───バスジャックの次の日
とある場所での会話。
学校の倉庫裏。
「ほら、理子。ゲーム買ってきてやったぞ」
「やった~!これだよこれ!ありがとう!」
「まあ、金はお前が出したんだしいいけどな。それで、約束の情報は?」
「そうそう。まずアリアだけど、イギリス出身。Sランク武貞。犯人を99人連続で逮捕している。両親はイギリスにいて、二つなは双剣双銃《カドラ》。」
「犯人を99人連続でか…」
「でも、こないだ途切れたみたいだよ?」
「あいつから逃げたやつが居るのか!?」
「うん。」
「誰だよ!?」
「キンジ君ダヨー。…一体何をしたのかな?」
「おれ!?俺は何もしてねえ!それよりも、フランは?」
「フランは…殆ど情報がなかった。Rランク武貞。」
「それだけかよ!?もっとなかったのか!?」
「本当にこれだけ。しかも、フランスに調べてもらったけど、
フランドール=スカーレットなんて人はいなかった。」
「なに!?それじゃあ偽名なのか!?」
「そうかもしてない。だけど、一つだけ引っかかるんだよね」
「何だよ?」
「イギリスで1800年代にある事件が起こったの。吸血鬼が街に出るっていうので、かのシャーロックホームズも犯人を見つけたけど捕まえられなかったの。その容姿は、金髪紅目の幼い女の子。」
「まさか…」
「その子の名前が、
フランドール=スカーレット」
「そんな…まさか。あり得ない。そうだったら今頃200歳を超えているじゃないか!」
「吸血鬼だよ?容姿はそうそう変わらない。」
「でも……!」
「これはあくまで推測。あんまり気にしちゃうとだめだよ?思考の幅が狭くなっちゃう」
「…そうだよな。ありがとうな、理子。」
──────フランside
「おい!起きろ!」
…あと5分
「う~っ…むにゃむにゃ。」
「寝るな!敵だ!」
なっ!?
「どこ!?」
…飛び起きて銃を構えると、そこには笑っているジョンソンがいた。
「全く、兵士としては一流だな。」
「…騙したの?」
「まあな。それにしても寝顔と起きる時の顔の差が凄かったぞ。幸せそうに寝てるのが、飛び起きた途端に真剣な顔になったしwww」
と、こちらを見て爆笑している。
こっちは本当にビビっていていうのに、酷いな~。
ぷぅ、と膨れてみると、ごめんごめんと謝ってきた。
「ほら、挨拶があるんだからシャキッとして」
「…出来たよ。行こう?」
ジョンソンと一緒に甲板に上がると、眩しい朝日と共に美しく輝いている海が目に飛びこんきた。
もう周りには陸は見えない。
甲板には所狭しと人、人、人。
前の方には、おえらい人が並んでいる。
なんか話が始まったな。
…どっかの校長先生みたいにヤバイ。
睡眠作用があり、ほぼ必ず欠伸が出る。
そんな地獄にも耐え、俺の名前が呼ばれた。
「では今回の作戦に急遽協力してくれる事になった武貞を紹介する。」
と、モリソン大佐がこちらを見て、手招きをしてきた。
こっちに来いということだろう。
「東京武貞高から来たフランドール=スカーレットです。
一応Rランクなので、役にたてると思います。
よろしくお願いします。」
流石にここでは転校のときみたいな事は起きなかったな。
代わりにメチャクチャ観察されているような気がするけど。
「と、いうことだ。作戦にはどんどん出てもらうから。それと、彼女はRランクの中でも最も強い。見た目で判断するなよ」
と、話を締めくくりに入ったところで、艦の中から人が来て来てくれと言われた。
そのまま、会議室の様な部屋へと通された。
「ここで会議があるので、待っていてくれ」
「分かりました」
数分後、4人の男たちが入ってきた。
「では会議を始める。今回の作戦内容の説明を頼む」
モリソン大佐の雰囲気が今までと違い、真剣そのものだった。
「はい。今回の目的は、敵の航空基地の破壊と油田の破壊、市街地に居る敵の掃討です。
前の2つは空から、最後のは陸路から攻撃します。」
「よし。敵の情報は?」
「数は5000人ほど。航空基地に対空ミサイルが設置されています。また、高射砲ももっているようです」
「…そうか。何かいい案はないか?」
普通はきついだろうな。一機は撃墜されるだろう。
だけど、俺なら………
「私に任せてくれれば全部できるよ?」
「本当かね!?いや…しかし一人だけというのは…」
「できるだけ危険はない方がいいでしょ?」
「まあ、それはそうなのだが…そうすると他の奴が何も出来なくなるのがダメなんだよな…」
と許可を出すのを渋る。
「でも、こちらの負傷者は少ない方がいいでしょう?」
「うーむ…。分かった。君に頼むとしよう」
「ありがとうございます。それでは、交戦規定を教えて下さい」
「特に核兵器とかを使わなければ何をしてもいいぞ」
「本当ですか!?」
「ああ、もちろんだ」
よしっ。それなら思いっきり暴れられるな。
「じゃあ、いってきます!」
「待てまて。どうせいくなら夜の方がいいだろう?せっかくF─35でステルス性があるのに」
それもそうだな。
「分かりました。では、失礼します。」
「ああ、頑張れよ」
「はい」
会議室からでて、甲板に出ると、暖かい太陽の光が降り注いできた。
…まさか吸血鬼が日光浴だなんて、誰も思いつかなかっただろうな。
梯子を登り、レーダーの脇に仰向けに寝そべる。
…太陽の光が心地よく、つい、ウトウトと微睡んでしまった。
起きると既に夕方。西の空が赤く染まっていた。
流石に二度寝は無理だから、起きることにした。
戦闘に向けてストレッチをする。
さすがは女。前屈では手のひらが地べたに楽々着く。
こんなことは男じゃあ、まず無いな。
30分程していると、晩ご飯の時間になったので、食堂に行く。
「おっ、今夜の主役が来たぜ!」
何処かの男の声で、一気に声に視線が集まった。
…なんか前にもあったような。
2時間後
甲板で挨拶をしていた。
「それじゃあ、いってきます」
「気をつけてな。死ぬなよ」
「Rランク何だから、大丈夫だって。安心して。無線は戦闘機に乗っているときしか使えないから」
「分かった。」
挨拶を済ませたあと、戦闘機を創って乗り込む。
甲板に集まった人達に手をコクピットの中から振った後、離陸して敵基地へと出発した。
見つからないために、速度はおとしている。
海を超えて陸の上にでた。
建物は低く、電線もない。
右側には大きな山があるが、木は生えて居ない。
遠くに飛行場と油田が見える。
深い闇の中、油田の炎だけが明るく燃えている。
…あんなんじゃあ直ぐに見つかるって分からないのかな?
「敵基地と油田を見つけた。破壊する」
「了解」
こちらの攻撃範囲に入った途端、機内でアラームが鳴り響いた。
…ロックオンされたか。
どうやら、見つかってしまったようだ。
前方から、スティンガーらしきミサイルが飛んできた。
急遽上昇、ミサイルをよける。が、まだついてきた。
後ろから追ってくる。
方向を転換し、来た時にみた山に向かう。
ギリギリまで山に向かって、急上昇。
ミサイルは山に当たって爆発した。
ふう。なんとか避けられたな。
気を取り直して、飛行場と油田の上に自由落下型爆弾をポンポン落として行く
無論、能力で作っているため数に制限はなく、機体の外に取り付けなくていいので、ステルス性もたかい。
ドドドドッッッッッッッ!!!
落ちた爆弾が次々と爆発して、建物やなどを吹き飛ばしていく。
まさにきたねえ花火。
「ヒャッハーーー!!!破壊完了!」
「よくやった!それでは市街地の掃討を頼む。」
「了解。機体から脱出します」
機首を市街地に向けた後、足と足の間にある紐を引いて外に飛び出す。
戦闘機は何かの建物に突っ込んだ。
俺は道路に着地。
パラシュート?そんなもん使わないよ。
周りは中東っぽい建物。
地面は土のままだ。
さて、目標は敵の掃討か。
ちょうど良いことに2人の敵がきた。
SCARを造って撃ちまくる。
最初は心臓に撃ち込む。
赤い血を噴き出しながら、地面に倒れこんだ。
…すげえ、すげえよ!
まさか本当に人相手に銃をぶっ放せるとは…!
2人めはヘッドショット。
命中した頭が割れて脳味噌が飛び散る。
あたりに硝煙と生臭い匂いが充満する。
すげえ…
だけど、もっと出来るよな。
羽を出して手のひらの上に"眼"を作り出す。
目の前の建物に意識を向けながら、"眼"を握りつぶす。
「キュッとして、ドカーン☆!」
途端に建物が爆発したかと思うと、粉々になった。
生き埋めになった人がもがいている。
…そいつに意識を向けながら、手のひらの上に作った"眼"を握りつぶす。
瓦礫の間から血が噴き出て、動かなくなる。
すげえ
本能が壊せと言っている。
こわせといっている。
コワセトイッテイル。
コワセ
コワセ
「アハハ…アハハハハハッ…アハハハハハハハハハハハッ!!!」
もう、壊せられれば後はどうでもいいや。
壊せ。
建物を。
壊せ。
人を。
壊せ。
感情を。
コワセ。
コワセ。
コワセ。
この日、自分を中心に半径2kmにある全ての人、建物が破壊された。
気がつくと朝になっていた。
周りを見渡すと瓦礫の山。
遠くでは大火災が起きている。
近くを見渡すと、瓦礫の所々が赤黒く染まっている。
その上には、バラバラになった人の死体が転がっていた。
手のみ、脚のみ、頭のみ。そこら中にコロゴロと転がっている。
断面からは肉が見え、マネキンでは無いことが直ぐに分かった。
血と焼けた体の匂いが辺りに充満する。
…自分でも、顔から血の気が引いて行くのが分かった。
今の状況を認識した途端、猛烈な眩暈と吐き気が襲った。
…俺は人を殺したのだ。
今まで俺は一度も人を殺した事がなかった。
神界での訓練でも、ゼウスが創った人型の操り人形を使っていた。
今日、始めて人を殺したのだ。
敵だと頭でわかっていても、罪悪感が拭えない。
作戦を成功させた喜びと、人を殺した罪悪感が混ざった曖昧な気持ちのまま、俺は戦闘機に乗って帰還した。
「よくやった!作戦は成功、完璧だ!君には勲章が贈られるだろう」
「ありがとうございます」
司令官が甲板で、笑顔で迎えてくれる一方、俺はどういう表情をすれば良いのか分からなかった。
喜べば良いのか、人を殺したというのに。
「ねえ、ジェイソン…」
気がついた時、俺はジェイソンに相談していた。
…信頼していたのか、それとも単に近くにいたからなのか。
自分でもよく分からない。
だが、ジェイソンは俺の悩みを分かっていたようだ。
「フラン。軍に入れば、必ず通る道だ。なぜ人を殺すのか、喜んでいいのか。…俺は仲間を守るため、国のために人を殺す。そして、それによって救われる人がいるなら…喜んでいいと思うぞ?」
単純なこと。
仲間を守るということ。
たったそれだけの言葉で、不安が無くなったような気がした。
それでも、怖い。
自分が怖い。
能力に食われてしまった自分が怖い。
能力が怖い。
強すぎる能力が怖い。
いつか、大切な人をこの手で壊してしまいそうで怖い。
「ありがとう」
笑顔でお礼を言う。
小走りで甲板の端に行って、これからやることを見られないようにする。
「ねえ、お父様?」
呼びかけると、目の前に男が一人、現れた。
「どうした?何か不満なことがあったのかい?」
「…フランの能力をなくして欲しい。」
「正気か?あれはまさに最強の攻撃なんだぞ!?」
途端に驚愕の表情を浮かべる。
確かに、あれで壊せられないものはない。しかし…
「…それでも、抑えられなければいけない。ついでに、他の、自分が食われてしまいそうな能力も使えなくして?」
「だが…」
「今回は敵しかいなかったから良かったけど、もしも仲間がいたら…。
だから、ね?本当に必要な時は、言うから、その時だけ使えれば良いの」
大切な人を簡単に失える能力など、いらない。
「…分かった。だが、本当に危険な時は使ってもらうぞ?」
「わかった。」
自分の体が一瞬光ったかと思うと、いつも通りに戻った。
「終わったぞ。用はそれだけか?」
「うん」
「そうか、じゃあな」
といって、男は消えてしまった。
Tweet |
|
|
4
|
3
|
追加するフォルダを選択
いわゆるテンプレ物語の第11話