No.451609

真恋姫†夢想 弓史に一生 第二章 第十一話 月下の歌い手

kikkomanさん

どうも、作者のkikkomanです。


前話では…。

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2012-07-12 18:01:13 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3171   閲覧ユーザー数:2867

~聖side~

 

 俺は、今日も今日とて書簡の山に囲まれている。と言っても、軍事的なことや内政的なことは少なく、大半は民からの意見書…。

 

 なんでも、俺のこの前の解答が好評だったらしく(結構適当だったんだけどな…。)どうせなら全てやって欲しいとのことだった。

 

 まぁ、考えなくていい分楽なんだけど、いかんせん量が多くて手が回らない…。

 

 

 今日も、すでに初めて一時間近くたっているが、始める前と今とで書簡の山に変化が見られない…。

 

 ちょっといくらなんでも皆さん意見しすぎじゃないですか…。

 

 

コンコン!!

 

 

「はい?」

 

「徳種か?入るぞ。」

 

「はいどうぞ。」

 

 

ガチャ!!

 

 扉が開いて、蓮音様と見知らぬ女の人が部屋に入って来た。

 

 その女性は長い黒髪に赤渕の眼鏡、長身で細身の体、それと対比するように大きな胸…。なんだ…孫呉は巨乳の集まりなのか…需要があるんですね!!分かります。

 

「苦労してそうじゃの~…。まぁ、お主は民の気持ちでも分かるのか、一番いい意見をしてくれている。だから全て任せることになってしまったことを分かってほしい。」

 

「大丈夫ですよ。任されたことは一人でしっかりやり遂げますから。」

 

「それを聞いて安心したぞ。それとな…。今日はお主に紹介に来たのだ。こやつは我が軍の軍師でな。」

 

「姓は周、名は瑜、字を公瑾と申す。」

 

「俺は姓は徳種、名は聖。今はこうして蓮音様の下で客将をしてます。」

 

「何!? 蓮音様が真名を許しているのか…。ならば私も許さねばならんな。真名は冥琳だ。」

 

「よろしく冥琳さん。俺は真名が無いから呼びたいように呼んで。」

 

「分かった。では、徳種で良いか?」

 

「呼びやすいならそれで。で??蓮音様は会わせる為だけに来たんですか?」

 

「いやっ、お主が忙しそうなら冥琳に手伝わせようかと思ってたのだが…。大丈夫そうだな。」

 

「えっ!!いやっ流石に手伝ってくれるならそれは…。」

 

「先ほど“一人”で大丈夫だと言ったではないか??」

 

「ぐぅ…。」

 

「はははっ。そう悲しそうな顔をするな、冗談だ。ただ、冥琳にも仕事があるから、簡単にしか手伝うことは出来ないからな。」

 

「はい!! 冥琳さんよろしくお願いします。」

 

「うむ。よろしく頼むぞ。」

 

 

 こうして俺の部屋で、俺は意見書を、冥琳さんは内政やら軍事の報告書に目を通していた。

 

 時たま、俺から冥琳さんに意見を求めたり、冥琳さんに意見を求められたりしながら徐々にお互いの書簡が減っていく。

 

 お互いにあと少し、となったところで、冥琳さんが俺に質問をしてきた。

 

「徳種。お主はどこでそのようなことを学んだのだ?」

 

「俺は学校かな。」

 

「ふむ、学校とは??」

 

「学校って言うのは子供たちに勉強を教える場だよ。身分や生い立ちに関係なく授業を受けれるんだ。」

 

「ほう…。誰がどのようなことを教えてるのだ?」

 

「教えてくれるのは先生で、各先生が専門の勉強をしてるから、その専門のことを教えてくれるよ。読み書きやら算術、歴史とかね。」

 

「成程、寺子屋のように一人の先生でなく、多くの専門の先生がいるのだな…。しかし、それでは先生は暇な時間が多いのではないか?」

 

「生徒はそれぞれ組に分けられているんだ。そして、それぞれの組に時間割って言うのがあって、それに従って授業を受けていくんだ。例えば一つの組は読み書き、他の一つは算術とかね。そうすれば多くの人が授業を受けれるし、手の空くような事は無いからね。」

 

「成程、しっかりとした枠組みが出来ているのだな…。庶民が皆、読み書き、算術ができるというのはとても興味深い。そうすればより優秀な者も多く出てくるだろう…。学校か…考えておこう。」

 

「でも、問題は知識をつけた人間の質の問題かな…。今の時代じゃあ、悪いことにその知識を使う人がいるだろうから、今は先送りだね…。」

 

「そうだな…。」

 

「まずは世の中を平定しないと…。学校はその後で…だね。」

 

「うむ。」

 

 

 俺たちは、こんな感じの会話をしながらも手を休めずに作業を行い、夕方には全ての書簡を片付けることが出来た。

 

 まぁ、俺は所詮意見書だから、目を通した後にちょっとコメントすればいいけど、冥琳さんは内政や軍事面だから、訂正やらなにやら大変そうなのに、平然と全部こなしてた…。流石の周公瑾…。

 

 

 俺は夜中、なかなか寝付けずにいた。

 

 と言うのも、蓮音様に言われたことが頭に残り、それを元に俺の役割、俺の使命を考えていたからだ…。

 

 

「俺はこのままでいいのかな…。」

 

 目が覚めてしまい、直ぐには寝付けそうに無い。仕方ないので城壁の上に登り、欄干に腰をかけながら月を眺めていた。

 

 

~冥琳side~

 

 

 夜に目が覚めて厠へと立つ。

 

 今日は徳種からなかなか面白い案が聞けた。是非とも取り組みたい事項だが、彼の言うとおり世の中が平和にならなければ設立は難しいだろう…。

 

 ふふふっ、天の知識と言うのはなかなかに興味深いものなのだな…。

 

 

 廊下を歩いて部屋へと戻る。

 

 満月とまではいかないが、綺麗に輝く月夜に照らされた廊下は、何か趣がある。

 

「~~♪♪~~。」

 

「??」

 

 どこからか、誰かの歌声が聞こえる。

 

 その声は透き通っていて、そして人の心に響き、落ち着きと安心を与えてくれる。

 

 私はその声に誘われるように声の主の下へと歩みを進めた

 

 

 声は城壁の上から聞こえる。私は城壁への階段を登る。

 

 すると、階段の一番上辺りに人影が見える。

 

 

「ん??諸葛瑾??どうかしたか?」

 

「へっ、うわわ…。ちょっと脅かさないで欲しいです!!」

 

「それはすまんが…一体ここで何を…。」

 

「あなたも、この歌に誘われたのではないのですか??」

 

「では諸葛瑾も…。」

 

「はいなのです。水を飲みに起きた時、この声が聞こえて、誰が歌ってるのか気になったのです。そしたら…。」

 

 諸葛瑾は、目線を城壁の上に向ける。私もそれに習って、目線をそちらに移すと、

 

「あれは…徳種…??」

 

「どうやらそのようなのです。歌ってる歌は分からないのですが、何故か心に響いてくるのです。」

 

 私たちは歌に耳を傾けて聞き浸った。

 

(因みに、この時聖が歌っていた歌は、ス○ッツの楓である。)

 

 なんとも切なく悲しい曲。でもその中に感じる確かな思い。

 

 この歌は…いい曲だな…。

 

 

「さて、そこに隠れて聞いてる人たちは出てきてもらおうか。盗み聞きは良くないよ!!」

 

「「!!!」」

 

 突如歌は止まり、私たちが聴いていたのを見透かした言葉がかかる。

 

「気付いていたのか??」

 

「なんか視線が痛くてね…。」

 

「盗み聞きして悪かったのです。」

 

「いやっ良いよ。俺も好きで歌っていただけだし。」

 

「ところで、さっきの歌なのだが…。」

 

「えっ!! …もしかして、間違っていたり音はずしてた??」

 

「?? 私はその歌を知らないので、合っているかどうかは知らんが、先ほどの歌は良い歌だと言おうとしただけだ。」

 

「なんだ~良かった…。俺がいた国では、曲に誤りあれば周朗が振り向くって言われていてね…。冥琳が歌について言ったから、もしかしてって思ってね。」

 

「ほぉ。音楽に関しては確かに精通しているが、そんなことを言われているとはな。」

 

「はははっ。出来る人は何でも出来るんだね…。」

 

「先ほどの歌は一から先生が作ったんですか??」

 

「いやっ、俺のいた国での有名な歌だよ。俺はこの歌が好きでね。なんか生きる活力がもらえるんだ。」

 

「確かに悲しい歌詞に感じられるが、裏には生きる活力的なものを感じたな…。」

 

「いい曲で聞きいっていたのです…。先生がこんなに歌が上手いとは思わなかったのです。」

 

「まったくだな…。」

 

「ははっ、たまたまね…。」

 

「…徳種。話はまったく変わるのだが、ついでだから聞いていいか。」

 

「何??」

 

「お前が一諸侯として旗を揚げるのは何故だ??」

 

「…俺は争いが嫌いなんだ、人を傷つけるのが嫌なんだ。戦争?? そんなものはこの世から無くなればいいと思ってる。俺の理想、思想は『和を以って貴しと為す。』皆が皆、手に手を取って歩んで行ければ、どんな困難だって乗り越えていける。俺はそんな世界にしたいんだ…。」

 

「しかし、話し合いで全てが解決するとは思わんぞ。」

 

「あぁ、それは俺もそう思う…。だからこそ戦う…。戦って人を傷つける…。」

 

「それは矛盾してないか??」

 

「矛盾してると思うよ。でも、力を示さないうちは話し合いの関係には持っていけない。だから戦う。でも、その過程で多くの人が死んだことから決して目を背けない。その者たちの思いを、理想を叶えるために…。それが生きている、生き残っている人の役割だと思うから…。」

 

「成程…。先生の考えは分かりました…。孫堅様が同盟を組んだのもあながち間違いではないようです。」

 

「今はまだ俺たちが弱小すぎて足ばかり引っ張っちゃうけどね…。」

 

「ふふっ…では早く大きくなって、対等な力を示して欲しいものだ。」

 

「精進するよ。」

 

「そうだな…。そうしてもらわなきゃ困る。」

 

 私はそう言ってこの場を後にした。

 

 諸葛瑾と徳種は、しばらく話した後それぞれの部屋へと帰って行った様だった。

 

 

 想像以上にしっかり考えているのだな…。

 

 一諸侯として立つのなら、しっかりとした理想、思想が必要だ。もしそれが無ければ、直ぐにでも潰れてしまうだろう。

 

 我が孫呉は、蓮音様の「呉の民が平和に暮らす世界にすること」を理想に、天下統一を目指している。将たちは皆、この理想を共有しており、結束は固い。

 

 今はまだ弱小なあやつの国が、果たしてどうなるか…。まったく持って楽しみだな…。

 

 薄く、微かに笑みを浮かべて、私は笑っていた…。

 

 その顔は月明かりに照らされ、妖絶な雰囲気を醸し出していた。

 


 
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