No.452901

緋弾のアリア 紅蒼のデュオ 3話

暁晃さん

3話です。場面飛びまくります。初戦闘描写です。

2012-07-14 21:23:23 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1193   閲覧ユーザー数:1159

四月××日 

 

 

東京武偵高が始業して数日。怜那は、飛牙に言われた通りにキンジとアリア(アリアが勝手にキンジに付きまとっているだけ)を追跡していた。授業をサボってまで尾行するのが果たして是なのかは疑問だが。

 

どうやらキンジは探偵科(インケスタ)の依頼(クエスト)を受けているらしく、キョロキョロと辺りを見回しては進んでいく。あの様子だと恐らく捜し物関連の依頼(クエスト)だろう、探偵科(インケスタ)らしく推理して効率良く探せばいいものを、如何せんEランクの彼は虱潰しに探しているようにしか見えなかった。

 

(しかし暇ですね。何の弾みであの超人的な性能になるのかは分かりませんが、何かアクションが必要なのでしょう。)

 

結局、夕方にキンジが目標(猫だった)を確保しただけで怜那は追跡を止め、スーパーへと向かった。

 

(今日も収穫無しですか。ここ数日、神崎氏がひたすら遠山氏に付きまとっているだけですね。)

 

ここ数日の追跡を思い出し、軽く溜め息をついた。怜那の感情を表す行動は傍目には全くわからないので、恐らく飛牙にしかわからない程度だったが。

 

 

 

 

 

 

スーパーに向かっている途中、袴に日本刀という何とも奇怪な姿をした男に出会った。真剣かはわからないが堂々と帯刀しているところからこの男も武偵高の生徒なのかと思ったが、東京武偵高にこの顔はいなかった事を思い出し、ならば本物の武偵なのかと少し訝しんだ。

 

「…失礼。お主、蒼月怜那殿ではあるまいか?」

 

丁度擦れ違うその時、男は怜那に話しかけてきた。

 

「…はい。確かに私は蒼月ですが。何故私の名を?」

 

「いや、拙者の仲間からお主達の話を聞いていてな。当人らしき者が来たので声を掛けたのだ」

 

怜那は警戒していた。現在彼女等の事を知るのは武偵高の人間か傭兵時代の事を知る者しかいないはずだ。もしそれ以外にいたとすれば、それこそ裏社会の者に限られる。

 

「……申し遅れた。拙者は石川五右衛門(いしかわ ごえもん)と言う者。峰理子殿の従者をしている」

 

ああ、と怜那は少しだけ警戒を解く。たしかリュパン一族は元貴族。使用人の一人や二人いても不思議ではなく、あれが学校であった事を使用人に話していても何ら不思議はない。

 

「ご存知の通り、紅月飛牙のパートナー、蒼月怜那です。」

 

「うむ。理子殿と同じクラスである以上、我等もまた合間見えるやもしれぬ。その時はまたよろしく頼む」

 

「…はい。では。」

 

時間にして一分と掛からなかったであろう、本当にすれ違いざまの世間話のような感覚で話を終え、怜那はまたスーパーへと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………という事があったんです。」

 

帰宅後、怜那は飛牙に先程あったことを伝えた。

 

「……そうか。授業サボりやがってまで遠山達を追跡してたのか。次から授業には出ろよ」

 

「…了解しました。」

 

飛牙には某の侍はそう大して重要な事ではなかったらしく、怜那がそこまで自分の指示に忠実に従っていた事に半ば呆れながら注意をした。放課後怜那が現れず、飛牙が困惑したのはここだけの話だ。

 

「んな事より…任務(クエスト)受注してきたぞ」

 

そう言って、任務(クエスト)の書類を怜那の前に置く。

 

「…密取引の調査及び逮捕…?」

 

「ああ。薬(ヤク)の取引を止め、犯人をを確保しろとさ。銃火器の使用は承認。日時は今晩0100頃。場所は書いてある通り、工場横のコンテナ集積場だ」

 

「それはまた急ですね。移動方法は徒歩でしょうか?」

 

「いや、数時間前に現場より1km離れた所に輸送車でお前を運ぶ。その後俺は目標地点近辺まで徒歩で向かう。お前は俺をナビゲーションし、必要ならば狙撃で足を潰せ。俺はその間に制圧する」

 

「了解。」

 

「おっと、武偵としての仕事だから殺人は認められてねえぞ。お前の事だからしくじる事は無いだろうが、気をつけてくれ」

 

「了解。その戦場だと、狙撃銃には暗視スコープ、サプレッサーの装備が好ましいですね。暗視ゴーグルの着用を推奨しますが。」

 

「元からそのつもりだ。以上で作戦内容の説明は終了。解散」

 

一通り任務内容を確認した後、それぞれ装備の整備のために解散した。現在時刻は1900。まだ時間は十分にあるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

2200時

 

飛牙と怜那は、ガレージにて最終装備確認をしていた。

 

飛牙は通常の装備から武器を減らし、現在携帯しているのはサプレッサーを装着したG18を腰に二丁、サプレッサー装着のベレッタPx4を懐に一丁、コンバットナイフ二本にバリスティックナイフ二本+刃が六本。戦闘時は黒い目だし帽子を被り、頭には暗視ゴーグルをかける。一応武偵高の制服は着ているが、羽織った漆黒のマントで殆ど見えていない。

 

怜那は外見上では大して変わっていない。背中のL96A1にはサーマルスコープとサプレッサーを装着、ヘッドホン型の無線通信機を装備している。

 

「さて、久々の戦闘が夜戦とはな…」

 

軍の払い下げ品、黒くペイントしたM998ハンヴィーのドライバー席に乗り込みながら、飛牙は感慨深げに呟く。

思えば、本格的な戦闘など何時ぶりであろうか。脳内でアドレナリンが分泌され、気分が高揚しているのを飛牙は感じていた。

 

「しかもこんな急にですからね。どうしてこのような任務(クエスト)を受けたのですか?」

 

背中のL96A1が当たらないよう器用にハンヴィーに乗り込みながら、隣に座る飛牙へ問いかける。

 

「ああ、元々急な依頼だったらしくてな。昨日上がってきた依頼(クエスト)だったそうだ。おまけに期日ぎりぎりだったもんで報酬も跳ね上がってたんだ。っても数十万程だがな」

 

期日ぎりぎりとは言うが、実行日は今夜。もし任務を受ける者がいなかったらどうしていたのか。怜那は教務科(マスターズ)の管理体制に疑問を抱きつつも、来る戦闘に備え息を整えた。

 

そしてハンヴィーはガレージより出発し、未だ明るい東京を駆けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

0039時

 

 

『……ターゲット来ました。東北と北西よりワゴンが二台。数は6。どうぞ。』

 

「……了解。これより作戦を開始する。オーバー」

 

予定よりも早く、ターゲットは目標地点に現れた。四月の夜風はまだ冷たく、吹く度に二人の体温を奪っていったが、こういった戦闘に慣れている二人は出来るだけ体温をキープ。動きに影響が無いレベルを保っていた。

 

『……ターゲット、両車を降りました。通りの東西に警戒兵が二人ずつ。取引をしている地点は灯りがついており、見つからずに制圧する確率は低いです。オーバー。』

 

怜那からの通信を聞いた飛牙は、ヘッドホンの通信部を指で軽く叩き、和文モールスで

 

(リョウカイ。ターゲットノアシノキーヲハカイセヨ)

 

と伝えた。

 

『…………了解。相手が乗車する前にイグニッションキーを破壊します。オーバー。』

 

少し遅れて怜那の返答がきた。

サーマルゴーグルを介して様子を見てみると、確かにライフルを持った人間が前方に二人立っているのがわかる。恐らく銃はAK系列のアサルトライフルで、素人と言っても過言では無いほど構えが成ってはいなかった。

 

(しっかし、中央が光に照らされてるっつうのは分が悪いな。あれじゃあ裏から攻撃してもばれちまうじゃねえか)

 

加えてフィールドは一本道。銃や飛び道具で敵を殺せないこの状況では、敵を全て見つからずに昏倒させるのはかなり難儀な事だった。

 

(なら…仕方ねぇ。ハナから見つかんの前提で攻撃しますか!)

 

息を整え、キッと前方を睨み付けると、前傾姿勢をとりマグネシウム合金製の靴底でアスファルトの地面を踏みつけた。

カッ!と小気味良い音が響き、アスファルトから火花が出る。

 

 

 

次の瞬間、火花はその何倍ものエネルギーで爆発し、前傾姿勢をとっていた飛牙を思い切り前へと押し出した。

 

 

 

 

G(グレード)はそんなに高くはないが、飛牙と怜那は超能力者である。

 

飛牙は火を操る能力を持つ。火の増減、爆発などの変質、火そのものの操作が可能であり、今のように小さな火花からそれなりの小爆発を起こす事も出来る。ただ、元が無いと火を操作する事は出来ず、また増減させる速さも限られている。

 

 

 

 

火花を使い前に飛び出した飛牙の勢いは凄まじく、東の警戒兵二人が銃を構える前に両者の首に強烈なラリアットを食らわせ、数メートル吹っ飛ばす事に成功した。炸裂した際に相手の首がメキョと嫌な音を立てたが、死ぬ程の威力ではなかった為大事は逃れている…だろう。

 

「なっ……!…撃て!撃ちまくれ!」

 

当然これに気付かない敵ではない。西の警戒兵二人は警戒も忘れ急いで此方まで迫り、取引を終えた二人はさっさと逃げようと車へ走り出す。

 

(AK-47か…。ひでぇ整備のされ方だ。いつ弾詰まり(ジャム)ってもおかしくねえな…)

 

姿勢を整えた飛牙は吹っ飛ばした兵の銃を拾おうとしたが、余りに整備不良だったので拾って使うという選択肢を削除した。

 

(さあて…。ピストル対アサルトライフルか…。ちいとばかし状況が悪いな…)

 

自嘲気に笑いつつ、迫り来る敵を見据えPx4を構える。一対二、ピストル対アサルトライフル。圧倒的に不利な状況に、アドレナリンが過剰分泌して異様に気分が高揚するのを心地良く感じながら、また地面を蹴る。

 

 

 

 

 

(さて…。かなり派手に開戦してしまいましたが…ここまでは予想の範囲内ですね。)

 

目標地点より1km程離れたビルの屋上。伏せた状態でL96A1のサーマルスコープを覗いている怜那は、飛牙の状況を確認しつつ、逃げた二人の先、ワゴン車のイグニッションキーの穴を狙っていた。

 

(一台は十分確認出来る角度ですが…もう一台は目視不可能ですね。)

 

まずは落ち着いて一台目の穴を狙う。

サプレッサーを装着したL96A1から、最小限の銃声をあげて弾が射出された。弾は通常よりも遙かに早く落ち始め、また夜風によって左右にブレる。そして弾は弧を描いてワゴン車の窓ガラスに穴を空け、キーの差込口ど真ん中に命中。差込口を潰す事に成功した。

 

(さて、もう一台は……)

 

命中を確認した怜那は、コンテナに隠れて殆ど見えない二台目のワゴン車、それより離れた所に照準を合わせる。

 

 

 

 

 

「ったく!何なんだこの状況は!」

 

薬(ヤク)の取引先、マフィアの構成員である隆崎剛次(たかさき ごうじ)は焦っていた。取引相手と円滑に行われるかと思われたこの取引。だが、突然の乱入者により場は荒れ、結局取引も流れた。相手側の歩哨は半数潰され、自身は逃走を余儀無くされている。

こんな事なら銃を持ってくれば良かった。つい数時間前の自分に憤慨するが、全ては後の祭り。今は一刻も早くここを去らなければならなかった。

 

車に乗り込み、素早くキーを差し込む。しかし、何時もの通りすんなりとキーは穴に刺さらず、それどころかキーが入る様子は全く無かった。

 

見ると、キーの差込口は銃で撃たれたかのように潰れ、顔の横から四月の冷たい夜風が流れ込んできているのに気がついた。

 

(狙撃兵(スナイパー)がいるのか!?早く脱出を……!)

 

咄嗟の判断でワゴン車のドアを開けようとするが、ドアの前には黒い目出し帽を被った男が立っていた。見れば、その男の右手には力無く四肢を投げ出した取引相手がぶら下がっており、後ろには地に倒れ伏した歩哨4人が目に入った。

 

「ザンネンだが…ゲームオーバーだぜド三流。アヒャヒャヒャヒャヒャ!」

 

その男には返り血こそ付着していないが、その狂気じみた眼光は妖しげに赤黒く光り、黒の目出し帽の上からもその男が口角を釣り上げているのがわかった。

 

男は乱暴にワゴン車のドアを開ける(と言うよりは破壊する)と、剛次のスーツの襟を掴み乱暴に外に投げ出した。

 

「ひぃっ…!来るな…!来るんじゃない!」

 

投げ出された体勢のまま、ずるずると後退をした。だが男は未だ笑みを止めず、と言うよりはより深くなった残酷な笑みで告げる。

 

「ゲームオーバーってんだろドカス。違法薬物所持その他諸々の罪で逮捕だ。アヒャヒャヒャヒャ!」

 

そのまま下がる剛次の元へ残酷な笑みを顔に張り付けたままゆっくりと歩き、やがて距離が殆どない位まで近づいた。

 

「来るな!来るな!来んじゃねグッ!」

 

未だ惨めに抵抗を続ける剛次の顎を、ポケットに手を突っ込んだまま男は思い切り蹴り上げ、1m程飛ばした後剛次の右手を思い切り踏みつけた。

 

「あ゛あ゛っ!があ゛っ!」

 

「ミッションコンプリートだ。これより帰投する」

 

男が言ったその言葉を最後に、右手の骨が砕け散るような激しい痛みに耐えきれなくなった剛次は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

報告書

 

 

密取引の阻止及び犯人の逮捕

mission complete

 

 

右腕部複雑骨折及び 下顎骨骨折 一名

 

意識不明 四名

内二人は頸椎骨折により昏睡状態

内二人は腕部複雑骨折 内臓へのダメージは無し

 

背骨骨折により下半身不随 一名

 

両組織については警察が引き続き調査を続行する模様


 
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