◆ 第9話 車椅子とぬこ姉妹 ◆
どうも、みぃです。今日も今日とて散歩に出かけています。
翠屋? 平日は夕方まで暇なのですよっと。
まぁ、今日はこの商店街の通りをうろちょろするだけなんだけども。
「おう、みぃ坊じゃねぇか!これでも食うか?」
「あら、みぃちゃんじゃない。昨日はいなかったけど、どこに行ってたの?」
最近、ぬこの知名度も着実に上がってきていて、ご覧の通り。
いつの間にか翠屋だけでなくこの商店街のマスコットキャラ的な存在になっていたんだぜ(ドヤァ
そんな事を考えながらおっちゃんがくれたさきいかをかじる。うめぇ。
って、こら、おっちゃん。昼間っから酒飲んじゃだめですよ。奥さんにチクるぞ。
あ、おねいさん。き、昨日はちょっと遠出をしていてですね。
その……別に、迷子になったわけじゃないんだからッ!
この商店街はいつもこんな感じです。
シャッター商店街の心配がまるで要らないほどのにぎやかさです。実に良いことですね。
そんなことを思いつつ、闊歩していると前方で車椅子に乗った少女がなにやら困っている様子。
あまり見たことない娘だがどうしたんだろうか。とりあえず近寄ってみることにしますかね。
「うー、どこやったんやろか。どっかに落としたんかなぁ……」
そんな事を言いつつ、あたりをキョロキョロとしています。
何を落としたんでしょうかね、この関西風クララちゃんは。
「あれ? 猫さんや。どうしたん?」
それはこっちのセリフやがな。あ、なんか口調が移りました。
「そうや! 猫さん、財布探してくれへん? どこかに落としたみたいなんよ」
手伝うのはいいが、わんこじゃないからハンカチ押し当てられても困る。
「さっ、GOや!」
聞いちゃいねぇ。通信簿に【人の話をよく聞きましょう】って書かれるに違いない。
といっても、ぬこがにゃんと言っても通じるわけはないんだが。一部の例外を除いて。
まぁ、暇だから一緒に探すことに。とりあえず、買い物をしたスーパーまで戻ってみるそうだ。
誰かに拾われてなきゃいいんですけどね。
あ、これじゃね? スーパーの近くの通りに落ちてる財布を発見したので、くわえて見せてあげることに。
「ん? おお、これや! ありがとなー、猫さん!」
ふむ、よかったではないか。
そういや、うちのご主人と同じぐらいの年頃だが、学校はどうしたんかね?
つか、こんな子供に一人で買い物に行かせるとか、どんな鬼畜だよ。
「そや、うちに寄っててや。なんかおいしいもの作ってあげるから」
料理得意なんよ~、なんて言いながら進みだす。
……ぬこの意見は聞かないのですか。いや、伝わらないって分かってはいるんだが。
それにしても、親はいない……のか?
でも、せめて介護と言うか補助の人とかいるんじゃないのかね?
ま、ぬこが勝手に首突っ込んでいい話じゃなさそうなんで、ここらで邪推はやめておく。
「どしたん? 早くせんと置いてくよ?」
はいはい、今行きますよっと。
というわけで、おうちにやってきました。このお嬢さんは八神さんと言うそうな。
ぬこはテイルモンポジションですね、分かります。オスだけど。
「そういえば、猫さんはなんて名前なんかな。野良じゃなさそうやけど……」
「みぃ」(訳:みぃです。)
「そか、みぃ君言うんや」
ミラクルか!? というか、首に下げてるタグを見てくれりゃいいんですけどね。
ご主人が選んでくれたネームタグなので、たいそう気に入っておりますよ、はい。
「私、はやてって言うんよ。よろしくな、みぃ君」
やっぱりヒカリもないし、お兄さんもいないらしい。ちょっと残念。
それはともかく、こちらこそよろしくです、はやて嬢。
「そうや、シュークリーム食べる? 今日のために買っといたんよ」
実は、今日誕生日なんよ。そう照れくさそうに言いながら、はやて嬢が取り出したるは翠屋のシュークリーム。
それはおめでとうございます。というか、うちのシュークリームですか、お買い上げありがとうございました。
「やー、これ買ったお店にいつもは猫さんがおるらしいんやけどな? 昨日はおらんかったんよ」
どこいってったんやろなー、なんて言ってますが、今あなたの目の前にいるのがそのぬこですよ?
でも、そこは空気が読めることに定評のあるぬこ。あえて口には出しません。
むぐむぐ、シュークリームおいしいです。
他の人からもらう分は日給に入らないので、役得ですなぁ。
「うーん、かわいいなぁ。飼うなら犬って思っとたけど、猫もええなぁ」
でしょう? でも、ぬこはすでに高町家の者なんで諦めてください。
ふぅ、もてるぬこはつらいですね。
「ふふ、いい子やなぁ。猫さんはもっと気難しいって思っとったわ」
そう言いながら、ぬこをなでてくれるはやて嬢。
ふむ、車椅子だとなでにくいですかな? ならば、こちらから行くまでですよ!
「わっ、ひざの上に来てくれた! 賢いなぁ、みぃ君は」
元、人間ですから。
いい歳した大人が、幼女たちになでられて悦ぶとか、変態かよ……地味に凹みます。
と、そんな風にたわむれていたら、夕方になっていた。そろそろお暇することにする。
でないと、またご主人からのお仕置きが…… あわわ、えらいこっちゃっ!
でもちょっと、最近癖になりそ(ry
「ん? もう帰るん? 残念やなぁ、またいつでも来てええよ」
了解です。ではアディオス!
と、家を出るとそこにはかわいらしいぬこが2匹。よく似ているので兄弟……いや、姉妹ですかね? 毛並みもいい美猫さんですねぇ。
むぅ、はやて嬢の口ぶりだとぬこは飼ってないみたいだから近所の子か? こちらを見てるけどどうかしたんかね? あ、こっち来た。
なにやら、ぬこのことを嗅ぎまわってるわけですが……? むぁ、同時にすり寄るんじゃないよ。かわいいなぁ、もう。
このまま一緒にじゃれ付きたいところだが、ごめんな。そろそろ帰らなきゃ以下略。
また遊びに来るから今度ゆっくり遊ぼうではないか。
ということで、今度こそ失礼させてもらうよ! そろそろご主人が帰ってくるのですよ!
・
・
・
・
間に合いませんでした キラッ ☆ミ
私、リーゼアリアはその日もいつも通り、ロッテと闇の書の所有者の監視を行っていると彼女は1匹の猫と一緒に帰宅した。
どうしたのだろうか、野良猫を拾ったというわけでもなさそうだけど……
中の様子を伺ってみると、その猫はシュークリームをもらっているところだった。
うらやましい。思わずよだれが出てしまいそうになるのを、慌てて堪える。
……しょうがないじゃない、最近ずっとこっちで監視してるから、そんなおいしそうなもの食べてないんだもの。
父さまにも会えていないし……
隣のロッテも同じようにうらやましそうな目で見ている。
(うらやましい……)
(ああ、もう全部食べちゃった! もっと味わいなさいよ!)
(……しゅーくりーむ)
そんな風にシュークリームに想いをはせていると、なにやら慌てた様子で先ほどの猫が出てきた。
(あんなおいしそうなのを味わわないで食べて! 文句言ってやる!)
(あ、ロッテ! 念話で文句言っても聞こえないでしょうに……)
まぁ、放っておくわけにもいかず追いかけることに。
あら? 勢いよく行ったのに固まってるわね、ロッテ。どうかしたのかしら。
(どうしたの?)
(父様のにおいがする……)
(えっ、嘘! あ、本当だ)
気がつけば二人で彼にすり寄っていた。そのときに首元のタグを見たが、みぃと言うらしい。
久しぶりの心地良さに二人で浸っていると、何かを思い出したみぃは申し訳なさそうな風にこちらを見た後、また慌てて駆け出していった。
(あっ、行っちゃった……)
少し残念だったけど、さっきあの娘にまたおいでと言われたときに頷いていたようなのでまた来るのだろう。
……ここに来る理由が増えた瞬間だった。
◆あとがき◆
読了感謝です。
これにて、空白期1は終了でござい。
次回からは原作突入、無印編です。引き続き、お付き合いいただければ幸いです。
それと、ちょっと投稿して思ったんですが、作品内にサブタイトルをつけるなら、タイトルのサブタイトルは消したほうがいいでしょうか?
ご意見を頂けるとありがたいです。
Tweet |
|
|
16
|
9
|
追加するフォルダを選択
空白期1