学院のメイドの一人シエスタが物好きにもルイズの使い魔に好意を抱いているのは、
傍からから見ても明らかな事で、学院の平民と一部の教師、生徒に知られている。
また、相手も満更ではなさそうなので、シエスタは積極的に接近し「獲物」を狩りにかかった。
しかし、シエスタの努力は今のところ完全に空回りをしている。
シエスタが手を繋ごうとすれば、「あれ何?」と指をさして、手に空を切らせる。
「ん、どうしたの?」
「な、何でもありません!」
(フジノ。君は何て残念な奴なのかね……)
偶々通りがかったギーシュは泣きたくなったと言う。
腕を組もうとすれば、急に方向転換されて、目標を見失い地面に倒れ臥す。
「だ、大丈夫かい? 足元には気をつけないと」
「うう、有難うございます……」
(流石お兄ちゃん。世界を越えても、まったくブレがないぜ)
使い魔仲間のカラスは「感心」した。
抱きつこうとすれば、絶好の拍子に落し物を拾うために膝を折って屈まれる。
シエスタは彼の背中に乗った状態になり、驚いたお兄ちゃんが起き上がった為、
抱きつこうとした勢いと、下から突き上げられる力が相まって、
見事な放物線を描き、背後の池へと飛び込んでいった。
「うきゃあああぁぁぁっっっ!?」
「ああ、シエスタ!?」
(女中殿。道のりは険しいの)
シエスタを水中から助けあげた翁は溜息を吐いた。
そして、濡れて風邪を引いて寝込んだ為、相手が責任を感じて見舞いに来たところで、
意を決して正面から告白した - が、気付いてもらえなかった。
「私、好きです!!」
「僕も好きだよ」
「え? えっ! それって!?」
「君の村のワイン。アルコールは初めてなんだけど、すごく美味しいね」
「ソーデスネ」
(駄目だわこの男、早く何とかしないと)
シエスタの同室のローラは全身を脱力感に苛まれた。
「ふふふ。流石は僕達のフジノ。期待通りだ」
「「「乾杯!!!」」」
そしてマリコルヌ達はキング・オブ・フラレで朴念仁な使い魔に祝杯を上げていた。
ただし、マリコルヌの歓喜は3日天下となる。
「あ、シエスタ。もう時間だから厨房に行かないと」
「え、ええ、わかりましたから、そんなに手を引っ張らなくても大丈夫です!?」
後日、あっさり手をつないでくるお兄ちゃんに慌てるシエスタの姿があった。
(手はつないでるけど……まるで妹みたいな扱いじゃないの)
自分の使い魔が天然である事をルイズは理解した。
藤野君にはラッキースケベやハーレムといったゼロ魔補正は無かった。
どっとはらい。
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実は僕、人参だったのです。