俺の名前は中村剣次郎だ。
気がつくと俺は真っ白な空間にいた。何故?何処?色々な疑問が浮かぶ。確か俺は家でゼロ魔を何回も読み返していたはずなのに…その先が思い出せない。
「あなたは死んだのです」
つい、思いに耽っていると女性の声が聞こえた。
「あんたら誰だ?」
振り向くとおじいさんとお姉さんが立っていた。
「私はヘラです。で、こっちは愚弟のゼウス」
「ちょ、ここで愚弟は無いじゃろ。それに一応わしら夫婦じゃし」
「あなたと姉弟だというのも恥です」
で、ギリシア神話の主神と神の女王が何の用だろう。
「そうでした。そこの愚弟のミスによって貴方は死んでしまったのです」
へー。そうなのかって!!
「心を読まれた?」
「そのような事は造作もありません」
「ふぅん。で、この後どうするの?」
「そこでじゃ、お主の性格上ゼロの使い魔の世界に転生させることにしたんじゃよ。じゃが突然一般人をゼロの使い魔の世界にやってもサイトと同じなんでの。その前に色々な世界に転生させるぞ」
「…なんか能力は?」
「そちらに関しては王の財宝や無限の剣製やらをあげたいんじゃが突然やるとお主が壊れてしまうのでな。あげるのは魔力だけじゃ。魔力量もあまり多くないが魔力成長率などを最高にしておいたからすぐに強くなるじゃろ。ああ、それからお主が五感で感じた相手の能力をコピーする能力を付けたからの。運が良ければ王の財宝や無限の剣製もコピーできるぞ」
「なるほど。わかった」
「じゃあ先ずは…ドラゴンクエストⅨの世界に転生させるかの」
「なんでドラクエⅨ?Ⅴが良いんだけど」
ちなみに俺はフローラ派だ。
「それは娘のアテネがはまっておるからじゃ」
「それだけ?」
「それだけとはなんじゃ!アテネが世界一なのじゃ!」
「はぁ。わかったよそこで良いからはやく転生させてくれ」
「じゃあ送るぞ。逝ってくるのじゃ」
そう言って俺は転生した。
あれ?落とし穴があいて落ちたりしないな。それどころか何も変わって無いような気がする。
「ってあれ?ホントに変わって無い」
目を開けてみると頬を腫らして転がってるゼウスとビンタした後の姿のまま立っているヘラの姿があった。
「まったく。大事な事を忘れているのにそのまま送ろうとするなんてどこまで愚弟なんだか……」
「うう………」
「ほら!いつまで寝てんのよ!起きなさい!」
そう言いながらゼウスを蹴る。
――――しばらくお待ちください――――
「おほん!少し取り乱してしまったが忘れていたことがあったのじゃ。お主に名前を決めて貰わねばならんのじゃ」
前のままじゃ駄目なんだろうか
「前の名前はもう死んだ人間として処理されているから無理なのよ」
「なるほど。んー…竹脇カイトで」
「それでいいんじゃな?」
「ああ」
「では今度こそ送るぞい。ではの」
そう言って今度こそ俺は転生した。
………あれから何年たっただろう。あれから何回転生しただろう。前世の記憶や名前は既に記憶の彼方にあるが、俺は数多の世界を旅し、時には世界を壊し、時には世界を救った。
人類最古の英雄王と戦ったこともあるし、ゼウスと契約して歩いて行けない隣の世界から来た異世界人とも戦った。
ある世界では英雄で、ある世界では極悪人。
こんな人生を送っても壊れなかったのはゼウスやヘラのおかげだろう。
「次の転生先はゼロの使い魔じゃ」
「で、どんな世界なんだ?」
「魔法の使える貴族と使えない平民が区別されている世界じゃ。お主はそこにとある貴族の使い魔として召喚されるのじゃ」
「なんだかめんどくさそうだな…」
「まあ頑張るのじゃ。じゃあ送るからの」
そう言って俺は送られた。
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中村剣次郎は気が付くと真っ白い空間にいた。――――「あなたは死んだのです」「あんたら誰?」