<海斗サイド>
「いたか!」
「いや、こっちには見当たらない。」
「侵入者は一人だが、あの黄忠の娘も一緒だ。そう遠くへは行っていないはずだ!」
タッタッタッタ
「ふぅ。流石に、璃々ちゃん持ったまま戦うわけにもいかないんだが・・・」
今は砦の中を逃げ回ってる。あの後、璃々ちゃんの泣き声を聞きつけた兵達が、
俺の殺した兵と、門番が居なくなった事に気づき、入口を全て固められてる。
「しゃーない、強行突破と行きますか。」
なんとか門に辿り着き、様子を伺う。
「40人か。行けるな。だが一気に片付けないとか。増援なんて相手にしてる暇は無い。」
俺は門番の格好のままで門に近づく。
「うん?お、お前は!ぐはっっ!」
気づいた兵の一人を切り裂き片付ける。
「邪魔だ。」
一番近い敵の首を跳ね、そのまま二人目も首を跳ねる。
横から槍を突き出してきたものを剣を持ったまま掴み取り、敵の密集してる場所にぶん投げる。
そのままそこに斬撃を飛ばす。
「よし、片ずいたか。「いたぞ!逃げ出す気だ!」ちっ、面倒だ。このまま行くか。」
そう言って門をこじ開け砦から脱出。
「全員行く必要は無い。何人かは戻ってこい!」
そう言って何人かが俺の後を追ってくるが、森の中なせいか余り早く無い。
これなら逃げ切れるか。戻って行って奴が気になるが。
それから一刻程逃げ続け、黄忠に伝えた村に着いた。
「はぁ、はぁ、はぁ。なんとか逃げ切れたか。とりあえず、璃々ちゃんを何処かに休ませないと。」
それから宿屋を探し、事情を話して璃々ちゃんを休ませた。
「ふぅ、後は黄忠を待つだけか。」
そして、二刻程過ぎた頃に。
「不味いぞ、劉璋が攻めてきた!ここに真っ直ぐ向かっている!」
「な、何だって。今まではそんなことなかったのに!」
「私達も黄忠様を慕ってきたから、皆殺されるわ!」
罪も無い民をも襲うか、劉璋。
「おい、今戦える人間はどのぐらいいるんだ?」
「なんだあんたは。」
「そうだな。この村が襲われる原因を作った者かな。」
「何だって!なんで俺達が襲われなくちゃならないんだ!」
「昨日黄忠の娘が劉璋の軍にさらわれてな。劉璋はその子を人質に、黄忠達に降伏を促した。
これが受け入れられないなら、娘を殺すと、
俺は、丁度その子が誘拐されるとき、その場に居合わせてな。
後をつけて、その子を助けて、今この村に居る。」
「じゃ、じゃあ、劉璋の軍は黄忠様の娘さんを狙ってるんだな。」
「だから、あの子を守らなくちゃいけない。あの子が敵に捕まれば、黄忠は降伏するだろう。
そうなったら黄忠を始めとする、反乱軍の将、及びそれに加担した者は死罪になるだろう。
お前たちもだ。」
黄忠に娘を犠牲にする選択は出来ないだろうからな。
「じゃあ俺たちはどうすればいいんだ!」
「戦え。それしかない。」
「戦うったって、俺達だけじゃあ勝てるわけがねえ。相手は5000人も居るんだぞ。
うちの村で戦える奴なんて、500ぐらいしかいないんだから・・・」
500か、思ったよりも多いな。これなら行ける。
「勝つ必要はない。今ここに黄忠達は向かってきている。それまで時間を稼げばいいだけだ。
お前だけと話しても始まらないな。この村の代表者は?」
そう言うと、
「俺だ。」
かなり若いな。
「どうする?話は聞いていただろう。お前が決めるんだ。このまま逃げて、今までの黄忠への
恩を仇で返すか。それとも、ここで黄忠の為に戦うのか。
もしもお前たちが戦うというなら。」
ヒヒィィーーン
そこへ大蛇と蟒蛇を持った黒兎が現れた。
ナイスタイミングだ。
やってきた黒兎に跨り、
「この慈悲深き死神がお前達を勝利に導いてやる。」
・・・クサ。自分で言ってなんだけどかなりクサい台詞だな。
「「「「「「「うおおおぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」」
そんなことを思っている自分を他所に、村人たちは歓声を上げていた。
「おい、慈悲深き死神っていやぁ各地で俺等みたいな、困っている平民に
慈悲深く、賊共には容赦ないっていうあの!」
「俺も聞いたことあんぞ。なんでも黄巾党5000人をたった一人で打ち負かしたとか!」
いや、そんな事ねェし。確かに戦った事はあるが、途中で皆逃げ出して結局3000ぐらいしか
討伐出来なかったしな。
「そんな人が付いてくれるんだ。負けるはずがねぇ!」
「・・・答えは決まったか?」
村長らしき青年は、村人達を見渡し、それぞれの顔を見て、
「ああ、俺達は戦う。今まで俺達は黄忠様に守られてばかりだった。
けど、今は俺たちが黄忠様を助ける番だ。そうだろみんな!!」
「「「「「「「おおおおおーーー!!」」」」」」」」
「頼む。俺たちに力を貸してくれ!」
いい顔だ。覚悟を決めたか。
「無論だ。なら、戦う者は今すぐ武器を準備しろ!鍬、長い棒、何でも良い!
準備が出来たら村の入口まで来い。急げよ!敵はもうすぐそこまで来ているんだ!」
「「「「「「「おう!!」」」」」」
「おい、青年。ちょっと来い。」
「青年じゃ無い、呉懿。字は子遠だ。」
は?マジでか・・・何してんのこんなところで?
「・・・そうか。なら呉懿。お前は村の人を指揮するんだ。
出来ないとは言わせない。」
「・・・分かった。俺の出来る精一杯の事をしてみるさ。
だがあんたは?」
「俺は敵陣に突っ込んで混乱させてくる。馬がいるのは俺だけだし。
今回は時間稼ぎが目的だ。お前達は俺の取りこぼした敵兵の相手をしろ。
無理はするな。命を落としたんじゃ意味がない。」
まともに戦えるなんて思っていない。十倍差。この差はでかい。
だが、村の入口という限られた範囲で戦うなら別だ。
俺が黒兎で混乱させれば、注意はおれに向くだろうし。
「分かった。なら俺も準備をしてくる。」
そう言って走る呉懿。
「皆が皆、女になるんじゃないんだな・・・」
そう呟き、入口に向かう。
<呉懿サイド>
準備の終わった俺は、俺の家に残されて来た、家宝とも言える槍、戟戦を持ってきた。
俺のじいちゃんは滅茶苦茶に強かった。
なんでそんなに強いのかってぐらい強かった。
そんなじいちゃんに鍛えられたから、その辺の賊には負けないぐらいの力は持っている
そんな俺も始めて人を殺した時は泣いた。泣きまくった。毎晩俺の殺した奴がやって来た。
近所のばあちゃんが街に行く時ついて行ったら、賊に襲われ五人も殺した。
だけど、俺が悩んでるって聞いたそのばあちゃんが言ってくれた。
ありがとう
ってな。俺はなんかすかっとした。
助けてよかったと思えた。
そんな俺にじいちゃんがこの戟戦をくれた。
「今のお前なら、この槍を使うべき時がわかるはずじゃ。」
俺は今だと思う。黄忠様には助けてもらってばかりだ。
しかも劉璋は娘さんを人質に使ったそうだ。
許せねぇ。
そんなことを思っていると村の入口に着いた。
もう皆集まっていた。
「来たか。いいか、お前らはここから後ろに敵を入れるな。
そのためには、二人。いや三人一組みで敵に当たれ。細かな指揮はこいつがする。
いいか、皆。死ぬなよ。」
死神が死ぬなよか・・・面白い奴だ。
「来たぞーーーー!」
来たか。いっちょやりますか。
「おい、呉懿。出陣だ、何か一言言っとけ。一応村長だろ。」
な、ここでか。そんなの言ったことないんだけど。
「皆!これから俺達は人を殺すだろう。この中で死ぬ人も出てくるだろう。
俺も怖い。怖くて今すぐ逃げ出したい。
けど!俺は逃げない!皆はいいのか、このまま黄忠様の娘さんを渡してしまって。
人質を取らなければ、交渉も出来ないような臆病者から逃げ出しても!
俺は嫌だ!そんな奴らに負けたくない!
だから皆、俺に力を貸してくれ!俺一人じゃ無理だが、皆が居れば、俺はここを守り切れると
信じている!
それに俺たちには死神が付いている。これ程心強い味方はいない。
皆、行こう。俺達はここで、黄忠様へ恩を返すんだ!」
俺は自分の気持ちをただ声に出しただけだった。すると、
「「「「「「「おおおおおおーーーーー!!!」」」」」」」
「良い檄だ。
お前等。今こいつが言った通りだ!お前等はそんな臆病者では無いはずだ!
あいつ等は気づいてない。 自分達が贅沢出来んのも、お前等がいるおかげということを!
お前らは強い。自信を持て!ここを守りきれば、お前等の信じる黄忠が助け来る!
行くぞ!あの臆病者共に、守るものと、奪う者、どちらが強いか思い知らせてやれ!!」
「「「「「「「おおおおおおーーーーー!!!」」」」」」」
「敵軍来るぞ!」
「後は頼んだぞ、呉懿。」
「分かった。任せておけ。」
そう言って死神は漆黒の馬に跨り、敵軍に単身突っ込んでいった。
そして、人が吹っ飛んだ。
人が宙を舞い、吹き出す血ががまるで雨のようだった。
「ははっ、死神か。その名の通りだな。」
恐ろしい程長い二本の変わった形をした剣を振るう姿は、美しく、どこか儚げだった。
「村長!二十人程こっちに向かってきます!」
「落ち着け!二十人だろ。数でも勝っている。一人が敵の攻撃を防いで、もう一人が攻撃、
もう一人が周りを警戒しろ!
目の前でたった一人で戦っている奴がいんのに負けましたじゃ済まされないぞ!」
「「「「「おう!」」」」
黄忠様どうかお急ぎ下さい。
<黄忠サイド>
「璃々。もうちょっとだけ待っててね。」
今私は娘の居るという村に向かって移動中。
もし、劉璋の軍に出くわした時の為に兵5000を連れて。
あと、一刻もしないうちに着く。
「ほ、報告!目的の村が劉璋軍に攻められている模様!その数4500。」
「なんですって!村の人は!」
「はっ!どうやら戦闘している模様。村の入口にて徹底抗戦を続けております。
それと、劉璋軍に単騎で突っ込んでいく者が!」
単騎で、何を考えているの。その者は!
「黄忠さん、大丈夫ですよ。その人多分兄様だと思いますから。」
「兄様というと、貴方達の主の?心配じゃないの?」
というと、徐庶ちゃんが
「心配するだけ無駄。」
「こら、流里。無駄は失礼でしょ。」
と、司馬懿が注意する。
すると、一番血の気の多い延耶ちゃんが、
「なあ、死神ってどれぐらい強いんだ。
死神とか言われるんなら、相当強いんだろ?」
「どれぐらいって言うと・・・」
「私達が賊を50人倒してる頃には、兄様は1000人倒してる位強いですね・・・」
「な、そんなにか!一度手合わせ願いたいものだな。」
そんな事を話しながら進軍し続けると、村が見えてきた。
「全軍鋒矢の陣をしけ!敵軍を一気に殲滅するのじゃ!」
「「「「「おう!」」」」」
「行くぞ!罪無き民を虐げる劉璋軍を蹴散らしてやれ!」
「「「「「おおおおーーーー!!!」」」」」
<海斗サイド>
「行くぞ!罪無き民を虐げる劉璋軍を蹴散らしてやれ!」
「「「「「おおおおーーーー!!!」」」」」
来たか。どうやら流琉達も一緒にいるようだな。
なら問題ないだろう。呉懿の方も気になる、一度戻るか。
<呉懿サイド>
来た!来てくれた!
「皆!黄忠様たちが来てくださったぞ!この戦い俺達の勝ちだ。
だが、まだ気を抜くな。最後の最後まで戦い抜くんだ!」
「「「「「おおおおーーー!!!」」」」」
「おい!黄忠の軍が来ちまったぞ!どうすんだ!」
「どうするもこうするもねぇ!逃げるぞ。もう勝てねぇ!」
そう言って逃げていく劉璋軍。
「皆!よく耐えきった。俺達はこの村を自分達で守ったんだ!」
「「「「「おおおおーーー!!!」」」」」
やったんだ。俺達は。
「見事な指揮だったな。将軍として食っていけるぞ。」
「いや、あんたや黄忠様達が居なかったら持たなかったよ。」
「そんなの当たり前だろう。この状況を一人で打破できる奴はそうそういない。
だが、お前は始めて多くの人間を指揮したのに関わらず、
味方の士気も落ちなかった。誇っていいぞ。」
そんなにか。俺はただ思ったことを言っただけなんだけど。
「あっちも終わったようだな。璃々ちゃんを連れてくる。
黄忠達が来たら、少し待つように言っておけ。」
「そういえばあんた名前は?」
「韓義、字は紅炎だ。」
それが俺とあいつの出会いだった。
あとがき
こんばんわnontanです。
益州編二幕が終了し、そろそろ路線がはっきりし始めてきました。
遅いですよね。路線決まるの。
まあ、グダグダにならないようにだけしていきます。
ご意見、ご感想、ご指摘があればコメントしていただけると嬉しいです。
でわでわ
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益州編第二幕です。
今回始めて主人公っぽい事します