洛陽に着き数ヶ月がたった。。
洛陽に入り数日後から始まりこの間にすでに幾度と無く黄巾党の討伐へと赴いている。
正直いって忙しいなんてものではない。黄巾党はいくら討伐してもどんどんと勢力を伸ばし続けている。
そして今も何進将軍からの命令が届き陳留にいる黄巾党本隊の討伐へと向かっている最中だ。
華雄さん、張遼さん、そして私が馬で並んで歩いている。
華雄
「私達は張譲に呼ばれてきたのだぞ。なぜ何進の言うことを聞かねばならんのだ?」
華雄さんが今更な質問をしてきた。どうやら今の今までわかっていなかったようだ。
徐栄
「まぁ確かに私達を呼んだのは張譲なのですが表向きはあくまで「洛陽を守る軍」としてのものですから。これからも宮廷で権力のある将軍達からはこき使われる身なのですよ。」
華雄
「なるほどな・・・まぁいい。全ての賊は私が粉砕するまでだ!」
やはりいまいち理解していない。
・・・・・・まぁ賊相手程度ならこのくらい単純でもいいか。
徐栄
「とか思ってたが・・・これはまずいかもしれんね。」
張遼
「ちぃ!いくらなんでも多すぎるわ!」
今現在賊討伐の真っ最中。私達張遼隊は押されていた。
それもそうだろう。なにせ彼我の戦力は3倍以上。なのに何進将軍の立てた作戦はというと「正面突破」
更に本隊の防備に兵力を大幅に割いているためこちら右翼もあちら左翼も圧倒的に人が少ない。
コレではいくら倒してもきりがないというものだ。
張遼
「そういいながらも手だけは止めないんやなっ!」
徐栄
「ええ。すでにどう動くか決まっているもんでねっ!」
ちなみに今の私の武装は左手に槍、右手に剣をもった状態だ、最初に持ってきた剣は既に折れたのでその辺で殺した奴のものを拾って使っている。
張遼
「しっかし自分器用やなぁ。槍も剣とあんま変わらん練度で使えるんやん。」
徐栄
「あれ?いってませんでしたっけ?自分は大抵の武器は使えますよ」
張遼
「なんやのそれ。じゃあなんでウチとの仕合の時は剣ばかり使っとるん?」
徐栄
「張遼さん相手では剣が最適と踏んでるからですよ。流石に長物同士であなたとやりあうのは不可能ですよ」
そんな話をしながらも淡々と戦っていたが・・・部隊全体を見るにコレ以上の戦線維持は無理だろう。数が多すぎる。
・・・と思っていたら伝令の兵士がやってきた。
兵士1
「張遼さま!本隊、左翼、ともにもう限界です!」
張遼
「ちぃ!アホ何進め・・・こないな無茶な作戦でこの数相手に勝てると思うたんかいな!」
徐栄
「正直張遼さん風に言うなら「そらそうやろ」としかいえない状況ですね・・・どうします?」
張遼
「どうもこうもない!撤退するで!」
徐栄
「妥当ですね。了解です。」
兵士2
「本隊より伝令!ココが正念場だ!踏ん張れ、奮戦せよ!だそうです!」
正念場・・・正念場ねぇ。それは勝ち筋がある時に使う言葉だと思うんだ。
張遼
「あンのバカ・・・!もう正念場なんぞとっくに終わっとるっちゅうねん!もうええ、お前らウチの指示に従い!徐栄!撤退や!」
徐栄
「了解です。お前らーっ!撤退準備ー!」
張遼隊
「「「応!!」」
そう号令を出しこちらも撤退の準備をはじめる。流石に死ぬために戦場にいるバカもなしだ。
兵士1
「し・・・しかし、撤退してよろしいので?」
伝令の兵士は少し戸惑っている。撤退が最善とわかりつつも伝令を出した身としてはためらいがあるのだろう。
張遼
「かまへん!ウチら右翼は撤退する!何進にそう連絡し!」
徐栄
「心配しなくても責任は全部こっちでとってやるさ。お前らも勝てない勝負はしたくないだろ?」
兵士1
「は・・・はっ!総員、撤退、撤退ーーーっ!」
こちらの言葉で安心したのか彼らも撤退の伝令をだしつつ下がる準備を始めた。コレで大丈夫だろう。
徐栄
「しかしこの人数・・・黄巾党も随分と規模が大きくなったものです」
戦場で数を聞いた時も思ったが・・・これは既に暴徒と片付けていい規模ではない。
張遼
「全くや・・・ここまで膨れ上がったらその辺と軍隊と変わらんで・・・?」
彼女と私も撤退の準備をはじようとしたとき突然銅鑼の音が鳴り響いた。
張遼
「な・・・っ!何や!敵の増援か!」
流石にこの状況で敵の増援はまずい。とおもいつつ遠目で旗をみる。そこにあるのは「曹」と「夏侯」の文字
徐栄
「いえ・・・どうやらアレは味方ですね。陳留の曹操軍でしょう。」
曹操軍といえば最近勢いも凄まじくこの黄巾の乱をきっかけに大きく伸び始めようとしている軍の一つだ。兵も精強だと聞き及んでいる。
あれ・・・確か「天の御遣い」が降りたっていうのも陳留だったか?しかし・・・
張遼
「今頃か・・・まあええ、ウチらはとっとと撤退するで!」
そう、すで大勢は決している。今更やることに変わりはない。
見れるものなら見ておきたいんだけどな・・・
するとまたもや伝令が来た。命令系統が適当すぎる・・・一人に全部に言わせろという話だ。特に二人目いらなかったろ。
兵士3
「将軍!本隊より伝令!わが右翼に、左翼華雄将軍と協力して殿をしろとのことです!」
援軍が来たおかげか悠々と撤退する気満々の何進将軍。
しかし左翼はどうなってるんだ?全く情報が入ってきてないように感じたんだが・・・
張遼
「華雄は!」
それは張遼さんもわかっているのだろう。本隊よりの伝令兵に聞いている。
兵士3
「進撃を止めてるとは思えませんが・・・」
え?殿でしょ?止めてないの?それって・・・
徐栄
「放置されてません?」
張遼
「やろなぁ・・・」
はぁーっと長いため息をどちらともなくつき、私たちは華雄さんの援護に向かった・・・
しばらくすると撤退している軍が見えた。
旗印は「華」。どうやら無事に引き上げれたようだ。
張遼
「おーい、華雄生きとったかー?」
徐栄
「どうやらご無事のようで、何よりです。」
私たちは華雄さんの軍と合流をする。
華雄
「ああ。お前たちか、私はこのとおり、なんともないぞ。」
といってブンブンと腕を回す。ぱっと見異常もなさそうだ。
徐栄
「しかしよく撤退できましたねぇ。そっちも相当きつかったでしょうに」
華雄
「確かに危なかったが・・・途中で曹操軍が来てくれてな。なんとか撤退できるまでに持ち直すことができた。」
徐栄
「へぇ・・・どうでした曹操軍?」
華雄
「強いぞ・・・黄巾党が全く相手になってなかったからな・・・アレは相当な訓練を積んでいる」
張遼
「華雄にここまで言わせるっちゅーことは相当強かったんやろうなぁ・・・」
華雄さん結構他人の実力認めない所あるからな・・・それなのに素直に認めた辺り相当な練度だろう。
徐栄
「敵に回らないことを祈るばかりですよ。それにしてもこれからどうしましょうねぇ・・・」
張遼
「・・・敵に回ったら怖いといえば徐栄のほうがウチにはよっぽど怖いわ」
徐栄
「はい?」
華雄
「どうしたんだ?霞」
張遼さんが闘いながら神妙な声で聞いてくる。
張遼
「なぁ徐栄、あいつらのことどう思う?」
徐栄
「どうって・・・賊は賊でしょう?それ以外の何なのです?」
張遼
「いやな・・・徐栄って淡々と殺しとるやん?それこそまるで木を切るように。
ーーーー普通は人間殺すときは殺気がでるもんやで?」
徐栄
「・・・」
華雄
「どういうことだ?霞」
張遼
「いやな・・・ウチが部隊で突っ込んでく時って大抵徐栄は近くに居るんやけどな・・・殺気が全くないのにどんどん敵の数だけへってくんや。
・・・例えばウチが敵将との戦いに集中しとると徐栄はその間淡々と数を減らしておいてくれるんや。」
華雄
「よいではないか。一対一の邪魔をさせないようにだろう?」
張遼
「そういうんやない。それならそれで殺気があってしかるべきや。華雄も武人なら相手の殺気はわかるやろ?それがこいつからは全く感じんのや
・・・だから、徐栄。お前はあいつらをどう思っとんのか気になってな」
なるほど、そういうことか・・・ちゃんと人を人と見て殺せる張遼さんには私の考えは理解できないかもしれない。
徐栄
「そうですね・・・そういう意味合いで言うならば私にとって賊はまさに「そのへんにたってる木」みたいなものですね。」
張遼
「なんやて!?」
徐栄
「私にとっての戦なんていうものは「大規模な像棋」ですからね。起き方も法則も規律もどこかでかならず存在しているものですよ。
そして私の役割は「多くの歩兵を盤上から取り除く」こと、駒が駒を倒すことになんの感情もわきませんよ。」
華雄
「なんと・・・じゃあ貴様とってはは武人としての矜持もすべて意味のないものだとでもいうのか?」
徐栄
「いや、武人としての矜持は私にとって規律の一つみたいなものです。流石に一騎打ちなんかの邪魔はしませんよ。」
華雄
「そうか。確認するがお前は別に私達の武を汚すようなことはしないのだな?」
徐栄
「ええ、もちろん。そんなことはしませんよ。同じ武人としてね。」
華雄
「ならばいい」
・・・まぁ少なくともあなたの戦いに関しては全く干渉する気はないです。勝とうが負けようが。とは言わないでおこう。
ココで話は終わるかと思ったが張遼さんが続いて話しかけてくる。
張遼
「なぁ徐栄・・・お前はそれでええんか?」
徐栄
「・・・何がですか?」
張遼
「あいつらかて好きで戦っとるんやないやろう・・・いっちゃなんやけど国の政治が腐っとるからあいつらもでてきたんや。・・・それでもなんとも思わんのか?」
民を、殺した相手を少しは思ってやらないのか?という張遼さん。だが・・・
徐栄
「思いませんよ。それで本当に守りたい物が守れなかったら意味がありませんから。アレらはただの障害です。潰しておかないと他に被害が行く。賊・・・というか敵である全てにたいし私はそう思ってます。」
そうか・・・とそれきり黙る張遼さん。華雄さんもどこか気まずそうにしているがこれは私の中で定まっている矜持。今更変わることもないだろう。
先ほどの会話の沈黙とこれから先の事を考えながらの帰り道。その空気はかなり重かった・・・
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VS黄巾党・・・?