可能性の物語
カグヤが時渡りを行わなかった世界……。
シトシトと、空から雨粒が降りしきる。
大切な人を失って、悲しみに暮れて……、何もできなくなって……、
シトシト降る雨に打たれて、滅入った気力は起き上らない。
僕はどうすればいいんでしょう? 義姉さんを失った僕は……。
「ねえ君? もしかして東雲さんの弟さん?」
声がしたので振り向いてみました。それが自分だったから振り向いたわけではありません。
「あれ……? 違ったかしら? ねえ、こんな所でどうしたの? お父さんやお母さんは?」
一人ぼっちの子供を見ると、大人はどうして同じ事を訪ねるのでしょう?
……そんなの決まっています。子供に『保護者』なんて言葉が解るかどうか怪しいから、だから解り易く親を出してくる。
……。どうでもいいですね、そんな事。
僕はその場を離れます。人に慣れ合うのはちょっと苦手なんです。向かった場所は御墓。東雲神威と墓石に彫られた御墓です。
お参りしに来たのではありません。ここしか拠り所がなかったから、この人の傍しか、自分を肯定できなかったから……、だから僕は、ずっと付いてきた二人の男女の事なんて考えませんでした。
雨に打たれ続けながら、墓石の隣に座り込み、瞼を閉ざします。
別に死のうとしたわけではありません。ただ、もう少しだけ長く、この人の傍に居たいと考えていただけだったのです。
「あの……、風邪引くよ?」
声がしました。
閉じていた瞼を開くと、傘を差した女の子が、怯えながら僕に話しかけているのが見えました。
瞼を閉ざします。話す事なんてありませんから……。
不意に身体を打っていた雨粒がなくなりました。どうしてだろうと思ってもう一度瞼を開くと、女の子が僕に傘を差しだしていました。他人に近づくのが怖いのでしょうに、僕を気にかけ、傘をさしかけています。自分の体が少しはみ出て、濡れていますが、あまり気にしないようです。
どうでも良かったので再び瞼を閉ざして、今度こそゆっくり眠りに付きました。
「ありがとう……」
何か考えの纏まらない声で呟いた気がしますが、何を言ったのか自分でも思い出せません。別にどうでもいい事です。
ただ、目が覚めた時には何処かの家のベットに寝かされていた時は、多少びっくりしました。
「ねえ君? この家で暮らさない?」
その家の主、最初に僕に話しかけてきたあの女の人は、そんな事を僕に言ったのです。
どうでもいい事ですねどね。
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魔法少女リリカルなのはDuoのIfストーリー。月村すずか一筋のカグヤくんが、和メイド姿で御奉仕三昧!笑いあり! 悲しみあり! バトルあり! シリアスあり! なのは無印から始まるカグヤ視点のお話! 視点がころころ変わるのはご愛嬌で許せ!気持ちを軽く、遊び半分で見るべし!