「よし、サイズはピッタリみたいだ……」
三千院家のとある一室。その部屋で一人の青年が朝早くに鏡の前で服に着替えていた。
「なんだかこうして自分を見ると新鮮な感じですね……さてとそろそろ時間だし、リビングに向かうとしますかな」
そう言って部屋から出て行った青年は御剣桂馬。新しく三千院ナギの執事になった人である。
―――三千院家リビング―――
「あら桂馬君、おはようございます」
「あ、マリアさん。おはございます」
桂馬が部屋から出てリビングにつくと、マリアがいた。どうやら何か掃除をしているようだ。
「マリアさん起きるの早いですね~」
「そういう桂馬君こそ、早起きですわ」
今の時間は5時45分。普通なら結構な早起きである。
「それはまぁ、慣れてしまいましたから……」
「慣れって恐ろしいものですね」
頭をかきながら苦笑いでしゃべる桂馬に対してマリアも少し苦笑いで答える。
「それにしても桂馬君。執事服似合ってますよ」
「え、本当ですか?」
「えぇ。とっても」
「あ、ありがとうございます!」
(服着て似合ってるって言われたの久しぶりだな。今まではお前が
着るとなんか普通って言われたからな~)
桂馬は心の中で呟きながら素直に喜んだ。
「桂馬さん」
「あ、ハヤテ君」
マリアと話し終えるとハヤテがリビングにやってきた。
「まさかこんなに早く起きてるとは思っていなかったですよ」
「なんだか目が覚めてしまってね」
「でもそれならこっちもやりやすいです」
「そうですね、執事の仕事は朝早くしなければなりませんから。
……では私はこれで。桂馬君、頑張ってくださいね」
「はい、期待しといてください」
桂馬がそういうとマリアはニッコリと微笑み、そのまま行ってしまった。
「というわけで早速執事の仕事を桂馬さんにはやってもらいます」
「はい、わかりました。ところで執事の仕事ってどんなことをするんですか?」
そういうとハヤテは手に持っていた紙をテーブルの机いっぱいに広げた。
「……あの、これは一体……」
桂馬が驚きながらテーブルの上にある地図を人差し指で指している。それはそうだいきなりこんなでかい地図を出されたら普通の人間は驚くだろう。
「これは、三千院家のお屋敷の見取り図です」
「こ、これが……でかすぎませんか?」
「そうですけど……でももう慣れました」
ハヤテがきっぱりと答える。
「……そうですか」
それ以上、桂馬は口にすることはできなかった。
「……で、どこを掃除すればいいんですか?」
「えっと……全部です」
「……」
突然わけのわからないことを言い始めたハヤテに何も言い返せなくなってしまった。
「僕も最初は驚きました」
「それは誰もが最初は驚くと思いますよ……でとりあえず廊下からやればいいですか?」
桂馬が目の前にある廊下を見ながらハヤテに質問する。
「そうですね、ではそっちをお願いしますね。僕はとりあえずこっち側をやるので」
「わかりました。では」
そういうと桂馬は掃除用具一式を持って行った。
「……行きましたね。では僕も始めなければ。桂馬さんよりも早く終わらせないといけませんね。先輩としての立場が」
そこでハヤテは突然しゃべるのを止めた。
「先輩か……。そうだ、僕、先輩なんだ……なんだかいい響きだな」
胸に手を当ててハヤテはなんだか嬉しそうな気持ちでいっぱいであった。
「おい、なに気持ち悪い表情してやがるんだ?」
「だって、先輩って響きが……ってタマーーー!?」
思考を中断して聞こえてきた方を見るとそこには、三千院家で飼われている猫のタマがいた。
「いや、猫じゃなくてトラだから。原作で散々言ったのに……ってそんなことは長江にでも捨てといて……」
何故長江なのか理由がわからないがそこはあえてスルーしておこう。
「……いつからそこにいた?///」
「お前が、そっか、僕先輩なんだ、ってところから。それにしてもさっきの顔……ぷぷっ」
「忘れろーーー!!」
「ぶぎゃ!?」
タマが笑った瞬間、ハヤテは顔を赤くしながらお約束回し蹴りを披露した。
「どうだ、忘れたか?」
「いてて……まったく容赦ねぇな。ま、忘れてやるよー(へへへ、後でネットでスレ作ってみんなにばらしてやるぜ!!)」
なんと悪どい猫である。
「ちなみに今のが上辺だけの謝りだったら……そのときは」
「そ、そのときは?」
恐る恐るタマが聞く。
「お前をスターリンのごとく粛清せざるをえないので、注意してくださいね♪」
「イ、イエッサー……」
笑顔でその言葉を口にするハヤテに、YESとしか頷けなかったタマ。優しいやつほど怒らせると怖いというがこれがその例だろう。
「そうえば、なんでお前がここに?」
「いや、なんだか新しい執事が入ったって聞いてよ、見にきたけどいなかったから……」
「そうえばタマはまだあってなかったっけ」
「ま、いいか。こうなったら直接会いに行ってくるか」
「いいけど……喋るなよ。桂馬さん驚くだろうし……」
「わかってるよー。んじゃ、いつも通り、お嬢のために頑張ってくれや」
そう言うとタマは桂馬が掃除している方向に向かって走っていった。
「……なんか信用できないなー。……やっぱり気になる、早く終わらせてできるだけ桂馬さんの所に急ごう」
いつもの三倍のペースでモップを動かし始めたハヤテであった。
―――執事長の部屋―――
「……マリア、今なんと言った?」
「ですからナギが新しい執事を雇うと……」
ここは三千院家の執事長の部屋。そこで二人の男女が話しあっていた。一人はマリア。三千院家のメイドというかさっき桂馬と話していた人。
そしてもう一人の男はクラウス。三千院家の執事長を務めているものだ。しかし原作でもアニメでもなかなか出番が与えられないキャラである。
「なかなかは余計だぞ!!」
「誰に言ってるんです?」
天井に叫ぶクラウスを見て首をかしげるマリア。
「で、さきほどの話に戻るとしよう。……雇う?新しい執事を?」
「えぇ。そうですよ」
「お嬢様には悪いが、それは無理だな」
「まあ、答えはわかっていましたが……」
どうやらクラウスの言うことを予測済みだったのか別段驚きもしないでマリアは呟いた。
「でも、見ず知らずのナギを助けたんですよ?」
「うぐっ。確かにそれには感謝している……だがそれとこれとは話は別だ!」
手を大きく開いて宣言するクラウス。
「ちなみに、どんな男なのだ、その御剣桂馬という男は?」
「ええっと、そうですねぇ~」
人差し指をほっぺたに当てながら何と言おうか、と考えているマリアの姿はなんともかわいらしい。
「……時速134kmで暴走する車に走って追いついて、車と一緒にそのまま電柱柱にぶつかっても怪我の一つもしなかったりするとっても頑丈な男の子ですわ♪」
「……」
目の前でマリアが言っていることに関して驚きのあまり声が出なくなったクラウス。
しかし思考が戻ったのか、すぐさま口を縦に開いた。
「マリアよ……それはどこのサイ○人だ?」
「いえ、一応人間ですけど……」
クラウスの質問に対して困ったように苦笑いに答えるマリア。
「というかまず134kmも出している車に走って追いつくとか、まず世界記録狙えるではないか。ボル○も余裕で抜かせるぞ」
「クラウスさん、そのネタ、読者の皆様ももう飽きているのであんまり使わないほうがよろしいかと……」
「そ、そんなこんしんのネタだったのに……」
頭を下にがっくりと下げて落ち込んだクラウスであった。
「ちなみに今度世界陸上がやるのでそのときは是非見てくださいね♪」
「勝手に宣伝していいものなのかそれは?」
まあ、大丈夫でしょ。(ちなみにこれ書いてる時期、世界陸上でしたby作者)
「とにかくうちにはただでさえ頑丈な執事がいるのだ!これ以上新しい執事はいらない!第一執事は二人もいらないのだ!」
「でも咲夜さんは執事が二人いますよね?」
「そ、それはまあ、人それぞれということではないかな?」
「じゃあ、うちも大丈夫ですね♪」
「……なあ、マリアよ、もしかして私をいじめてないか?」
「いじめてなんてしてないですよ」
「そうか、それならいいんだが……とにかく、私は例えお嬢様が言おうと今度は頷かないぞ」
「そうですか……」
そう言って困った顔になるマリア。しかし何かを思いついたようなしぐさを見せると、クラウスに向かって話し出した。
「じゃあ、テストをさせましょう」
「テスト?」
「はい。それでそのテストを受けて合格したら執事として認めてもらうというのはどうでしょうか?これならクラウスさんも桂馬君のことを知れると思うしいいと思うんです」
「……もし私が認めず不合格だったら?」
「私が責任を持ってここから追い出します」
クラウスに言うマリアの顔は真剣そのものだった。今のマリアには冗談も通じないだろう。そういうオーラが漂っていた。
「(そこまで真剣になるかマリアよ。そこまで真剣にさせる御剣桂馬という男、興味がでたぞ)……わかった、マリアよ。しかしテストの内容はこちらに任せていただこう」
「それでいいです」
(どんなテストにしようか……)
(クラウスさんが考えるテストは碌なことではありませんが……。信じていますからね桂馬君……)
何だかいきなりかなりバトル雰囲気になっているが、そんなとき我らが主人公の桂馬はというと
「そうえば、小説の方どうしよう。そうえばここに住むことになるんだったら荷物鳥に行かないと……期限はあさってだし……」
金ぴかガンダ○像を雑巾で拭きながら別のことに思考を費やしていた。
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第四話ですぅ~。
最近暑いですね~。みなさん、水分補給はこまめにとってくださいね。
……テストが近づいてきたよ~。でもなのはは見に行くんだ。
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