No.450015

IS『に』転生ってふざけんな! 第16話

ヒビトさん

これは、米国の軍用IS『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』に憑依転生してしまった少年と、その操縦者であるナターシャ・ファイルスの噺である。

2012-07-09 21:43:20 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3577   閲覧ユーザー数:3480

 最高速度で突進しながら、ガラティーンを上段に構える。

そしてそれを振り下ろし、2人を分断させる。これでエネルギーの回復は最小限に抑え込めたはずだ。

 

 

だが箒を完全に沈黙させなければただの無限ループだ。まず狙うのは紅椿。そして最後に白式だ。

 

 

 

逃げる紅椿に、追う福音。エネルギー弾を撃ち続けながらの追撃戦。

 

しかし、箒は突然反転し、瞬時加速で斬り込んできた。エネルギー弾をその身に浴び続けながら。

 

 

 

俺は最大火力で迎撃するが、それでも箒と紅椿は止まらない。むしろ、加速して接近してくる。

 

 

 

 

 

 

(この程度で……終れるかァァァァ!!!)

 

俺はガラティーンで叩きつけるようにして箒を肩から斜めに斬り伏せた。さらにそこから左膝蹴り、右回し蹴りへと派生させ、最後にもう一回、身体を回転させながらガラティーンを振り下ろす。

 

 

ガツッ という硬い音の後、紅い機体は頭から海へと墜ちて行った……。

 

 

 

(こいつで、確実に潰すッ!!)

 

 

 

 

今度こそ、正真正銘のトドメの一撃となる《銀の鐘》を放つ。

 

 

 

さらにガラティーンで攻撃した時の回転をそのまま利用して、隙だらけのモーションをキャンセルさせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――そこら中から聞こえる数多の爆音と、ハイパーセンサーが捉えた爆発による水柱。それらが紅椿の完全なる沈黙を静かに物語ってくれる。

 

 

 

 

 

 

 

そしてこの瞬間、福音のエネルギーが完全に尽きた。背中から生えた、エネルギーで形成された翼も、徐々に小さくなりつつある。

 

 

 

 

 

 《銀の鐘》の攻撃範囲は広い。一夏も一緒に巻き込まれたはずだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――そう、そのはず『だった』―――――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――今度は逃がさねえ―――――ッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 完全に油断していた俺に迫ってくる、白い機体。

 

 

 

 

俺は――――――突き出される一夏の零落白夜の光刃を、ギリギリのタイミングで右手のガラティーンを使って迎え撃った!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………が、その結果は光刃の行き先を少し変える程度に終り―――――俺の左胸、コアがある部分に吸い込まれるように伸びていった。

 

 

 

 

 

 そしてそのまま押し込まれた俺は、一夏と共に背中から地に落ちていき……周囲を低い崖で囲まれた、小さな砂浜に叩きつけられた。そして鳴り響く警告音(アラート)が、俺にある事を告げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ――――シールドエネルギー残量0――――

 

 

 

 

 

 自我が残っているのでコアの損傷はそこまで酷くはないだろうが、この警告を見るとやはり思い知らされる。

 

 

 

(負け…たのか……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――いや、違う。俺は『勝った』のだ。

 

 

 

…………本当の敵に―――――。

 

 

 

 

 

 

これでもう、ナターシャさんが死ぬことはなくなった。シールドエネルギーとは別の、攻撃や瞬時加速で使用するエネルギーが切れれば、ISの操縦者保護機能は正常に作動するはずだ。

 

 

 

 

初めから、俺には勝利条件が2つあったのだ。

 

 

 1つは原作組の掃討。そしてもう1つが………エネルギー切れ。その後者を、俺は実行できたのだ。

 

 

 

 

 

 胸を張って言える。俺は勝ったのだ。一夏達にではない。篠ノ之束に―――――。

 

 

 

 

 

 一夏はどうやら5人に通信を入れているようで、俺に背を見せる様にして海の方を向いていた。まだ動けない事もないが、もう一夏を攻撃する理由はないので不意打ちなどをする気はなかた。

 

 

 

 

 

 

 

 痛いはずなのに、なぜだかあまりそれを感じない事に違和感を覚えつつも、俺はただただ湧き上がる満足感に気を緩めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(な……………………ッ!!!)

 

 

 ―――――――この瞬間までは――――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 崖の上の木々の間に佇むのは、まるで不思議の国に迷い込んだアリスのような青と白のワンピースと、頭にウサミミを着けている………絶対に忘れられないシルエット。

 

 

 

 

 俺はこの女を、どうやっても許す事はできない。

 

 

 

 そいつへの怒りで、身体が自然に動き始める―――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

(――――篠ノ之……タバネェェェェェェッッッッッ!!!!!)

 

 

 

 

 

 

 他でもない俺の眼前に平然と立つ束に対し、俺は怒りに任せて右手のガラティーンをぶん投げる!

 

 

 

 

 届け!   届け!!   届けッ!!!

 

 

 

 

 

 

 心の奥底からの叫びと共に、ガラティーンは真っ直ぐ束にむかって回転しながら飛んで行く!

 

 

 

 

 ISの出せる最高の力で投げられたそれは、人間であるハズの束には絶対に避ける事ができない!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人を当たり前のように殺そうとした報いを受けさせるために投げられた聖剣は――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――束に当たる直前で――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――光の粒子となって消えてしまった…………………。

 

 

 

 

 

 

 

 《具現維持限界(リミット・ダウン)》――――完全にエネルギーが尽きると、武装の具現化ができなくなってしまう。

 

 さっきまで実体化できていた事すら奇跡だったガラティーンは、俺の最後の願いを叶えるために耐えていたが――――――その直前に、力尽きた………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして去っていく束の背中を、ただ見ている事しかできない無様な俺の意識は、底の無い闇へと墜ちて行った――――――。


 
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