No.451535

武装神姫「tw×in」 第一話 始まり×バトル=

風麦梟さん

武装神姫、主にBattle Mastersの二次創作作品になります、
「tw×in」は、ツインと呼んでください。

以前他のサイトで投稿していた物の、始まりの一話です。

2012-07-12 13:24:14 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1143   閲覧ユーザー数:1117

 

日の暮れた砂漠……広いように見えるがそれはただそう見えるだけ。今立つ場所から向こうに見える水平線の位置にはたどり着けないようになっている。

ここを中心としてざっと周囲数十メートル、そこだけが移動出来る範囲。それ以上は見えない壁があっていけない、しかしここに立つ者から見ればそれでも充分に広すぎる空間だ。

オレは今、そんな場所に立っている。正確に言えば違うが、完璧不正解でもない。

例えるなら、自分の意識を移して他人の身体を扱う、そういう感じ。

意識はオレのものながらオレのではない身体で荒野に立っている、ということ。

その手には青く光る小剣、身を包むのは白い鎧。胸に胸当て、腕に籠手、頭に兜、足は膝下までのブーツ。全て統一して創られた物だ。

そんな状態のオレの前に、一つの人影が立っている。あちらもまたオレと同じような者、別の意識が入った一つの身体。両手にナイフを持ち、身を包むのはその身体に合わせて創られた武装の数々。

端的に言って、今からオレ達は戦う。

どちらかが倒れるまで、体力が尽きるまで、それが勝敗の決し方の。純粋な戦いだ。

今、互いを正面に見る間に一陣の風が吹いた。砂漠に砂煙が舞う。

その風が……

 

 

 

 

                   ……止んだ。

 

瞬間、どちらかともなくオレ達は動き出した。

 

 

そして――――――

 

 

 

 

「ま、負けたー!」

数分後、砂漠から一転、場所は最寄りのゲームセンター。

前には今戦った相手、姿は互いに普通の私服、横には筐体……まぁ端的に言えば、さっきまでのは全て、バーチャル空間での出来事なんだ。

「しっかし、強くなり過ぎじゃない?」

今対戦した相手、幼なじみの水飼真南(みずかいまな)が訊いてきた。

「そうか?」

オレこと上木宗哉(かみきそうや)は、この対戦を真南に進められて始めた。つまりキャリアはあちらの方があるのだが、今回はオレの勝利で終わった。

「そうだよー、何で先輩のあたしより強いんだよー」

ぶーぶーと文句を言ってくる真南。その姿を見て、

「でもマスターの戦い方もどうかと思いますよ? 接近戦ばかりなのに手数少ないとか、体力持ちませんって」

筐体横の台の上に立つ、荒野で相対した人影が武装を外した状態でツッコミを入れた。

灰色のショートカットに赤色の瞳、真南の腰くらいの高さがある台の上に乗っているが肩の高さにも届いていない全長を持つ、一体のロボット。

「えー、でも銃器で狙うの大変じゃん?」

「そこはあたしがサポートしますから、てか実際使うのあたしなんですからマスターそこまで大変じゃないでしょ」

「それもそっかー」

「あのねぇ……」

真南との漫才じみた会話が始まった時、

「マスター! お疲れさまです、今日も勝てましたね!」

同じく筐体の台に乗った、先ほどオレが扱っていて共に勝利を納めた相棒が嬉しそうに笑いながら声をかけてきた。

「うん、エンルのおかげさ」

「ふふっ、ありがとうございます、マスター」

 

第三次世界対戦も宇宙人の襲来もなかった現代からつながった当たり前の未来。

この世界ではロボットが日常的に存在し、様々な世界、分野で活躍していた。

 

その名称は、神姫。

 

全長15センチのフィギュアロボで、心と感情を持ちもっとも人々の近くに存在する、マスターを補佐するパートナー。

そんな一人に一人の割合で居る神姫に、人々は思い思いの武器・装甲を装着させて戦わせた。

名誉のために、強さの証明のために、あるいはただ勝利のために。

 

その神姫を、武装神姫と呼んだ。

 

それから数年後の今、バーチャル技術の革新によって人は擬似的に神姫と一体となり、意のままにコントロール出来るようになった。

 

これを、神姫ライドシステムと呼ぶ。

 

その神姫ライドシステムを使いマスターと神姫が一心一体となって他のマスターと仮想空間でのバトルを楽しむエンターテイメント。

 

それが、神姫バトル。今まさにやっていたものだ。

 

「ですが、マスターの指示があっての勝利ですから、マスターのおかげですよ」

そして彼女がオレの神姫、腰まで届く長い黄色の髪に緑色の瞳。

アーンヴァルMk.2型のエンルだ。

エンルはアーンヴァルMk.2型の特徴と言える性格設定、丁寧な物腰と言葉使いでいつもマスターへの心配りを第一に考えているので、今もさっきの勝利は俺の成果だと言ってくれている。

「そっか、ありがとう」

「はい!」

「でもホントに宗哉、飲み込み早いよね」

「うちのマスターもそれくらい……つか、せめて銃器を積極的に使ってくれたらな……」

「ちょっとミズナー、それは言わない約束でしょー」

真南の神姫、ゼルノグラード型のミズナは大げさに肩をすくめた。いや、大げさじゃないかもしれない。

ゼルノグラード型は元々、『戦場の記憶』プログラムというものが入っており、武器の扱いに長ける、バトル向きの神姫と言える。

中でも特に銃器に長け、ゼルノグラード型と言えば銃器重視のイメージも少しある。

だが、真南のミズナには銃器武装が無い。同時に持てる武装3つ全てが近接武器で、必然的にインファイタータイプにされている。

だからこちらは逆に銃器を2つに小剣というバランスで遠くから狙い撃ち、近づかれたら小剣で応戦しつつ距離を取れば……勝てた。

オレの腕というよりは、真南の戦い方のおかげだな。

「でも真南も銃器は使った方が良いよ。ね、エンル」

「そうですね、ミズナさんはゼルノグラード型ですので、やはり銃器が似合うと思います」

「ぶー、宗哉やエンルちゃんまでー」

真南はふてくされて頬を膨らませる。

「ここまで言われたんですから、素直に使いましょうよ、マスター」

「持って無くはないよね? 前に使ってるの見たことあるし」

「はい、ただここ暫くは使ってませんけどね」

「でも仕方ないかー、帰って掘り出そう、ミズナも手伝ってね」

「はいはい」

掘り出そうって……どれだけ奥に閉まったんだ。

「という訳だから、あたしは帰ろうと思うけど、宗哉はどうする?」

「そうだな……」

まぁバトルもしたし、家で帰りを待つ……

「あの、すみません」

声をかけられた。

そこには年上に見える男性がいた。ここで声をかけるということは、

「良かったら、バトルしませんか?」

やはり、バトルの誘いか。

「あー、あたしはちょっとパスで、宗哉は?」

まぁ断わる理由は無いけど、

「エンル、どうする?」

やはりパートナーの意見を聞かないとな。

「はい、マスターがよろしければ私は頑張ります!」

「だそうなので、オレで良ければ」

「ありがとう、早速始めようか」

オレ達は筐体を挟んで正面に立った。ちなみに真南は横で観戦するようだ。

「さぁ行こうか」

相手の男性が自らのパートナーの神姫に声をかける。

「了解です。マスター」

それは真南のミズナと同じゼルノグラード型、こちらは紫色の髪に青い瞳だ。

「よし、こっちも行くよ、エンル」

「はい、マスター!」

オレは筐体に近づいた。

 

 

 

Ride on!

 

今回のステージは先ほどと同じ砂漠。オレはエンルの視点で空間内を見つつ動作確認、膝を曲げたり腕を振ったりして誤作動しないか確かめる。

「行きましょうマスター、ミズナさんと同じゼルノグラード型なら戦いやすいかもしれませんね」

エンルの声を聞き、オレは返す。

声は出してるはずだけど身体は無いから、きっと一体化してるエンルにしか聞こえないだろう。

『いや、どうだろうね』

「え、そうですか?」

『多分、真南みたいな武装じゃないと思うし』

まさかのクロスレンジ固めは無いだろう。

「お待たせしました。始めましょう」

相手の神姫が正面に現れた。ゴーグル付きのメットを被っていて、その表情は見えない。

その手には、案の定ハンドガンが握られている。この時点ですでにクロスレンジ固めではなくなった。

「行きましょうマスター、勝ちましょうね!」

『そうだね、やるからには勝ちに行こう』

その時、開始のカウントダウンが開始された。

 

Ready…………GO!

 

瞬間、相手のゼルノグラードは銃口をこちらに向けて引き金を引いた。

『回避だ!』

「はい!」

素早く左にダッシュ、数秒前居たところを銃弾が通過する。

『接近戦で行こう』

「了解です!」

小剣を構え、相手に向かってダッシュを開始。そこへハンドガンが向けられた。

『弾切れが近い筈だ、当たる覚悟で攻めるよ』

引き金が引かれて銃弾が迫る。左右にステップしながら前に走って更に距離を詰める、数発を掠めて小剣の範囲内に入った時、相手のハンドガンの弾が切れた。

「いきます!」

エンルが小剣で突く、しかし相手はバク転して距離を取りつつ回避、弾切れしたハンドガンを閉まって新たな銃器を取り出した。

あれは……ライフルか。

引き金が引かれる。

『右へターンだ!』

指示に従いエンルが右へ側転、ライフルの弾丸を掠めた程度で済んだ。

ライフルはハンドガンより速度と威力があるが、弾数と連続射ちが出来ない。今は射った直後の硬直状態、攻めるなら今だ。

バク転で開かれた間合いをダッシュで詰め、再び小剣を振るう。今度はヒットし、そのまま4連コンボを当てて相手をダウンさせた。

「良い調子ですね、マスター」

『あぁ、でも油断しないように』

相手が起き上がる。下手に遠距離戦をすれば、銃器を2つ持つあちらに分があるだろう。ここはやはり、さっきと同じように近接で攻めるか。

銃器に注意しつつ接近すると、相手は新たな武装を呼び出した。

ハンドガンでもライフルでもない、3つ目の銃器、その銃口が前に走るエンルに向けられて―――

『マズイ……ガードだ!』

ガトリングが、火を吹いた。

 

ガガガガガガガガガガ!!

 

カカカカカカカカカカン!!

 

とっさにシールドでガード、だがガトリング弾がみるみる内に削り、シールドの色が緑から黄、限界寸前の赤に変わる。

『くっ……堪えて、くれ……』

「うぅ……もう少し、持もって……」

ガトリングの弾切れかシールドの限界、先に向かえた方がおそらく負ける。

 

そして、

 

 

パリーンッ!

 

「きゃあ!」

それらは同時に訪れた。

シールドが破壊された時、相手のガトリングの弾が尽きた。

『大丈夫か?!』

「は、はい!」

エンルは体勢を立て直す。相手はガトリングを終い、ライフルを構えている。

『ジャンプで回避!』

引き金が引かれ、ライフルの弾丸が飛ぶ、それを確認後にエンルは上へとジャンプし、弾丸を避けた。

『ロックオン』

空中で銃器を構える、相手もライフルの銃口を向けるが、

『発射!』

「当たって!」

こちらはランチャー。ライフルよりも弾数と連続射ちが出来ないが、その分威力がある。

引き金を引き、青白い光線が相手に一直線へ向かう、一瞬早かったこちらの光線が相手に直撃した。

『今の内だ、決めるぞ!』

「はい!」

そこからは高速の必殺技。神姫にインプットされたレールを通っての高速移動からの攻撃。

その名前は、

『レールアクション! ATK:小剣』

唱えると同時にエンルが発動のポーズを取る、その瞬間青い光が現れて軌道を作った。

「行きます!」

その軌道に乗り、エンルが高速で移動をする。右手に小剣を握り、相手の右側面へ移動、高速で移動した事により防御も回避も間に合わなかった相手を、一突。

 

ガシュン!

 

「うわぁ!」

 

その一撃が決着をつけた。

 

 
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