No.455066 魔法少女リリカルなのは~生まれ墜ちるは悪魔の子~ 四話2012-07-18 11:41:45 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:2821 閲覧ユーザー数:2723 |
「アンタ……本気かい?」
カリフとの闘いから少し時間が経った頃の夜、アルフとフェイトは真剣な表情で一人の少年と向かい合っていた。
「さっきからそう言っているのだが?」
言わずもがなカリフである。彼は二人からの度重なる質問攻めにいかにも機嫌悪そうに腕を組んでいた。
額に浮かぶ血管など取るに足らない問題である。
「でも……」
「さっきからでもとかヘチマとかしつけえ。オレが聞きたいのは“はい”か“イエス”だ」
「うぅ……」
さっきからずっとこの調子である。カリフの好奇心とフェイトの心配症がたがいにぶつかり合っている。
カリフとしてはこのままゴリ押しで意見を押し通すことも可能なのだが、相手が子供(自分よりも)っぽいのでなんだか気が引ける。
でも、そんなことを言ってたらいつまで経っても平行線なのも事実。こうなったら多少泣かせてでも論破しようと思っていた時だった。
「フェイト、もういいじゃないか」
「アルフ?」
意外な所から助け舟が来た。
カリフ達の横でドッグフードを貪っていたアルフがカリフを擁護してきたのだ。
意外すぎる助け舟に思わずさっきまで一番ぞんざいに扱っていたことを心の中で一応謝っておいた。
「ここまで引き下がらないならこいつの覚悟も本物だ。もう首を横にはふらないよ」
「でも……」
「それにこいつめちゃ強いじゃん、それに根っからのワルには思えないしね」
アルフの言いたいことは分かる。
ほんの短い間とはいえ見せつけられた圧倒的な力。
魔力も無しに魔道師に匹敵……いや、凌駕する強さを兼ね備えたカリフを仲間に迎えることができれば相当なアドバンテージとなる。
だけど、それでも無関係なカリフを巻き込むような真似はフェイトの優しさが許さなかった。
利と性
どちらを取るか迷っていたフェイトの心を後押しすることとなった。
「……本当に手伝うの?」
「くどい」
短く、だが不敵に笑うカリフにフェイトも決めた。
「……じゃあ一つ約束して」
「ん?」
「怪我しちゃ駄目だから……」
少しズれた言葉にコケるのを堪えるも、いつもの様に振る舞う。
「いいだろう……交渉成立だ」
カリフはフェイトに手を差し伸べて握手を促す。その反応にフェイトは少し驚くが、自分の手を服で拭いてから握手で応じた。
こうして、フェイト・テスタロッサとアルフの生活に新たな歯車が加わったのだった。
『ご苦労様……そっちはどう?』
「あぁ、腹減った」
『あなたの状態を聞いた訳じゃないんだけど……』
今や午前0時のマンション屋上。フェイトたちは寝静まり、街のイルミネーションが夜空を照らす中でカリフは携帯電話を片手に話こんでいた。
「しかし、なぜオレがこんなことせねばならんのだ」
『あなたが問題起こさないようによ』
「ふん。なら望み通り“はしゃいで”やろうか?」
『絶対に止めなさい』
相手はプレシア。カリフをフェイトの元へ転送する際にカリフに持たせた物である。
理由はプレシアの言う通りカリフに目立つようなことをさせないための保険である。
早い段階から管理局に目をつけられるのは絶対に避けたいがためである。
こうやって定例報告と称してカリフに歯止めをかけることが目的だった。
「そう疑われるのは心外だな。心配せずともジュエルシード捕獲とオレの気分を基準に行動してやる」
『最後の方に色々と思う所があるのだけれど……まあいいわ。とりあえずは普通に過ごして頂戴』
電話越しでも分かる不安そうな声にも気にせずに電話を切る。
風の音と上空に淡く輝く三日月を静かに眺め、これからことに想いを馳せる。
異世界、並行世界、魔法、魔道師、時空管理局、ロストロギア
その他にもまだまだ未知なる物は必ずあるに違いない。
それらは果たして自分をどこまで楽しませてくれるだろう……どこまで自分を強くするだろうか……
そんな期待を胸にカリフは自然と笑みが零れたのだった。
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