ひとまず命かながら、プレシアと共に崩れおちる時の庭園から脱出したフェイト、
外に出た彼女はとりあえず待機していたなのはと合流し、
重傷を負ったプレシアを協力してアースラにへと無事に運び込む事が出来た
時の庭園から出てきた時のフェイトの状態を見ていたなのはは言うまでもなく絶句
…どれだけひどい戦闘が行われたかその様子を見て理解する事が出来た
駄目だとはわかっていても、なのはは彼がどうなったかフェイトに聞く事にした
「…フェイトちゃん、イタチさんは…」
「…私が殺した…」
フェイトは即答だった…
その眼が据わった彼女の表情と言葉に訪ねたなのはは眼を見開く
彼女の握り締める血塗れのバルディッシュがそれを物語っているのは明白だった
だが、なのはは何故かこの時フェイトを責めようとはしなかった否、出来なかった
彼がこうなる事が大体感づいていたからかもしれない
…あの幻術の中で交わした会話
あの彼の表情は今も鮮明になのはの頭の中に刻み込まれていた
だから、なのははこれ以上フェイトに言及するのをしようとする事が出来なかった
そうして、ボロボロとなった彼女達は無事にクロノの母、リンディが指揮する艦にへと帰還する事に成功した
リンディは手厚く彼女達の帰還を喜び歓迎した
「…よく無事に帰ってきました」
暖かい笑みでそう戻ってきた二人に告げるリンディ
だが、そんな歓迎の中…二人は表情を曇らせていた
「…ごめんなさい、今私達、そんな気分じゃ…」
「…………」
リンディの言葉に俯いたままなにも答えないフェイトと、視線を外しそう応えるなのは
リンディはすぐさまそれがイタチを救えなかった事だとわかるとその口を噤んだ
彼女達にとって彼の存在はとても大きなモノだと彼女はわかっていたからだ
そして、血塗れになったフェイトのデバイスは多分イタチとの戦闘でついたもの
…命のやり取り
彼女にそんなモノをやらせてしまったという罪悪感、いや、この場合は命を奪わせたと言うべきだろうか
とりあえず、言い表す事の出来ない酷い事をやらしてしまった
…後悔という心情がこの時のリンディの中をいっぱいに満たしていた
ひとまず、彼女は暗い心情のフェイト達を安心させる様にある報告をし始める
そう、フェイト達に運ばれてきたプレシアテスタロッサについてだ
「…ひとまずプレシアは命に危険性はなかったわ今、別室で治療中よ」
「…はい」
俯いたまま、淡々と語り出すリンディに力無く答えるフェイト
そんな彼女の様子に対してリンディは更に続ける様に話を紡ぎ出す
「…それと、もう一つ報告なんだけれどーーーーー」
そう、リンディが俯いているフェイトに言い掛けたその時だった
俯いていた彼女の耳に元気の良い声がアースラに響き渡る
「なぁに辛気臭い顔になってんだい?」
それは何処かで聞いた事のある声
いつも隣にいて自分の事を支えてくれたある使い魔の声だった
先程まで、俯いていた彼女はその声に思わずハッと我に帰る
彼女はすぐさま、声がした方にへと振り返り眼を見開いた
そう…そこには信じられない光景
死んだと思っていた彼女が自分の眼の前に立っていたのだ
フェイトは震える声でしかし、彼女の名前をはっきりと言って訪ねる
「…ア…ルフ?」
「…そうさ、なんだいそんなビックリした顔して…幽霊じゃ無いよ」
彼女はフェイトにそう告げると嬉しそうに笑みを溢した
あの時確かに殺されたと思った
真っ赤な血が飛び散り、イタチが彼女の懐に入り身体を苦無で貫いた所まではっきりと見ていた彼女は未だに信じられない
そうして、暫くして眼の前に立っている彼女が本物だと分かるとフェイトは駆け寄りその事実を喜んだ
アルフの身体に元気良く飛びつき、嬉しさのあまり泣きつくフェイト
一方、フェイトに飛びつかれたアルフはそんな彼女の行動に思わず苦笑いを浮かべていた
…ボロボロの身体になってはいるが、重傷の痕跡は無い
よかった、ほんとうによかったとアルフに飛びついたフェイトは泣きじゃくりながらそう何度も何度も呟いた
そんな彼女の頭を飛びつかれたアルフは仕方ないといった表情で優しく撫でてやる
それは彼女が心の中をしっかりと落ち着かせ整理がつくまで続いた…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そうして暫しの時が過ぎ、心を落ち着かせたフェイトはすぐさま抱いていた疑問を彼女にへと訪ねる事にした
何故彼女が無事だったのか…
当然である、なにせフェイトはあの時確かにイタチから刺されたのを目の当たりにしていたのだ無事な事が寧ろおかしい
だが、一方、その疑問についてアルフは言葉を濁していた
気絶していて、あまり覚えていない等…気がついたら助かっていた等
どれもフェイトが知りたい情報に疎いものばかりであった
そんな彼女達の話に割り込む様にある人物がゆっくりと口を開き語り出した
「…その事については僕が語ろう」
フェイトとアルフはその割り込んできた人物にへとすぐさま視線を移す
仏頂面で何処かいけすかないその人物
そう、その人物とは時空管理局の執務官クロノ ハラオウンであった
彼女達は口を挟んできた意外な人物の登場に一瞬、戸惑いを見せた
一時協力していたとはいえ、いままで敵対していた筈の彼が出てきたのだ
アルフに関して口を挟んでくるとは意外としか言いようがない
そんな彼女達にクロノはゆっくりとアルフが無事であった事の経緯を語り始める
そして…、その内容は彼女達にとって驚くべきものだった
「…うちはイタチとの君との戦闘中、僕が保護した…
戦っていた筈の彼から直接身柄を引渡されて…ね」
クロノは視線を逸らしながら静かな口調でそう彼女達に告げる
瞬間、その場の空気が一気に静止した
フェイトとアルフはクロノが何を語り出したか理解出来なかった
…意味がわからなかった
イタチがアルフを引き渡した? 彼は自分と命懸けで戦っていた筈
その言葉に静かに聞いていた筈のアルフは勢いよくクロノの胸倉を掴み上げた
ふざけるなと、そう彼に訴えかけるように…
その眼には怒り、
当たり前だ、あれだけ酷い事を自分達にやってきたイタチを急に擁護する様な口調で話すクロノに彼女は怒らずにはいられなかったのだ
「…あんたさぁ、自分の言ってる事わかってんの…?」
アルフは眼が据わり、殺気を露わにしながら意味がわからない事を口走るクロノに静かな声色で問いかける
そのアルフの様子になのはとリンディは眼を見開き慌てて仲裁に入ろうとする
だが、イタチを擁護するクロノの態度に怒りに激情した彼女は止まらなかった
「…いい加減にしろよ! 自分があいつに騙された事を認めたく無いからって見苦しいんだよ!あいつが私達に何をしやがったかわかんだろ!
…大体、偽善者振ってた腹黒いあいつに私が助けられた? ハッ! ふざけんじゃ無いよ! フェイトに助けられた恩を仇で返すあんな人間のクズに…」
「………」
「ちょっと!やめなよ」
「何をしてるの!!」
沈黙したまま、只々胸倉を掴み上げるアルフから投げかけられる罵声を聞くクロノ
そして、そんな怒りを露わにしながら口走る彼女を制する様に仲に入る二人
だが、この時のアルフの怒りも止めに入ろうとした彼女達はわからない訳ではなかった
酷い事をしてきたのは間違いない、フェイトの母親をあれだけ痛めつけ、その上ジュエルシードを横取りし尚且つ、彼を信頼していた筈のフェイトまでを手に掛けようとしたのだ
そのイタチを擁護する等どんな道理があるのか、答えは否である
そんな怒りを露わにするアルフの様子にフェイトもまたおなじくクロノに怒りを感じていた
許せない、自分達を騙し、母親をあんな風にして沢山の人の命を奪ったあの忍を…
先程から話を黙って聞いていた彼女の奥底から怒りがこみ上げてくる
そうして、気がつけば彼女は怒りに任せ、荒げた口調で胸倉を掴み上げられているクロノに向かい罵倒していた
「ふざけないでよ!! なんで、お母さんやアルフ、そして色んな人達にあんな事を平気でする人を庇うの!」
胸倉を掴み上げているアルフから、彼女達は声を上げて怒りを露わにするフェイトにへと視線を移す
彼女達は驚いていた、普段物静かな彼女が声を荒げてあのように怒りを露わにするなど考えた事がなかったからだ
怒りに任せた彼女は更に続ける様にクロノを罵倒する
「お母さんを傷つけて!アルフを傷つけて!そして、私を殺そうとした!いい人振って、私達の事を平気で騙して!
あんな人!兄さんなんて呼ぶんじゃなかった!」
その瞬間、先程から胸倉を掴まれたまま黙って聞いていたクロノがフェイトのその一言にピクリと身体を反応させる
そして、彼は自分を掴んでいたアルフの手を右手でパチンと弾く
その自分に対してクロノのとった行動に眼を見開くアルフ
「…除け、」
クロノは静かにただ威厳のある声でアルフにそう告げた
胸倉を掴んでいたいた筈の彼女はそのクロノの一言に思わず身体が硬直する
何かを含んだ様なそのクロノの声に彼女の怒りはスッと冷え切ってしまったのだ
そうして、胸倉を掴まれていた彼女から身体を開放されたクロノはツカツカと沈黙したまま、自分にへと罵倒してきていたフェイトにへと沈黙したまま近づいてゆく
…フェイトにへと近づく彼のその表情は俯いているせいか上手く伺う事が出来ない
ーーーーーーーそして
パァン! とフェイトの頬が高い音を立て弾けた
その場にいた全員はクロノのとった行動に只々、眼を白黒させる
そこには、フェイトの頬に向かって思いっきり平手を打ったクロノの姿
「…え?」
頬を打たれた彼女は同時に間の抜けた様な声をその場で溢す
そうして再び訪れる、空白の沈黙の時
クロノから頬を打たれた彼女は某然と状況が呑み込められないでいる
そんな彼女に表情が見えないクロノは怒りからか、それとも悲しみからか震えた声でこう告げた
「…それ以上、彼の事を侮辱する事は絶対に許さない!」
そう一言放つと同時に顔を上げるクロノ
クロノのその言葉にアルフは再び食って掛かろうとする
だが、上げた彼の顔を見て彼女はピタッと掴みかかるのをやめた
…フェイトの頬を打った彼の瞳には涙
何故泣くのか、その理由は…
そんな彼女の疑問に答える様にして、クロノはゆっくりとある事を口走り始めた
「…フェイトテスタロッサの使い魔を殺害する為に送り込まれた十六名の管理局員の殺害、及びロストロギア、ジュエルシードを回収する為にテスタロッサ親子への脅迫…これが…何を意味するか分かるか?」
いったい何を言っているのだろう…
聞いた事の無いような罪状を淡々と語り出すクロノの言葉にフェイトは理解出来ないでいた
そんな彼女にクロノは静かな口調でこう告げる
「…うちは…イタチの罪状だ」
「…!!」
その場にいる全員、そして彼の語る話に耳を傾けていたフェイトは眼を見開く
…フェイトはそんな事は一切イタチからされていない
いままでジュエルシードを回収していたのも全て母であるプレシアからの指示である
それに、使い魔を殺害する為に送られた十六名の管理局員…って
フェイトの頭の中で色んな事がごちゃ混ぜになり、混乱する
こうして、クロノは静かな口調でゆっくりと彼女達にへと語り出す
ーーーーー…うちはイタチという人物を…
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沢山の血を流し、同じ一族を手に掛けた一人の男
彼は唯一の弟と対峙して命を散らせた。
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