No.450296

DIGIMON‐Bake 1章 8話 ネット上のデジモン /9話 君の正義

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8話 ネット上のデジモン ・9話 君の正義
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2012-07-10 08:04:04 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:1029   閲覧ユーザー数:1024

8話 ネット上のデジモン

 

 

 暑い。何故こんなに暑い。

 しかしその答えは直ぐに見つかった。

 

 

「深……起きてくれ……」

 

 

 それは深が俺を抱えて寝ているからだ。それも布団をすっぽり被って。

 

 一昨日昨日今日とこのニンゲンと過ごして分かった事がある。

 兎に角こいつは良く寝る。

 場所、時間、そんなものは関係ない。眠たくなったら寝る。なんて睡眠欲に忠実なヤツなんだ……

 

 

「おい、ほんといい加減にっ」

 

 

 何度話しかけても反応はない。何せ俺は布団の中なのだから。つまりは深と布団に板挟み状態な訳だ。

 いっそ軽く噛んでやろうかと思った。しかし、何とか堪える。

 ロードナイトモンもそれなりに我儘なヤツだが……これは新手の嫌がらせというか……

 ロードナイトモンとは正反対で強引さは全くない。しかし無気力過ぎる!!

 俺の中では対処が分からないニュータイプだった……

 

 

「くかぁーー」

 

 

 ……

 本当にどうすればいい……暑いのだが……

 

 困りに困り果てた俺は、落ちつきなく手足を動かしていた。その感触が良くなかったのか、深の腕の力がやっと緩くなった。

 

 

「んーー」

 

 

 両腕を上げたのか、布団も捲り上げられ、やっと暑さから解放される。そして俺の頭の中で"深を起こす方法"が一つ更新される。

 

 

「おはよ」

 

「あ、あぁ。おはよう」

 

 

 腹の上に乗っていた俺は、気の抜けた挨拶を貰った。そこのところはちゃんとしているのでまぁ、いいだろう。

 

 サウナから出た後のように暑さがマシになり、ぼーっとしていた頭も働いてくる。そもそも何故こんな状態になったのか。

 

 それはニンゲン界で言う夏休み前、昼までの学校から帰ってきた深は前置きもなく布団に伏せた。今日は部屋から出るなと言われていたので、深の部屋にいた訳だが、帰ってくるなりバタンと転がった深に何かあったのかと焦ってしまった。

 しかし、何の事はない。顔を見ると只幸せそうに寝息を立てているだけ。

 不意に近づいてしまった俺は、そのまま深の腕に捕らわれ布団に引き摺られたのだった。

 

 どうやら昼寝の1時間は満足のいく1時間だったらしい。

 

 

 起き上がってもぼうっとしている深が、何かを思い出したように話しかけてきた。

 

 

「あーそうそう。ドラコモンは相変わらずの調子だってさ」

 

「そうか」

 

 

 エグザモンと分かれてまだ3日と経っていないが、それは嬉しい情報だった。何が起こるか分からぬ地で安否を確認する事がこれほど安心する事なのだと初めて知る。

 

 いくら俺達を引き取ってくれたニンゲンの学校が同じと言えど、そう毎日は顔を合わせられない。成り行きとはいえ、知った者同士を引き離してしまった深なりの気遣いなのだろう。

 

 

「あとさ、澪がデジヴァイスみたいなのが現れたって言うんだ」

 

「デジヴァイス?」

 

「うん。何か、逆三角形みたいな形の青いのが昨日現れて、それを見せてくれたんだけど……」

 

 

 口では伝えきれないのか、深はペンと紙を取り出し俺の目の前でその絵を描き始めた。

 

 

「こんな感じだったか……」

 

「これが、デジヴァイスか?」

 

「多分、そうらしい」

 

 

 デジヴァイス。それは選ばれたデジモンと選ばれたニンゲンが共に行けるという証。

 リアルワールドに行けば強さを得られると言われているのは、多分これが一つの力であり一つの手段とも言えるからだろう。

 

 

「という事は、二人はテイマーになったという事か」

 

「テイマー……? あーうん。まぁそうなるなぁ」

 

 

 奇妙な事もあったものだな。まさかロイヤルナイツであるエグザモンがニンゲンと共になるなど……

 

 

「テイマーか……具体的に何するんだろうな」

 

「俺がデジタルワールドで見たニンゲンのテイマーとやらは、カードを使ってパートナーデジモンの援護をしていたが」

 

「カードでか。そんな事出来るのか!? ん? ってかデジタルワールドにニンゲンっているのか!?」

 

 

 不味い発言だっただろうか……

 正直なところ、俺はテイマーとそのデジモンにそんなに詳しくない。

 かなり興味を持ってしまったような深に、取り合えず分かる事だけ言う事にする。

 

 

「普通にいる訳ではないが、ニンゲンはいるぞ。俺達がこっちに来れるようにニンゲンも行けるのかもしれん。 カードは良く分からんがな」

 

「そうかぁ。やっぱりこれも現実にあるんだな」

 

「現実に?」

 

「うん。デジモンってさ、物語や想像の世界だけのものだと思ってた」

 

「そうか……」

 

「ごめん。否定してる訳じゃないんだ。ただ本当にあるって知って嬉しかっただけだからさ」

 

「……」

 

 

 その先は何て返したらいいか分からなかったが、デジタルワールドでもニンゲンを見るものは一部だ。だから、多分こっちでも同じようなものなのだろう。一部のニンゲンがテイマーとなり事実を知る。

 やはり、デジタルワールドもリアルワールドも何処か似ている。だからこそ、エグザモンのようにこうやって新たな道が開けたりするのかもしれない。

 

 

「なぁなぁ、レオルモンってネットとか詳しいの?」

 

 

 パソコンに電源を入れながら深そう尋ねてきた。

 

 

「まぁ、詳しいんじゃないか?」

 

「そうか! あのさ、コレ、見てほしいんだけど……」

 

 

 無機質なデスクトップ。此処に来て最初に見たパソコンのデスクトップは俺達ロイヤルナイツが飾ってあった。その後分かった事だが、あの小さなパソコンの所有者は澪だったようだ。

 

 見てほしいと言われ、パソコンが置いてある机に飛び上る。そこにはネット画面が開かれていて、俺達デジモンがネット上で育成出来る、というようなサイトだった。

 

 

「デジモンの育成か?」

 

「うん。ちょっと前までは小さい携帯ゲームだったんだけど、今はネット上でも出来るんだ」

 

「便利になったのだな……」

 

「まぁ、なったな」

 

 

 成程。ネット上でデータを管理する数が多くなったという事か。もしかして俺達のデータ整理が多いのはその所為なのだろうか?

 

 

「でさ、思ったんだけど、こういう所からデジモンが来たりとか、生まれたりってするのかな」

 

「どうだろうか……」

 

「そもそもこのネット上のデジモンって、本物か?」

 

「本物……? いや、これは本物ではない」

 

「そうか」

 

「ああ。お前が言う本物とは、俺達のように生きている、という事なのだろう?」

 

「うん。例えばさ、このネット上のデジモンが本物なら、そしたらこっちに出て来る事も可能なのかって思った」

 

「成程。デジモンが本物であるかないか。それはデジタルワールド、もしくはリアルワールドでその姿があれば本物だ。だがここにあるのは画面上の只のデータ。本物ではない」

 

「うん」

 

「このデータから本物が生まれる可能性がないとは言い切れないだろうが……」

 

「姿が出来るって事か」

 

「ああ」

 

 

 深が思いついたデジタルワールドへの帰り道。つまりはこのサイト上のデジモンが本物であったら、ゲートもあるのでないかとの予測だ。ぼうっとしているようで中々頭は回っているらしい。

 

 

 

 ぴろぴろ――

 

 

「「?」」

 

 

 ぴろぴろぴろ――

 

 

「レオルモン、今何か聞こえたか?」

 

「ああ。聞こえた」

 

 

 機械的な音が聞こえる。どこからか……それはどうやらパソコンからのようだ。

 

 

「誰、ってか何だ?」

 

 

 深パソコンに話しかけると、機械的な音は言葉となって返ってきた。

 

 

『よかった。聞こえるひとがいるんだね』

 

 

「? まさかお前、ここに存在するデジモンか?」

 

 

 「うん」と返したそいつは、まさに本物か本物でないか、先の話を証明するかのようなタイミングだった。

 

 

「デジモン……!? まさかこのサイトから生まれたデジモン?」

 

『うん、ボクはここで生まれた』

 

「お前はリアルワールドにテイマーがいるのか?」

 

『うん、ボクを育ててくれたひとはいるよ』

 

「じゃぁここから出ようとは思わないのか?」

 

『出たいよ……けど、出れないんだ』

 

「出れない?」

 

『阻むんだ。あのデジモンが。今もそう……』

 

「今も!? ってちょ、おい!」

 

 

 ザザザ、と雑音が入り、段々と声が聞こえなくなる。そして最後に聞こえた言葉は

 

 

『たすけて、ボクの願いを』

 

 

 これを残し、ネット上のデジモンとの会話は断たれた。

 

 

 

 

9話 君の正義

 

 

「助けてって……何があったんだ!?」

 

「分からない……だが他にもこのネット上にデジモンがいるという事か」

 

 

 会話が途絶えた最後の言葉、「たすけて」と「ボクの願いを」。しかし、あまりに突然過ぎる出来事にどうしていいか俺は判断しかねない。

 

 だが深は違った。相手が敵かどうかも疑わないまま、気だるそうな目でこう言ったのだ。

 

 

「このネット上の世界に行けないだろうか」

 

「お前っ、この中に行くというのか!?」

 

「だって助けてって言ってたろ。しかも何だよ『ボクの願いを』って!? 気になるだろうがっ」

 

「お前は気になるだけで中身が分からない世界に行くというのか!?」

 

「だったら放っておくのかよ!?」

 

「そうは言ってない! だがお前がそこに行って戦えるのか!?」

 

「……それは、……」

 

「必ずしも戦いがあるという訳ではない。だがもしもだ、戦いがあった場合、その光景を見るのはお前だ」

 

「……」

 

「戦いに関しては、デジタルワールドとリアルワールドでは違いすぎる。俺はここに来てそれを知った」

 

「確かに、ないよ。デジモン達がするような戦いはリアルワールドにはない……」

 

 

 リアルワールド(ここ)は平和だ。そしてこいつは、こいつ自身は多分平和だ。

 デジモンがどんな戦闘をするかなどは想像出来るのだろうが、きっとこいつが思っている以上にその光景は穏やかではない筈だ。

 

 そんな者がイキナリ戦いの場に入ってどうしようというのだ? ならばせめて俺一人が行く方がよっぽどいい。

 テイマーでもないお前が、踏みこんで帰ってこれる保証はない。奇跡を起こすマグナモンではないのだから。

 

 

「何とかしたいのなら、まずは澪とドラコモンを呼べ。そしたら俺も共に戦える」

 

 

 そう言うと深は少し伏せていた顔を上げた。

 

 

「おまえは戦えるんだな?」

 

 

 俺は戦えるつもりでいた。そう、勿論自分が成長期である事を前提に、ドラコモンにテイマーが出来たのなら、何とかドラコモンと共に戦えるだろうと。

 だが――

 

 

「俺、一人でか?」

 

 

 深の目に射貫かれた。そして一気に不安が込み上げてきたのだ。今の俺は成長期なのだと。それがロイヤルナイツの力であっても、力は成長期。

 敵がいる中、有力か無力か、そう聞かれると技はあれど力は深と対して変わらないかもしれない。

 

 

「戦う力は持っている。少なくとも俺よりは。違うのか?」

 

「……いや……」

 

 

 何故かさっきと形勢が逆転してしまった。強く問う深に、普段の深ではない一面をみた。

 「いや」を肯定と取った深は軽く俺の頭を撫で、肩に俺を乗せる。

 

 

「戦えるのなら十分だよ。力を貸してくれ。俺はテイマーじゃない」

 

「……何故そこまでやろうとする……?」

 

「……これが何か役目のサインだったら、俺は見逃せない。ここにも俺の役目があるんだったら無視する訳にはいかないからさ」

 

「デジタルワールドの事でもか?」

 

 

 迷わずこくんと頷いた深は完全に瞼がはっきりしていた。

 

 だから戦いの最中で寝る事はないだろう、不謹慎ながらもそう思えたのだった。

 

 

「行こう」

 

「ああ、行こう」

 

 

 行き方など分からない。だが行くと思えば……その先に行けるのだ。

 

 

 パソコンの画面からネット上へ――

 

 デジタルワールドとはまた異なる場所。0と1の世界、そこに辿り着いた俺達。景色は白一色で、本当に生命の欠片も感じられない場所だった。

 それがこの"ネット上のサイト"のデジタル世界。

 以前オメガモンから聞いた事があるが、ここに侵入しネット上のデータを食い尽くすデジモンが現れたらしい。勿論オメガモンがデリートしたのだが、その力は強大であり、相当の深手を負ったと言っていた。

 

 データの補食、そんな事も出来る世界だ、相手によっては厄介といえば厄介。平気でどんなデータを食ってしまうヤツが敵でない事を祈るばかりだ。

 

 

「にしても真っ白だなぁ。ほんとに何もない」

 

「そうだな。何処を目指して歩けばいいのか……」

 

「ほんとだな」

 

 

 深の肩から降り、上下左右を見渡してみる。すると0と1だけでなく、ドット化された平面のデジモンがいるのが見えた。

 

 

「深、あそこにデータが集まっているようだ」

 

「行ってみるか」

 

 

 着くとそこには命が吹き込まれていないデータが無数に集まっている。「たすけて」と訴えてきたデジモンはここから生まれた事になるのだろう。

 しかしながらドット化されたデジモンが周囲に集まってきている。これらには意思などないはずなのに、それを不審に思った時には実体化(リアライズ)したデジモンの気配がした。

 

 

「深、近くにいるぞ!」

 

「何だって!?」

 

 

「侵入者はお前たちか」

 

 

「「!?」」

 

 

 実体化(リアライズ)しているのはネオデビモン。

 

 

「ネオデビモン、完全体かよっ!?」

 

「どうする、このままでは勝算は……」

 

「っ、兎に角戦わないで、あの声のヤツを見つけるのが先だ」

 

「分かった」

 

 

 この場を去るという深の判断に任せ、ネオデビモンを背に走る体勢を取った。

 そして走り去ろうとした時だ――

 

 

「お前達が探しているのはこいつか?」

 

 

 ネオデビモンが片手で抱えていたデジモン、それは幻獣型の成熟期、エアドラモンだった。

 

 

「あんた達は……さっきの……」

 

 

 辛うじて声が出た、という感じだ。だがその声はさっきのもの。

 

 

「おい、そのエアドラモンをどうするつもりだ!?」

 

「こいつをリアルワールドへは行かせはしない。代わりに俺が行く」

 

「リアルワールドへ行く、それが目的なのだな」

 

 

 ネオデビモンもこのドットから生まれたというのなら、こいつにもテイマーがいる筈。ならば弱肉強食、それがデジモンの世界だ。

 

 

「深、どうする。ネオデビモンにもテイマーがいるのならこうなる事は自然だぞ」

 

「これがデジモンの生き方って訳だな?」

 

「ああ」

 

 

 深は悩んでいるのだろうか?表情がよく分からない。

 

 

「とりあえず放せよ。お前のやってる事はお前のテイマーが望んでいることなのか?」

 

「……」

 

 

 ネオデビモンに近づいていく深。

 

 

「だめ……だよ。近づいちゃ、危ない……」

 

 

 エアドラモンが危険を伝えようとするが、深は進むことを止めなかった。

 

 

「助けてほしいんだろ?! そして願いを叶えたいんだろ?!」

 

「だけどこれじゃ……」

 

「皆犬死にか!? 違う! 自分の目的を、役目を忘れるんじゃねぇ」

 

「深!」

 

 

ギルティクロウ――

 

 

「なっ――」

 

 

 ネオデビモンの攻撃が深を狙う。間一髪、俺は深の体を遠くへと押し倒す。

 

 

「何をしている!?  前を見ろ、あともう少しでお前が死ぬところだぞ!」

 

「ごめん……でもあいつの役目はテイマーの元に行ってやる事だろうから……」

 

 

 役目、目的。

 強さや希望じゃない。何故お前はそこに拘る?

 

 

「…………なら、お前の役目はなんだと思っている?」

 

 

「あいつの、手助けに。それ以上の力は俺にないよ」

 

 

 自分に力が無い事への諦め……違う、こいつは――

 

 

「助けたい、のだな」

 

「うん」

 

 

 自分が出来る事の範囲を分かっているんだ。

 このやり取りの内に、ネオデビモンが再び動きだした。

 

 だが、戦える気がする。

 根拠は、ない。

 

 

「俺も、全力で向かおう」

 

「レオルモン……?」

 

 

 自分の範囲内で全力を出すやり方、どうやら俺はそれに心を射貫かれたらしい。

 

 

「レオルモンっ?! 体が光ってる……!?」

 

 

 お前と共になら、俺が探している"正義"が見つけられるだろうか?

 

MATRIX EVOLUTION

 

 レオルモン進化――

 

 

「デュナスモン!」

 

 

 湧き戻ってきた力は究極体へと進化を遂げる。視野は高くなり、四足歩行だった体は二足歩行に。

 碧い羽は白い空間にはっきりと映っている。

 

 

「究極体って……いきなり進化なんて何で……」

 

「リアルワールドに来るまでは俺はこの姿だった」

 

「そうだったのか……?」

 

「ああ。元に戻れたこと、礼を言う」

 

「いや……」

 

 

 ネオデビモンがエアドラモンを掴んだまま向かってくる。驚いている深を背中で隠すと、俺はエアドラモンの救出を優先する。

 

 

「邪魔だぁあ!!」

 

「何っ!?」

 

 加速しようと飛び立ったと同時、あろう事かネオデビモンはエアドラモンを球を当てるかのようにこちらに投げてきたのだ。

 

 

「くっ……」

 

「くそっ!」

 

 

 何とか受け身を取ろうと体を丸めたエアドラモンを、加速寸前でなんとか受けとめた。

 そこに深が駆けつけて来る。

 

「大丈夫か!?」

 

「ああ、何とか……」

 

「ありがとう……助けてくれて……」

 

「喋るな! まだだ、まだ終わってないだろ」

 

 

 生を確認した深は早くも礼を言うエアドラモンを一喝する。

 そしてエアドラモンを抱えながら俺を見た。

 

 

「もう一度言うぞ。力を、お前の力を貸してくれデュナスモン」

 

「勿論だ」

 

 

 本当は、貸し借りなど0なのだがな。

 

 

 気付かれないようフッと笑ってから、こちらに向かって放たれたネオデビモンの攻撃を無効化するように攻撃体勢に入った。

 

 

「俺の邪魔は、させな――」

 

 

 ネオデビモンはそう言いかけたが、勿論俺の攻撃のスピードの方が速い。言葉の途中で薄紫の竜の影がネオデビモンを襲う。

 

 

「ドラゴンズロア――」

 

 

 これにて、ネオデビモンのデリート完了。

 

 

「……呆気ないな……」

 

「すまん」

 

 

 さっきまでの苦労は何だったんだ、と深がぼそりと漏らしたが聞かなかった事にする。

 

 

 

『エアドラモン!? ねぇ起きてよエアドラモン!』

 

 

「? 声聞こえたか?」

 

「ああ、聞こえた」

 

 

 どこかで言った台詞だが、聞こえたのは俺達だけじゃなかったようだ。

 

 

「美咲……?」

 

 

エアドラモンの体が回復してきている。

 

 

「おまえのパートナーか?」

 

「うん。聞こえるよ、美咲の声が」

 

「早く行ってやれよな。待ってるだろうからさ」

 

「でも君達には……」

 

「俺達は大丈夫だから。な?」

 

「ああ」

 

「うん……本当にありがとう」

 

 

 飛べるまでに回復したエアドラモンは、一瞥してからパートナーが呼ぶ方向に飛ぶ。

 

 

「君達に、一つの繋がりを――」

 

 

 最後にそれだけを残して消えていった。

 

 

 

▼▼▼▼▼

 

「なぁ、これってもしかしてさ」

 

「ん?」

 

「俺達がテイマーになったって事か?」

 

「そうだな」

 

 

薄紫色のデジヴァイスを手に、多方向からそれを眺めている深。

 

 

「まぁ、取り敢えず改めて宜し……」

 

「ああ、宜し、って深!?」

 

 

改めて学習した。こいつが寝るのに場所も時間も関係ない。脳内データ更新だ。

 

 

白いネットの世界。深を背負いリアルワールドに帰るまでの道程は長かったように思う。

 

 

 


 
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