No.449916 IS インフィニット・ストラトス ~転入生は女嫌い!?~ 第二十話 ~悪意の来襲~Granteedさん 2012-07-09 19:48:34 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:10592 閲覧ユーザー数:10016 |
~屋上~
そんなこんなでクロウ達は屋上にいた。ひとつのテーブルをみんなで囲む、という図式で昼食をとっている。屋上はきれいに整備され、植物もたくさんあり、まるで屋上庭園の様だった。
「一夏、きょ、今日はお前の分の弁当も用意したぞ。食べてくれ」
「お、ホントか!サンキュー、箒!」
二つの弁当箱を取り出す箒。負けじと鈴も、
「そ、そうだ一夏!私も作ってきたの!ほらあんた、前に私の酢豚食べたいって言ってたでしょ!」
タッパー一杯に入っている酢豚を取り出す。セシリアもおずおずとバスケットを取り出し、
「クロウさん、私も今日はたまたま目が早く覚めまして・・こういうものを用意してきましたの。お一ついかがですか?」
セシリアの方を見ると、そこにはきれいに並んだサンドイッチの数々。
「おっ、うまそうだな。俺が食ってもいいのか?」
「はい、どうぞ!」
ちなみにクロウとシャルルの昼食は購買のパンだった。シャルルが耳元で囁いてくる。
「(ねえ、クロウ。僕、本当にここにいていいのかな?)」
「(その疑問は至極当然だが、仕方ない。全て一夏が悪いんだ)」
クロウは心の中でため息を吐く。目の前では、一夏が箒から貰った弁当に箸をつけているところだった。
「箒、この唐揚げ。めちゃくちゃ上手いぞ!」
「ふふん、そうだろう。隠し味は大根おろしを入れてある」
「ぐぬぬ・・・一夏!私の酢豚も食べなさいよ!!」
「ちょ、ちょっと鈴!勝手に口に入れるなって!!」
とクロウの目の前で一夏たちが平穏なひとときを過ごしていると、
「クロウさん、おひとついかがかしら?」
そこには、バスケットを持ち、サンドイッチを進めてくるセシリアの姿。クロウは純粋に嬉しかったので、
「ああ、じゃあひとつもらおうか」
とクロウがひとつ手に取り、口に入れる。すると・・・
「!?!?!?!?」
「ク、クロウ!どうかしたの!?」
「(何だこりゃ!辛い?苦い?マズイ?いや違う。これは・・・痛い!!)」
「す、凄い。クロウが口から火を吐いて巨大化するようなイメージ!!」
「ク、クロウさん?どうかしまして??」
そこは素直にマズイと言ってもよかったのだが、人への思いやりを持っているクロウ。ストレートにマズイとは言えなかった。
「い、いや。何でもないさ。そうだな、もっと頑張れば俺の好きな味になるかな。ははは・・・」
「はいっ!頑張りますわ!!」
次を食べさせられる前に、クロウは話の流れを変えるべく、シャルルに話題を振った。
「そういえばシャルルの部屋って何処になるんだ?一夏の部屋か俺の部屋なのか?」
ちなみに、一夏のルームメイトであった箒は別の部屋に移っている。理由は聞いていないが、まあ一夏が何かやらかしたんだろう。
「あ、うん。え~っとね、僕の部屋番号は」
シャルルが部屋の番号を言う。なんとそこは、
「俺の部屋だ・・・」
「二人とも良かったじゃん。やっぱ一人より二人のほうがいいもんな!」
「うん、僕も知らない人と一緒になるかも、って思ってたから良かったよ」
「(こいつと同室か。まあ、いいか。性別の件、今は置いておこう)」
そうやって昼休みはすぎていった。
~放課後・アリーナ~
クロウ達は最近の放課後、ほぼ毎日アリーナにいる。クロウによる特訓を受けるためだ。何故クロウが一夏たちに教えているのかというと、クロウの身の上を話した後、全員から教えて欲しいと言われたためである。まあ、クロウもコーチの経験が全く無い、と言うわけでは無かったので引き受けていた。
「じゃあ、今日も特訓を始める。っとその前にこの特訓に新たなメンバーが加わる」
「誰だ?クロウ」
「入って来てくれ」
全員がアリーナの出入口の方を見ると、そこにはオレンジ色の第2世代型IS、“ラファール・リヴァイブ”を装備しているシャルル・デュノアの姿があった。
「えーっと、皆さん。よろしくお願いします」
「と言うわけだ。これから一緒に特訓に参加してもらう」
一同はシャルルに挨拶や歓迎の言葉をかけている。しばらくすると会話は終わった様で、全員が再びクロウの方を向く。
「さて、今日のメニューだが、俺はシャルルの実力を見たいんでな。基本四人での特訓となる。まずセシリア&箒VS一夏&鈴。その後セシリア&一夏VS箒&鈴の順番だ。セシリアと鈴は基本監督役、適度に援護をしてやれ。セシリアと鈴と組む奴は援護攻撃との連携を考えて動けよ。それじゃあ始め!」
クロウとシャルル、一夏、箒、セシリア、鈴のグループに分かれる。
「よろしくな、シャルル」
「あ、うん。こちらこそよろしく、クロウ」
「さて、お前の実力を見せてもらう前にお前のISの説明を頼む。それ、ラファール・リヴァイブだよな?」
「うん、正確にはカスタムタイプだけどね。僕のリヴァイブは結構いじってあって、
「ほう、そりゃすごいな。じゃあ、まずは射撃の訓練からだ。なんでもいいから自分の好きな射撃武器を展開してくれ」
「うん、分かった」
その言葉と共に、シャルルの右手にアサルトカノン”ガルム”が展開される。その展開速度はなかなかに早かった。
「へぇ~。展開が結構早いな」
「うん、
「なるほど、意外とすごいんだな。シャルル」
「そ、そんなことないけど。それで何をすればいいの?」
「おっと、そうだった。じゃあ何個かターゲットを出すから、撃ってくれ」
その言葉と共に、特訓開始。何個かターゲットを連続で出すが、シャルルはほぼ正確に当ててくる。結局終わるまで一回も外しはしなかった。
「うん、射撃の腕はいいな。一夏に見習わせてやりたいぜ」
「あれっ?一夏って射撃武器持っていたっけ?」
「ああ、俺のEAGLEでやってみたんだよ。そしたらあいつひどくてな。目も当てられない結果だったぜ」
「あはは、でも将来伸びるかもしれないよ。・・・ねえクロウ」
「ん?何だ?」
「あれって、転入生のボーデヴィッヒさんだよね」
クロウがシャルルの示す方向に顔を向けると、そこにはピットの出口に立ち漆黒のISを纏ったラウラ・ボーデヴィッヒがいた。一夏の方を向き何か話しかけている様だった。
「ああ、確かにそうだな。あいつも専用機持ちだったのか」
「一夏達と話しているみたいだし行った方が良くない?」
「そうだな。行こうぜ」
クロウとシャルルが一夏達の所まで行くと、ラウラはグラウンドに降りきており、口論を続けていた。
「だから、俺には戦う理由がねえってさっきから言ってんだろ!」
「ふん、そんな事私には関係ない。ならば少し試してやる」
ラウラはそう言うと、肩に装着されている砲台を稼働させ、いきなり発射した。
ズドォォォン!!
「・・・貴様、何故威嚇だと分かった?」
「殺気が全く出ていない。それじゃあ威嚇ですよと言ってるようなもんだぜ」
ラウラの放った弾丸は明後日の方向に飛んでいった。一夏達は戦闘態勢をとっていたが、対照的にクロウは涼しい顔で直立していた。
「貴様その反応、軍人か?」
「そんな訳ねえだろ。俺は自由と平和を何よりも愛する男だぜ」
「ふん。しかし貴様の言動を見る限り、軍にある規律と言うものが全く無い。よほどふ抜けた部隊だったのだろうな」
「・・・お前、今なんて言った?」
その言葉を聞き、一夏達は身をこわばらせる。今のクロウの雰囲気は前にセシリアがクロウに対して、部隊の仲間に関して侮辱した時と同じ空気を出していた。事情を知っている一夏、セシリア、箒はヤバイ、と直感的に理解した。
「「「まずい(ですわ)!!!」」」
「何、あんたらどうしたの?そんなビビっちゃって」
鈴はクロウの身の上は知っているが、セシリアがクロウの仲間を侮辱したとき、まだIS学園にいなかったので、この後どうなるか全く知らない。
「鈴、あの転入生はやっちゃいけない事をしたんだ・・」
「どういうこと?」
「あの女、クロウの逆鱗に触れた・・」
二人は純粋に恐怖し、鈴がまだわからないといった風で質問を繰り返してくる。シャルルは頭の上に疑問符をつけたままだった。
「?何かあるの?」
「とにかく、急いで離れないとまずいですわ・・・」
一夏たちがクロウとラウラから離れる。その間にも、クロウとラウラの会話は続いていた。
「聞こえなかったのか?お前の耳はよっぽど悪いようだな。ならばもう一度行ってやる。お前のいた部隊はどうしようもなく堕落した部隊だ、と言ったんだ」
「お前、もう口を開くな」
クロウは静かに右手にEAGLEを展開する。
「ふん、私と戦おうと言うのか?返り討ちにしてやろう」
「口を開くな、と言ったはずだ」
次の瞬間、クロウはラウラの前に立っていた、しかもEAGLEをラウラの腹部に密着させた状態で。
「何っ!!!」
「・・・」
ドンドンドンッ!!
クロウは無言でEAGLEを撃ち続ける。その内弾倉が空になると、一旦距離を取り、弾を補充する。ラウラは突然の事に驚きつつも、戦闘態勢に入る。
「(何だ今の動きは!?しかも今のでS・Eが半分ももっていかれただと!?)」
ラウラは六基のワイヤーブレードを展開し、クロウに向かって射出した。
「これで!!」
「舐めるなっ!」
クロウは六基のワイヤーブレード全てを、バンカーを使った斬撃でたたき落とす。そして、一気に距離を詰め、ラウラをアリーナの壁に叩きつけた。
「ガハッ!」
「訂正しろ」
「(何だこいつの強さは!?まるで教官と同じかそれ以上!!)」
クロウはラウラの首筋にバンカーを当て、動きを封じていた。その時、
≪やめろ、ブルースト!!≫
「・・・」
スピーカーから声が聞こえてくる。恐らくアリーナを監督している教師が呼んだのだろう。千冬は少し息切れの状態でクロウに呼びかけ続ける。
≪やりすぎだ、ブルースト。もうやめろ≫
「・・・分かりました」
クロウはそういうと、静かにバンカーをラウラの首筋から離す。ラウラは呆然とした顔で座り込んでしまった。そんなラウラをクロウは静かに見下ろす。
「・・・」
クロウは静かにラウラから離れ、一夏たちの元へ戻った。
「クロウ、大丈夫か?」
一夏が呼びかけたとき、そこにはいつもの飄々としたクロウがいた。
「おお、すまんかったな。みんな」
「しかし、仲間を侮辱されると見境がなくなるのだな、お前は」
「見てるこっちも怖かったわよ」
「クロウさん、お体の方は大丈夫ですか?」
「まあ、心配はないさ」
「とりあえず今日はもうあがろうぜ」
「そうだな、この状況で特訓は無理だ」
クロウ達は喋りながら、着替えるためにアリーナから出ていく・・・。
「クロウ・ブルースト・・・」
アリーナには一人ラウラだけが残された。座り込んだ状態で、ラウラは呟く。
「教官の前で私に恥をかかせた男、貴様だけは・・・」
彼女は拳を握り締め、憎悪の瞳を空に向ける。
「貴様だけは・・・私が倒す!!」
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第二十話です。