No.451957

楽しく逝こうゼ?

piguzam]さん

第9話~また会う日まで

2012-07-13 02:38:21 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:16135   閲覧ユーザー数:13909

あの食堂での一件の後。

俺は自宅に帰る許可が下りたんで転送ポートに向かっていたんだが、わざわざ見送りにクロノが来てくれた。

 

「ゼン、今回の事件解決の協力、本当にすまなかったな…本来なら民間人の君を巻き込むべきじゃなかったんだが…」

 

転送ポートに向かう途中、そういってクロノは頭を下げてくる。

どんだけ律儀なんだかな、コイツは…まぁ、そこがクロノのいい所でもあるんだが……

 

コイツはこの後、エイミィさんと一緒に今回の事件の報告書の作成、プレシアさんを嵌めたクソッタレ共を追い詰める証拠固め、フェイトとアルフの嘱託魔導師試験の手続き等々、とてもhardなスケジュールなのにわざわざ見送りに来てくれた。

 

「きにすんなって。俺はダチのためにやっただけだからよ」

 

俺がそうしたかったからしただけなんだし。

そういって頭を上げてもらうと、クロノは少々、寂しげな顔をしている。

え?なんで?

 

 

「フッ…そうか…しかし、そこまで思ってもらえるフェイトは果報者だな…少々、羨ましい…」

 

……え?気づいてないのか?コイツ?

 

「あん?確かに俺はダチのフェイトのためにやったが、クロノだって俺のダチじゃねぇか?」

 

 

なんかキョトンとしてるが、本気で気づいてなかったのかよ?

俺はニヤリとした笑顔で続きを話す。

 

 

「俺はダチのフェイトのためにプレシアさんと戦ったし、今回の事件の協力だって、ダチのクロノのために手伝ったんだぜぇ?…ダチが困ってたら一緒に解決してやるのが普通だろぉが?だから、謝罪はいらねぇよ」

 

 

そうじゃなきゃワザワザ一緒に戦ったりなんてしねえし。

俺の言葉を聞いたクロノはポカンとした顔から一転、目を閉じてニヤリと口元を曲げる。

 

 

「…そう、か……やれやれ…いつの間にか、とんでもなくブッ飛んだ奴を友達に持ってしまったものだ…」

 

 

「カッ!抜かせ…」

 

 

そんな感じで二人で喋りながら転送ポートに向かっていく。

やれ、リンディさんの砂糖癖はどうにかならないか、エイミィさんのからかい癖はどうにかならないか、という愚痴が大半を占めてたけどな。どんだけ苦労してんだよ。……クロノ、頑張れ!!

そうしていつの間にか転送ポートに着いた。

俺達はそこで別れの挨拶をする。

 

 

「プレシア達の件が片付いたら連絡するよ。気つけて帰れよ」

 

 

「わかってるって、それじゃあな」

 

 

足元の転送ポートが光って次に見た景色は海鳴臨海公園の広場だった。

中々、密度の濃い1日を終えた俺は公園から帰路について、我が家に到着した。

はぁ~~疲れたぜ…さっさと風呂入って寝よ寝よ。明日も学校だし……

俺は今日の疲れを癒すべく、帰ってきた我が家の扉を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガチャッ

 

「ただい…すいません。家を間違えました~」

 

 

んだが極自然に生存本能が鳴らすアラートに従って逃げようとし…

 

ガシイィィィィッ!!!

 

「どこへいくの?禅の家はココでしょ?」

 

「只今帰りました。母上様」

 

玄関で待ち構えていたお袋に捕まりますた。威圧感どころか征服感が半端ないです。

我が家の玄関から廊下の空気がなんかダークパープルに染まってるんですが……母上様が発生源ですね。わかります。

今なら『パープル・ヘイズ』に首を捕まれた『イルーゾォ』の気持ちが良く、良ぉぉぉぉぉく、判ります。

正しく、ディーモルト!(非常に!)ディーーーーーモルト!(非っっっ常に!)良くわかります。

 

絶対的な死の恐怖ってこぉいうことなんだなぁ………

 

 

 

「さて……禅?」

 

 

などと現実逃避させてくれる暇も無く………

 

 

 

「母さんのジョイ君がボトルごと見当たらないんだけど…シラナイ?…それと、フライパンもないの……オシエテクレナイカシラ?…ゼン?…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺に下される判決(ジャッジメント)制裁(パニッシュメント)一択という現実に全俺が泣いた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アッーーーーーーー!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

所変わってこちらはアースラ。

 

そのアースラの通路横の自販機には業務の休憩時間に入ったスタッフが4人程いた。

彼等は皆、疲れきった顔でコーヒーを啜っている。

なぜかと言えば、先程起こったジュエルシードによる事件の後処理や通常業務にアースラの運行等の何時もの範囲を超えたオーバーワークによる疲労が積み重なったためである。

その重労働から開放される10分間というひと時の安らぎの時間を彼等はコーヒー片手に満喫していた。

もうすぐこの仕事も終わる。

そう考えれば、彼等の顔に少しばかり笑顔が戻ってくる。

『これが終わったら休暇申請しておいたから皆でどこかに行こうと思うんだけど、どうよ?』

と4人はこの辛い業務が終わった先の慰安旅行の計画を立てていた。

旅先で何をするか等、期待に胸を膨らましながら……

 

 

……だからだろうか、そのひと時の間の気の緩みが彼等の悲劇に繋がったのは………

 

 

「ハハッそれじゃあ……ん?」

 

最初に気づいたのは通路側に立ってコーヒーを飲んでいた男性局員だった。

残りの3人は自販機横のベンチに腰掛けている。

 

「おい?どうした?」

 

ベンチに座っていた局員の一人が通路側にいた同僚の様子がおかしいことに気づいて話しかける。

残りの二人も話を止めて聞きの体勢に入った。

 

「いや…気のせいか?なんか音が聞こえないか?」

 

「はぁ?音ぉ?」

 

同僚の言った言葉に怪訝な顔をしつつも耳を澄ませてみる。

だが、聞こえるのは傍にある自販機のコンプレッサー音だけだ。他には何も聞こえてこない。

他の二人も同じようで首を傾げている。

 

「……なにも聞こえないぞ?空耳じゃないのか?」

 

だが、通路側の同僚は未だに耳に掌を当てている。

 

「…いや、空耳じゃない…段々大きくなってるぞ…自販機から離れてみろよ」

 

そう言ってくる同僚に怪訝な視線を送りつつも3人は自販機から離れてもう一度、耳を澄ます。

すると……

 

 

 

・・・・・・・・・ドドド・・・

 

「…本当だ…なんか聞こえる…」

 

残りの3人も聞こえたようで辺りを見渡すが、ソレらしい音の発生源は近くには無い。

それどころか音は近づいてくる。

 

・・・・ドドドドドド・・・・

 

「な、なんだよ…この音?」

 

「なんか…地響きみたいな音…だよな?」

 

遠くから聞こえるその音は、ナニカが走るような音で普段ならアースラでは聞くことが無い音だ。

緊急時に艦内をむやみやたらと走ってもこんな音は出ない。

だが、そんなことを考えてる間にも音はドンドン近づいてくる。

 

・・・ドドドドドドドドド

 

「おいおい、なんだよこの音は!?」

 

「お、俺がそんなこと知るかよ!?」

 

局員達4人は突然の事態に冷静さを欠いて、狼狽していく。

そして………

 

ズドドドドドドドドドドドドッ!!!

 

遂にその音がハッキリ聞こえるぐらいになると通路の奥からナニカが見えてくる。

そのナニカは真っ直ぐにこの自販機コーナーに向かって爆走しているようで、スピードが緩む気配は無い。

出ている速度はかなりのものだ。その証拠に後ろから白煙が上がっている。

もしこのまま直撃すれば自分達はひとたまりも無いだろう。

 

「お、おい!!なにか判らないがヤバイぞ!?」

 

「に、逃げ…」

 

ソレを見て焦った局員たちは退避しようとするが、間に合わず……

 

 

「ゼーーーーーーーーーーーーンッ!!どこにいるんだよーーーッ!!?出てきておくれよーーーーッ!!!」

 

 

ドグワシャアァァァァァァァアンッ!!!

 

 

「グバアァッ!!?」

 

 

「ぺポォッ!!?」

 

 

「メギョオォッ!!?」

 

 

「親父にも轢かれたことないのにーーーーッ!!?」

 

 

あえなく、衝突、粉砕、玉砕、大喝采。

車なら間違いなく大事故である。

そのまま彼等4人は錐揉みしながらコーヒーと共に宙を舞っていく。

 

浮遊感を感じながらも意識が朦朧とする中で、彼等がハッキリと認識できたのは………

 

 

 

涙を流しながら爆走する、八重歯がチャームポイントの使い魔、アルフに轢かれてブッ飛ばされた。

 

その事実と……

 

 

((((…あぁ、俺達の休み……終わっちゃったよ……))))

 

 

申請した休暇は、病院で過ごすことになるという現実だった。

 

 

 

「ゼーーーーーーーーンッ!!?どこだよぉーーーーッ!!?うわぁーーーーーーんッ!!!」

 

 

アルフの暴走と涙は留まることを知らず、その後2時間に渡って艦内を爆走し続けた。

尚、その爆走に巻き込まれた局員もかなりの数だったそうな。

 

ちなみに、食堂においては……

 

 

「ぐすっ……ひっぐ……」ポロポロポロポロポロ

 

 

『…………』

 

 

食堂の席に座って、涙を流し続けるフェイトがいた。

彼女の相棒であるバルディッシュは主人の居た堪れない姿にどう声を掛けていいかわからず沈黙している。

元々、彼は寡黙なデバイスなため気の利いた言葉などは持ち合わせていなかった。

例えどんな慰めの言葉を知っていても今の彼女には逆効果だとこのデバイスは認識し、沈黙を貫いている。

フェイトの目は瞳と同じように真っ赤に染まり、目尻から枯れることなく涙が流れ続けている。

太ももに置いた手は黒いスカートをぎゅっと握り締め、必死にナニカを耐えているようにしか見えない。

可愛らしい顔は少々俯き、体はプルプルと震えている。

…………その様はまさに捨てられた子犬のようだった。

その悲壮感漂う少女の姿を見た局員達は食事をする気になるはずもなく。

彼女に見つからないよう静かに食堂から退散していき、普段賑わうはずの食堂は閑散としていた。

今は職員達は入り口から少女の様子を窺っている。

 

 

「ぐすっ……ゼン……ゼンッ……」ポロポロポロポロポロ

 

 

まるで飼い主を探して鳴く甘えん坊の子犬のような声でフェイトは呼び続ける。

何も言わずに地球に帰ってしまった自身の想い人の名前を…………

そんなフェイトの可哀想過ぎる姿に艦内の職員の心は問答無用で締め付けられ続ける。

 

 

「…私……嫌われちゃったのかな?……」ポロポロポロポロポロポロポロポロポロポロ

 

 

自分に何も告げずに地球に帰ってしまった原因を、彼女は自分が悪いというとんでもない暴論に至る。

もし自分が本当に嫌われたんじゃないかと考えるとフェイトの涙は1速から5速へ段飛ばしに加速。

湧き出てくる涙を拭いもせずに零し続けるその姿は、見ていた職員の保護欲を無性に掻き立てる。

男女を問わずにだ。

そして、自分達がなんと慰めの言葉をかけても彼女の涙は止められないという現実に、男性職員は怨嗟の血涙を流しながら、心の中で地球に帰ったゼンへ呪詛を吐きつつ、フェイトを見守る。

 

 

「あぁっ…ど、どうしたら……」オロオロ

 

 

「しっかりしてッ!プレシアッ!!あなたが最後の希望なのよッ!?」

 

 

「で、でもリンディ……」

 

 

そんなフェイトの姿を食堂の入り口から見守る職員の中にはオロオロし続けるだけのプレシアと、それを嗜めるリンディの姿もあった。

 

 

 

 

今、このアースラの様子を一言で表すなら…………………

 

 

 

 

 

混沌(カオス)

 

 

 

その一言に尽きる。

 

 

 

尚、この混沌(カオス)はクロノがフェイトとアルフにゼンに会わせる約束を取り付けるまで続いたそうな、まる

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

そして、俺がジェノサイドされた恐怖の金曜日から3日たった夜、クロノから電話が来た。

 

 

「おう、クロノか?何かあったんか?」

 

 

『夜遅くにすまない。実は、アースラは明日早朝にミッドに帰ることとなった。プレシアは戸籍の手続きがあるし、フェイトとアルフは嘱託魔導師試験を受けに管理局まで行かないといけないから、少しの間お別れになってしまうんだ。』

 

 

「そぉか……。だがよ、地球の戸籍のためには仕方ねぇんだろ?」

 

 

『あぁ、こればかりは管理局の法で決まっているからね。それで、明日の早朝に一旦地球に寄るから、その時にフェイト達と話をして欲しい』

 

 

 わざわざそのために連絡してきてくれたのかよ。

 クロノもマメだなぁオイ。

…………だが、『して欲しい』ってのはどゆこと?

 

 

『場所は海鳴臨海公園。なのはたちには既に連絡してある。…頼むから忘れずに来てくれ。…君が何も言わずに地球に帰るから、アルフは君を探してアースラ中をしっちゃかめっちゃかにするし、フェイトは泣き続けて大変だったんだぞ?…ハァ…おまけに、アルフに轢かれた局員の数名は病院送りになるし…ハァ…』

 

 

アイツ等何してんの?クロノ君マジご苦労さん。局員の方々、ホンマにゴメス。

 

 

「…餞別だ…なんか弁当つくっちゃる…」

 

 

『あぁ、ありがとう…米系ので頼めるか?僕も『和食』に嵌ってね…』

 

 

「任せとけ。腕によりをかけるぜ」

 

 

『あぁ、楽しみにしているよ…それじゃ…』

 

 

と、電話もそこそこに俺は明日の朝、キッチンを使う許可をお袋からいただいて、夢の中に入った…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キング・クリムゾン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして早朝、用意した重箱を装備して、俺は海鳴臨海公園に到着した。

作ったのはクロノのリクエスト通りの和食系だ。

俵結びのオニギリや甘く焼いた卵焼き、肉じゃが、から揚げ、芋の煮っ転がし、ほうれん草の御浸しetc…

そして重箱を持ちながら意気揚々と公園に入った瞬間…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

橙色と金色の弾丸に撃たれた。

 

 

「ぱげらぁッ!!!」

 

 

地面に倒れる俺、宙を舞う重箱。

だが、重箱は先に到着していたプレシアさんとリンディさんにナイスキャッチされた。

痛みに悶えながらそのことを確認した俺は自分の上に乗る弾丸を見ると………

 

 

「ゼン……ぐす……ゼン……ヒック……ゼェェン…ぐす…ふぇぇ………」

 

 

「バカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカッ!!このドバカッ!!なんで勝手にいなくなっちゃうんだよぉッ!!グズッ!!うわぁぁぁあっぁんッ!!」

 

 

とんでもない勢いで号泣するアルフとフェイトがいますた。

…罪悪感が半端ないとです……つうか、アルフ……ドバカってなんだよドバカって?馬鹿の最上級かよ?

 

 

「「ゼン君ッ!!!」」

 

 

と、二人に押し倒された俺に心配そうな顔で駆け寄ってくるリンディさんとプレシアさん…あぁ、やっぱり大人の女性は違うなぁ…

 

と、そんなことを考え、未だに俺の上で号泣する二人の頭を撫でながら、駆け寄ってきた二人に大丈夫と言おうとして…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「お弁当は無事よッ!!!」」

 

 

「その返しは予想外」

 

 

弁当よりも優先順位が低い事実に全俺が号泣した。

肩に手を置いて慰めてくるクロノの優しさが痛いです。

 

ちくせう

 

少しして、なのはとユーノも合流してきたので、

俺はクロノに事の顛末を聞いている。

 

管理局の『職務怠慢』と過去の事故の際の不手際とかを摘発したことで、テスタロッサ一家はお咎め無し。

彼女達は時の庭園がなくなったので地球に移り住むことになった。

アリシアも地球に引っ越す前に、霊園に埋葬するそうだ。

さすがに『クレイジーダイヤモンド』でも蘇生は無理だからな・・・・・・

 

なのはとフェイトは俺達から離れたところで話している。

 

 

「エイミィは書類作成で徹夜したから、来れなかったけど、ゼンによろしくと伝言は預かってきた」

 

 

「そうか…大変だな」

 

 

「まぁ……これも仕事さ。取引材料が山ほどあるから、テスタロッサ家の罪は全く無いし、僕としてはやりがいのあるヤマだよ」

 

 

「迷惑かけるがよろしく頼む」

 

 

俺は最低限の礼として頭を下げておく。だが、顔を上げてみるとクロノは不敵な笑みを零している。

 

 

「僕とゼンは友達(ダチ)だろ?死線を共に潜り抜けた戦友でもあるし相棒でもある。『謝罪はいらないさ』。…だろ?」

 

 

コイツ…俺が言ったことを……コイツァ一本とられちまったな…へへッ

 

 

「そうだったな。ありがとよ。相棒(バディ)

 

 

「そうだとも。気にするな。相棒(バディ)

 

 

俺達が拳をつき合わせているとユーノが来た。

 

 

「二人共、今回はありがとう…二人には迷惑かけちゃったね…」

 

 

「いいんじゃね?いろいろハッピーエンドで終わったんだしよぉ?」

 

 

「僕はこれが仕事だからね。当然のことをしたまでだ」

 

 

「アハハ…二人らしいね…でも、なのはを巻き込んでしまったのはハッピーエンドじゃあないよ…」

 

 

そう言ってユーノは俯く。

…まぁ、すぐには割り切れないよな…仕方ねぇ…励ましてやんか…

俺はジャケットのポケットからあるものを取り出す。

 

 

「ゼン?それは何だ?」

 

 

とクロノが聞いてくる。

 

 

「こいつぁタロットカードだ」

 

 

「タロットカード?」

 

 

「まぁ占いのカードだよ…ユーノ、戦車(チャリオッツ)のカードを貸してくれ」

 

 

そして、ユーノからチャリオッツのカードを受け取ってシャッフルする。

ある程度混ぜたら、シャッフルを止めて裏向きにユーノに差し出す。

 

 

「どれでもいい、好きなのを一枚とりな」

 

 

そしてユーノは一枚引いてひっくり返す。引いたカードは…

 

 

「あっ……」

 

 

「これは……」

 

 

「へへへッヤッパリなぁ……」

 

 

なんと引いたのはさっき返してもらった戦車(チャリオッツ)のカードだった。

なにも仕組んじゃいねえがコイツならこれを引き当てるんじゃねえかって気がしたんだよな。

 

 

「男なら、巻き込んじまったと後悔してねぇで、最後まで守り抜くくらいの根性見せてやんな」

 

 

そう言って俺は戦車(チャリオッツ)のカードをユーノに差し出す。

 

 

「ゼン……」

 

 

そんな泣きそうな顔すんなっての…男だろ?

 

 

「そのチャリオッツのカードが示す『勇気』をもって、なのはを支えて、守ってやんな…オメエならできるぜ、ユーノ」

 

 

「……」

 

 

ユーノはそのまま無言でチャリオッツのカードを受け取るが、目は『勇気』に満ち溢れていた。

 

俺達はそのまま談笑してたんだが……いきなりアルフが抱きついてきた。

 

 

「ゼン~~♪♪」

 

 

「おわッ!?なんだよアルフッ!?や、やめろって!!」

 

 

「いいじゃないか~暫く会えないんだしぃ、これぐらいはさせとくれよぉ…」

 

 

尻尾をブンブン振りながらアルフは俺に抱きついて甘い声を出してくる。

………そりゃあ俺も男ですから?このグニグニと形を変えるスイカさんが嬉しくないわけじゃないんすよ?

 

ただ……………向こうでニヤニヤしてるプレシアさんとリンディさんの視線が…ねぇ?…

 

 

「ハァ…まったくよぉ…」

 

 

「はふぅ♪…ゼンの手は暖かいねぇ…心がポカポカしてくるよ…///」

 

 

俺はアルフの頭を久遠にやるように気持ちを込めて撫でてやる…目尻がトロ~ンとしてらぁ…

そのまま暫くアルフの頭を撫でてたんだが…背中に伝わる感触がたまらんばい。

しかも積極的に押し付けてきやがるからもぉ……

 

俺がアルフのスイカ様に感動してるとクロノが時計を見て、リンディさんの方を向く。

リンディさんもクロノと視線を合わせて頷く。

 

 

「そろそろ時間だ………もういいか?」

 

 

「「……はい」」

 

 

遂にお別れの時間が来ちまった。

コッチに戻ってきたなのはとフェイトの2人は晴々とした表情で返事をする。

 お互いに涙は浮かべたままだが……。

 

 

「そんじゃ……またなフェイト、アルフ、プレシアさん」

 

 

「またねッ!!ゼンッ!!」

 

 

アルフは何時ものように元気一杯に手を振ってくる。八重歯が見えてとても可愛いぜ!!

つうかアルフさんや?振るのは尻尾か手、どっちかにしようや?

 

 

「本当にいろいろありがとうね。ゼン君。何かあったら言って頂戴。必ず力になるわ…だから、また…その…料理を教えてね?…」

 

そう言ってプレシアさんは俺に微笑を浮かべる。こんな風に笑う人だったんだな……

いくらでも教えますよ?後、気合を入れるのはいいんですがバチバチしないでください。

トラウマが、あがががが

 

 

 

「ゼン……」

 

 

最後にフェイトが来た。なのはとリボンを交換したようでピンクの可愛らしいリボンがついてる。

俺の名前を呼ぶフェイトはとても悲しそうな顔をしている……やれやれ…

 

 

「そんな顔すんなって。またすぐ会えるんだからよぉ」

 

 

俺はそのまま頭を撫でてやる。気持ちを込めて、ゆっくりと、優しく。

くぁ~~触り心地が抜群なのよこれ!!!

 

 

「う、うん/////」

 

 

「後、これを……」

 

 

「?…あっ…」

 

 

俺が渡したのは、アースラにいたときに皆で撮った写真だ。

食堂でご飯を食べる前に記念で撮って貰ったモンで、写真の中の皆は笑顔のやつだ。

 

 

「小物入れに入れやすいように、さっき枠は切ったからよ……」

 

 

『クレイジーダイヤモンド』の手刀ってすげえわ。

メチャクチャ綺麗に切れるんだもん。

 

 

「…ありがとう、ゼン///」

 

 

「へへへッどういたしましてだ」

 

 

そしてリンディさんの魔方陣が起動する。

みんなが順々に入っていくがフェイトはまだ入っていない。

顔は俯いてお腹の辺りで組んだ手の親指同士を回してる。

 

…どうしたんだ?

 

よく見ると、リンディさんとプレシアさんが目をワクワクさせながらフェイトを見てる。

……え?なんぞ?

そう考えていたらフェイトが突然顔を上げた。その顔はフェラーリの如き赤に染まってる。

 

 

「ゼン!!!///」

 

 

「ん?なんだフェ…むぐっ!?」チュッ

 

 

あ、ありのまま今起こったことを話すぜッ!!

 

『フェイトが突然目を瞑ったと思ったら、爪先立ちで背伸びして、俺にキスを…』

 

な、なにを言ってるかわからんだろぉが俺もよく判らん…超スピードとか催眠術だとかそんなチャチなモンじゃ断じてねぇ…も、もっと恐ろしい物の片鱗を……じゃなくてッ!!?

 

 

し、しししししかも口を啄ばむようなバードキスだとぉッ!?どこで学んだこんなテクッ!!!?

現在進行形で俺の唇はハムハムされております。

ディーーーモルト(非っっっ常に)甘美な味がするとです……

やがて、満足したのかフェイトが俺の口を離す。俺から離れたその顔はマグマの如く沸騰してる。

俺自身も顔が赤くなってるのがよく判る。

ちなみに他の子供組も真っ赤になっております。大人組はサムズアップを………

ってアンタ等かい!!こんな高等テク仕込んだのはッ!!?

 

 

 

「//////////」

 

 

「お、おおおおおま!?//////」

 

 

チ、チッスされた!?キスされちった!!?

 

 

「「「「「おお~~!!!!!!!」」」」」

 

 

外野が叫ぶ。って!?うるさいよ!?お前ら!?

 

 

「ま、またね////」

 

 

フェイトはそういって魔法陣に引っ込もうとするが………

俺はやられっぱなしは性に合わねぇんだぜぇ!!?

俺は急いでポケットからあるものを取り出す。

 

………フフフ、これ写真の『切れっ端』ね?

 

 

「『クレイジーダイヤモンド』!!」

 

 

グイィィッ!!

 

 

「ふぇッ!?」

 

 

『写真』を治してえぇッ!!その勢いでフェイトを引き戻すッ!!そしてぇッ!!

 

 

「む……」

 

 

ドォギュウゥゥゥゥウウウンンン!!!!!!

 

 

「ん!?むーーーー!!?//////」

 

 

そのままフェイトを抱き寄せて、同じように唇を啄ばむキスをしてやったぜ!!!へっへっへ!!!

最初はジタバタと腕を振っていたが、何度もハムハムしていく内に……

段々と大人しくなっていって最後は俺の首に自分から腕をまわしてしな垂れかかり俺にされるがままになっている。

 

「んっ…ふむぅ……はぁふ…ん……///」

 

 

時折その口から普段からは想像できないぐらい色っぽくて甘い声が響いてくる。

ルビーのようなその赤い瞳は蕩けきって、俺しか映していない。

そのまま5分くらいキスしてたが手を離してやると腰が抜けたようで、フェイトは地面にへたり込む。

 

 

「「「「「おぉぉぉおおおぉぉぉおお!!!!!!!////」」」」」

 

 

ってまた!?しつこいよ!?おまえら!?

 

 

「あ、あぅあぅあぅぅぅぅぅ~~~~~~~~~~~~~~ッ!!!/////」ボオォッーーーー!!

 

 

我に返ってハッとするとフェイトの顔からとんでもない量の煙が吹き上がってきた。

今は頬に手を当てて俯いてるが……蒸気機関車ですかい?この煙の量。

俺はフェイトをお姫様抱っこして魔法陣まで連れて行く。

もうこれ以上無いほど真っ赤なのでどう表現したらいいかわかんねえや。

そんで魔法陣の中にフェイトを優しく降ろしてやる。

 

 

「へへへッ!!じゃあまたな!!フェイト!!!」

 

 

「ッ!?う、うん!!またね!!ゼン!!!//////」

 

 

フェイトの輝くような笑顔を最後に魔方陣は消え去り皆はいなくなった……

それは日常が戻ってきた瞬間だった。

またいつか会えることを嬉しく思いながら俺となのはは公園を出る。

 

俺は公園でそのままなのはと別れて、この数日間の激闘の疲れを癒すべく、久遠の元に向かったんだが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くぅ~~~~ッ!!!」

 

 

何故か俺の胡坐の上に座った途端怒り出して、俺の体のありとあらゆる所に体をこれでもかッ!!と擦り付け始めた。

 

素で「お前なにやってんの?」

 

と聞いたら頭の上に登って前足で俺の顔をベシベシしてくる。

 

 

何故だ?解せん………

 


 
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