見たお袋が、プッツンして某凶戦士の如く暴れまわったことがあったんだよなぁ。
親父はぶん殴られて、ブッ飛んだ時にオイル被ってエンジンオイル塗れになってたっけ……
慌てて親父の会社のスタッフもお袋を抑えに掛かったんだが……その場で全員ブッ飛ばされた。
あれはもう……嫌な事件だった……
以来、親父は不用意に他の女性に近づかないようにしてたけど…お袋がOKだしたんなら良い…んだよな?
「…まぁ、とにかくだ。今から携帯ショップに行くぞ、プレシアさんとフェイトちゃんも乗ってください。送りますので……君達も乗っていくかい?」
親父はなのはたちにも声をかける。
「あ、はい…乗せて頂けると…」
代表してすずかが答える。他の二人もそれでいいみたいだ。
「わかった。車をとってくるから少し待っててくれ」
そう言って親父は駐車場へ歩いていった。
俺達は校門で待って、全員で携帯ショップへと向かった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「では、機種のほうが決まったら、お呼び下さい」
職員に言われたので俺は自分好みの機種を探している。
今、俺は携帯が並んでるディスプレイを眺めているが…いきなりのことだったんでどれがいいかなんてさっぱりだ。前世のときよりも古いし…
アリサ達はなにやら離れて話し合ってるので、頼りにならん。
親父とプレシアさんも二人で談笑してるしな。
「ん~どれにすっかなぁ…」
正直、面白い機能とかはあんまり興味がないからなぁ。
俺が一つ一つ手にとって説明書きを見ていると…
「ゼ、ゼン?」
フェイトがコッチに来て話しかけてきた。
さっきまで話していた筈のアリサ達は物陰から俺達を覗き見てる…店内でそれはちょっと……
「ん?」
「き、決まったの?」
「うんにゃ。全然わかんねぇ」
「そ、そうなんだ…じ、じゃあ…私のと同じに…する?///」
フェイトが出してきた携帯はまだディスプレイに並んでる新しい機種だ。
フェイトは黒だが、色は3種類ある。
黒、赤、青と並んでいる。
……アリサ達が期待の目で見てることから恐らくアイツ等の入れ知恵だろう。
だが、俺はあえて、あえて隣の機種を取る。
「フ~ム…そうだな、これもいいかも…」
「あっ……う…」
なんか…幻覚か、フェイトの頭に犬耳が見えてきたんですが…
……しょんぼりしてるあのペタンと垂れた耳が…尻には尻尾が…シュンとしているぜぇ…
何この可愛い生き物?
もっとやりたくな……ゲフンッ!ゲフンッ!
「いや、やっぱりコッチも捨てがてぇな…」
次にフェイトと同じ機種を取る…すると…
「ッ!?……(どきどき)」
すっごい期待した目をしてらっしゃる…尻尾がブンブン左右にふれているぜぇ…
「よし!コレの青にするわ…フェイトとお揃いだな。へへ!」
「ッ!うん!…お、お揃い……エヘヘ///」
え、笑顔がぁ!!?眩しすぐる!!!
なんつうか、フェイトって愛でてもいぢめても可愛いから扱いに困るぜ……
そんで、ご機嫌なフェイトと一緒に親父達のとこに戻って契約を再開した。
終わって直ぐになのはたちともアドレスを交換したぜ!
そこからアリサとすずかは迎えが来て、帰っていった。
俺達は親父の車でなのはを家に送って、最後にプレシアさんとフェイトを送った。
そこからは何事も無く家に着いたんだが…
「禅~~!荷物が来てるわよ?」
「荷物?」
お袋はそこそこの大きさの荷物を俺に渡して、台所へ戻っていく。
持ち上げてみると重さも中々あるようだ。
「誰からだよ?これ…」
宛名を見てみると………
『速達GODより☆』
…なんか無性にイラッときた…
俺は荷物を持って上に上がり部屋の真ん中に下ろして箱を開ける。
包装紙の上には封筒がついていたのでそれを開けてみる。
「んぁ?手紙か…えーッと?」
手紙
『お前頑張ってるじゃん。最後のご褒美にプレゼントやるよ…もう連絡することは無いけど達者でな~…PS、もう一枚の手紙には送ったもののリストが入ってるから~』
…プレゼント?なんだそりゃ?
俺は手紙を見ずに箱の中を見て………
「………嘘やん…」
その一言しかでなかった。
俺の放り出した封筒からリストが顔を出す。
『エイジャの赤石×1ネックレスになってます。
サティポロジア・ビートルの「100%波紋を伝える糸」の玉×5編まなくても使用可
クラッカーヴォレイ×2セットJとOの模様入り
特殊石鹸水を染込ませたオープンフィンガーグローブ×大人用、子供用1セットづづ』
何?このチートな荷物?
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第15話~こんなとんでもないものを送ってきますか?