俺達が学院長と話し合って数日立った後の放課後に、ルイズと才人が走ってきた。
「おい!ヴェル、ちょっと待ってくれ!」
「どした、そんな切羽詰った顔して……面倒なことじゃないよな?」
うぐっ……と才人が喉をつまらせた。
面倒事ですか、そうですか。
明日は虚無の曜日(お休み)だったから休みたかったんだけどな……
「助けて欲しい人がいるのよ」
ルイズが、気まずそうに言った。
「いやいや、何で俺のところにに来るんだよ?
水のメイジでも呼んでくれよ。」
「サイトから聞いたんだけど……」
その言葉を聞いたときに、才人を睨むと目を逸らした。
「……どんな事を聞いた?」
「あんた、げーむってところから来たのよね?」
「ちょっと違うけど、そんな感じだな」
「どんな万病でも治せるって……」
「…………そうか」
そりゃあ、ゲームに出てくる状態異常なら治せる。
回復アイテムもあるからな。
……でもさ、才人……万病って……
「なぁ、才人?」
「な、なんだよ……」
「お前、あのゲームやったことあるのか?」
「いや……ない。友達から話を聞いたことあるんだ」
「それでどうして俺が治せると?」
「で、治せるの!?」
ルイズが話に割り込んできた。
「わかんないな、こっちとあっちの病気が同じかどうか分からない。
持ち合わせていない材料もあるから……あれば治せるかもな」
「明日……」
「ん?」
ずっと本を読んで、終わるのを待っていた……と思ったタバサが顔を上げた。
「明日、街に材料を買いに行けばいい」
……あれ?ずっと会話に参加しないと思ってたんだけどな。
何で行く気になってるんだよ……
「タバサがそう言うんだったら構わないけど……お前達もそれでいいか?」
「あぁ、俺達もちょうど行く予定だったからな」
「そうなのか?」
「武器を買いに行くんだ」
「ふーん……扱えんのか?」
「前みたいになってくれれば……できると思う」
「そうか……んじゃタバサ、そろそろ戻ろう?
明日の昼前ぐらいでいいだろ?」
「えぇ、構わないわ」
「分かった」
才人とルイズがそれぞれ頷き、俺達は分かれていった。
晩飯を食って、タバサの部屋に戻るとタバサが口を開いた。
「万病も治せる……?」
「あぁ、こっちの世界ではできる」
「どのぐらい?」
「どのぐらいって言われてもな……前も言っただろ?
回復する人が死んでなければ全部治せた」
「……本当?」
「本当本当。重症でも瀕死でも治せた」
……何て言っても数が少ないんだよなぁ……
片手で足りるぐらいの数しか持ち合わせてない。
「そう……」
「どうした?治して欲しい人でもいるのか?」
「私の……母親」
「……前もそんな事言ってたな……
分かった。できる限りはやってる」
「……ありがとう」
「そういうのはちゃんと治ってからな……
んじゃ、お休み」
俺は壁に寄りかかり、ゆっくりと眠っていった。
―――――
「――――で、何でアンタがいるのよ!キュルケ!」
「あら?ルイズ……別にいいじゃない」
「よくない!!」
いつのまにかキュルケが加わってた。
というか、いつの間に名前で呼び合うくらい仲良くなったんだ?
「ヴェル……何で行くんだ?」
「ん?言ってなかったか?ドラゴンだよ」
「あの白いドラゴン?」
あぁ……皆は一回見たんだっけ。
「いや?今回は違う奴だ……離れててくれ」
皆を少し離れさせた後に剣を構え、魔力をこめる。
地面に大きな魔方陣が現れる。
「決闘のときはもう少し早かったよな?」
才人の声が聞こえてくる。
そりゃそうだ……決闘では巻物で省略したからな。
この事も後で教えないと……
俺が魔方陣を描き、詠唱をして数十秒。
やっと詠唱が完成する。
「―――――ワイバーン!」
魔方陣から風が吹き荒れ、風が形を作り竜の形になる。
少しずつ色がついて、そこには緑色の竜が飛んでいた
「よっし……皆、行こうか」
俺は振り返り、皆をワイバーンに乗せ、街の方向へとワイバーンを飛ばした。
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10話『町へ』