No.454191 PERNANO~ペルなの~StrikerS 2話2012-07-16 18:30:00 投稿 / 全2ページ 総閲覧数:1565 閲覧ユーザー数:1541 |
しばらくは達哉がメインで話が進みます
「俺が特異点であることに変わりはない……。俺がいれば『こちら側』はいずれ『向こう側』に飲み込まれるだろう……」
すべてを思い出したあの時から、頭のどこかでわかっていた。
いつかはこうなる、だからこうしなければならない。…否、こうする以外の方法はないんだ、と。
だが、心がそれを拒絶していた。
帰りたくない
此処にいたい
みんなと一緒にいたい…みんなと離れたくない!
独りになりたくない!!
でも、そんな願いは決して許されない。
『あいつ』を倒しても、俺という存在が『こちら側』を蝕む存在であることに変わりない。
俺のせいで、みんなが生きる『こちら側』を壊す訳にはいかない。
それに、俺には果たさなければならない約束がある。
だから俺は『向こう側』へ帰ると決めた。
辛い、悲しい、逃げ出したい、いろんな気持ちがあった。だけど、この気持ちを偽るつもりは無い。
それでも、『向こう側』で生きていけるだけの勇気を、みんなが与えてくれたから。
だから俺は、『向こう側』へ旅立っていける。
「俺達は、この海を通して繋がっている……いつでも……会えるさ……」
『こちら側』の俺から離れ、心の中で『向こう側』を思い描く。
複雑な手順は何もいらない。ただ「戻りたい」と願うだけで『向こう側』へ戻れる。
(さようなら……うららさん…兄さん…パオフゥさん…みんな……)
急激にぼやけていく視界と崩れ落ちる『こちら側』の俺。表情の読めない仮面の男。見守る仲間達。そして……
涙を流す、大切な人
(ごめん…そしてありがとう……摩耶姉……)
そして、視界が眩い光で満たされた。
ーーーーーーーーーー
「……夢か…」
目が覚めて、最初に目にしたのは見慣れない天井だった、…どうやら夢を見ていたようだ。
体を起こした達哉は一瞬、此処はどこだ?と思ったが、自分が『向こう側』ではなく異世界に来てしまった事を思い出して、少し憂鬱になった。
達哉は昨日、ティアナと話をしているうちに夜遅くになってしまったので、ティアナの家に泊まる事になった。
達哉はティアナに「家族に言わなくて良いのか?」と聞いた、するとティアナは表情を曇らせて言った。
『お父さんとお母さんは居ないよ…お兄ちゃんもこの前死んじゃったから…』
ティアナの両親は、ティアナが小さい頃に亡くなって、唯一の家族だった兄も少し前に任務で死んだと言った。
達哉は悪いことを聞いた、と思いすぐ謝った。
その後、案内されたのはティアナの兄、ティーダが使っていた部屋だった。
達哉は部屋に入ると、疲れていたからか制服のままベッドに横になってすぐに寝てしまった。
そして、目が覚めて現在に至る。
「…此処は『向こう側』じゃないんだったな…」
しかし『向こう側』で迎える朝も、やはり憂鬱なものだったに違いないだろうな…。
そう思いながら、制服の袖を巻くり上げ、その中にあるものを見つめる。
それは、手首から腕にかけてべったりと張りついた黒い痣。
「…『やつ』との因縁はまだ切れていないということか……」
達哉は痣を見ながら言った。
昨日、ティアナに『その右腕の黒いのは何?』と聞かれて気がついた。
達哉は袖を捲る、するとそこには、手首から腕にかけて黒い紋様が刻まれていた。
それを見たティアナは「誰かに腕を掴まれてるように見える」と言った。
達哉は確信する。これは、あいつが…『ニャルラトホテプ』が完全に力を失っていない証拠だと。
『あの戦い』でニャルラトホテプはどこぞに追いやられた。だけど、完全に消え去ったわけじゃない。
…いや、そもそもそれは不可能なのだ。すべての人間の負の面であるニャルラトホテプは人間が存在する限り決して滅びない。
確かに、一度倒されたやつの力は弱まっている。だからすぐにどうにかなるということはないと思う。
だが、やつはいずれ力を取り戻す、その時こいつを目印にこの世界に来るようなことになったら…
そう考えていると、部屋の扉が『コンコン』と鳴った。
扉を開けると、そこにはティアナが居て、朝食の用意が出来たと言った。
…とりあえず、朝食を食べてからこれからの事を考えるか。
ーーーーーーーーーー
朝食を食べた後、ティアナの家を出た達哉はこれからどうするか考えた。
まず優先順位としては『元の世界に帰る』事が一番だ。
しかし、帰る方法が分からない今、これは保留にせざるを得ない。
そうなると…
「…今は、この世界の事を知る必要があるな」
『こちら側』と『向こう側』のような平行世界ならまだしも、この『ミッドチルダ』という世界は全くの別物だ。常識やら何やらが違うだろうこの世界で今まで通り行くとは思えない。
朝食の際に、ティアナに自分の旨を話したら、元の世界に帰るまで自分の家に居ても良いと言った。
何時までもティアナの家に世話になる訳にはいかないが…行く宛てが無いのも事実だったので、しばらくの間ティアナの家に泊まる事になった。
そして今、達哉はミッドチルダの街中を歩いている、ちなみに今は制服姿ではなく、ティーダが着ていたというライダースーツ借りている。
達哉はそのライダースーツを見た時、『こちら側』で自分が着ていたのにそっくりだったので少し驚いた。
「…しかし、本当に違う世界なんだな…」
達哉は周りを見回すと、空間に浮かぶモニターや見たことの無い文字が目にはいる。
自分の居た珠間瑠市も凄かったが、こんなのは無かったな…。
そう思いながら、達哉はポケットに手を入れると冷たい感触がした。
そして、ポケットに入れていたライターを取り出し、何時もの癖でライターの蓋を開け閉めし始める。
「……淳…」
達哉が持っているこのライター、実は『向こう側』での仲間であり親友だった『黒須淳』から幼い頃に貰った大切な物である。
そしてもう一つ、達哉は持っているものがある、それは
「一応、この世界でも『ペルソナ』は使えるようだな」
達哉はティアナの家を出た際、ふと気になって試しにその辺の木の葉っぱを一枚手に取った。次の瞬間、葉っぱは一瞬で燃え上がり灰になった。
この時、達哉のペルソナ『アポロ』の腕が達哉の体から伸びていた。
この世界でもペルソナが使える事が分かった。そして、この世界では悪魔が居るのか気になったが、今の所は見かけてない。おそらく、この世界には居ないのかもしれないがそこは分からない。
とりあえず今は、この世界の事を調べよう、そう決めた達哉は街中を歩き出した。
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…俺は『奴』と戦い、『向こう側』に戻ったハズだった。
しかし、俺がたどり着いたのは『ミッドチルダ』という世界だった。
そこで俺は独りぼっちの少女と出会った。
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