「さて、“赤土”のシュヴルーズ。これから一年間、皆さんに土系統の講義をします。
魔法の四大系統はご存知ですね、ミスタ・マリコルヌ?」
……赤土って何だ?
「なぁ、タバサ……赤土って何?
魔法に関係するのか?」
太った男の子が、質問に答えている時に、小さい声で問いかける。
「二つ名」
「あぁ、分かった」
ゲームでも二つ名は存在したな……俺は何だっけ?
首をかしげて思い出そうとするが……思い出せない。
「今から皆さんには土系統の基本である“錬金”の魔法を覚えてもらいます。
一年生の時に覚えた方もいるでしょうが、基本は大事です。おさらいしましょう」
―――錬金って何だ?錬金術じゃないのか?
そう疑問に思っていると、シュヴルーズは教卓の上に転がっている小石に向けて小振りの杖を向け、
短く呪文を呟いた。すると小石は輝き、金色に輝く金属へと変わる。
「……何だアレ」
びっくりした……あれが錬金?
「ゴ、ゴールドですか?ミセス・シュヴルーズ!」
キュルケ……だっけ?は身を乗り出し、教卓の上の金属に釘付けになる。
「いえ、ただの真鍮ですよ。ミス・ツェルプストー。
ゴールドを錬金できるのはスクウェアクラスのメイジだけですから」
シュヴルーズは咳払いをし、勿体ぶった調子で続ける。
「私はただのトライアングルですから」
―――トライアングルとかは全部タバサに聞いたからついていける。
でも、四つで最高だったら俺はどうなるんだ?ペンタゴンか?
「タバサ……トライアングルって中ぐらいだったよな?」
「……中よりは少し上」
「おっけ、あり……」
がと、と言葉を続ける事はできなかった。
なぜなら……
「ミス・タバサ!」
「……はい」
「授業中に使い魔と喋るのはいけませんね、ミス・ヴァリエール。
それではあなたに錬金の実演を……」
そういいかけた所で、俺と目があった。
―――嫌な予感がすっごくするんですけど!?
「そうです。どうせなら、東方のメイジであるミスタ・ヴェルにも実演を
見せてもらいましょうか」
予感的中だちくしょおおおおおおお!!
学生達の視線が一気に俺に集まる。
さっきまで先生の視線避けてたのにこっちみんな!
とヴェルは心の中で悪態をつきつつ、隣のタバサを見る。
「……やったほうがいい?」
こくり、と小さく頷いた
「……大丈夫?」
「あぁ、多分大丈夫だよ」
俺はそう言っては教壇へ真っ直ぐ歩いて行った。
教卓の上には先程実演に使った小石と同じくらいの大きさの小石を置いてあった。
シュヴルーズ先生は俺の隣でその様子を見つめてくる
「……はぁ、んじゃやるぞ?」
生徒の視線が少し邪魔だけど……
「…………」
杖を握って意識を集中させる。
タバサに言われたのだが、杖を使ってやったほうがいいらしい。
杖を使わない魔法はない……とのこと
意識を集中させると、教卓に小さな魔方陣が浮かぶ。
「なんだあれ?」
「あれが東方の魔法かしら?」
「馬鹿!よく見えないって!」
外野の声が少しうるさい……もっと意識を集中!
魔方陣が光輝いて……一瞬光ったかと思うと、金の石が教卓にあった。
「東方の魔法は少し違うのですね……それにしても、素晴らしい……あら?」
ゆっくりとシュヴルーズ先生が振り返ってくる。
「ミスタ……これは……もしかして……?」
「え?ゴールドだけど……どうかした?」
瞬間、生徒達の叫び声に教室が包まれた。
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6話『授業』