No.450789

狼男のスカイリム冒険記

神山夏彦さん

帝国タムリエルは窮地に立たされていた。Skyrimの王は殺害され、王位継承のために同盟が形成されていった。内紛が起こる中、長い歳月閉ざされていたElder Scrolls(エルダー・スクロールズ)へ通じる道がタムリエルへと開かれ、太古の邪悪な生物たちが蘇った。Skyrimの未来は、唯一ドラゴンに立ち向かうことのできる救世主“ドラゴンボーン”が現れるという予言を待ち望みながら、生死の淵を彷徨うしかなかった……。―――――――べゼスダゲームの傑作・スカイリム二次創作です。なるべく原作のセリフや言動を崩さないようにやっていきますが、どうしてもほころびが出ます。ご容赦ください。ある程度の原作崩壊(キャラ生存・死亡、主人公設定など)はありますので、それがお嫌いな方はご注意ください。主人公最強・ご都合主義・ややエロ(?)などを含みます。主人公は原作未プレイです。にじふぁんから移動してきました。

2012-07-10 23:57:37 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:3465   閲覧ユーザー数:3429

プロローグ2~解放~

 

 

 

俺がこの世界に生まれたと自覚したのは、生まれて3年経つか経たないかの頃だった。黒髪で今ではひげも生えた立派なノルドの男、それが俺。急な記憶の流入のせいで熱を出し、親に心配をかけたのもいい思い出だ。それから少しして自分の状況を確認して、俺は前世の日本で死んだことを思い出した。しょうもない死に方だったよ。二十歳の大学生だった俺は、講義やらなんやらで遅くなった学校帰りに酔っ払いに押されて電車にグシャ、だ。そのせいか知らないが、酔っ払いを見ただけで殺意が湧く。ちなみに俺自身はこの体になってから酒にかなり強くなったのか、俺がそうなることはない。なので好きなだけ酒を飲んできた。

 

 

閑話休題。

 

 

死に際の恐怖も思い出して数日ビクビクしていたが、両親に諭され事情を話すと、泣かれた。だがそれでも自分の子供だと言ってくれたのはすごくうれしかったのを覚えている。が、それからというもの両親の遠慮が無くなった。元が二十歳ということで、早々根を上げることはないだろうと一気に鍛えられた。この時俺はこの世界がゲーム『oblivion』と同じだとわかってスキル上げだー!と息巻いていたが、早々にこのキツさを実感して死にかけることになるとは思いもしなかった。しかも年代が違ってオブリビオンの動乱は過ぎ去っていたため、ゲーム知識はまるで通用しないことがわかって落ち込んだ。

 

 

ブルーマはスカイリムに近いためとても寒く、クマやオオカミが他と比べて多くいる。しかも寒さのせいか、他よりも強い。大の大人でも死ぬ人が多い。そこに当時十歳にまで成長した俺をおつかい感覚で狩りに行かせやがった。いや、元傭兵で同胞団という戦士ギルドみたいなところにいたっていう両親のおかげで戦い方は分かっていたけども。

 

 

初めて他の命を奪うということでビビりまくり、死にかけたのもいい思い出だ。平和すぎた日本にいた俺にはかなりの衝撃だったんだが、両親はそんなのお構いなしに次々に俺を戦いの場所に連れて行った。まぁ、殺し殺されるが多いこの世界の住人からすれば俺こそが異端で柔なんだとわかって、心の整理がついてからは自分の中のノルドの血のせいもあってか、普通に戦えるようになった。というか、そうしないと俺が死んでいた。『うじうじしている暇があったら剣を取れ、弓を構えろ、呪文を唱えろ』は親父の言葉。親父なりの気遣いだったんだと思う。あの人脳筋だったし。

 

 

そんなこんなで近場の山賊とかも親父と一緒に討伐してその金で生活していると、やけに体が熱くなる感覚がしたと思ったら、下着一枚で外にいた。いや焦ったね。横にいてやけにニコニコしている両親が気にならないほどパニックになっていたよ。そのあと着替えて毛布にくるまり暖炉に連れて行かれた俺が両親に笑い話みたいに言われた。

 

 

「お前、ウェアウルフだから。俺達も」

 

 

頭が真っ白になった俺を誰が攻められようか。まさかの生まれた時からウェアウルフ。両親も俺がこの血を受け継いでいるとは思っていなかったらしい。というか前例がないとか。それで俺は初の純血のウェアウルフということになるんだと聞かされた。まぁ、銀製とデイドラ装備に気をつけなさいとお袋に言われたよ。旅の途中で一回銀製のナイフで食事中指を切った時に死ぬほど痛くて、このお袋の言葉を思い出した。

 

 

それからはウェアウルフの力の制御方法も教わり、変身時間を伸ばす訓練もした。ここらへんがゲームと違っていて、俺は頑張れば半日続けて変身出来るようになった。そして一番驚いたことは、夢の中で狩りを司るデイドラ・ハーシーンに会ったことだろう。伝承の通り角の生えた男性の姿で狼を連れていた。

 

 

彼は俺をしばらく見て、大笑いし始めた。曰く、趣味で作った人狼病に純血が出来るとは思っていなかったとか。そのあとしばらく一緒に話して――もちろん敬語だ――俺が転生者というのも一発でバレたり、狩りがなんたるかとかシェオゴラス死ねばいいのにとか色々聞かされた。一通り話し終えて俺が目覚めそうだとわかると、彼は『ハーシーンの指輪』をくれた。理由は良い暇つぶしが出来た事と、純血誕生の祝いとの事。元々これを渡そうとして来たんだそうだ。これからも狩りに励めと言って笑いながら、彼は消えていった。目覚めると指にはハーシーンの指輪が嵌っていて両親をまた驚かせたが、俺は普通に寝不足でその日は丸一日寝ていた。ハーシーン様、ちゃんと寝かせてください……。

 

 

それから体もがっちりしてきて背も伸び、大人のノルドの仲間入りをし始め、ブルーマの周りで生活していると、両親が旅に出ろと言ってきた。年齢は十五、スキル上げに勤しんでいた俺には吉報だった。熟練度やそのスキルレベルの上がりようが緩くなっているのを日々肌で感じていた俺にとって、他の町に行けるのはかなり好奇心を刺激されたのも相まって、行くと即答した。

 

 

今まで娯楽の少ないこの世界で中身おっさんの俺が子供と遊べるわけがなく、鍛錬以外日々暇である。なので鍛冶場で同じノルドのおじさんに色々教えてもらったり、魔術師ギルドで魔法や錬金術を学んだりした。ギルドではいい顔されなかったけど、ひたむきにただ学ぼうとしていたのでそこだけは評価されていたみたいだ。

 

 

そういうわけでスキルと技術は上がっていたので自分で装備を作っていく。初期の装備は金銭的な事もあって鋼鉄装備だった。それらを自分だけで作り上げた達成感は凄かったのをよく覚えている。そしてそのあとはサバイバル用品とかの買い出しと食料の買い出しとかで時間を過ごし、ブルーマの知り合いに挨拶をして街を出た。

 

 

それからは本当に楽しかった。色々な場所に行って人と出会い、遺跡を巡って宝を発見し、戦っていく日々。人の助けになるようなこともしたけど、裏切られることも多かった。それでも何だかんだで自分に見返りが来るから人の頼みをかなえていった。金になったし、物も手に入ったしね。その途中の遺跡で物を空間に収める魔法、というかまんまのメニューを手に入れることができたのは一番の発見だろう。これで物を取られるとか置き場所に困ることが無くなった。もっとも、これは一回しか使えない魔道書で、ほかの人に不審に思われないようにある程度の金と荷物は出して持ち歩いていたけどさ。

 

 

そして鍛え抜かれたこの体と魔法を駆使していくうちに自然と名声も高まっていったのか、貴族様方の依頼もあったりした。泥臭い政治的な暗躍から美人の未亡人のお世話まで。本当においしいお仕事ですありがとうございました、な感じが多かった。その分暗殺されそうになったりする機会も増えたけど、町の人が助けてくれたり自分で返り討ちにしたりしている。

 

 

ちなみに男娼の声をかけてきた奴らは血祭りにあげた。賞金首に一時期なったけど、街の有力者の依頼で家族を賊の誘拐から助けていたり他にも手伝っていたりしたのでその人に助けてもらって何とかなった。そのホモ貴族は入り婿だったらしく、奥さんが速攻で別れを切り出したらしい。俺はそんなことがあってからは一切来なくなって万々歳だったけども。

 

 

まぁ要は、頑張ってたら前世では考えられないくらいモテた!ってこと。

 

 

こんな時代だ。街から出て死にましたとか強盗にあって死にましたとか死霊術師に使われて死にましたとか山賊に身ぐるみ剥がされて殺されましたとか……本当に死が間近にある。そんな中、単騎で山賊の住処や吸血鬼の集団から生き延びる男がいて、家を数軒買える金も有力者との繋がりも持ってるとくれば、そりゃあ優良物件と言われるわけで。それにたとえ中身の年齢が結構な物でも、体は健全な若者なのだ。

 

 

しかも俺の顔は結構イケメン君らしい。右目と左頬に傷跡があるし、ゴツイからかなり強面でこりゃあモテないだろうなとばかり思っていたが、そこが良いらしい。うっとり顔の全種族の女性・計五十人に聞きました。アルゴニアンの尻尾は抱き心地が意外tごほんごほん……まぁそれで調子にのってヤる前に薬盛られて一回金とか取られてからは反省したけどね。奪い返して山賊の住処で好きにしていいって言って置いてきたけど。

 

 

そんなこんなでたまに帰郷しながらデイドラの頼みを聞いたり司祭の頼みを聞いたりして、二十歳を間近に控えたころ、両親が死んだという手紙が届いた。その時俺は帝都にいて、久しぶりに会った戦友のオークと話していた最中だった。俺は知り合いに馬を借りて飛んで帰り、まだきれいな両親の遺体に会えた。遺書には俺の生まれ故郷はスカイリムのリフテンであることと、知り合い及び親戚はもう死んでいるのでいないこと、ハーシーン様の所で狩りを楽しんでくること、そして俺を育てることが出来て幸せだったと書かれていた。久しぶりに、大泣きしたよ。

 

 

それからしばらくは喪中に服し、訪れてくれる友人達に礼を言っていった。あのオークの戦友から聞いたらしい。本当に良い友人を持った。元が日本人で異世界人だから種族関係なく接したせいでハイエルフのツンデレチビッ子貴族と子連れノルドの友人がばったり会って、いざこざも起きたりして面倒だったりしたけど。それでもいいやつらなことは変わりない。

 

 

喪に服すのもしばらく経ってあと二月もすれば二十歳になる頃、俺は両親の遺書にあったリフテンに行くことを決めた。シロディールは大まかに見て回ったし、自分の生まれ故郷を見るのも悪くないと思ったからだ。なので俺はその旨をご近所さんに言って回り、友人たちに手紙を出した。速達を頼んだからか、返事も何通か来てうれしかった。『また会いに来い』『死ぬなよ』『腰を下ろす所が決まれば教えて』『ま、また会いに来ないとお父様に言いつけてやるんだから!』『行く前にあなたの子供がほs』などなど。最後のは触れないが、一個前はもちろんツンデレ貴族ちゃんからの物だ。このお父様が娘に甘いサルモールの高位法官なので、ある程度仲良くなれたとはいえ下手したら本気で死にかねない。

 

 

そうして一週間かけて身支度を整えて、国境に出発した。相変わらず寒かったけどそれもまた旅の醍醐味だ。

 

 

 

まぁそのあとは今に至る。国境越えの最中に帝国兵に囲まれてその時の手持ち金とデイドラ防具一式、デイドラのグレートソード、弓、魔法耐性の首飾りを取られた。咄嗟にハーシーンの指輪はメニューに突っ込むことが出来たのが不幸中の幸いか。しかし、あれらの装備はこのクソ帝国兵共には惜しすぎる代物。それと友人達に一言も言えなかったのが後悔か。あのツンデレ貴族ちゃんの約束も守れなくなるからブルーマが大変なことになるだろうな……ごめんなさい。

 

 

「――い――お――」

 

 

あぁ、なんだか頭がくらくらとする。もう死んでしまったのだろうか。ひどい耳鳴りがして、体一つ動かせない。そういえば俺はソブンガルデに逝けないんだった。レイロフ達には悪いことをしたな……。

 

 

「――のっ!ヴィンセント!起きろってんだよ!」

 

 

「ぶっ!」

 

 

頭の揺れが収まる代わりに右頬に激痛が走る。次第に見えだした周りは炎が燃え盛っていて、何個もの焼死体が見えた。そして目の前には俺の胸ぐらを掴んだレイロフとロキール、ウルフリック首長。いったい何が?

 

 

「やっと起きたかこの寝坊助め!どうやら俺達にソブンガルデはまだ早いようだ!」

 

 

「悪運が強いな、ヴィンセント!」

 

 

「起きたなら早く行くぞ!ここもいつドラゴンに襲われるかわからん!」

 

 

ロキールが処刑人の持っていたはずの斧で手の縄を切ってくれる。おぉ、黒檀か。いいの使ってたんだな……じゃない!頭が混乱しているからか、変なことを考えてしまう。

 

 

「何が何だかわからんと思うが、とにかく聞け。お前の処刑の直前にドラゴンが現れてお前を声で吹き飛ばしたんだ。そのおかげで助かったんだが、今の今まで意識を失っていたんだよ」

 

 

「ほら、この両手斧はあんたが使ってくれ。俺じゃあ無理だ」

 

 

血肉で錆びついた黒檀の両手斧をロキールに手渡され、レイロフから説明を受ける。未だ頭は混乱しているものの、体は動く。こういう時さっさとしないと経験上早く死ぬ。だからドラゴンなんておとぎ話じゃないのかとかの質問は後回しで先行したウルフリック首長についていった。そしてとりあえず避難出来る塔に入るか入らないかの所で不意に日が遮られる。

 

 

《フォス・ロー・ダ!》

 

 

その声と共に衝撃が起き、要塞や家が崩れていく。黒くとげとげとした鱗を纏ったその巨大な姿。まさしくドラゴンがそこにいた。


 
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