No.450008

IS〈インフィニット・ストラトス〉 ~G-soul~

ドラーグさん

事実上の第一話

2012-07-09 21:38:33 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1971   閲覧ユーザー数:1883

「うっ・・・うぅ・・・・」

 

俺は泣いていた。許せなかった。自分の無力さ、情けなさが。所長があの時俺を脱出させてくれていなかったら俺は今頃宇宙の塵になっていただろう。チャリ、と左腕の待機状態のISが音を立てた。俺は身寄りがなかったところを所長に拾われ、7歳であの宇宙ステーションに行き、そこでISの基礎知識を学んで、所長の手伝いをした。このISだって俺と所長が一緒に作ったISだ。

 

「G-soul・・・・・」

 

そう。それがこのISの名前だ。俺のアイデアと所長の作ったバイオコンピューターが内蔵された、俺専用のIS。だがそれがなんだ。俺は男だ。男はISを使えない。本当は別の誰かに渡されるはずだったこの機体を所長は『記念だから』と俺にくれたのだ。俺は最初は断ったが、所長に逆らえるわけもなく、それを受け取った。

 

ピピッ

 

「?」

 

ふとディスプレイにメッセージが表示された。文面はこうだった。

 

『この脱出ポッドはパラシュートを装着することを前提とし、大気圏内に突入完了後、15秒後に自動分解を開始します』

 

「・・・・・・・」

 

えーと、掻い摘んで、かみ砕いて、分かりやすく言うと、俺は大気圏突入後、15秒したらスカイダイビングをしなきゃいけないのか。そうかそうか。あっはっはっは。

 

「ちょっと待てい!?」

 

え?何?スカイダイビング?宇宙に住んで8年くらい経つけど、地球に戻ってきていきなりスカイダイビングっておかしいだろそれ!!

 

「ぱ、パラシュート!パラシュートは!?」

 

それらしきものはどこにもない。ってことはつまり・・・・・。

 

「ああ、俺、死んだな」

 

おそらく地面に落下した衝撃で俺は即死だろう。ミンチよりひどいことになるかもしれん。いや、なるな。これは。

 

「ど、どうしよう!どうすりゃいいんだ!?」

 

あわあわと慌てるが、一向にいい案は思い浮かばない。どの作戦も俺がミンチになる結末を迎えているのだ。しかし、考えてる間にもどんどんポッドは降下し、もうすぐ大気圏に突入するというところまで来ていた。

 

「やばいやばいやばい!ホントどうすんだよ!」

 

そしてついにその時は訪れた。ピシッ、ピシッとポッドの壁に亀裂が入り、バカッと割れて視界に青空が広がった。

 

「所長の向こう見ずー!ぎゃぁぁぁぁぁ!!」

 

所長へ一言文句を言ってから俺のパラシュートなしのスカイダイビングは始まった。息ができない。体の向きを変えようにも、体が動かない。重力半端ねえ。やばいぞ。どんどん地表が近づいてる。このままではあの島に墜落してしまう。あれは・・・・・学校か?なんてこった、学校なんかに落ちたら、新聞の一面に載ってしまう。なんとかせねば・・・・・。

 

「!」

 

すると俺の目にあるものが飛びこんだ。待機中の俺のIS、G-soulだ。俺は藁にもすがる思いでG-soulに意識を集中させた。

 

(俺はこんなところで死ぬわけにはいかねえ。所長が助けてくれたこの命をこんなとこで消してたまるか!G-soul!俺専用のISなら、なんとか、なんとか!)

 

「なんとか・・・・・しやがれえぇぇぇぇぇぇ!!」

 

カッ!と眩い閃光に視界を塗りつぶされ、目を覆った。目を開けると、そこには見慣れない手があった。白に黄色のラインが入った大型の小手のようなものが俺の手を包んでいたのだ。

 

「マジかよっ!?」

 

俺は歓喜した。俺が、俺がISに!夢かと思ったが、体中に感じる風が現実を物語っている。

 

「よぉし!」

 

俺はまずこの落下速度をどうにかしようとした。姿勢制御系の装備は・・・・・っと、背部スラスターか。よし、これは使えるかも!俺は背部スラスターを起動させた。

 

ブォォォン!!

 

豪快な音を立てながら、スラスターは起動した。しかし、なぜだろうか、さっきより速度が上がってる気がするぞ?すると、俺の前に画像が浮かび上がった。

 

『速度オーバー。方向制御、速度制御不能』

 

さっきも見たぞ?こんなの。もう、多少の事には驚かないな。画像の横に、もう一つ画像が浮かんだ。

 

『ビームバリアの使用を推奨します』

 

ナイスアイデア!俺は腕に装備されているビームビームバリアを最大展開した、最大展開のシールドは大分目立つ。だがそんな事もう関係ない!

 

ガサガサガサ!大きな音を立てて、森に突っ込んだ俺。ドッゴォォォォォン!!爆音を轟かせて森に墜落した俺は衝撃で頭がくらくらした。

 

「おーい。誰かいるのかー?」

 

誰かの声が聞こえる。足音がするということは近づいてるのだろうか。

 

「おい!大丈夫か!?」

 

誰かが駆け寄ってくる。ああ、お礼を言わなきゃな。顔をあげるとそこには心配そうに俺を見るIS、打鉄を装着した、俺と同い年くらいの男が立っていた。


 
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