No.452124

真恋姫†夢想 弓史に一生 第三章 第二話 精霊??

kikkomanさん

どうも、作者のkikkomanです。


前話なのですが…。

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2012-07-13 17:12:13 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3097   閲覧ユーザー数:2765

~聖side~

 

 

 町長さんの家で御飯を頂いた後、俺は町長さんと娘さんの二人と話していた。因みに残りの人は後片付けをしている。

 

 

「もう夜も遅い。今日は家に泊まっていってくだされ。急ぎの用が無ければじゃが…。」

 

「急ぎの用は無いですよ…。でも、良いんですか?」

 

「今日は楽しい時間を過ごせました。これもあなた達のお陰…。これぐらいしないとバチが当たりますじゃ。…それに…家族を家に泊めるのに許可なんて必要なのですかな??」

 

「…いらぬ心配と言うことですか…。では、お言葉に甘えさせて頂きます。」

 

「では、準備はしておきますので…。」

 

「ありがとう…。ちょっと出てきますね…。」

 

「はい…。ただ、あまり長いこと出かけてるとお供の方々が心配しますよ。」

 

「大丈夫です…。少しだけ風に当たってくるだけですから…。」

 

「…では、いってらっしゃいませ…。」

 

 

 俺は町長さんの家を出て、城壁の所に行く。

 

 城壁には警備兵の人たちがいたが、町長さんとの一件を知っている人だったので、特別に許可を頂いて、俺は城壁上からこの町を眺めていた。

 

 決して大きな町ではない。と言ってそこまで小さな町でもない。大きさで言えば広陵の町と同等かちょっと大きいくらい。

 

 そんな大きさも影響してか、家同士は隣り合い、町の人たちは付き合いが深い。

 

 家族同士で付き合いがあり、まるで町の人全員が全員家族みたいになっている。だからなのか、この町の人たちは人付き合いが良い。そして、人を信じれる…。

 

 正直かっこいいと思う。というか人として尊敬できる。

 

 人が出来てると言うか、器が大きいと言うか…。俺にはちょっと出来そうに無い。

 

 こういうところは、漢の名家であっても学ぶべきところだよな…。

 

 今の時代の名家や高官たちは、自分のことしか考えていなく、自分の利益にならない付き合いはしようとしない。

 

 故に民たちの気持ちを知らない、考えられないのだ。それが政事に反映されるのだから、根本から破壊されていく…。結果、今のような腐敗した政治になり、町は荒れ、民たちは貧窮し、発起する…。

 

 ところがどうだ。この町は自治が確りしている。

 

 町の人同士が仲が良いのだから、隣人が困ってたら助け合い、余裕があれば手伝い、そしてより深く繋がる…。

 

 この町で問題が起こることは少ない。あるとすれば、他国から来た人がなじめずに起こる問題だが、それも人付き合いの上手さにより、時間次第で解決する。まさに『和を以って貴しと為す』俺の理想とする町がここにあった。

 

 …だからなのだろうか。俺はこの町に凄い親近感が湧く。

 

 家族と言ってくれたこと…初めこそ驚きはしたが、今は…なんとも心地よい…。この町の雰囲気もあるのだろうが、凄く安心感がある…。

 

 

「俺もこの町の一員…家族になって良いのかな…。」

 

 

~芽衣side~

 

 私たちは、町長さんの家で、夕飯の後片付けを終えた。

 

「あれっ? 町長さん。聖様はどちらに行かれたんですか~?」

 

「そういやお頭がいないな…。」

 

「あぁ、彼ならちょっと風に当たってくるといって外に出て行ったよ…。しかし、ちょっと長いやもしれませんな。」

 

「では、私たちで探してきますです!!」

 

「そうですか。では私どもは家で寝床の準備でもして待ってますわね。」

 

「そうしてください~。」

 

 そう告げた後、私たちは夜の町に出て行った。

 

 町は静かで少し不気味…。しかし、月と夜空一杯の星たちが、優しく町を見下ろし、暖かな光を届けてくれて暗さはあまり無い…。

 

 とりあえず町を一回りしてみよう、ということで歩き始めた。

 

 

「まったく、聖様も一言言ってから出かけてくれれば良いのに…。」

 

「そうだぜ、まったく。こっちの心配も少しは考えろっての…。」

 

「ふふっ。先生も愛されてますね…。」

 

「そうですね~。でも橙里、逆もまた然りなんですよ~。」

 

「どういうことですか?」

 

「もし、私たちの誰かが、こうして姿が見えなくなったら。お頭は、必死になって探してくれる。そういうことだろ?」

 

「愛されてるから逆もまた愛される、ってことですね…。」

 

「ふふふっ。そういうことです~。追っては追われて、この付かず離れずの関係が大事なのです~。」

 

「とりあえず今は、あたいたちは追わなきゃいけないってことだろ?」

 

「そうですね。早く見つけるのです。」

 

「それにしても…どこに行ったのでしょうね~??」

 

「この町に来てそんなに経ってないから、案外道に迷ってたりするかもな。」

 

「でも先生には衛星視点がありますです。よほどのことが無い限り迷子は無いのです…。」

 

「確かに…。じゃあどこに行ったってんだ??」

 

「皆目見当が付かないですね~。」

 

「あっ!!」

 

「「どうした(どうかしましたか~)??」」

 

「あんまり関係ないかもしれないのですが…先生は、寿春に居た時に一度、城壁に登って町を眺めていました。もしかしたら今回も…。」

 

「町を見渡せながら且つ風に当たれる場所…あながち間違いでもなさそうですね~。」

 

「よしっ!! 行ってみようぜ!!」

 

 

 私たちは城壁を目指して進む。暗がりの中に城壁の影が見えてきた頃…。

 

 

「んっ?? なんか聞こえないか??」

 

 奏が、急に何か聞こえると言い出した。

 

「えっ!? 何か聞こえますか~??」

 

「ん~…。何も聞こえないのです。」

 

「いやっ、確かに聞こえる…。 これは…歌…??」

 

「「歌??」」

 

「あぁ。めちゃめちゃ綺麗な歌声だ…。ほらっ、二人とも耳を済ませてみ。」

 

 私と橙里は耳を済ませる。

 

 

「……~♪~……。」

 

「っ!!? 聞こえました~!!!」

 

「この声は…先生です!!」

 

「どこから聞こえるんでしょう~??」

 

「ん~…。これは…城壁の上からだな…。行ってみよう!!」

 

「「はい!!」」

 

 

 私たちは急いで城壁に行きました。

 

 城壁下では、さっきよりもはっきりと歌が聞こえます。城壁の傍には兵士が二人いましたが、二人ともその歌に聞き入ってるようでした。

 

 

「あの、すいません~。」

 

「はっ!!どうしましたか??」

 

「あの~、ここに男の人は来ませんでしたか~??」

 

「それは、御使い様ですか??」

 

「あぁ。お頭の事だ。」

 

「いらっしゃいましたし、まだ上にいらっしゃると思いますよ。」

 

「分かりましたです。私たちも上に行っても良いですか??」

 

「どうぞ。御使い様のお供の人たちと存じております。」

 

「ありがとうございます~。」

 

 

 私たちは城壁の階段を登り、城壁の上に出る。

 

 そこには、目的の人物が、欄干にもたれかかりながら歌を歌っていた。

 

「闇夜に浮かぶ望月と 光る数多の雫

 眼下に見える街並に 映る自身の心

 家族と言う二文字の音 信じられずただ驚くばかり

 暖かな皆の気遣いに 心に刻む思い

 乱世を鎮め 平和を願う 民の声が聞こえる

 心に決めた 決意と共に 地に足付け進む。」

 

 ……それはまるで精霊…。

 

 儚げで、それでいて力強い歌声、心に響くその言霊。

 

 眼前に広がるのは、まさに幻想としか表現できない光景…。

 

 私たちは、しばらく瞬きも忘れてその光景を見つめていた。

 

「んっ?? なんだ、皆か。そんなとこにいないで、こっちに来たらどうだ??」

 

「…はっ!!! しっ失礼します。」

 

「どうしたんだ、皆??」

 

「どうしたもこうしたも無いぜ!! お頭の姿が急に見えなくなったんだ、心配するのは当たり前だろ。」

 

「そうです!! もう少し、こっちの気持ちも考えて欲しいのです。」

 

「あれっ…。もうそんなに時間が過ぎてたか…。ゴメンな、心配かけちゃって。」

 

「…これからは、ちゃんと一言言ってくださいね~。」

 

「…分かった…。」

 

「それにしても…お頭がこんなに歌が上手いとは思わなかったな。」

 

「そうですね~。聞き惚れました~。」

 

「私は聞いたことがありましたが…今日の歌は聞いたことが無かったのです。」

 

「あぁ、さっき歌ってたのは、俺が勝手に作ったやつだからな…。……変な歌だろ??」

 

「そんなこと無いです~…。素敵な歌でした~。」

 

「あぁ。なんか、胸を打つようなそんな感じの歌だったな。」

 

「前の歌も良かったですが、今日のも良かったのです。」

 

「そんなに言われると恥ずかしいな…。さぁ、じゃあ戻ろうか。明日も早くから移動しなきゃいけないし、確り休もう。」

 

 聖様は、そういうと帰路に立ちました。

 

 私たちはその後ろに付いて行きながら、先ほどの歌の歌詞について話してました。

 

「さっきの歌、どう思います~??」

 

「…お頭の心の声って所か…。」

 

「そうですね。思いの強さを感じたのです。」

 

「ふふふっ。私は安心しました~。聖様は聖様ですね~。」

 

「ん?? どういう意味だ、芽衣??」

 

「分からなくて良いですよ~奏。」

 

 聖様は聖様。あの方の決意にブレは存在しない。そこに私は惹かれたのだから…。

 

 聖様、何があっても付いていきますよ。改めてそう、心に誓う…。

 

 

~聖side~

 

 

 町長さんの家に着いた俺たちは、明日も早いと告げて先に眠りに付いた。

 

 明日は朝にこの町を出て、山道を抜け、北を目指す。次の目的地は首都洛陽。

 

 本当は、荊州刺史劉表さんのところに訪問に行きたかったが、病によって床に臥している、ということを蓮音様から聞いていたので、行くことを自重することにした。

 

「さて、そろそろ寝るか…。」

 

 そう思って寝返りをうった所で、枕元に人影があることに気付く。

 

 上目遣いで見てみると、よく見知った人物。橙里の姿がそこにあった。

 

「……橙里?? どうしたの。」

 

「なかなか…寝付けなくて…困ってるのです…。( ///)モジモジ」

 

 グホッグハッ…。とっ吐血が!! 吐血が止まらない!! 誰か、血を!! 血を分けてくれ~!!!!

 

「大丈夫、みんな傍に居るから安心して(ニコッ)。」

 

「先生…。一緒に寝てくれませんか…。」

 

 ひでぶっ!!! …こっこれが北斗神拳か…。流石の破壊力だぜ…。だが、俺はこんなところで死ぬわけにはいかんのだよ!!

 

「そっ…そこまで橙里は子供じゃないだろ??」

 

「子供じゃないですが…。」

 

「そうだろ。なr『先生…。』んっ??」

 

「…先生は私と一緒に寝るのはお嫌ですか…?」

 

「嫌とかそういうのじゃなくてだな…。」

 

「…駄目ですか?(ウルウル)」

 

 

 チ~ン…。父さん、母さん…。先立つ俺を許してください…。

 

 俺はこの世界で死にます。死因は萌え死です…。でも、未練はない…かな。

 

 

「先生!! 先生!! 大丈夫ですか!!先生!!」

 

「お花畑が見えるよ…。」

 

「戻ってきてください!!」

 

 ガクンガクン!!

 

「ぐおぉぉぉ…。首!! 首が~!!!!!」

 

「良かった…。戻ってきたのです…。」

 

「殺す気か!!」

 

「ついさっきまで、先生が死にそうだったのです!!」

 

「まぁ…そうだが…。」

 

「でも、何で急に…。」

 

「それは、橙里に萌えて…と言うか、橙里のせいじゃないか!!」

 

「えぇ!! 言いがかりです。後、『萌え』ってなんですか!?」

 

「萌えってのは……。」

 

「何なんですか!! はっきり言ってくださいです!!」

 

「……萌えって言うのは、女の子が可愛く思えたときに使うものなんだよ…。( ///)」

 

「えっ…。」

 

「だから、さっきの橙里の行動が可愛かったから…その…。」

 

「かぁ~~~。( ///)ボッ」

 

 顔を真っ赤にさせて、橙里はモジモジしている。

 

 そんなところも可愛い、何て言ったら倒れるんじゃないだろうか…。

 

 しばらく顔を真っ赤にしていた橙里だったが、急に何かを決心したかと思うと俺の布団に入ってきた。

 

「ちょっ!!」

 

「先生は駄目とは言ってないですよね??」

 

「ぐっ……仕方ない…今日だけだぞ。」

 

「えへへっ。ありがとうなのです。」

 

「はぁ~…。ちゃんと明日、芽衣たちに説明してくれよ…。」

 

「はぁ~い、なのです♪」

 

「どこまで分かってるのやら…。」

 

「…先生。」

 

「んっ??」

 

「手を出してください。」

 

「こうか??」

 

 俺は片手を橙里の顔付近に出した。

 

「両手共です。」

 

 そう言われて両手とも出す。

 

「へへっ、よいしょっと!!」

 

 橙里は、俺の左手を枕代わりに寝転んだ。なるほど、腕枕をして欲しかったってわけね…。

 

「もう片手はどうすれば良いのかな…?」

 

「もう片手は……こうするのです。」

 

 橙里は俺の右手を両手で包み込むように握ると、首の辺りに持って行って…。

 

「今日はこのまま眠るのです…。」

 

 と一言漏らした。

 

「これじゃあ寝辛くないか??」

 

「いいえ、これだと先生の温かさが感じられて安心できますです。」

 

「ふぅ~ん。まぁ、橙里がそれで寝れるんなら、それでも良いか…。」

 

「♪」

 

「よしっ、じゃあ今日はもう寝よう!! 明日も早いしね…。」

 

「…分かったのです。先生、お休みなさいなのです。」

 

「お休み橙里。」

 

 俺は、橙里が寝付くまで、彼女の髪をゆっくりと撫でてあげた。

 

 しばらくして橙里から寝息が聞こえてきた。ただでさえ可愛らしい橙里の顔なのだから、寝顔は格別。

 

「本当に、こんな可愛い子が俺の元にいてくれるなんて…。」

 

 俺はそっと、橙里のおでこにキスをすると、寝るために目を閉じるのだった。

 

 

「…ここまでしても、先生は、私のおでこに口付けをするだけ…。手にかけてはくれないんですね…。」

 

 

 彼女のか細い声は俺には届いていなく、少し複雑で、寂しそうな女の子の顔が、俺の腕の中にあるだけだった。

 


 
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